Mar. 23 〜 Mar. 29 2020
NYCロックダウン・ライフ2 & ハンガー・ゲームス
今週のアメリカでは先週の2倍に当たる660万人が失業保険を申請し、僅か2週間で1000万人の失業者が出た計算になっており、
急ピッチでアメリカのコロナウィルス感染者数(土曜日の時点で約31万2000人)を追いかけている状況。
私が住むニューヨークは引き続き感染のエピセンターで 4月4日土曜には新たな感染者数が6,147人、4月3日金曜には1日の死者数が630人を記録して過去最多を更新。
この日の段階でニューヨークの感染者総数は6万3306人、死者数のトータルは2,624人。
数字の上では物凄いことになっているので、日本やアメリカの州外に住む友人が心配して連絡をくれるけれど、
ニューヨークの街中はロックダウン中とあって極めて静かで穏やか。 ニュースで見る医療現場の様子は まるで別世界のように感じられてしまうのは私だけでなく、
何人ものニューヨーカーが話していること。
でも私が住むアッパー・イーストサイドは大きな病院がいくつもあるので、救急車のサイレンは1日に何度も耳にするのだった。
ちなみに感染者数と死者数はニューヨークがアメリカ全体のほぼ半分を占めているものの、致死率はニューオリンズがニューヨークの2倍。
目下急激に感染の広がりが伝えられるのはミシガン州で、特にデトロイトが深刻な状況。週末にはカリフォルニアを抜いてニューヨーク、ニュージャージーに次いで
3番目に感染が拡大する州になっているのだった。
今週木曜には CDC(疾病予防センター)やデブラジオNY市長がこれまでの指示を覆して、市民にマスクの着用を呼び掛けたことから、
週末にはニューヨークで道を歩く人々の70%前後が着用するようになったのがマスク。やはりマスク姿が街中に増えると
アメリカでは見慣れない光景なだけに 少々物々しい雰囲気だけれど、
メディカル・サプライが不足していることから N95マスクや手術用マスクの購入を控えて、自作のマスクや
バンダナで鼻と口を覆うことが奨励されているのだった。
アメリカ中で失業者が増えたことから各州で大行列が出来ているのが 失業保険を申請するための職業安定所とフードバンク。
NYはウェブサイトで申請を行うことになっているもののエラー・メッセージが出て申請が完了できない人々が多く、メディアには
先週から続けている電話問い合わせが350回、合計30時間を超えても誰とも話せない女性が登場していた有り様。
フードバンクは通常ならば高齢者やホームレスに1週間分の食糧を支給するために ノンプロフィットの団体によって各州で運営されているけれど、
ニューヨークでは失業者増加により行列する人々が通常の4倍に増えたにも関わらず、市内のフードバンクの3分の1がクローズ。
その理由は食糧が値上がりする一方で ボランティアをプロテクトするための手袋やマスク、アイグラスを
限られたバジェットの中から購入しなければならないこと、加えて企業やレストランからの食糧の寄付が減っているためで、一部のフードバンクではスタッフの感染も伝えられる状況。
今週は全米で同様のフードバンクの問題が伝えられ、複数のメディアに見られていたのが「Hunger Games / ハンガーゲームス」というヘッドライン。
中でもショッキングに報じられたのが写真上左、ピッツバーグのフードバンクで順番待ちをする車の大行列。
2週間前までは同様の大行列が出来ていたのはもっぱらコロナウィルスの検査。でも今ではテストキット不足や
マイルドな症状の場合は自宅で安静にしていた方が症状が治まることを理由にテスト・サイトを閉鎖する州も出ており、
その行列の場所が職業安定所とフードバンクにシフトした形になっているのだった。
先週のこのコーナーに書いた通り、
一般の人々とてアマゾン・フレッシュ、ホールフーズ、ウォルマート、フレッシュ・ダイレクトといった食料品のデリバリーが
全く手配できないので、これまで食糧調達をデリバリーに頼っていた人々がストアに足を運ぶ、もしくはInstacart / インスタカート等の
アプリを通じて ストアでの買い出しを依頼しているのが昨今。
今週末からは多くのスーパーが入店客数の制限を始めており、待たされた買い物客は時間の無駄を省くために纏め買いをするのは必至。
そのため再び食料品が品薄になることが見込まれるけれど、都市部ほど食糧の供給が頻繁でない地方都市では
既にフェイスブックやアプリを通じて食糧の物々交換が行われている状況。
ビールと引き換えに砂糖をリクエストしたり、ツナ缶と引き換えにパンケーキ・シロップをリクエストをする様子が
伝えられているのだった。
ニューヨークでは仕事がある多くの人が自宅勤務で、1日の仕事時間は6〜7時間程度とのこと。
日中の仕事時間の合間に犬の散歩やランニング、食材の買い出しに出掛け、家でエクササイズをする人はヨガやウェイト・トレーニングを 時にビデオ・ストリーミングのクラスを
取りながら行い、常に頭で考えているのがディナーに何を食べるか。それに応じて料理をしたり、デリバリーをオーダーすることになるのだった。
娯楽と言えばNetFlixやHulu等のドラマやシリーズを観ること、ZOOMやスカイプを通じて友達と近況をキャッチアップすることで、
前者に関しては3月20日NetFlixで公開された 「タイガー・キング」がバズをクリエイトしているけれど、
私の友人の間ではHuluのリース・ウィザースプーン&ケリー・ワシントン共演の「Little Fire Everywhere」の方が人気。
友人との会話で必ず聞かれるのがロックダウンで「アルコールと食べる量が増えている」というボヤキだけれど、
そう言いながらもワイングラスを片手にZOOMチャットをしている有り様。
女友達はロックダウンになってから「一度もブローをしていない」と気楽に ヘッドバンドをしたり、メッシーバン(ヘアをわざとキレイに纏めずにアップにすること)や
ポニーテールで登場するのに対して、男友達の方がヘアサロンがクローズしているせいで髪の毛や髭が悲惨な状態になるのを危惧しているのだった。
またロックダウン中に常に家の中で一緒に居なければならないハズバンドやボーイフレンドに「イライラさせられる」というのはゲイ、ストレートを問わず
友達が語っていること。今週にはグウィネス・パルトローのようなセレブリティでさえ
ロックダウン中の夫婦関係の難しさについてコメントしていたほど。
実際にハリケーン・カトリーナや 今回のコロナウィルスのように自宅に籠る状況下で悪化することが伝えられるのがドメスティック・バイオレンス。
そのため今週には専門家がメディアを通じて「同じ空間に居るからと言って、常に一緒に食事をする必要は無い」と、この時期に喧嘩の原因になりがちな食事のタイミングや
何を食べるかといった問題の回避を提案していたのだった。
その一方で ニューヨークに比べるとカリフォルニアの方が家の面積が広く、「カリフォルニアンが一生の間に渋滞中の車の中で過ごす時間は5年以上」と言われるほど
通勤に時間が掛かるとあって、LAやサンフランシスコに住む友人は自宅勤務歓迎組。
「コロナウィルスの問題が終わっても週3日は自宅勤務にして欲しい」、「次に転職する時は自宅勤務が許される企業にする」などと語っている状況。
でも皆それぞれに今後の経済や 自分の仕事と生活に不安を抱えているとあって「夜中に突然目が覚めて眠れなくなる」という声は多く、
その対策としてスリープエイドを摂取する友達も居れば、夜中にベッドの中で タブレットでドラマの続きを観るという友達も居るのだった。
私は今週ZOOMで話した友達に「今何が楽しくて生きている?」と尋ねられてギョっとしてしまったけれど、
それくらいに毎日が単調で楽しいことが無いのがロックダウン・ライフ。
ソーシャル・メディア上にはこの時期に新しいホビーやエンターテイメントを模索する人がそのアイデアを提供しており、
ちょっとしたヴァイラルになっていたのがペンシルヴァニアに住むリック・カリノウスキーがクリエイトしたリスのためのピクニック・テーブル。
これを自宅の塀に取り付けて餌を置いたところ、毎日リスがやってきてはキュートにその餌を食べるようになったそうで(写真上左)、
その様子を窓から眺めるのがロックダウン中の唯一の楽しみになってしまったとのこと。
そのビデオをポストした途端に 多くの人々が同じようなピクニック・テーブルを作って
塀やベランダに取り付けたところ やはりリスがやってくるようになったそうで、ロックダウン中ならではのほのぼのしたアクティビティとしてトレンディングになっていたのだった。
実は動物嫌いの私も 現在 毎日のランニングの最中に眺めるのを楽しみにしているのがセントラルパークの貯水池に居るカメ。(このページのトップの写真がその貯水池)
カメの存在に気付いたのは2月初旬だったけれど 今では気温が上がったので貯水池の縁に上がってくる数がどんどん増えてきて、
走りながらそんなカメ達の様子を観察するのが今の私のちょっとした趣味。
これまで1日に見かけたカメの最多記録は41匹で、カメは金運と長寿のシンボルなので”縁起物” と思って眺めているのだった。
そのセントラルパーク内の5番街にほど近いマウントサイナイ病院の向かいの芝生エリアには、先週末から深刻な症状がないコロナウィルス患者を収容する
テントが張られているけれど、セントラル・パークと言えば1929年に始まった大恐慌の時代には
グレート・ローンを始めとする芝生のエリアに ホームレスになった人々が大勢テント生活をしていた場所。
なので貯水池のカメを縁起物と思う一方で、テントについては大恐慌の再来を意味する不吉なサインのようにも感じられてしまうのだった。
当社へのお買い物でのサポート、及びお気遣いのメッセージを頂きまして誠にありがとうございます。
当社からも皆さまのご健康と安全をお祈りしています。ニューヨーク、及びアメリカ全体はコロナウィルスのピークが2週間先と言われていますが、
幸い商品の物流は2〜3日の遅れはあるものの順調に続いております。日頃より少々余分にオーダーにお時間を頂いていることをお詫び申し上げます。
執筆者プロフィール 秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。 |
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