Mar. 23 〜 Mar. 29 2020
私のNYロックダウン・ライフ と コロナウィルス15
今となってはニューヨーカーでさえ日付の感覚が無くなっているけれど、NYが正式なロックダウン状態に入ったのは今週月曜の3月23日から。
もっと長くロックダウン状態が続いているような気がしてしまうのは3月20日の時点でクォモNY州知事がロックダウン措置を発表していたのに加えて、
その前の週からコンサートやスポーツの試合の中止、レストランのデリバリー&ピックアップを除く閉店、ブロードウェイ・シアター閉鎖、社員の75%に対する自宅勤務の呼びかけなどの
措置が行われ、過去15日前後を掛けて徐々に生活が規制されてきたため。
今週からはNYの公立校がZOOM を使ったオンライン授業を開始。友人によれば子供達の空手やダンスのクラスまで
ZOOMを使ったオンラインになっているとのことで、今週にはコロナウィルスのせいでコンサートがキャンセルになった児童合唱団や高校の弦楽オーケストラ全員が
それぞれ自宅からパフォーマンスを行い、それをZOOM上でチーム・パフォーマンスに纏めたビデオがソーシャル・メディア上でヴァイラルになっていたのだった。
そうかと思えばソーシャル・メディアを通じてニューヨーカーに呼び掛けられたのが、金曜午後7時から2分間に渡って医療現場の最前線で働く人々に
感謝の拍手と声援を送る #ClapBecauseWeCare (#クラップ・ビコーズ・ウィ・ケア)というグラスルーツ・イベント。
私が住むアッパー・イーストサイドでも 金曜午後7時になった途端に人々が窓を開けて拍手と声援を送る姿が見られ、土曜、日曜も雨の中 5分間に渡ってそれが継続。
心が温まる思いが味わえたのだった。
そのニューヨークの医療現場は人手不足で、デブラジオ市長が リタイアした医療関係者にボランティアを呼び掛けたところ、
たった24時間以内に1000人からの申し出があったことはCUBE New Yorkのフェイスブックポストでもお伝えした通り。
今やその数は6000人を超えており、医療関係者以外のボランティア数も1万人。
引き続きN95 のマスクやガウン等の医療サプライは不足しており、週末にはメジャーリーグのユニフォーム・メーカーが
ヤンキーズを含む各チームのユニフォーム素材でガウンを製作することを発表。
NYの病院で深刻な不足が伝えられるヴェンティレーター(呼吸器)については、
イタリアが高齢者より若者を優遇して批判を浴びたことを受けてか、
どの患者にあてがうかを抽選で決めることが土曜日の段階で発表されているのだった。
先週1週間だけでアメリカでは約330万人が失業保険を申請したことが大きなニュースになっていたけれど、
全米各州でパンク状態なのが職業安定所のウェブサイトやホットライン。何日トライしても申請が出来ない人々が非常に多いことから、この数字はまだまだ増える見込み。
メディアによればアメリカ人の3人に1人が自分か家族が失業した計算で、
全米に先駆けてコロナウィルスの感染が広がったニューヨーク市では市民の30%が職を失ったと言われるのだった。
金曜にはアメリカ史上最大の2兆ドルの救済金法案が可決されたのは周知の通り。
アメリカ社会はクビを切るのも早いけれど、切られた人間の次の行動や そのニーズを見込んだビジネス対応も
驚くほど速く、先週からメールボックスに入り始めたのが引っ越し業者からのダイレクトメール。
私の住むビル内の住人メール・ネットワークでは、レント契約の引継ぎをオファーする人や アパートを出るルームメイトの代わりを探す人、
不要になった家具の引き取り手を探す人々が先週から増え始め、今週に入ってからは毎日のように住人が引っ越していく様子が見られているのだった。
なので引っ越し業者は儲かっているように思うけれど、このご時世で大繁盛が伝えられるのが自転車ショップ。
というのも公共交通機関を利用せずに移動したい人々が 供給が追い付かないシティ・バイクに頼るのを止めて マイバイクを買い始めたのに加えて、
以前からバイク通勤をしていた人々もここへ来て使用距離が増えたことから、供給サプライがあるうちにタイヤの取り換えや それまで気にしなかった故障個所を直そうとする結果、
売り上げの大幅アップが伝えられるのだった。ちなみに自転車ショップは食材店、銀行などと並んでロックダウン状況下でも経営が認められる”エッセンシャル・ビジネス”。
ニューヨークではメガリッチが2月の段階で既に郊外のリゾート地、ハンプトンズに感染を逃れるために
移り始めていたことは先週のコラムでも お伝えしたけれど、
ニューヨークだけでなく全米でも 解雇や生活の心配をしなくてよい富裕層を中心に人々が田舎町に流出し始めているのが現在。
逆に田舎町では都市部からやってくる人間がウィルスを運んでくることを危惧して、ただでさえよそ者に排他的なカルチャーがさらに高まっていることが伝えられるけれど、
こうした地方の町は病院に集中治療室さえないところが殆ど。加えて食料や日用品の供給も都市部とは比較にならないほど少ないこともあり、人口の増加はたとえ僅かでも迷惑。
ハンプトンズについては大きな嵐が来ただけで食料不足になるのが常で、だからこそ現地の邸宅には巨大なパントリー(食糧庫)が付き物。
長年の住人達は既に食糧や日用品の調達が出来ない不便を訴えており、
そうなってしまうのはハンプトンズは電車とヘリコプターを除けは 1本の主要道路が交通と流通の命綱。だからこそエクスクルーシブ なリゾート地であった訳だけれど、
感染が広がれば医療施設も対応不可能。そのためハンプトンズで今週末から始まったのが
ノンエッセンシャル・レジデンツ、すなわちよそ者の移入をブロックする措置。
駅や道路には軍隊が配備される物々しさで、つい最近NYやコネチカットからやって来た人々に14日の自主隔離を呼び掛けるだけでなく、
それに該当する人を知っている場合には 電話で自治体に通報することが市民に呼び掛けられているのだった。
さてNYが正式なロックダウンに入った今週、何が変わったかと言えば まず私が住むアッパー・イーストサイドでさえ、
道で見かける人々の30%程度がマスクをしているということ。
加えてソーシャル・ディスタンシングのお達しが行き渡ってきたこともあって、私がほぼ毎日ランニングをするセントラル・パークで
2人以上で歩く人々の姿が激減。NYPD(NY市警察)は 騎馬警官を使って、パーク内の車で入れないエリアもパトロールするようになっているのだった。
私が住むビル内では、引き続き住人同士が以前よりナイス&フレンドリーであるけれど、
顕著なのがエレベーター内が混み合わないようにする配慮。中に既に3人が乗っていれば「May I ?」と尋ねてから乗るのが暗黙のエチケット。
それと同時にビル内でもマスクや手袋をする人が増えていて、手袋をしていない人は肘でエレベーターのボタンを押すなど 公共の場所に極力触れないようにしている状況。
今週からはフードや食材のデリバリーマンのアパートのドアまでの配達が禁止され、
住人はデリバリーされたものをドアマンのデスクまで取りに行くのがルール。
新聞配達も同様で、部外者のビルディングへのアクセスを極力防ぐ措置が取られているのだった。
それでもニューヨーカーの中には徹底して料理をしない人が居るもので、朝食からデリバリーを利用する住人も見られるけれど、
ドアマンに訊いたところフード・デリバリーで圧倒的に多いのはやはり ピザ。
チャイニーズ・フードのデリバリーは1月に中国でのコロナウィルス感染が伝えられた時点から既に少なくなっていたとのこと。
マンハッタンの場合、食材の供給は頻繁に行われるので 10日程前にはスーパーのレジに大行列が出来て、棚の商品も激減していたけれど、
今ではニューヨーカーがその段階で買い漁った食材を食べるのに忙しいのか 逆にスーパーはガラガラで食糧もたっぷり陳列されている状況。
アッパー・イーストサイドでは、ホール・フーズがソーシャル・ディスタンシングを厳しく守って一度に50人しか入店させないこともあって、
入口に唯一行列が出来ている様子はCUBE New Yorkの今週のフェイスブック・ポストでもお伝えした通り。
でも個人的には今のような十分なフード・サプライが何時までも続くとは楽観していないのが正直なところ。
私自身は2月上旬の段階のアマゾン・ドットコム上で、 ほぼ全てのブランドのパスタ、トマトソース、石鹸が完売し、
その他の缶入り、瓶入りフードが品薄になっていたことから食料の備蓄を始め、友人やスタッフにもそれを勧めたけれど、
それがニューヨークのスーパーの店頭のに反映されたのは3〜4週間後。
そのアマゾン、および傘下のホールフーズは現在 オンラインで商品はカートに入るものの、デリバリー枠が全て埋まっていることからチェックアウトが出来ない状況。
唯一 プライム・パントリーは郵送による配達なので オーダーは可能であるけれど、多くの食品に購入数制限がかかっていて、
パスタや缶入り、瓶入りのフードは1人1ユニットしかオーダー出来ないのが現状。
もしアマゾンの状況がアメリカ全体の3〜4週間先を反映していた場合、次に訪れても不思議ではないのが食糧の供給制限と配達員不足。
今週末にはオンライン業者のウェアハウス労働者や配達員が、健康のリスクを押して働いているにも関わらず給与が増えず、
感染予防対策のプロテクションも雇用主から与えられていないことを不服としてストライキをほのめかしているのだった。
アメリカ全土においては、郊外や地方は都市部のように食糧の供給が頻繁でないとあって 引き続き食糧不足が伝えられる状況。
特にミルクや卵等の価格アップが伝えられ、先週から全米で多く聞かれるのがパン不足。
ニューヨークでもメゾン・カイザー等のグルメ・ベーカリーが休業しているので、パンにこだわる私にとってはとても辛いのが現在。
そのため美味しいパンをお腹一杯食べるファンタジーを抱いてしまうけれど、
昨今聞かれ始めたのが「フレッシュマン15」をアレンジした「コロナウィルス15(フィフティーン)」という言葉。
「フレッシュマン15」は、大学に入学して親元を離れて寮生活を始めたフレッシュマン達が、
好きな物を 好きな時に 好きなだけ食べて 飲むようになる結果、平均15パウンド(約6.8キロ)体重を増やす様子を現わす言葉。
コロナウィルスに際しては、隔離に備えてたっぷり食糧を買い込んだ人々が 自宅勤務になって ジムにも行けず、
ただでさえ消費カロリーが減っているところに 退屈さも手伝ってどんどん食欲だけが高まっているようで、
ポテトチップスをダイエットコークで流し込みながら仕事をし、夜もネットフリックスを観ながら食べ続ける結果、体重を増やしている様子が伝えられるのだった。
それの体重増加に拍車を掛けているのがアルコール消費のアップ。
これについてはWHOでさえ「アルコール摂取は健康に悪いだけでなく 免疫力を落とす」として警告したほどで、
ニューヨークでも自宅勤務、レストランのクローズが始まって
売り上げが増えたのが無料でデリバリーをするリカー・ショップ。スーパー・マーケットでも まるでスーパーボウル・ウォッチパーティーでもホストするかのように
ニューヨーカーがビールをダース単位で買い込む姿が頻繁に見られるのだった。
つい最近スカイプで話した友人にしても、自宅勤務になってまずオーダーしたのが2ダースのワイン。
その最初の1ダースを 2週間も経たないうちに飲み終えてしまったと話していて、ネットフリックスを観ながら1人で飲むこともあれば、
スカイプやズームで友達と話しながらの いわゆる”スカイプ・ドリンク” をすることも多いとのこと。
「パジャマを着たまま 帰宅の心配をしないで飲める上に、自宅勤務で翌朝早起きをする必要が無いと
とにかくお酒が進む」と話していたのだった。
私は以前フェイバリットのコラムに書いた通り、
かなりの努力をして自宅で就寝前にワインを飲む習慣を改めて その結果体重を落としたけれど、
そんな友達の話を聞いて 今となっては本当に昨年の段階で「家飲み」を止めておいて良かったというのが本音。
翌日早く起きなくて良い状況で飲んでいると、途中から酔っぱらって酒量が分からなくなる上に、アルコールの覚醒効果のせいで
眠れなくなるので、あっという間にワインのボトルが空いてしまうという状況は 自ら経験して、記憶力の衰えと共に「家飲み」を止めた最大の理由。
こんな状況なので「経済の先行きや、仕事の心配を紛らすために飲んでしまう」という人も多いようだけれど、
私は経済の先行きや、仕事の心配はお酒で紛らすよりも シラフで向き合うべきと思っているのだった。
引き続きニューヨークのコロナウィルス感染拡大をご心配くださる皆様からお気遣いのメールを頂戴しておりますことに感謝いたします。
先週のこのコーナーでお伝えした通り、CUBE New Yorkは自宅業務でこれまで通りの営業をしております。
現在稼働している取引業者、現在休業中でも業務再開後の取引業者を支えるためにも、
営業はこのまま続ける所存でおります。引き続きお買い物で当社をサポートして下さる皆様にも
心よりお礼申し上げます。ありがとうございます。
執筆者プロフィール 秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。 |
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