Mar. 25 〜 Mar. 31 2019
もし世界経済のリセットが起こったら…、
生き残るのはビットコインかゴールドか?
今週のアメリカで最も報道時間が割かれていたのが 先週末に司法長官に提出された2016年大統領選挙におけるトランプ大統領とロシア政府の癒着疑惑に関する
ロバート・ミューラー特別検察官のレポートについて。
400ページ以上にも及ぶレポートを3ページ半に要約して公開したウィリアム・バー司法長官にその全文公開を求める民主党と、
無罪放免の勝利宣言をするトランプ大統領が全く好対照の様子を見せていたけれど、国民の70%近くは
これで大統領の疑惑が晴れた訳ではないという意見。実際ミューラー・レポートでも、トランプ氏の司法妨害、および大統領がそれ以外の犯罪を犯した可能性については
否定されておらず、22カ月も掛けた割には極めて謎が多いのがその捜査結果なのだった。
もう1つ大報道になっていたのが 自分に対するヘイト・クライムを偽装した「エンパイア」に出演中の俳優、ジェシー・スモレットが
16の容疑全て不起訴処分になる判断をシカゴの検察側が下したニュース。
この措置が明らかにおかしいのは、通常なら有罪を認めて取り交わされるはずの司法取引が
検察とスモレットの間で不起訴処分で交わされていること。不起訴処分は事実上無罪と見なされるので、
本来ならスモレットには裁判費用1万ドルの支払いと2日間のコミュニティ・サービスというペナルティに応じる必要はない訳で、
要するに有罪を認めた人間の罪を問わなかったのがシカゴの司法局。
これを受けてFBIが検察側の捜査に入ったことが伝えられるけれど、この陰で動いたと言われるのが
ミシェル・オバマの元ホワイトハウス・スタッフ。
引き続きアメリカで大報道になっている大学不正入学スキャンダルのインパクトも重なって、
「お金とパワーがあれば不正が勝ち取れる社会」に世論の反発が大きく高まっているのだった。
さてアメリカではこのところ株価が安定する一方で、スキャンダルや事件に報道時間が割かれるとあって、
メインストリーム・メディアが殆ど報じないのが国内外における経済、特に景気の先行きに不安をもたらすニュース。
そのうちの1つが英語で言う”イールドカーブ・インバージョン”で、これは短期国債の金利が長期物の金利より高くなるという
事実上景気後退を意味する入れ替わり現象。
昨年12月に2年物のアメリカ国債の金利が5年国債を上回ったのに続いて、今週には3ヵ月債が10年物の金利を上回っており、
多く経済専門家はこれをリセッションに突入する確実な前兆と分析しているのだった。
でもそんな警告を受ける以前に アメリカでは2019年中に
ウォルマートが11軒、ヴィクトリアズ・シークレットが50店舗、J.C.ペニーが27軒と 大きな報道になる数ではないものの
小売店が続々と閉店を発表していて その総数は約5000軒。2019年の現時点までで小売り業から既に4万人のレイオフが出ており、
それに伴う小売業の不振も数字に表れていること。
でも私にとってそれより深刻に思えるデータは2018年のニューヨーク市の飲食業界が過去十年、すなわち前回のリセッション以来初めて
前年比で就業者数を減らしたことで、その数は何と6000人。
ニューヨークほど外食やテイクアウトをする街は世界中に他に存在しないだけでなく、ビジネス絡みの
ディナーやケータリング、コーポレート・パーティーやイベントの数を考えると、その飲食業界が1年間に6000人の雇用を失ったというのはショッキングと言える数字。
ニューヨークがそんな状況なので、全米では更に人々の外食回数が減っているのだった。
なので「どんなに否定しても避けて通れない」と誰もが語るのが次のリセッションで、
自分の財産管理にシリアスな人ほど真剣に考えているのがその先の展開。
すなわちリセッションが起こって 世界の中央銀行が紙幣を印刷するだけでは救えない状況に陥った際に備えて何に投資をしておくのが
一番財産が守れるかということ。
次の深刻なリセッションのシナリオとして見込まれるのがフィアット・カレンシー(米ドルや日本円)の崩壊、そしてそれに代わる世界共通デジタル通貨の誕生という
世界経済のリセット。そのプロセスは大恐慌のようなパニック状態からリセットに向かうという意見と、キャッシュレス&クリプトカレンシー(暗号通貨)の普及に伴う世界レベルの
金融レギュレーションという穏やかな形で向かうという意見に分かれるけれど、
世界共通通貨については100年も前にロスチャイルド家のメンバーが言及していたこと。それによれば2018年に実現しているはずだったこと。
確実に言えるのは、もし世界共通通貨が誕生するリセットが行われた場合 それが紙幣ではなくクリプトカレンシーになるということで、
その導入を中心になって進めていると言われるのがIMF(国際通貨基金) 。IMFでは既にSDRという世界共通通貨をクリエイトしているけれど、
ここ2年ほどの間にスウェーデンやハンガリー等、これまでゴールドに興味を示さなかった国の中央銀行が ロシアやインド、中国らと共にせっせとゴールドを
備蓄しているのはそのリセットに備える準備と言われ、世界共通通貨に金本位制度が導入されるという見方も有力なのだった。
これまで世界の準備通貨であったドル離れが進んでいるのは金融メディアが報じているけれど、そのドルが貿易通貨として独り勝ちする時代の終焉 と言われるのが次のリセッション。
そうなれば 株式はもちろん、ETFを含む金融デリバティブ商品、国債等、フィアット・カレンシー・ベースの財産が
価値を失うことが危惧されており、次の投資対象を話題にする際に 必ず浮上するのが 「ゴールドか? ビットコインか?」の論点なのだった。
ゴールドについては、今まで何度か書いてきたのでここではビットコインに絞って書くとすると、
ビットコイン派の意見はサムスンのギャラクシー10にクリプトカレンシーのコールドウォレットの機能が入ったことが立証する通り、
財布もクレジットカードも、銀行口座も持たず、スマートフォンに入れたクリプトカレンシーで全ての経済活動をこなす時代に生き残る財産がビットコインというもの。
とは言ってもギャラクシーのコールドウォレットに対応しているのは現時点ではイーサリアム、エンジン・コインで ビットコインは対象外なのだった。
それでもJ.P.モルガン・チェースが今後導入するJPMコインを始め、アマゾンやフェイスブックが現在開発を急いでいるコインなど、
今後どんどん増えていくのが大企業や国家がクリエイトするクリプトカレンシー。
まずそれらがキャッシュやクレジット・カードに取って代わり、そのうち最も大きなプラットフォームを持つクリプトカレンシーだけが生き残ることが見込まれるけれど、
現時点で 企業が発行するクリプトカレンシーは 通貨と連動したステイブル・コインとしてデザインされているもの。
しかしながら経済破綻やハイパー・インフレーションでフィアット・カレンシーの価値が崩れた際に、それらのクリプトカレンシーのヴァリューの後ろ盾になる可能性が最も濃厚なのが、
どの国や企業が発行している訳でもなく、それらの利害とは全く無関係のビットコイン。
実際に欧米のクリプト市場はビットコインを基準にした価格で取引が行われており、
今も殆どのアルトコイン(ビットコイン以外のコイン)は一度ビットコインを購入し、そのビットコインを使って購入しなければならないシステム。
いきなりドルやユーロでは買えないようになっているのだった。
加えてビットコインに賭ける人が必ず主張するのが これからの世の中にブロックチェーン・テクノロジーがどんどん導入されていく状況。
今週にはルイ・ヴィトンがその製品の流通にブロックチェーン・テクノロジーを用いて、偽物の流通をブロックする計画を明らかにしたけれど、
第三者が改ざん出来ない取引記録が時系列に1つのデータベースで管理されるブロックチェーンは、
ウォルマートがIBMと提携して逸早く食料品の仕入れと流通に導入。2018年のアメリカではE・コーライ菌汚染作物による
食中毒が数回発生しているけれど、多くのスーパー・チェーンが食材の出所が確定出来ず 大事を取って作物を破棄する中、
ウォルマートは食材の生産地からの流通経路がブロックチェーンで管理されていたため、仕入れた食材に汚染リスクが無いことが瞬時に判明。
それを来店客にアピールする一方で、食材破棄の無駄を防いでいるのだった。
それもあって昨年末からは政府が大手のレストラン・チェーンを中心にブロックチェーン・テクノロジーの導入を指導しているほどで、
そのテクノロジーのシンボルがビットコイン。
なのでブロックチェーンが世の中に普及し、その理解が高まれば高まるほど「ビットコインがその存在価値と財産としての確実性を益々高めるはず」という意見は多いのだった。
またビットコインがゴールドより優れているのは盗難や没収の対象になり得ないこと。
ヴェネズエラでは国外に逃れる国民に高額な出国税を科すだけでなく、その荷物からことごとくゴールドが没収されたと伝えられるけれど、
アメリカでも1970年代までジュエリー以外のゴールドの所有が禁じられた歴史があるだけに、政府による没収は
ゴールドに投資をする人々が盗難よりも恐れていること。
その一方でビットコインの問題と言われてきたのが送金のスピードがXRP(元リップル)等、他のクリプトカレンシーに比べて遅かったことだけれど、昨年登場したライトニング・ネットワークのお陰で
この問題は既に過去の話になりつつある状況。さらにアンチ・ビットコイン派は「インターネットがダウンしたらビットコインは使えない」と
批判するけれど、それについてもビットコインをラジオ波で取引するテクノロジーが既に開発段階。それが実現すればたとえ政府がインターネットをコントロールしようと、
ビットコインの流通は決して止められないのだった。
このようにビットコインを始めとするクリプトカレンシーのテクノロジーは日進月歩。
なのでビットコインに馴染みが無く、これから買ってみようという人がやっても時間の無駄になるのが 本を読むなどしてクリプトカレンシーの勉強をすること。
PCの普及時にはDOSシステムについて、インターネットの普及時には様々なプロトコールについて一生懸命勉強してはウンチクを語る人々が居たけれど、
それらが如何に無駄な努力であったかは時代が証明する通りなのだった。
それより大切なのはビットコインや他のクリプトカレンシーを実際に売り買いして、その扱いに慣れること。
そのファーストステップは、まず詐欺やハッキングの被害に遭わない信頼できる取引所にアカウントを開くこと。
欧米の利用者であれば誰もが最初にアカウントを開くのはコインベース。
扱っているコイン数は少ないものの、
最も初心者に使い易いインターフェイスで、クリプトカレンシーに通じた人の間では好き嫌いがあるとは言え、取り合えずは最も信頼できる取引所。日本にも進出の噂があるのだった。
それとは別にアルトコインの取引をしたい人がアカウントを開くのがバイナンス。
欧米でクリプトカレンシーに投資をしている人が必ずアカウントを持っているのがコインベースと バイナンスで、
実際にこの2つがあれば殆ど事足りるのがクリプトカレンシーの取引。どちらも大手で、これまで大きな問題が起こっていないというのも利用者が多い要因なのだった。
次に大切なのは
一度購入したクリプトカレンシーを必ずコールド・ウォレットに移してオフラインで管理する習慣をつけること。
2014年の日本のマウントゴックスの事件は今も世界的にクリプトカレンシー管理の教訓として語られるエピソードになっているけれど、
そもそもビットコインは銀行や取引所に頼らない個人による財産管理を目的に生まれたもの。
なので自分が持つコールド・ウォレットのプライベート・キーで財産を管理するのがそもそも正しいコンセプト。
コールド・ウォレットでほぼ例外なく誰もが使っているのが レジャー・ナノS。
万一紛失してもリカバリー・ワードさえ記録しておけば、レジャー・ナノSを買い直して復元するだけの話で、使い方は極めて簡単。
インターネット上には日本語の親切なセットアップ・チュートリアルが幾つもあるけれど、ここで大切なのは直接レジャーのウェブサイトから購入すること。
誰かが返品したプロダクトが送られてくる可能性があるアマゾンなどから購入した場合、レジャーがハッキング出来るように
プログラムされているリスクがあるのだった。
レジャーに保管できるクリプトカレンシーの種類は限られていて、全てのメジャーなアルトコインには対応していないけれど、
多くのアルトコインはメッキのジュエリーと一緒で、 安価で気楽に投資が出来ても 財産価値は殆ど無し。
よほど市場に通じて上手く売り買いが出来ない限りはお金の無駄と言われるのだった。
ところでクリプトカレンシーは2017年の12月にビットコインがピークをつけて以来ベア・マーケットが続いているのは周知の事実。
2019年夏以降にならないと盛り返しは無いという人も多いけれど、 ビットコインの過去10年の歴史で目安になっているのが
4年ごとのビットコインの発行数が半減する1年前からブルマーケットが始まるということ。
ビットコインは マイニングによって10分毎にブロックチェーンが1つ生まれる度にそのリワードとして発行されるもので、
2009年のビットコイン誕生時には1ブロックチェーンのマイニングに対して発行されていたリワードは50ビットコイン。
現時点では12.5ビットコイン。それが半分の6.25ビットコインになるのが2020年5月20日。
ビットコインの総数は2100万枚と決まっていて、そのうちの80%は既に発行済。
そのうちの30〜35%がプライベート・キーの紛失等でリカバリー不可能、すなわち永久に失われたと言われるけれど、
上のグラフを見て分かる通り、過去2回の発行数半減の1年前から始まるのがブルマーケット。もしグラフ通りの値動きをするとしたら
次回のブルマーケットはかなりの大相場。なので今年の5月20日以降の展開が見守られているのだった。
昨今ではビットコインを”デジタル・ゴールド”と呼ぶメディアがあったり、
ビットコインの画像がことごとくゴールドのコインであることを思うと、
その価値やイメージの後ろ盾に使われているのはやはりゴールド。
一方ゴールドは、バーゼル銀行監督委員会が定めた最新の国際規制、バーゼル・スリーで
Tier 1 Asset / ティアー・ワン・アセット、すなわち銀行が100%その価値を認めるリスク・フリーの財産と見なされたばかり。
なので結論としては ”ゴールドか? ビットコインか?” というよりも ”ゴールド と ビットコイン” と考えた方が良いように思うのだった。
欧米でコイン・ベースに新規アカウントを開く場合は、
ここをクリックして100ドル以上の クリプトカレンシーを購入することによって10ドル分のビットコインを受け取ることが出来ます。
バイナンスは右のQRコードでもアクセスが可能です。
レジャー・ナノSの購入はここから直接レジャーのサイトで行えます。
執筆者プロフィール 秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。 |
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