実用化プロトタイプが続々登場、
エコ・フレンドリーでモダン、短時間で建つ3Dプリント・ハウス
Published on 5/21/2021
今ではありとあらゆるものが3Dプリンターによってクリエイトされるようになりましたが、
アメリカで深刻な社会問題になっているのが3Dプリンターで作られる銃の部品。これを簡単に組み立てることによって市販の銃と同じ殺傷力の 製品番号登録の無い武器が出回っていることが
昨今のガン・ヴァイオレンスの増加の原因と言われます。
ファッションの世界ではアクセサリーやバッグが3Dプリンターでクリエイトされるようになって久しい状況ですが、
このところ最も注目を集めているものと言えば3Dプリンテッド・ハウス。
プリンターで家が建つなんて 以前は考えられなかったことですが、
その建築法にはさまざまなスタイルがあり、実用化のプロトタイプがどんどん発表されているのが昨今。
3Dプリンテッド・ハウスの魅力は、建築に人手と時間が掛からないことに加えてエコフレンドリーであること。
そして従来の建築概念にとらわれないモダンなデザインや様々な工夫が用いられていて、コスト・フレンドリーでもあること。
以下ではそんな3タイプの3Dプリンテッド・ハウスをご紹介していきます。
オランダで生まれた3Dプリンテッド・ハウス
リタイアしたオランダ人カップルが記念すべき第一号の住人となったのがEU圏初と言われる全行程が3Dプリンティングで建設された家。
とは言ってもこの夫妻はこの家を買い取ったのではなく、試験的に6ヵ月間の生活を安価な家賃で引き受けたテスティモニアル。
この家の素材はコンクリートで、最新の3Dプリンティング・テクノロジーを用いて工場で生産されたのが
外壁を含む建築資材。1軒分の建築資材は24ピースで、そのプリンティングに要した時間は120時間。
独特のテクスチャーで、コンクリートというよりもナチュラル資材のような雰囲気。
そしてそれを組み立てる作業は5時間しか掛からないとのこと。
その後に照明器具の取り付けなどの内装の作業があるものの、これは画期的なスピードになっています。
この住宅は未だ試験段階なので、3Dプリンティングが完璧でない部分が何か所か見られるとのことですが、
生活には全く問題がないレベル。
オランダでは、人口の増加に伴い多数の住宅を新築する必要があるとのことで、
そのために求められるコストとスピードの双方の条件を満たしているのがこの3Dプリンティング・ハウス。
またこの家の壁は音の遮断に優れているとのことで、それはクリエーター側にとっては予期せぬボーナスになっています。
イタリアのクレイで作られた”Tecla / テクラ”
ボローニャの建築スタジオ、マリオ・クチネラ・アーキテクトがクリエイトしたのが”Tecla / テクラ”と名付けられた3Dプリンテッド・ハウスのプロトタイプ。
このネーミングはテクノロジーとクレイ(泥)をくっつけた造語で、その名の通り地元のクレイを使って3Dプリントされたのが この建築素材。
外観は見ての通りピーナッツの殻のようなユニークなフォルムですが、インテリアもまるで洞窟の中のようなエキゾティックな雰囲気。
窓が無い分、天井が大きなガラスの円形ウィンドウで、日中はナチュラル・ライトが差し込み、
夜は星空が眺められるエコ・コンシャスなデザイン。その独特の雰囲気や入口の扉の大きさも手伝って、住人には窓の無さは気にならないデザイン。
天井までは4.2メートル、総床面積は60平方メートルで 部屋の中の家具の一部も壁のカーブに合わせて3dプリントでクリエイトされています。
テクラはサステイナブルでヘルシーな低炭素排出住宅をコンセプトに、生物気候の原則を踏まえた 環境持続能性調査研究の一環として開発された住宅。
プリント作業に掛かった所要時間は約200時間で、強度を増すための350レイヤーでプリントされたクレイの壁は季節に応じて快適な室温を実現する極めてユニークな構造。
クレイを建物に用いるのは古代の発送ですが、それを現代テクノロジーと融合させ、人と環境にやさしく、機能的ながらも
気持ちが癒せる住宅として注目を集めています。
カリフォルニアに建設中の初の3Dプリンテッド・ハウス・コミュニティ
カリフォルニア州のランチョ・ミラージュで年内に着工がスタートし2022年に完成予定なのが、世界初の3Dプリンテッド・ハウスのコミュニティ。
15世帯から成るコミュニティは、完成後には二酸化炭素排出量がゼロの世界初のエコ・コミュニティになる予定で、
電力を賄うのはソーラー・パネル。それに加えて各世帯ごとにテスラのパワー・ウォール・バッテリーをインストールするオプションが与えられるとのこと。
このプロジェクトはマイティ・ビルディングスと開発業者パラリ・グループのコラボレーションで、
全世帯がプール付きの平屋建て。
建物自体は工場生産された3Dプリンテッド・パネルを鉄筋の枠組みにインストールしていくモジュラー住宅。
すなわち3Dプリンテッドの建築資材を用いて、従来の建築法で建てられることからハイブリッドとも呼ばれるスタイルです。
一件当たりの売り出し価格は25〜30万ドル程度になるとのことですが、電気代が節約できるのは大きな利点。
プールやガーデンを含めた1軒あたりの敷地の総面積は約930平方メートル。
床から天井までのウィンドウ・ウォールで自然光をふんだんに取り入れたデザインで、
EV充電ステーションをガレージに設置するオプションもあり、エコ・フレンドリーさでは至れり尽くせり。
さらにオプションでインストールが可能なのが、”ダーウィン”と呼ばれるAIウェルネス・テクノロジー。
これはヘルスケア・ブランド、デロスによって開発されたもので、家の中の水と空気のフィルターリングに加えて、
人間の概日リズムを促進するように照明パターンをプログラムするというテクノロジー。
したがってエコ・フレンドリーかつヘルシーで規則正しい生活が可能になるインテリジェント・ハウスとしての機能が実現するのも大きな魅力になっています。
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