Oct. 31 〜 Nov. 6 2022

Political Violence, $Billions Lost, ETC."
急増する政治ヴァイオレンス、2022年以降のビリオネア大損失、ツイッター Now、ETC.


今週のアメリカでは、水曜に連邦準備制度理事会のパウエル議長が、今年で6度目、4回連続となる0.75%の利上げを発表。 インフレが収まるまで更にホーキッシュに利上げを続ける姿勢を改めて打ち出していたけれど、 ファーストタイム・ホームバイヤーになったミレニアル世代が住宅ローン金利を危惧するようになり、ジェネレーションZがロビンフッド等のアプリを使って 株式やクリプトカレンシーに投資をするご時世とあって、パウエル議長の利上げの発表やそのリアクションは、今や ソーシャル・メディアでトレンディングになるニュース。ニュース・メディアの報道で知る時代ではなくなったのは大きな変化。
金曜にはアメリカの10月の雇用統計が発表され、新たに26万1000の仕事が生み出されたものの、失業率は3.7%にアップ。 このまま失業率が上昇すれば、パウエル議長も金利引き上げのペースを緩めざるを得ないとあって株式市場はこれを大歓迎していたのだった。 アメリカでは来週に中間選挙、そして10月のCPIこと消費者物価指数の発表と、株やクリプトカレンシーの相場に影響を与えるイベントが控えているけれど、 そんな情報も今では まるでセレブリティのニュースのように ソーシャル・メディアで若い世代が認識するようになっているのだった。



政治家が狙われる! ポリティカル・デーモニゼーション


先週金曜に自宅で暴漢に襲われ、大怪我を負ったのがナンシー・ペロシ下院議長の夫で、ヘッジファンドを経営するポール・ペロシ。 下院議長は 大統領、副大統領が任務不能になった場合に大統領業務を代行するポジションとあって、ペロシ議長本人にはセキュリティが常時同行しているものの、 その家族や自宅が意外にも無防備なことにメディアも一般人も驚いていたけれど、近年のアメリカではポリティカル・ヴァイオレンスが急増しており 2017年〜2021年までに下院議員に対して寄せられた脅迫の数は144%アップ。政治家、及び議員になる前の中間選挙候補者をターゲットにした暴力や嫌がらせも 頻発しており、2022年に入ってからFBIが捜査を始めた政治家に対する脅迫、暴力事件の数は何と約1800件に上っているのだった。
その背景にあるのが ポリティカル・デーモニゼーションすなわち、政治家をまるで悪魔のように諸悪の根源と決めつける風潮で、 もちろんその背景にあるのはソーシャル・メディアで拡散される陰謀説やディスインフォメーション(意図的に流される虚偽情報)。 ターゲットになり易いのは共和党より民主党議員、白人よりもマイノリティ人種、及び女性やゲイの議員。

それと共に危惧されているのが、これまでならば同じ議員やその家族が暴力の対象になった場合、 党派を超えて被害を受けた側にサポートを見せ、暴力に対して断固たる姿勢を見せることが 政治的意図の介入余地がないモラルと考えられてきたけれど、 今回のポール・ペロシの事件に関しては、事件の翌日に「容疑者はポール・ペロシが雇った男娼だった」という陰謀説が流れ、 それを共和党のテッド・クルーズ議員、数年前から共和党に鞍替えしたことをオープンにしているイーロン・マスクらがその陰謀説の拡散を行っており、 その影響で 共和党支持者の多くが、サンフランシスコ警察の捜査結果報告には耳も貸さずに「ポール・ペロシの事件に何等かの裏がある」と考えるようになっているのだった。
ソーシャル・メディア時代の恐ろしい点は、前述のように金利引き上げのニュースまでソーシャル・メディアでチェックする時代であるだけに、 一度イーロン・マスクのような意図的に情報を操作しようとする人物、もしくは情報源をフォローしてしまうと、ニュートラルな視点や正確な情報、そして何より事実から 全く隔離された世界に暮らすことになってしまうこと。 加えて自分が信じる以外の視点を受け入れず、反対意見を持つ人物に対しては喧嘩腰の口論やバッシングをするようになるのはトランプ政権誕生前からアメリカでずっと続いてきた傾向。
しかしそんな政治的洗脳が 政治家に対する暴力や「娘をレイプしてやる」といった脅迫を含む犯罪として実行されるトリガーになったのは 言うまでもなく2020年1月6日の議会乱入事件。 保守右派の間では今も「平和的抗議活動」と見なされているこの事件がきっかけで、「政治家でも、議員でも 武器で襲い掛かれば服従させることが出来る」と認識した人々が 自分の信じる正義を実現する手段として行使するようになったのが暴力や脅し。
更に悪いことには、そんな熱し易く、歪んだ正義感と愛国心を持つ人々を洗脳するメディアに、自らの安泰を約束する規制や体制の構築を目論むビリオネア達が 多額の個人資産を注ぎ込んでいること。今回の中間選挙で そんなメガ・リッチの個人資産が選挙資金として流れ込んでいるのは圧倒的に共和党候補者。 そのため選挙結果によっては、既に極めて保守な思想に逆戻りしつつあるアメリカ社会が更に保守右派に傾倒することが見込まれるのだった。



世界のITビリオネア、トップ20人が2022年に失った財産


2022年に入ってからIT銘柄中心のナスダック市場が29%下落しているのは周知の事実。 2021年には左上のビジュアルに並んでいるメタ(フェイスブック)、アマゾン、テスラ、アルファベット(グーグル)、マイクロソフト、アップルの6社が 1兆ドル企業の仲間入りを果たしていたけれど、今ではこの中でそのステータスを保っているのは、アルファベット(グーグル)、マイクロソフト、アップルの3社のみ。
それに伴って これらのビックテック企業のCEOや大株主である世界の富豪たちも大きく資産を減らしているのは容易に想像がつくところで、 イーロン・マスク、ジェフ・べゾス、ビル・ゲイツ、マーク・ザッカーバーグといったITビリオネア、トップ20人が今年に入ってから失った個人資産の総額は何と4800億ドル。 例を挙げれば2021年に一時的ながらも史上初の3000億ドル長者になったイーロン・マスクの2022年の個人資産は2040億ドル、ジェフ・べゾスの資産は 2021年の1920億ドルから1270億ドルへ、ビル・ゲイツの資産は1380億ドルから1110億ドルへ、オラクルのラリー・エリソンの個人資産は1070億ドルから930億ドルへとそれぞれ 目減り。
でもその比ではないのがメタCEO、マーク・ザッカーバーグで2021年の1250億ドルから現在では346億ドルまで激減。すなわち僅か1年で個人資産が3分の1になっており、 今やザッカーバーグはフォーブス誌による世界の長者番付で29位にまで転落しているのだった。 その要因になっているのは まだまだ実現まで時間が掛かり、利益が上がらないメタヴァースのプロジェクトに個人資産までもを注ぎ込んでいることで、 フェイスブック株主の間からは 利益を度外視してメタヴァースに開発費用を掛け過ぎるザッカーバーグに対し、解任要求の声も出始めているとのこと。

ITメガリッチのトップ20の中で 昨年から今年にかけて資産を増やしていたのは僅か2人で、 1人目はTik Tokの親会社、バイトダンスのCEOチャン・イーミン(写真右上、下段右、39歳)。彼は現在上海一の大富豪。 ちなみにTikTokは今回の中間選挙で、民主共和両党の候補がジェネレーションZの有権者にアクセスするために 利用していたソーシャル・メディア・プラットフォーム。上手く使うと100万のビューイング数に簡単に到達する唯一のメディアと言われていたのだった。 そして2人目はWifi機器メーカー、ユビキティの創業者であり、NBAメンフィス・グリズリーズのオーナーでもあるロバート・ぺラ (写真右上、下段左、44歳)。
アメリカでは経済専門家を中心に 「2001年のテックバブルが弾けた時と同様に これから見込まれるリセッションで 過去20年間のITブームで生まれた企業の淘汰が行われる」と見る声が圧倒的。 それに伴い大規模なレイオフも見込まれていて、事実10月だけでもITセクターから出たレイオフは4万5000人。 今週にはカー・シェアリングのリフト、支払いプロセスのストライプがレイオフを示唆しており、今後IT業界が大型レイオフで失業率上昇、引いては金利上昇のスローダウンに貢献するという見方は 有力なのだった。



その他、今週のキャッチアップ


★ 広告主離れ、不当解雇の訴訟…、マスク買収から1週間が経過したツイッター
今週金曜に従業員の50%解雇をEメールで行い、社内の反発を買っていたのがイーロン・マスク。しかもそのプロセスがカリフォルニア州の法律で 大型レイオフに際して定められている 60日前の事前通告を怠ってるとして、その日のうちにツイッターに対しては訴訟が起こされているのだった。 また先週、GMがツイッターへの広告掲載を見合わせる意向を発表したことを このコラムでお伝えしたけれど、今週にはアウディ、フォルクス・ワーゲン、ジェネラル・ミルズ、ファイザー、オレオ・クッキー等がツイッターの広告掲載を停止すると発表。 その理由はマスクの経営下のツイッターがどう変わっていくかが不透明であるためで、買収成立直後から人種差別や暴力的なツイートが急増したツイッター上には 広告を出せないと考えるのは当然のこと。マスクはツイッターの収入の85%以上を占める広告収入の激減を予測するコメントをしており、 その責任がスポンサーに圧力を掛ける数々の人権団体にあると批判しているのだった。
また買収成立以来、世界中でトレンディングになっていたのが ”How to delete Twitter / どうやったらツイッターを消すことが出来る?” の検索。 その数は買収成立前に比べて500%アップしており、実際にマスク買収後にツイッターが失ったユーザーの数は100万人以上。 ツイッター側も87万7000のユーザー・アカウントを強制クローズ。さらに49万7000のアカウントを10月27日〜11月1日まで停止処分にしたことが伝えられるのだった。
その一方で今週、マスクがツイートにブルーの認証マークを付けるためにユーザーがフィーを支払う制度を発表したことで、 ミステリー作家のスティーブン・キングを始めとする長年のユーザー達が猛反発。 「自分達のコンテンツで利益を上げているツイッターの方が自分達に対してフィーを支払うべき」と指摘し、 確かにYouTubeやインスタグラム等、他のソーシャル・メディアであれば リアクションやフォロワーが多いユーザーに対してソーシャル・メディア側がフィーを支払っていることを 改めて認識させていたのだった。
当初このフィーは1ヵ月20ドルと発表され、反発を受けてから8ドルに下がっているけれど、「フィーがチャージされるのであれば、 アカウントをクローズする」というユーザーが大半で、お金を払うことに難色を示しているだけでなく、その支払いを通じて ツイッターが自分のIDを把握することを 嫌う声が非常に多いのだった。

★ 増えるブラインド・ゾーン・アクシデント
アメリカで年間400人が死亡し、1万5000人が怪我を負う原因になっているのがブラインド・ゾーン・アクシデント。 これはSUVやピックアップ・トラックなど、車体が大きな車の運転席から見えないブラインド・ゾーンに人が居るのに気づかず轢いてしまうアクシデント。 その犠牲者になるのはもっぱら子供たちで、ペットの数も含めると、その事故件数は更に増えると言われるのだった。 ブラインド・ゾーン・アクシデントの現場はほぼ100% フロントヤードのドライブウェイやガレージ前といった自宅敷地内。
ニュース・メディアがこのブラインド・ゾーンのサイズを調べる実験をしてみたところ、上の写真のように運転席からは 車の前に座った8人の子供が全く見えず、9人目の子供が座った時点でようやく頭の先端が視野に入ったという状況。 車体の前16フィート、約4.9メートルが運転席から全く見えないことが明らかになっているのだった。
2018年以降、アメリカで生産される車には車体の後ろを映し出すバックアップ・カメラが標準装備になったものの、 フロントのブラインド・ゾーンを映し出すカメラは未だ一部の車両にしか取り付けられておらず、車体の周り360度を映し出すカメラが装備されているのは もっぱら ラグジュアリー仕様。 ブラインド・ゾーン・アクシデントの残酷な点は 親が子供を轢いてしまうケースが極めて多いことで、 運転手がブラインド・ゾーンに人が居ることに気付かない一方で、車の前に居る側は まさか自分の姿が運転手から見えていないとは思っていないのが 事故多発の原因。これが急増したのはアメリカでSUVやピックアップ・トラックの人気が上昇した近年のことで、 自動車業界の安全対策が急がれているのだった。

執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。
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