Jan 18 〜 Jan 25 2021
引き続きFUDの2021年にBoomingになるのは?
今週水曜、1月20日に列席した議員を含む関係者の多くがコートの内側に防弾ヴェストを着用し、2万5000人のナショナル・ガードを配備しての
厳重な警戒の中で、史上初めてヴァーチャルで行われた大統領就任式は様々な意味で歴史的と言われたもの。
この日危惧された全米50州のキャピタルでの武装デモは、オレゴン州民主党本部をアンティファの数人が襲った以外は、
各州ともQアノンや白人至上主義グループの旗を持った人間が1人2人現れた程度。
トラブルが起こらなかった最大の要因と言われるのは警備が厳しかったのもさることながら、
現在FBIが300人以上の議会乱入テロ加担者の逮捕を急ピッチで進めており、訴追された加担者がそれぞれ10〜20年の刑期に直面していること。
逮捕されれば多額の保釈金や弁護料が掛かるのに加えて、任期終了前日に恩赦を連発したトランプ氏が加担者に対しては一切の恩赦をしなかったことから、
崩れたと言われるのが「自分達が何をやっても大統領恩赦が得られる」と、議員殺害まで計画していた狂信的なトランプ支持者の思い込み。
そのため今後も白人至上主義グループ、反政府グループのドメスティック・テロの危惧は続くものの、
国のトップの後ろ盾が無くなったことで「以前ほどは好き勝手なことが出来なくなったはず」と見る声は少なくないのだった。
とは言っても2021年は昨年に引き続きFUD(Fear, Uncertainty and Doubt/恐れ、不確実性、疑い)の年。
誕生したばかりのバイデン政権にアメリカ国民が最優先で望んでいるのは勿論コロナウィルス対策。若い世代は気象変動への対応、
DACA(不法移民の親に連れられて 自分の意志とは無関係に不法滞在をしてきた子供世代)
救済を含む移民問題、過去4年で悪化した人種差別問題に積極的に取り組んで欲しいという声が圧倒的。
熱心なトランプ支持者は今もバイデン氏の不正選挙疑惑を信じているものの、長年の共和党支持者としてトランプ氏に投票した人々の間では
「バイデン政権にチャンスを与えるべき」という意見が高まっていることが伝えられるのだった。
Miami is Booming!
ニューヨークではトランプ氏がプライベート・シチズンに戻ったことを受けて、トランプ・タワー、トランプ・インターナショナル・ホテルの周囲の警備が大幅に縮小。
近隣ビジネスの悪夢がようやく終わろうとしているけれど、アンチ・トランプ派が極めて多いニューヨークからトランプ一家がこぞって移住したのがフロリダ州。
トランプ氏とトランプJr がオールド・マネーが多いパーム・ビーチを新しい住居にした一方で、大統領アドバイザーであったイヴァンカ・トランプ&ジャレッド・クシュナー夫妻、および父親の任期最終日に
ビリオネア子息との婚約をホワイトハウスで発表したティファニー・トランプが移住するのはニューマネー、セレブ、プロ・アスリートのマグネットになっているマイアミ。
マイアミは私の親友が住んでいるので私も馴染みが深いけれど、近年の大躍進ぶりは目を見張るもの。2000年以降にまず増えたのがサウス・アメリカからのメガリッチの移住で、
2010年以降はロシアの富豪とユーロ・メガリッチが競って移住。それに伴って大開発が起こり、今や世界中のメガリッチやありとあらゆるセレブが大邸宅を構えるのがマイアミ。
中でも写真上右のインディアン・クリーク・アイランドは全物件がウォーター・フロントで中央にカントリー・クラブが位置するエクスクルーシブなロケーション。ここにはビリオネアのカール・アイカーン、エディー・ランパート、
フリオ・イグレシアスらが邸宅を構えるほか、つい最近NYのコンドミニアムを3700万ドルで売却したばかりのトム・ブレイディ&ジゼル・ブンチェン夫妻が1700万ドルの物件を購入。
それを取り壊してエコ・フレンドリーな大邸宅を新たに建築することが報じられたばかりで、イヴァンカ・トランプ&ジャレッド・クシュナーもここに土地を購入。
邸宅が完成するまでマイアミの超高級コンドミニアムをレンタルするニュースが伝えられたのが今週。
イヴァンカ、及びトランプJrは共にフロリダ州上院議員選挙出馬をもくろんでいると言われ、アンチ・トランプ派が多いNYでは選挙に勝てないことも移住の理由の1つと言われるのだった。
マイアミは以前からハンプトンズに魅力を感じないニューヨーカーがセカンド・ホームを構える街でもあったけれど、パンデミック以降に押し寄せたのがニューヨークからの移住者。
そのマイアミはデレク・ジーターがプレジデントのマイアミ・マーリンズ、NBAのマイアミ・ヒート、そしてデヴィッド・ベッカムがプレジデントのメジャーリーグ・サッカーのマイアミ・インターという
3つのプロスポーツ・チームを擁する一方で、近年ではアメリカ最大のアートフェア、バゼル・マイアミをホストして メガリッチの投資対象であるコンテンポラリー・アートのキャピタルを目指して久しい状況。
また同時にクリプトカレンシーの積極導入とクリプト企業の誘致にも力を入れ始めており、ここへ来て顕著なのがヘッジファンドやインベストメント・バンクがニューヨークからマイアミにオフィスの一部を移すトレンド。
その中にはゴールドマン・サックス、ブラックストーンといった大手の名前が見られるのだった。
上質な日本食レストランは未だ少ないので、日本食レストランには未だ進出のチャンスがあるように思うけれど、
既にありとあらゆるビジネスがメガリッチとそのオープンなライフスタイルを狙ってどんどん進出しているのがマイアミで、
2021年もそれにさらに拍車が掛かる見込みなのだった。
2021年は ギャンブル & マリファナ合法化が進む
一方ニューヨークではパンデミック中に膨れ上がった150億ドルと言われる財政赤字を埋めなければならないものの、
大幅増税が無理な経済状態を受けて、税収を増やすために進むと見られるのがギャンブルとマリファナの合法化。
ギャンブルは既に隣接するニュージャージー州、コネチカット州では合法、マリファナも2021年からニュージャージー州で合法となるので、ニューヨークはその双方で後れを取っているのが現在。
マリファナについてはカマラ・ハリス新副大統領が合法化に前向きで、バイデン政権下で国全体での合法化も近いとの声も聞かれるけれど、
2020年11月のギャロップ調査ではアメリカ国民の68%が合法化に賛成という過去最高の数字を記録しているのだった。
クォモ州知事によれば、マリファナを合法化することによりNYでは6万の新しい仕事、35億ドル相当の経済活動が生み出される結果、年間3億ドル以上の税収がNY州で見込まれるとのことで、
ギャンブルについてはオンラインのスポーツ・ベッティング(賭け)だけでも年間最低1億ドルの税収が望めるとのこと。
さらに今年のNY市長選挙に名乗りを上げた元民主党大統領候補、アンドリュー・ヤンはマンハッタンにカジノをオープンするというアグレッシブなプランを提示しており、
もし実現した場合の観光収入、税収、経済インパクトは数億ドル程度の規模ではないと言われるもの。パンデミック前であれば当然却下されていたような大胆なプランであるものの、
増税を抑えた税収アップと街の復興のためには実現があり得ると言われる状況なのだった。
またマリファナ合法化は、アメリカ社会において人種差別撤廃のためにも必要なもの。アメリカでは全米50州でマリファナが違法だった時代でも日頃から使用している人々が非常に多いという
矛盾が続いてきており、その所持で逮捕されてきたのはもっぱら黒人層を含むマイノリティ人種。
白人層は逮捕されても弁護士が雇えることから不起訴処分に終わるのが常で、警察が逮捕さえ試みないケースが少なくなかった一方で、
同じ事をマイノリテ人種がすれば確実に逮捕され、前科がついていたのがこれまで。
そしてマイノリティ人種はその前科が障壁になって就職が出来ない等の社会的ペナルティを受けてきたけれど、マリファナが合法化されれば マリファナ絡みの前科が帳消しになることから、
新たなチャンスが広がるマイノリティ人種は非常に多いのだった。
ちなみに私は以前はマリファナ合法化に否定的であったものの、近年その考えを改めた1人。
メディカル・マリファナが処方箋痛み止め薬をより遥かに中毒性が無く、有効なことが医学界でも認識され、国連も12月にマリファナを危険薬物のリストから外すなど、
ようやくケミカルより安全なマリファナの効用が見直されてきたところなので、これまでの”麻薬”という偏見を取り去って健康やライフスタイル向上のために役立てるべきだと考えるのだった。
投資はSRIの時代
2020年はスマホアプリのロビンフッドの影響で、ミレニアル&ジェネレーションZのファーストタイム・インヴェスターが急増し、マーケットメーカーになってしまったのは周知の事実。
そんな若い世代は「良い世の中にするには、世の中にとって良い企業への投資は不可欠」と考える傾向にあり、自分が支持するビジネスに投資をするのがポリシー。
「環境問題は大切」と言いながら、土壌や地下水に致命的なダメージをもたらす石油のフラッキング(水圧破砕)企業に投資をしたり、
処方箋痛み止め薬の中毒性を知りながらそれで多額の利益を上げていたパーデュー社の株を買っていた
ベビー・ブーマー世代&ジェネレーションXの金儲け優先の投資に対して、「世の中を悪くしてお金を儲けて何になる?」というのがミレニアル世代後半とジェネレーションZ。
その投資対象はクリーン・エナジー、最先端テクノロジー、環境コンシャス&サステイナブルなビジネスで、
こうした投資はSRI(Socially Responsible Investing / ソーシャリー・レスポンシブル・インヴェスティング)すなわち社会責任投資として近年既に盛り上がっていたもの。
SRIは企業利益優先で環境規制をことごとく覆してきたトランプ政権下の4年間にも着実に伸び続け、
左上のグラフの通りサステイナブル・インヴェスティングだけで2020年で17兆ドル、SRI全体の規模も2018年の段階で26兆ドルを超えていることがハーバード大学の調べで明らかになっているのだった。
そのため就任式直後にトランプ政権のパリ条約離脱を覆した環境コンシャスなバイデン政権下において 益々盛り上がることが見込まれるのがSRI。
選挙権を得る以前から製品ボイコットやソーシャル・メディアを通じた企業への直訴を行ってきたミレニアル&ジェネレーションZにとって投資と消費は世直し手段の1つ。
「自分1人が実践しても世の中は変わらない」と卑屈な諦め姿勢で考える時代から、
「1人でも多くが実践すれば世の中は変えられる」と考えて変化の一部になろうとする時代に入っているのだった。
執筆者プロフィール 秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。 |
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