July 8 〜 July 14 2019
遂に裁かれる少女性的虐待常習犯ビリオネア、
彼を今までプロテクトしてきた強力なコネクション
今週のアメリカでは、週末になってからR&Bシンガー、R.ケリーがが少女性的虐待や児童ポルノの製作、
セックス・トラフィッキング等の容疑で、シカゴとニューヨークで立件、逮捕されたことが大きく報じられたけれど、
1週間に渡ってメディアを賑わせていたのは 同じく少女性的虐待容疑で先週土曜日に逮捕されたビリオネア、ジェフリー・エプスティーン(66歳)。
R.ケリーがこれまで何度も同様の容疑で訴追されながらも、不起訴処分等で罪を逃れてきたのは
レコード会社やコンサート・プロモーター等、彼の存在で大金を儲ける大企業が彼を支えてきたため。
一方のジェフリー・エプスティーンが罪を逃れてきたのは、R.ケリーとは比べ物にならない強力なコネクションのお陰で、
その交友関係に名を連ねているのはトランプ大統領、クリントン元大統領、英国王室のアンドリュー王子に加えて、
ハリウッド・スター、モデル、著名ジャーナリスト等、数多くの有力者やセレブリティ。
これらの人々はプライベート・ジェットでの旅行、ニューヨーク、マイアミ、プライベート・アイランドにある豪邸でのパーティー、
チャリティへの寄付等で、エプスティーンの富からの恩恵を受けていただけでなく、
その一部は彼が組織的に手配していた少女達と関係していたことが伝えられるのだった。
ジェフリー・エプスティーンは、既に2008年に少女性的虐待の容疑で訴追されており、
その手口は彼の元ガールフレンドである英国人ソーシャライト、ジスレイン・マックスウェルを使ってティーンエイジの少女を高額アルバイト、
モデル・キャリアへの勧誘、奨学金といった金銭メリットを餌にリクルート。
まずは何度かマッサージに雇ってから、その後性行為を強要、すなわちレイプに及ぶというもの。
この時はエプスティーンに300ドルでマッサージに雇われた少女の母親が警察に通報し、
それ以外に2人が青少年性的虐待行為の被害で名乗り出ており、
その証言と証拠だけで「終身刑は確実」と言われた状況。
にも関わらずエプスティーンは司法取引によって僅か13カ月の拘留刑、しかも週6日は仕事のために外出が許されるという
あり得ないほど甘い刑で逃れており、その取引を担当したのがトランプ政権発足時からの労働長官で、当時マイアミの司法長官であったアレックス・アコスタ(写真上左、トランプ氏の右側)。
通常、被告人と司法取引を交わす際には 被害者側に通達した上で行うべきであるにも関わらず、
アコスタは被害者に何の通達も無しに その極めて軽い刑での司法取引をエプスティーンと交わしており、
そのことはアコスタが労働長官に就任する際の承認公聴会の際にも取沙汰された有名なエピソード。
この時、議会からはその捜査依頼が出されたものの、トランプ政権下ではそれが手つかずの状況で、一時は
トランプ氏がアコスタをジェフ・セッションズの後任として連邦司法長官に指名する噂も流れていたのだった。
エプスティーンはこの司法取引のお陰で、全米50州のうち11の州で性的犯罪者として登録する必要が無かったことから、
自分が性犯罪者登録されていない州に豪邸を構えて暮らし、その後も同様の虐待行為を続けていたことが明らかになっているのだった。
しかしながらエプスティーンの再逮捕を受けて、今週与党共和党内からも浮上したのがアコスタ辞任要求。
当時の司法取引についての説明を求められたアコスタは、
「MeTooムーブメントが起こる前はエプスティーンを有罪にするのは不可能で、
何とか彼に刑期を科すために行った取引」と誰もが首を傾げる釈明を展開。
その48時間後の金曜に 彼の功績を称えるトランプ大統領によって辞任が発表されているのだった。
アレックス・アコスタはトランプ政権発足からの2年半の間に辞任した39人目の高官で、今年に入ってからは6人目。
ちなみに2008年にアコスタが司法取引を交わした エプスティーン側の弁護団は
クリントン大統領の弾劾裁判を担当した大物弁護士、ケネス・スターに加えて、現司法長官のウィリアム・バーが所属した
大手法律事務所。エプスティーンの財力とコネクションを立証するような有力な弁護団であるものの、
彼自身はブルックリンのコニーアイランドのブルーカラーの家庭に育ち大学を中退した身。
にも関わらずエプスティーンをマンハッタンのプライベートスクール、ダルトンの数学教師に雇ったのが現司法長官、ウィリアムバーの父親であるドナルド・バー。
ダルトン・スクールで裕福な生徒、その親とのコネクションを築き、後に税金アドバイザーになったエプスティーンは、
そこから人脈を生かしたファイナンス・キャリアが大きく花開いたと言われるのだった。
しかし今週ウォールストリートで話題になっていたのが、彼とビジネスをした人間や企業が存在しないだけでなく、
誰1人として彼のクライアントにも会ったことが無いということ。すなわちエプスティーンがビリオネアになった軌跡を知る人間が全く居ないという不思議さ。
唯一分かっているのは、学歴や経験も無しにベア・スターンズに入社した後、僅か数カ月でスピード出世し、インサイダー取引が噂される中、
大金を受取って退社。その後自らのヘッジファンドを立ち上げたということだけ。その間の1980年代には20万人の投資家から500億円以上を騙し取った
タワー・ファイナンシャル・コープの詐欺事件に関わっているのだった。
エプスティーンはその出所が分からない大金を世界中にばら撒くことで知られ、それが彼の交友関係が急速に広がった要因の1つ。
その社交ネットワークにはグーグルの共同設立者、セルゲイ・ブリンや
ウッディ・アレン監督、俳優のアレック・ボールドウィン、シンガーのコートニー・ラブ、セレブ・キャスターのケイティ・コリック等が含まれ、
2002年にメディアのインタビューに応えた彼は「ネットワークを広げるのは自分の仕事のうち」と語っていたのだった。
エプスティーン逮捕を受けて、今週彼との交友関係を否定する声明を出したのが
トランプ大統領とビル・クリントン元大統領。トランプ氏は「エプスティーンとは15年間会話をしていない」と語り、
エプスティーンの少女性的虐待行為を知ってからは、トランプ氏が経営するパームビーチのマーラゴ・クラブから彼を追い出したとコメント。しかし
トランプ氏本人が エプスティーンとは1980年代からの親しい友人で、「自分もエプスティーンも美しい女性が好きだが、
その多くが若い女性」と語ったコメントは
今週多くのメディアが取沙汰したもの。また性的虐待を受けた少女の一部はマーラゴ・クラブでリクルートされたことも明らかになっているのだった。
一方のクリントン氏がエプスティーンに出会ったのは大統領の任期を終えた2年後の2002年と言われ、以来
クリントン氏は何度もエプスティーンのプライベート・ジェットで
アフリカ、ヨーロッパ、アジア諸国訪問をしており、その大半はクリントン財団の活動のため。そしてそのジェットに時折乗り合わせていたと言われるのがクリントン財団に協力していた
ケヴィン・スぺーシー、クリス・タッカーといったセレブリティ。
しかしながらエプスティーンのプライベート・ジェットは親しい友人の間では”ロリータ・エクスプレス”と呼ばれ、実際にそのジェットが
ニューヨーク、パームビーチ、カリブ海のプライベート・アイランドに少女たちを送り込む
セックス・トラフィッキングの手段となっていたのだった。
クリントン氏もトランプ氏同様、「ジェフリー・エプスティーンとは10年以上 話もしていない」とコメントしたものの、
エプスティーンの元ガールフレンド、ジスレイン・マックスウェルは2010年に行われたチェルシー・クリントンの結婚式に400人のゲストに交じって参列しており、
つい最近にもマンハッタンのアッパー・イーストサイドで 彼女とクリントン氏が食事をする様子が目撃されたばかり。
ジスレイン・マックスウェルの父親はイギリスのメディア界の重鎮、ロバート・マックスウェルで、彼女はオックスフォード大学を出た学歴を持ちながら
エプスティーンと共に少女性的虐待クラブを運営していたと言われる存在。
少女たちを娼婦に仕立て上げる教育係を務めていただけでなく、エプスティーンと共に
一部の少女を虐待した容疑さえ持たれているのだった。
トランプ氏が経営するマーラゴ・クラブは かつて少女性的虐待パーティーの場として使用されていたと言われ、
後にそのパーティーが舞台を移したのがカリブ海のセント・トーマス島にほど近い エプスティーン所有のプライベート・アイランドの別荘(写真上左)。
パーティーのゲストがそこでサーヴィングされるフードやドリンクに料金を払わないのと同様に、エプスティーンがホストするパーティーでは
その場で提供される少女達もタダで楽しめる もてなしの一部。
その恩恵を受けていたリッチ&フェイモスには一切の罪悪感も無かったようで、その実態を知る人々の間で ”少女性的虐待アイランド” と呼ばれていたのが
エプスティーンのプライベート・アイランド。
しかしながら「エプスティーンにはパワフルなコネクションが多過ぎて、誰にも取り締まりが出来ない」と言われ、
長く野放しになってきたのがエプスティーンとその交友関係による少女性的虐待なのだった。
エプスティーンがここへ来て再び立件されるきっかけになったのはマイアミ・ヘラルド紙による捜査記事がきっかけで、
それによってニューヨークの司法省とFBIが動き、7月6日にパリからプライベート・ジェットで戻ったエプスティーンが空港で逮捕。
その直後に彼の85億円のアッパー・イーストサイドの自宅にFBIの捜索が入り、そのコンピューターの中から少女達のポルノグラフィが多数押収されているのだった。
マイアミ・ヘラルド紙の記事と前後して、今年4月にアメリカで最も有名な弁護士であり O.J.シンプソン裁判の弁護団の1人でもあったアラン・ダーショウィッツを訴えたのが
2011年にイギリス・メディアに対して「エプスティーンにセックス・スレイブにされ、英国王室のアンドリュー王子、
アラン・ダーショウィッツとのセックスを強要された」と告白したヴァージニア・ロバーツ(写真上左、アンドリュー王子とジスレイン・マックスウェルの間に写っている女性、現在は結婚してギフレがラストネーム)。
当時の彼女は16歳、トランプ氏が経営するマーラゴでエプスティーンとジスレイン・マックスウェルにリクルートされており、
彼女は2015年にエプスティーンを訴えたものの、この時は裁判まで辿り着かず、その関係書類は非公開扱いになっていたのだった。
今年4月の訴訟は、2015年の訴訟で彼女を嘘つき扱いしたダーショウィッツを相手取ったもので、
それによって非公開扱いになったエプスティーンとジスレイン・マックスウェルにとって極めて不利な2000ページにも渡る書類の一部、もしくは全てが
公開されることが決定。マイアミ・ヘラルド紙の記事とヴァージニア・ロバーツの訴訟はコーディネートしたアクションと見られており、
それがニューヨーク司法省とFBIを同時に動かしているのだった。
この一連の報道でトランプ氏、クリントン氏と共に名前が浮上している英国王室のアンドリュー王子は、
ロイヤル・ファミリーと親しかったジスレイン・マックスウェルの紹介で1990年にジェフリー・エプスティーンに会って以来、
彼とは極めて親しい関係。2008年のエプスティーンの有罪判決後も彼と交友関係を続けているのだった。
2011年3月にヴァージニア・ロバーツが「アンドリュー王子との3度の関係を強要された」とメディアに告白した直後には、
アンドリュー王子の元妻、”ファーギー”こと サラー・ファーガソンが抱えていた
借金をエプスティーンが肩代わりして支払っていたことが明らかになっており、これを受けて同年6月にアンドリュー王子は英国貿易使節を退任。
以来、王室のイベントや外交に殆ど関わっていなかったのがアンドリュー王子。しかし何故か6月初頭に
トランプ大統領が訪英した際には 日本の安倍総理のゴルフ外交を真似た措置と称して トランプ氏とのゴルフに興じた様子が伝えられているのだった。
写真上右にも見られる通り、アンドリュー王子はかつてはマーラゴを頻繁に訪れたゲストで
2000年に行われたこのスナップのパーティーにはエプスティーンとジスレイン・マックスウェルも同席していたのは ページの一番上の2人とトランプ夫妻のスナップが示す通り。
そのため今となってはトランプ氏とアンドリュー王子のゴルフが外交のためではなく、
マイアミ・ヘラルド紙の報道で見込まれていたエプスティーン・スキャンダルへの対処を話し合うものだったのでは?という憶測が高まっているのが現状。
そもそも政財界の有力者がゴルフをするのは、盗聴のリスク無しに極秘の会話や取引を交わすためであることは歴史が証明する通りなのだった。
今後見込まれるのはジスレイン・マックスウェルが司法取引を交わして捜査協力をすることで、
そうなった場合に関心が集まるのが検察側、メディア、そして一般大衆の興味や関心を満足させるために
どのビッグネームがスケープゴートにされるか。
その一方で 保守派右翼作家であり、コメンテーターのアン・クルターは
エプスティーンの少女性的虐待のパーティーが政財界の大物へのブラックメール、すなわち弱みを握るための脅迫目的で行われていたもので、
彼の裏で糸を引く人々が本当の黒幕だとコメント。
その黒幕こそがエプスティーンがばら撒いた資金の出所との憶測も聞かれる中、
「エプスティーンの資産自体が少女性的虐待の弱みを握った恐喝行為によって世界中のVIPから支払われたもの」という指摘が聞かれるのも事実。
いずれにしても今週 エプスティーンが再び逮捕され、11年前の司法取引で現職労働長官が辞任したことを受けて、
自分の身に迫る脅威を感じているリッチ&フェイモスは決して少なくないと言われるのだった。
執筆者プロフィール 秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。 |
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