
私は2月半ばから2週間、日本に一時帰国をしていたけれど、今回の帰国に際しては これまでアメリカ人と同じ視点で日本を観るために、
あえて日本のメディアから距離を置いてきた私が、主にYouTubeを通じて学んだのが日本の現状について。
というのも昨今、アメリカ人から日本について質問を受けるケースが増えて来たためで、それは主に以下3点の理由から。
もちろん日本の金利上昇も、長年続いた円キャリートレードの終焉を意味するとあって欧米の投資家の注目を集めているけれど、
そんな中、誕生した高市政権は 私が知る限りアメリカ人の間ではさほど評価が高くなく、その一因と言えるのは台湾有事発言。
でも最大の要因は日本が経済を立て直さなければならない時に、経済の素人という印象を与える首相が就任したためで、
マーガレット・サッチャーを尊敬すると言われる高市氏は、サッチャー氏の”鉄の女”のニックネームを取って、欧米メディアでは”Japanese Iron Lady”と呼ばれる存在。
しかしその経済政策は、僅か3カ月で任期を終えた英国史上3番目の女性首相、リズ・トレスを彷彿させると言われ、
それが意味するのは「政策内容と収支が噛み合っていない」という厳しい指摘。
高市氏についてはアメリカ人から 「何故人気があるのか?」、「日本国民は30年間も失策を続けて来た政党の閣僚だった人物に何を期待しているのか?」、
「何故、何の成果もあげていない総理が解散総選挙をするのか?」といった質問を受けてきたけれど、それに明確な回答を持たなかった私は
今回の一時帰国で母国に関する見聞を深めようと考えたのだった。
でもこのコラムでは高市政権や日本経済についてではなく、あくまで私が今回の一時帰国を通じて受けた印象に絞って書こうと思うけれど、
今回の滞在中に痛烈に感じたのが日本の高齢化と貧困化。
とは言っても街中に高齢者で溢れていた訳でも、日本人がみすぼらしくなった訳でもなく、その印象を担っていたのは もっぱらTVやSNSのメディア・コンテンツ。
TVでは何度となく 生活に困窮する高齢者や物価高で家計を切り詰める人々の特集を目にしたし、日本滞在中のYouTubeはアルゴリズムがNYに居る時と異なるのか、
日本の貧困化、高齢化に関するコンテンツがどんどんオートプレイで入って来たのだった。
生活を切り詰める高齢者には、本当に困窮しているケースと、物価高や今後の医療費を考えて貯蓄不足を懸念して節約をしているケースがあるようだったけれど、
同時に趣味、生き甲斐、交友関係が無く孤独な様子、時間があっても意欲や体力が無くなった様子、働きたくても良い仕事が無くて嘆く様子を見せつけられて、
高齢化社会の深刻さを痛感したのが今回の一時帰国。
そんな様子を見ていると、日本に比べて貯蓄が遥かに少ない肥満大国アメリカの方が、楽観的で現実直視が苦手な分、気が若い人々が多いことを改めて実感したけれど、
日本では特定の高齢者を話題にする際に、「血圧の薬は飲んでいても健康で、頭もしっかりしている」というような健康状態と認知力ついての説明が加えられがちで、
高齢化社会に対応してか、エスカレーターのスピードも欧米よりスロー。
日本は長寿国であっても健康寿命はさほど長くないと言われるけれど、私が今回の一時帰国時に限らず、常に感じて来たのは
日本に居ると ”年齢相応”カルチャーのせいで、マニュアル通りに歳を取らされてしまうということ。
なので美容にお金と時間を掛けて見た目が若い人でも、決して中身が若くないケースが多いし、周囲もその人を「年齢よりも若く見える」だけの扱い。
若さを自負する側も、実際年齢を引き合いに出さなければアピール出来ないのが若さ。
でも本当の若さというのは顔にシミやシワが無くて、頭髪がフサフサしていることではなく、体力、知力、精神力を含む活力を宿して、生活意欲、幸福追求欲、知的探求欲などに取り組めるコンディション。
私の見解ではアメリカのように履歴書に生年月日を記入する必要が無い社会の方が、能力、体力、人間性が年齢でジャッジされず、自分のペースで歳が取れる一方で、
エイジズムが国民性に根付いているアジア諸国の方がアメリカより高齢化問題が深刻化するように思えるのだった。
そのアメリカは年功序列制度がない実力社会なので、自分より若い人間がボスになる状況を多くが40代で経験しており、景気や業績が悪ければ働き盛りで大企業に勤めていた場合でも 珍しくないのがレイオフ。
日本企業に比べて、指示と会議だけしていれば成り立つポジションが遥かに少ないせいか、高齢でもハイテク音痴が少なく、リタイア後に起業するケースも少なくないのだった。
高齢化は日本社会だけでなく 私自身も、私の友人達も年齢を重ねている訳だけれど、今や女友達の足元を見るとフラットシューズ・オンリー。
着る物のカラーに関しては、「年齢を重ねたので、キレイな色を着用しないと顔色が悪く見える」と考える派と、老けて見えないように気遣いながらも年齢に応じた落ち着いたカラーを選ぶ派に分かれていた印象。
少し前までは学生時代の友人に会うと、親の介護や病状がまず話題に上ったけれど、それが自分の衰えや共通の友人の病状の話題になってきたのは過去2年ほどで顕著になった傾向。
でも毎年クラス会に顔を出してくれるメンバーは、経済状態も健康状態も安定している印象なのだった。
そんな友人の1人が訴えていたのは「日本で尊厳死を認めるべき」という意見で、彼の母親は法的効力がある文書で延命措置を拒む意志を明らかにしていたそうだけれど、
「認知症で自分が誰かも分からず、身体の痛みと闘うだけの高齢者の施設費用を子供世代が負担するのは双方にとって残酷」というのが彼の意見。
私もそれには全く同感であるものの、尊厳死は弱者排除に悪用されない法整備が非常に難しいのもまた事実なのだった。
企業で良いポジションに居る男性陣によれば、今では接待費が出ないのでキャバクラには行かないそうで、今キャバクラで散財しているのはYouTuberが多いとのこと。
実際に今回の滞在中、夜の銀座で スカートが短かめの若いホステスさんと着物を着用した女性、ロングドレスの女性3人が、車に乗り込むお客を見送る様子を目撃したけれど、
昭和の高度成長時代やバブル期に比べると、送る側も送られる側も遥かに迫力や華やかさに欠ける印象を受けたのだった。
でも日本は街中がキレイだし、人々の身なりもきちんとしているし、日本人が経済大国としてのプライドを持ち続け、諸外国も
日本を貧しいと捉える風潮など無いのは言うまでもないこと。
とは言え普通の経済力のアメリカ人旅行者が「安い」、「美味しい」と喜ぶセブンイレブンの敷居が、日本人にとって高くなってきたのはショッキングなこと。
今回の一時帰国では、往復のフライトで隣の座席の2人(私はアップグレードしない限りはエコノミーの窓際に座る主義)がいずれもアメリカ人だったけれど、
往路で隣だった2人は30代と思しきレズビアン・カップル。機内では「孤独のグルメ」や「深夜食堂」、そしてバラエティ番組のグルメ特集を食い入るように見ていて、聞けば旅行のお目当ては
日本の大衆グルメ。浅草に行くのを楽しみにしていて、私が上の写真を機内から撮影した際に一緒に東京タワーを撮影して喜んでいたのだった。
復路で隣になった2人はコネチカット在住の大学時代のルームメイトという20代の女性。2週間に渡る日本旅行で東京、京都、長崎に出掛けたというけれど、
日本旅行に出掛けたのは そのうちの1人がアニメを通じて日本のカルチャーを好んでいるためで、お気に入りのアニメは「鬼滅の刃」。物凄い量のお土産を買い込こんでいたのだった。
そこで彼女らに「セブンイレブンに行ったか」を尋ねると、「行った! ローソンズにもファミリー・マートにも行った!」との返事。
買い物をしていて楽しかったはドンキホーテと東急ハンズだったそうで、日本で印象に残っている食べ物はデザート全般。春らしいピンク色のデザートを沢山食べて、どれも安くて美味しかったとのこと。
「日本人の英語はどうだった?」と尋ねると、「どんなに英語が話せない日本人でも、私達の日本語より遥かにベター」と言って、話せない人とでも翻訳アプリで乗り越えられたとのこと。
一番困ったのは、日本に着いた直後に電車をどう乗り継ぐのかが分からなかった時だというけれど、それにも直ぐに慣れたという。
その2人とは日本とアメリカの移民問題についても かなり深い話をしたけれど、彼女らは学校で避難訓練と言えば銃乱射事件に備えての訓練。ティーンエイジャーの頃から政治への関心が高く、投票権を持つことを待ちわびていた世代。 それだけに2人の会話からアメリカの若い世代の正義感を改めて感じて、心強く思ったのだった。
彼女らにしても、往路のレズビアン・カップルにしても 服装には全く気を遣っていなくて、見た目は日本のYouTuberが「貧乏」扱いしそうな外国人旅行者のルックス。そんな彼女らは旅行好きで、
世界中を旅して楽しんでおり、日本人とは お金の遣い方や人生のプライオリティが全く異なる様子を強く感じたのだった。
ちなみにバブル時代に海外旅行を楽しんだ私の友人達が異口同音に語るのは、「海外旅行は若いうちにしておくと、一生の思い出と経験になる」ということ。
例えインターネットを通じて諸外国の情報が入って来たとしても、実際に出掛けるのは別レベル。今の日本の若い世代の多くがそれを経験していないことを残念に思う一方で、
若い世代が国際経験を持てないことは、将来的に国益を損ねるとも思うのだった。
今回の日本帰国では、クレープが出来るのを待っている最中や、スーパーのレジ、山手線の中などで、ランダムに知らない日本人と短い会話をしたけれど、
今の日本人は以前よりも遥かに見ず知らずの人とフレンドリーに会話をするし、善良な国民のイメージは不動のもの。
また米国大使館絡みの書類受け取りの待ち時間には、同じく受け取り待ちをしていた若い移民男性とも話したけれど、
日本語がペラペラで、マスクをしていたので、日本人だと思って話していたら「日本人じゃないんです」とのこと。「何人?」と尋ねたことで、
彼がベトナム出身で、日本とアメリカの大学から奨学金のオファーを得て、条件が良い日本の大学を選択したこと、卒業後も日本で約10年働き続けたことを話してくれたのだった。
彼に「何人?」と尋ねた時に一瞬会話のテンポが乱れたので、私がNYに住んでいること、そしてNYは誰もが何処かから来ている街なので「Where are you from?」と訊ねるのは、
相手を知ろうとするフレンドリー・ジェスチャーであることを伝えると、「皆がいろんなところから来ている街か…、行ってみたいなぁ」というリアクション。
ベトナム人として日本で生きる彼が、いろいろな思いを抱いている様子を察してしまったのだった。
日本でも移民問題が深刻のようだけれど、それを移民が建国し、不法移民でさえ税金を払うアメリカの移民問題とゴッチャにするYouTubeコンテンツが多いのは驚くレベル。
YouTubeとXでは国外からのプロパガンダが増えているので、特に若く洗脳され易い世代にはSNSを鵜呑みにせずに、広範囲から情報を得て欲しいと願うばかり。
「真っ当な日本人に向けてのムーブメントを起こしたい」と計画する私の友人も 「YouTubeで発信すると、変な勢力と一緒にされて、信頼されない可能性がある」と言って、
新たなプラットフォームを模索中とのこと。
YouTubeはアメリカでもトランプ政権からの圧を受けて、政府に批判的なコンテンツの削除や、広告がつけられない非収益化が増え、
AIを駆使した監視体制も強まっているとあって、新たなプラットフォーム探しは欧米のインフルエンサーも行っていること。
そう思うと、日本のYouTuberがキャバクラで遊べる時代もそう長くは続かないかもしれないのだった。
Yoko Akiyama
![]() |
執筆者プロフィール 秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。 |


![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
当社に頂戴した商品のレビュー、コーナーへのご感想、Q&ADVへのご相談を含む 全てのEメールは、 匿名にて当社のコンテンツ(コラムや 当社が関わる雑誌記事等の出版物)として使用される場合がございます。 掲載をご希望でない場合は、メールにその旨ご記入をお願いいたします。 Q&ADVのご相談については掲載を前提に頂いたものと自動的に判断されます。 掲載されない形でのご相談はプライベート・セッションへのお申込みをお勧めいたします。 一度掲載されたコンテンツは、当社の編集作業を経た当社がコピーライトを所有するコンテンツと見なされますので、 その使用に関するクレームへの対応はご遠慮させて頂きます。
Copyright © Yoko Akiyama & Cube New York Inc. 2026.