
昨年末にアメリカの友人が話していたのが、多額の遺産を相続した途端に夫と離婚した女性の話。
その女性の両親は離婚し、彼女を引き取ってシングル・マザーとして育てた母親は既に他界。
決して裕福では無かった母の遺産は死後に生命保険が少額支払われた程度。
ところがある時、彼女が2回程度しか会ったことが無く、子供が居なかった伯母の数億円相当のキャッシュ、株式、債券、不動産を相続することになり、
驚いて夫に報告したところ、途端に夫は激変。金遣いが荒くなっただけでなく、
「遺産は婚姻期間中の収入なので、半分は自分のものになる」と勘違いして、「これだけ資産があればもっと若い妻が手に入る」と離婚を希望。
弁護士が入って、遺産は100%妻のものであることを告げられた時には後の祭り。
女性は裕福にはなったものの、それまでの平凡な幸せが崩れてしまい、「自分もお金で変ってしまうのでは?」と怖くなって、遺産には手を付けずに以前より質素に生活しているとのこと。
そして「この先、再婚するようなことがあっても、夫になる相手には決して遺産について話さない」と心に誓い、せっかく相続した遺産の恩恵を全く受けていない というのがそのストーリーなのだった。
その話を聞いて私が思い出したのが、私がCUBE New Yorkの前身になる会社を一緒に立ちあげたアメリカ人パートナーのストーリー。
とは言っても彼の場合は、あてにしていた遺産が入って来ないことで人格が激変したストーリーなのだった。
彼はユダヤ系で、父親はユダヤ系の大学教授、父の兄である伯父は70歳を過ぎても国連に務め、国連から徒歩数分のエリアに高額コンドミニアムを所有。
彼の家族はユダヤの中でも特に古風なオーソドックス・ジュ―イッシュで、伯父は「長男として、生涯自分の面倒を見るべき」という典型的なジュ―イッシュ・マザーからの圧力で独身を続けた身。
母親の死後に交際を始めた女性は、成人した3人の子供が居る未亡人で、私がパートナーとビジネスを始めた時には、伯父のコンドミニアムで一緒に暮らし始めたばかりなのだった。
伯父のガールフレンドは、気が強く、押しも強く、伯父は彼女の中に母親像を見ていたのかもしれないけれど、パートナーと彼の父は彼女のことが大嫌いで、それをはっきり伯父にも伝えていたとのこと。
幼い頃に母と死別していたパートナーは、父親、伯父と3人で食事やティータイムを共にする習慣を長く続けてきたけれど、
ガールフレンドと一緒に住み始めてから、伯父はそれに欠席することが増え、特に週末はNYのアップステート、キャッツキルにあるオーソドックス・ジュ―イッシュのコミュニティで
ガールフレンドと過ごす時間が増えたとのこと。そしてパートナー親子との食事にもガールフレンドに隠れて、コソコソ出掛けて来る有り様で、当時は
スマート・フォンなど無い時代だったので、パートナーは伯父宅に電話をする度に ガールフレンドに嫌味を言われいたという。
日頃から険悪だったパートナーとガールフレンドの仲が最悪になったのは伯父の誕生日祝いに、父親と一緒に本棚を贈り、その組み立てのためにパートナーが伯父宅を訪れた時のこと。
ガールフレンドに「この本棚、”私達”のテイストじゃないのよ」と言われたパートナーは カッとなって 「”私達”? 家族でもないくせに、そんな括りは存在していない」と
怒鳴り返してしまい、当初彼は そのエピソードを鬼の首を取ったような口調で語っていたのだった。
しかしこれは彼にとって”生涯の失言”。 激怒したガールフレンドは、伯父に自分が受けた屈辱を泣きながら訴え、それがきっかけで
伯父が70歳を過ぎての初婚に踏み切ったことをパートナーが知らされたのは、2人が婚姻手続を済ませてからのこと。
そもそも伯父とガールフレンドは、キャッツキルのジュ―イッシュ・コミュニティで過ごすうちに、
お互いを交際相手と紹介することに違和感と疲れを感じており、周囲からも結婚を薦められていたとのこと。
しかもガールフレンドの成人した3人の子供は娘2人、息子1人。以前から娘が欲しかった伯父は、優しくて、よく気が付く娘達を溺愛するようになり、
娘達にとっても母親が資産家の夫と一緒に暮らしてくれるのは願ったり叶ったり。
2人に別れて欲しかったのはパートナーと父親だけで、伯父は結婚後、益々2人と疎遠となり、「自分の新しい家族には会わせない」とはっきり宣言していたのだった。
これによってパニックに陥ったのがパートナー。というのも、彼はまさか持病がある伯父が、70歳を過ぎて結婚するとは夢にも思っておらず、
伯父の死後には高額コンドミニアムと数億円の資産を自分が相続すると思い込んでいたのだった。
しかし結婚してしまえば、伯父が遺書を書かない限りは彼の取り分はゼロ。
伯父に取り入ろうとしても、自分を毛嫌いする妻がガードを固めている状態。
その一部始終を私に説明したパートナーが、「自分に遺産が入らなかったら、もうお終いだ」と語った絶望の口調は約30年前の事とは言え、今も記憶に鮮明なのだった。
同時に私は、大した仕事もせず、いろいろなプロジェクトに首を突っ込む割には、自分で立ち上げたビジネスは鳴かず飛ばずだったパートナーが、常に自信に満ち溢れて、
人に指図やビジネス・アドバイスをする様子をずっと不思議に思ってきただけに、彼の自信の裏付けが 伯父から相続するつもりだった遺産から来ていたことを悟ったのだった。
ここで予想外の展開となったのは、彼の人生の失望が私に飛び火したことで、この時彼が言ったのが
「これで自分にはVirtual Shopping Network(CUBE New Yorkの前身になった会社)しか頼れる収入源が無くなった」ということ。
私はてっきり、それまでの私任せの体制を反省し、仕事に協力してくれるのかと思ったけれど、実際にはそこから始まったのが 金の亡者兼悪魔と化した彼のワンマン経営。
当時私はフリーランスでライター&リサーチャーをしながら、HTMLやグラフィック・ソフトの使い方を独学で学んで、ウェブサイトの立ち上げを進めていて、
その資金を立て替えていたのも私。でも私には会社の銀行口座へのアクセスが許されず、もう1人のパートナーと結託した彼は、
私が立て替えていたお金を”人質”に取って、どう考えても不公平なパートナー契約を強要。それを拒めば、これまでやって来たことも、払ったお金も無駄になることから、
不本意にもサインしてしまったせいで、その後の3年間は10円玉サイズの禿が2つ出来る地獄を味わうことになったのだった。
その間 「こんな儲からないビジネスに巻き込まれて迷惑だ。どうしてくれる?」と、なじられるのはほぼ日常。
ようやく弁護士を使って2人のパートナーと決別したのは1999年末のこと。今から振り返っても、かなりの額のお金をギブアップしたけれど、
何故そんな酷いパートナーと組んだかと言えば、当時は今とは時代が異なり、会社設立から2年が経過していなければクレジット・カードのプロセスを銀行に申請出来なかったため。
なのでパートナーが設立した鳴かず飛ばずの会社の一部門としてビジネスをスタートさせるのが最善と判断したのと、当初はパートナーとは仲が良く、まさか伯父の結婚がきっかけで、
彼が冷血な金の亡者になるとは想像もしていなかったのだった。
お金は人間を変えると言うけれど、あてにしていたお金が入らないだけで人間が激変した様子は、私にとって忘れられない衝撃となったのだった。
こんな経験があるので、私は 仕事をしながら、夫に家事と育児を押し付けられて身動きが取れない女性の状況が少なからず理解出来るけれど、
後から振り返っても これは決して良い思い出として美化されることなどない”苦いだけの人生経験”。
でもその地獄から私と一緒に這い上がってくれたのがCUBE New Yorkという会社。
そのCUBEも2月28日で設立26周年。今年もこの日を前後して、ご愛顧に感謝するセールを行う予定です。
この場をお借りして、ショッピングのお客様、そして読者の皆様に心よりお礼申し上げます。
長年ありがとうございます。皆さまとご家族のお幸せ、ご健康、ご繁栄を常にお祈りしています。
Yoko Akiyama
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執筆者プロフィール 秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。 |


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