Oct. Week 1, 2023
Red Light & Green Card
私が嫌がるサプライズ・プロポーズをした彼、でも永住ビザは魅力…


いつも興味深くこのコーナーを読んで、勉強させて頂いています。
アメリカ在住です。約2年付き合っていたボーイフレンド(外国人)が 先日友人達の前でサプライズ・プロポーズをしてきました。 いきなり私の前で跪いて、小さなジュエリー・ボックスを開けて中のリングを見せて、何を言っていたかはよく聞き取れなかったのですが、 最後の「Will You Marry Me?」だけははっきり聞こえました。
実は私はサプライズが大嫌いです。私は日頃から「サプライズのバースデー・パーティーって最悪!あんなことされたら私、絶対喜べない!」って何度も言っていたのに、彼と交際して最初のバースデーは サプライズ・パーティーでした。普通なら主役であるはずの私がある程度の服装をするオケージョンをでっち上げて、サプライズ・パーティーの会場に連れて行く程度の 配慮はすべきだと思うのですが、彼はそういう気遣いが出来ない人で、サプライズ・パーティーの主役であるはずの私はろくにメークもしていないスウェットシャツとジーンズ姿で 周囲の方がずっとドレスアップして見えて、その時撮影したビデオを観ると 今でも恥ずかしくて顔から火が出る思いです。
それ以外にも、ディナーのテイクアウトを買ってきてもらう時に「何でも良いけれど、これはだけはやめてね」と言うと、何故かやめてと言った物を買ってきたり、 嫌がらせではなく、良かれと思って私が一番嫌うことをすることが何度もありました。

サプライズ・プロポーズも、以前NBAの試合を一緒に見に行った時に、アリーナでプロポーズしている男性がスクリーンに映し出されて、 「あんなことされたらYesって言うしかないじゃない!」と私は否定的な意見を言ったつもりだったのですが、彼は私がスポーツの試合中のプロポーズがダメだと 勘違いしたのかもしれません。
プロポーズの返事は、彼に恥をかかせると気の毒だったので 「Yes」とは言いましたが、私があまり喜んでいないのは周囲に分かったようで、 何となくシラケてしまったように思います。 私がサプライズを嫌うのは 友人達も知っていたので、特に女性陣はサプライズ・プロポーズを反対してくれていたようで、私のリアクションは「やっぱりね~」みたいな感じだったようです。
正直なところ、私は彼との結婚を今も迷っています。 彼とは いろいろなことで歯車が噛み合っていないのを感じていて、彼は私が嫌だと言ったことでも、 「実はこう思っているに違いない」的に勝手に思い込んで 突っ走ってしまったり、いくら言っても聞いていない、覚えていないこともあります。 だから彼とは交際は出来ても、結婚して子供を作って、家族として生きて行くのは無理という気持ちが強いのです。 もし私達が日本に住む 日本人カップルだったら、ここで「やっぱり貴方とは結婚できない」と言って別れていたかもしれません。

でも私はそろそろVISAの更新が難しくなる時期を迎えていて、彼と結婚すればグリーンカードが取得出来ます。 アメリカ生活が長くなってきたので、今更日本に帰国したところで、いろいろな意味で適応できなくなっていますし、今更日本の男性と結婚出来るとも思えません。 私は結婚して、子供を作りたいと考えていますし、グリーンカードさえあれば もっと給与や待遇が良い企業に転職も出来ます。 彼は比較的収入が安定した仕事をしていますし、きちんと大学も出ていて、交友関係もそこそこに広く、 あと生活もきちんとしていて、だらしない部分が無いのはとても助かっています。 私自身がかなり几帳面なので、部屋を散らかしたり、冷蔵庫のジュースをカートンから直接飲んでしまうような人は絶対ダメなのです。
それでも彼との噛み合わない部分にはイライラさせられて、過去に何度も別れようと思ったことがあるので、日本人の友達に相談したところ 「VISAのためには仕方ないかも」と言う人も居れば、「VISAのために一生の伴侶を決めるっていうのも...」と言う人も居て、 中には「嫌だと言った場所にサプライズのハネムーンになったりして」という冗談を言う人も居ます。 彼のズレたところと生涯付き合っていくのはかなり不安ですし、日本人の友達に「VISA取得のために結婚した」という目で見られることにも 抵抗があります。

今のところは婚約に「Yes」と返答しただけで、未だ日本の家族にさえ話していませんが、 秋山さんは彼との結婚をどう思われますか。 1人で考え過ぎたせいで 結論が出なくなってしまったので、何かアドバイスをして頂けると助かります。 勝手なお願いですがよろしくお願いします。

- E -


Give & Take の関係は決して悪くありません


結論からズバリ申し上げるならば、私がEさんの立場であれば、彼と結婚します。
Eさんがアメリカのどちらにお住まいかは分かりませんでしたが、NYではカップルがグリーンカード取得のために結婚に踏み切る例は全く珍しくありませんし、 それが悪い事でも、恥ずかしい事でもありません。 この状況では 彼のプロポーズを受けるメリットと、Eさんが危惧するデメリットのどちらが大きいかは天秤にかけるまでもありませんので、 これを受けない手はありません。
私は以前にもこのコーナーで何度か書きましたすが、自分がシングル・ライフを続けて来たとは言え、 結婚については肯定派です。 男性が優位の社会にあって、結婚ほど女性にとって便利で有益なシステムはありません。 その使い方を誤ると 惨めな家政婦になってしまうのもまた事実ですが、Eさんの場合、 ご自身でも書いて下さった通り、彼との結婚によってグリーンカード、より良い仕事への転職のチャンス、 結婚して家庭を築くという、Eさんの人生設計が全て実現に向けて動くのです。
Eさんご自身が グリーンカード取得の必要性を一番感じていらっしゃる筈なので、恐らく私にご相談下さったのも 何等かの後押しを望んでいらしたように思えますが、 Eさんが結婚に踏み切らない理由として書いていらした不安や不満は、夫婦間で頻繁に聞かれる愚痴と大差がありません。 私はむしろ、余計なことに考えを巡らせたり、起こらない可能性に期待をかけて、 目の前のチャンスを見送った結果、後悔したケースを沢山見て来たので、Eさんにはそれを避けて頂きたいと思っています。
将来的に彼との結婚を後悔することがあったとしても、この段階でグリーンカードを取得し、より好待遇の仕事に転職すれば、 それを後悔することはありません。 先ずは手に入れるべきものを手中に収めて、几帳面な性格が故の心配事については その後で考えるので十分です。 アメリカにお住まいのEさんなら ”Go&Getter”という言葉をご存知かと思いますが、アメリカ社会では目標が定まったら 躊躇せずに獲得に動く”Go&Getter”であるべきなのです。

私の移民の友人も アメリカ国籍を持つ夫と結婚することによって グリーンカードも仕事も、住む家も全てパッケージで手に入れました。 それから20年以上が経過した今も婚姻関係は良好に続いています。 彼女は常々「自分の方が結婚によって恩恵を受けているのが明らかなので、その分、夫に対して寛容になれる」と語っていました。 その友人は結婚前は 夫が亭主関白型であることを心配していました。事実、夫は彼女の妊娠中にコーヒーを飲むのを禁止するなど、ちょっと口煩いところがありました。 それでも2人の間では 夫が与えたものに対して、妻が愛情や優しさで返すというGive&Takeの関係が成り立っていたのです。
ですからEさんも、「彼との結婚で 自分はこれだけの恩恵を受けている」という意識を持てば、 これまでの関係ではイライラしてきたことに対して、むしろ以前よりも おおらかな気持ちで対応することが出来るようになるかもしれません。

プリナップ活用の勧め

Eさんは彼のことをアメリカ人ではなく、「外国人」と書いていらしたのですが、彼はアメリカ国籍でしょうか。それともグリーンカード・ホルダーなのでしょうか。 諸外国は他重国籍を認めているところが多いので、移民でもアメリカ国籍を取得しているケースは多いですし、 国籍の数はある意味で財産でもあります。 Eさんにとって 結婚によるグリーンカード取得は最優先事項となりますので、彼との結婚でグリーンカードを申請した場合、取得までにどの程度の年月が掛かるかを事前に調べておくことをお薦めします。 Eさんもご存じと思いますが、アメリカ国籍を持つ伴侶がスポンサーになるのと、グリーンカード・ホルダーがスポンサーになるのとでは、申請から取得までの期間が大幅に異なります。 いずれの場合でもEさんがグリーンカードを取得するまで婚姻関係を解消しないことは、プリナプチャル・アグリーメント(婚前協約書、以下プリナップ)にしっかり明記しておくことをお薦めします。
今のEさんのお考えだと、「そんなことをしたら、彼との結婚がグリーンカード目当てだと言っているようなもの」というような抵抗感を抱かれるかもしれませんが、 結婚というものは 人生の利害が絡む契約です。 愛情や信頼など、法律で認められない物で自分の権利や利益が守れると思ったら 大間違いです。
フランスのサルコジ元大統領も、モデルのカーラ・ブルーニと結婚した際に 「大統領任期中には離婚しない」というのがプリナップに盛り込まれた条件でしたので、 欧米では事前に婚姻期間についての協約を取り交わすのは さほど珍しいことではありません。 逆にプリナップでEさんのグリーンカード取得が保証されていれば、万一彼との関係がこじれた場合でも、 彼がグリーンカードを武器に強い立場を取ることは出来ませんので、結果的にそれが夫婦の対等を保証してくれます。

プリナップは、一般的には離婚後の財産分与を予め取り決める協約書ではありますが、今は亡きシンガー、プリンスが 「妻の体重が増えたら、離婚する」という条項を記載した通り、婚前の段階で様々な協約を交わすことが可能です。 Eさんが危惧していらっしゃる 「サプライズと称して抜き打ちをされては困る人生の大切な行事や決定事項」に関しても、 予めプリナップで釘を指しておくことが出来るのです。
かなり前にウォールストリートのトレーダーが「浮気をした場合は 離婚をする、しないに関わらず、罰金として10万ドルを支払う」というプリナップを交わして、本当に浮気がバレてしまい、 その後も婚姻関係は続けたものの、妻に10万ドルを支払ったというエピソードがありました。このように絶対に相手にして欲しくない事は プリナップでペナルティに至るまでを明記しておくと、修羅場と思しき状況が比較的事務的に片づいてしまうケースもあるようです。

プリナップに止まらず、夫婦として法律によって結ばれる関係になれば、相続を含む、交際相手には認められなかった様々な権利が認められることになります。 NYでは9/11のテロの直後、同棲していたカップルが結婚するケースが急増し、それを日本のメディアが「テロが起こってニューヨーカーが 人生で何が大切かを見つめ直した」と報じていたのを覚えていますが、 ニューヨーカーはそんなセンチメンタルな思考で動く生き物ではありません。 当時はシビル・ユニオンの法令化もされていなかったので、カップルが何年一緒に暮らそうと、家族でない限りは救急病棟での面会さえ許されず、 同棲相手が死去した場合は、何年も音信不通だった相手の家族がいきなり押しかけて来て、財産とアパートを奪って行くような事態が起こりました。 そのため一緒に暮らしているだけではお互いの権利や財産が守れないことを痛感したカップルが、法律のプロテクションを求めて婚姻関係を結んだのです。
このことからも分かる通り、結婚は移民、女性などの社会的弱者にとっては身を守る手段になる便利で有益な社会システムです。 ですからEさんはここで、「使える物は何でも使って幸せになる」と決めてしまうべきなのです。 そして こまこまと几帳面になるよりも、すがすがしいまでに図太く生きる姿勢に切り換えてしまえば、やがては彼がどんなサプライズを企画したところで 動じないメンタリティが備わって来るはずです。それこそが幸せを掴むメンタリティでもあるのです。
それをご理解いただいた上で、私はEさんへの「お幸せに!」というメッセージで このアドバイスを終えたいと思います。

Yoko Akiyama


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執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。
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