No New Revelations in Epstein Files...
「旅行者もターゲット」 英、独政府が警告、
トランプ政権下の移民法で逮捕、拘留された旅行者の思わぬ落とし穴

Published on 3/27/2025


3月4週目にイギリス政府が、旅行を含む米国への入国を希望する国民に対して行ったのが、「トランプ政権は引き続き移民取り締まりを強化し、それによって旅行者も影響を受ける」という警告。
そのトリガーになったのが、イギリスのヴィーガン漫画家、ベッキー・バーク(28歳)が2月26日にICE(連邦移民関税執行局)によって逮捕され、 その後約3週間身柄を拘束された後、3月18日にようやく帰国を許されたケース。 彼女が逮捕された理由は、米国内で数週間滞在していた家庭で、食事を作ることで宿泊を無料にして貰っていたためで、 米国国務省のガイダンスでは、観光ビザの入国者は米国滞在中の就労を禁じられ、例えその報酬が金銭でなくても、違反行為であると定められているため。
ベッキー・バークは、ウェールズのモンマスシャー出身で、数週間前から北米を旅しており、オレゴン州ポートランドのホスト・ファミリーの家に宿泊した後、 カナダのバンクーバーの別の家族の家での滞在に向おうとした際に、VISAが間違っていたためにカナダへの入国を拒まれ、 アメリカに再び戻ろうとした際に移民法違反で、ワシントン州タコマの拘留施設に連行されたとのこと。 このトラブルは彼女が、報酬を受け取らない バーター(物々交換、交換条件、金銭を介さずに商品やサービスを交換する取引)も移民法違反になるとは知らなかったために起こったトラブル。
しかし法律の専門家の間でも、”滞在先の家事” は労働に当たらないという解釈が一般的で、むしろ「無料で滞在させてもらった見返りに、家の手伝いをするのは常識」と考えられていたことから、 これまではこの類の滞在が違法とは見なされていなかったのが実際のところ。 しかしそれも、トランプ政権下の移民法では逮捕に値することが世に示されたのだった。




ここでもう1つ問題になってくるのが、旅行者の拘留が妥当であるか否か。 歴史的に旅行者ビザの条件違反による拘留は極めて異例なことで、外国人旅行者はビザが無効となった場合、自ら出国手配をするのが一般的。 外国人が帰国手配をできない場合に、税関国境警備局が外国人をICEの強制送還オペレーションに引き渡すのが一般的プロセス。 また 「ビザの技術的条件に違反していた場合でも、犯罪歴がなく、国家安全保障/公共の安全を脅かすリスクは無いと判断された移民は、拘留の優先対象にはならない」のが一般認識。 しかしトランプ政権下ではICEの取り締まり権限が拡大された結果、 「強制送還対象となる外国人について、拘留決定の権限を持つのはICEで、拘留が決まった場合、外国人には保釈金や保釈保証金を支払って釈放されるか、拘留されるかの選択権が与えられるとのこと。 もし保釈金が払えず、拘留を選択した場合は、出国手続きまでにある程度の時間が掛かる可能性がある」と説明されているのだった。
しかしベッキー・バークの場合、保釈のチョイスが与えられたかが定かではなく、 出国手続きまでの拘留期間は何と22日。そのため彼女の父親は「娘はトランプ政権の広範囲の移民取り締まりに巻き込まれた」と主張しているのだった。
この事態を受けて、英国外務省がウェブサイトに掲載したのが、米国への渡航注意を促す記事。 「米国当局は入国規則を厳格に設定して、施行しており、旅行者もその影響を受けています。入国、ビザ、その他の入国条件をすべて遵守する必要があり、違反した場合は、逮捕または拘留される可能性があります」 と警告。 これまで英国外務省のウェブサイトに、米国での英国人旅行者身柄拘束や、逮捕について記載されたことが無かっただけに、これはかなり異例な警告と言えるのだった。

一方、ドイツ政府も米国への渡航勧告を更新。90日以内の旅行に対するビザ免除プログラムや、滞在・就労ビザやが 入国を保証するものではないことを警告。 ドイツの場合も警告のきっかけになったのは、ドイツ人タトゥー・アーティスト、ジェシカ・ブロシェ(26歳)がICEによって逮捕され、1カ月以上に渡って拘留され続けているため。
ジェシカ・ブロシェが国境警備隊に逮捕されたのは1月25日、メキシコのティファナからアメリカに入国しようとした際。 彼女はESTAビザ免除プログラムを利用しており、アメリカ人の友人ニキータ・ロフィングとメキシコを旅行した後、一緒にアメリカに向かうところであったけれど、 問題となったのが彼女が、商売道具であるタトゥー器具を所持していたこと。 入国管理局はジェシカ・ブロシェが、以前にもESTAプログラムで入国し、米国で働いていたと告発(真偽は不明)。 同行していたアメリカ人のニキータは、ジェシカをメキシコに送り返すことは出来ないかと当局に尋ねたところ、ICE職員は、 彼女がメキシコでの居住証明を提示できないとしてそれを却下。しかしジェシカは「3〜5日以内にドイツに強制送還されるだろう」と職員が言っていたことを明かしているのだった。





ジェシカ・ブロシェは、サンディエゴ国境の留置所の独房で8日間監禁されるという、多くの人々がまともな精神が保てない状況で収容された後、 ICEに引き渡され、3月4週目の段階で、未だにオタイ・メサ拘置所に収容されており、メディアを通じて必死の訴えをしている最中。
彼女やベッキー・バークのことは、移民の取り締まりが強化されたアメリカを世界にアピールするための「見せしめ」と捉える声も聞かれる一方で、 ICEや国境警備隊には移民逮捕の厳しい数的ノルマが課せられていることから、それを満たすための逮捕が行われているとの声も聞かれるのも現在。 その証拠に今では、グリーンカードや市民権を持って居たとしても逮捕や拘留の対象となっており、 そうした人々は後に釈放されてはいるものの、逮捕者の記録としてカウントされているのだった。

現時点で最もメディアの注目を集めた逮捕者は、かつて人気を博した青春コミック映画「アメリカン・パイ」にも出演していた カナダ人女優のジャスミン・ムーニー。 現在35歳の彼女は、昨年11月にロサンジェルスを旅行中に就労VISAが切れており、3月初旬に 新たな就労VISA申請手続きを依頼しているサンディエゴの移民弁護士のところに出向くため、メキシコから入国しようとしてICEに逮捕され、 その後12日間に渡って拘留されているのだった。
拘留中に地元メディアのインタビューに応じた彼女は、「もう11日が経ちましたが、何が起こっているのか全く分かりません。何も教えてくれませんし、体重もかなり減りましたし、身体的に弱っています」と 涙ながらに訴えたことから、カナダの官僚レベルが動いたと言われ、無事釈放されはいるけれど、 拘留中に何度も「カナダに帰国する航空運賃を自分で支払う」と訴えては、無視され続けたとのこと。 以前は旅費が負担できる移民はどんどん送り返していたけれど、トランプ政権下では、逮捕・拘留がお金で解決できる訳ではない様子を垣間見せてるのだった。
ジャスミン・ムーニーはインタビューで、「こんな酷い状況は見たことがありません。 私たちは誘拐され、ある種の 狂気の社会的、心理的実験を受けているように感じます。 私は同じように拘留されている女性たちの声になりたいと考えています。今起こっていることは、非常に不当です」と抗議しながら、 同様に身柄を拘束されている女性達を気遣っていたのだった。




一部では、移民局に身柄を拘束されたのがセレブリティや資産家、もしくはその家族である場合、「外交上のバーゲニング・チップ(釈放と引き換えに何等かの条件を飲ませる)に利用される」という指摘もあり、 その場合、社会的知名度や高額資産があったとしても優遇は期待できないということ。さらには無名の一般人でも 数が纏まれば、その価値がアップすることから、何等かのツアーで米国を訪ねる際には、旅行会社がトランプ政権下の移民法に きちんと対応する知識と準備があるかを確認する必要があるとも言われているのだった。
そのトランプ政権下の移民法には、弁護士でさえ判断がつかないグレー・エリアも多く、 例えばフォロワーが多いインフルエンサーが米国を旅行中にSNSにポストをして、収益を得る場合、それが米国内の就労に当たるかは、 著名インフルエンサーが実際に逮捕されない限りは分からないこと。判例が出来るまでは、少なくとも逮捕、拘留の判断を下すのはICEであり、 彼等はノルマをこなすために逮捕者数を増やしたがっているのだった。
ICE側は、「米国移民法に違反したすべての外国人は逮捕、拘束の対象となり、最終命令により退去命令が出された場合は、国籍にかかわらず米国から退去させられる可能性がある」 と説明しており、「国籍にかかわらず」という部分が意味するのは、例えグリーンカード(永住VISA)や市民権を持っていても、 入国を拒むケースがあるという意味。 実際に アメリカ国籍やグリーンカードを持っている人物が 入国審査で、 スマートフォンのロック解除を求められるケースが報告されており、プライベートなメッセージのやり取り等が、ICEによって反社会的と判断された場合は 身柄拘束、入国拒否の対象にっているのだった。
特に注意が促されるのは、イスラム教圏や中米に旅行して帰国する場合や、身体にタトゥーがある場合。 また、上記の報道例が全て女性であることからも分かる通り、移民局は 体力的負担が少なく、扱い易い女性の逮捕者を増やしたがるとの指摘もあり、その意味で、アジア人女性の1人旅は数年前から出稼ぎ娼婦としてマークされているので 取り調べ対象になるリスクが高いと言われるのだった。
これまでアメリカに最も多くの旅行者を送り込んでいたのはカナダであったけれど、 そのカナダ国民はトランプ氏の「カナダはアメリカの51番目の州になれ」発言と、関税引き上げに抗議して、アメリカ旅行をボイコット。 前述のジャスミン・ムーニーのICEによる逮捕劇はそれに拍車をかけると見られており、 カナダに次いで多くの旅行者を送り込んでいたイギリスも、ベッキー・バークの身柄拘束によって、少なからずアメリカ旅行を考え直す人々が増えると見込まれるのだった。
そのため2025年のアメリカはインバウンドの観光収入の激減が見込まれており、 それに加えて激減するのが、これまで不法移民が支払って来た税金。 アメリカでは例え不法滞在していても、将来のグリーンカード取得に備えて税金を支払っている移民は非常に多く、 不法移民からの税収は2022年の段階で967億ドル。 したがってトランプ政権下の厳しい移民法が、保守右派が想像するほどアメリカにメリットをもたらすかは微妙なところなのだった。


Shopping
home
jewelry beauty ヘルス Fショップ 購入代行


Q&Adv, Yoko Akiyama, 秋山曜子, キャッチ・オブ・ザ・ウィーク, ニューヨーク, NY時事トレンド情報, Yoko Akiyama, 秋山曜子, 何故アメリカはドレスアップしなくなったのか

★ 書籍出版のお知らせ ★



当社に頂戴した商品のレビュー、コーナーへのご感想、Q&ADVへのご相談を含む 全てのEメールは、 匿名にて当社のコンテンツ(コラムや 当社が関わる雑誌記事等の出版物)として使用される場合がございます。 掲載をご希望でない場合は、メールにその旨ご記入をお願いいたします。 Q&ADVのご相談については掲載を前提に頂いたものと自動的に判断されます。 掲載されない形でのご相談はプライベート・セッションへのお申込みをお勧めいたします。 一度掲載されたコンテンツは、当社の編集作業を経た当社がコピーライトを所有するコンテンツと見なされますので、 その使用に関するクレームへの対応はご遠慮させて頂きます。
Copyright © Yoko Akiyama & Cube New York Inc. 2023.

PAGE TOP