一般女子大生が、全米規模のサイバー虐めの標的に…
その経緯と常軌を逸したネット社会のリアクション
Published on 4/17/2025

2月最終週のアメリカで、突如SNS上でトレンディングになったのが、ミシシッピ大学の1年生、18歳のメアリー・ケイト・コーネット。
彼女はインフルエンサーでもモデルでもなければ、リアリティTVに出演した訳でもなく、
自身をSNS上でプロモートする意図など全く無かった一般人。
にも関わらず彼女がSNSで全米のトレンディングになったのは、「交際中のボーイフレンドの父親と肉体関係がある」という事実無根のデマがSNSを通じて拡散されたため。
この手の噂は、通常ならキャンパス内など彼女が属するコミュニティで囁かれ、やがて忘れ去られる程度であるべきもの。
それが、全米でトレンディングになり、メディアのパーソナリティが取り上げるゴシップになり、
個人情報がネット上で不当に公開された結果、メアリー・ケイトのもとには毎日のように罵倒と、自殺を促すメッセージが寄せられ、
大学側からは「身の安全が保障出来ないので、登校しないように」と通達される有り様。
メアリー・ケイト自身、「何が起こったのかが全く分からないまま 事態がどんどんエスカレートして、収拾がつかなくなった」と、その怒り、ショック、そして精神的打ちのめされた悪夢体験を語っているけれど、
一般人が事実無根のデマで、ネット社会からの怒りを買い、不当な制裁を受けるというのは、これはまさに歪んだ現代社会を象徴する
出来事といえるのだった。

噂が最初に投稿されたのは、各大学がそのコミュニティでのゴシップをポストするYikYakというSNS。ここはある種の無法地帯で、
勝手な言い分やゴシップが野放しにされる一方で、噂話は数日で消えるような掲示板。
そこに掲載されたメアリー・ケイトのデマが最初にメジャーなSNSで拡散されたのは、2025年2月25日で、
イーロン・マスクが「言論の自由」を謳う一方で、悪質な噂や批判に対応しないX上でのこと。
@MAGAgeddonというトランプ支持者と思しきユーザーネームのアカウントで公開されたのが、メアリー・ケイトのデマとその信憑性を裏付けるかのようなスナップチャットの会話音声。
そこでは女子大学生と思しき人物が休暇中にボーイフレンドの父親と会い、性的関係を持ったこと、そしてボーイフレンドと彼の母親もその性的関係を知っていると話しており、
それと共に いかにもそのスナップチャットの登場人物であるかのようにポストされたのが、メアリー・ケイトとボーイフレンドの写真、ボーイフレンドの父親のLinkedInプロフィールの写真。
このポストは、その後2週間ほどでX上だけで150万回閲覧されただけでなく、他のSNSでもシェア&拡散され、山火事より凄まじい勢いで広まりまったけれど、
その全米規模の拡散を促し、火に油を注ぐ役割を果たしたのが スポーツネットワーク、ESPNや
バースツール・スポーツののコメンテーターであるパット・マカフィー(写真上中央)。
日頃から女性蔑視発言で物議を醸しているマカフィーは、カレッジ・スポーツを専門にしているせいか、本来なら大学内のゴシップで終わるメアリー・ケイトに関するデマを、
名前こそは出さなかったものの、「ミシシッピ大学の女子学生がボーイフレンドの父親と関係したことは、今や誰もが知っている」と、カレッジ・フットボールの解説中に噂を鵜呑みにした、無責任発言を展開。
バースツールは、スポーツ・オタクをターゲットにした男尊女卑メディアとして知られるだけあって、他の複数のコメンテーター達も
メアリー・ケイトを「ふしだらなブロンド」と決めつけて、それぞれのポッドキャスターやSNSアカウントで拡散。
中には、メアリー・ケイトを売春婦扱いし、侮辱し、罵る、口汚い批判も含まれており、
事実上彼等が 全米のネット民にメアリー・ケイト叩きにGOサインを出した形になったのだった。

メアリー・ケイトとボーイフレンドは、それぞれのSNSアカウントで噂を否定したのはもちろん、一般人の事実無根のデマをまるでセレブリティ・ゴシップのように報じた ESPN、バースツールのコメンテーターを批判。
法的措置を取ることを発表したけれど、バースツールの関係者からは一切の釈明や謝罪も履く、
創設者デイブ・ポートノイに至っては、メアリー・ケイトについてコメンテーターがバースツールで言及したことさえ否定。
そしてコメンテーターが個人のSNSで行った投稿については、「企業として、そこまでは責任は負いかねる」とコメント。
さらにマカフィーやバースツール関連のコメンテーターたちの投稿が最も注目を集めたとは言え、他のSNSアカウントやラジオ番組、ポッドキャストもこの噂について議論していたことを指摘。
事実確認無しで噂を拡散するというメディアとして通常あり得ない行動に対して、完全な責任逃れの姿勢をとり、ESPNもノーコメントで一切取り合わない姿勢を貫いていたのだった。
しかしデマは、拡散のプロセスで 捏造されたスクリーン・ショットやAI生成のビデオや音声が加わり、真実味を帯びた結果、
メアリー・ケイトの個人情報がネット上でシェアされ、メアリー・ケイトの母の家には 偽の通報によりSWAT(特別機動捜査隊)が押し寄せる事態が発生。
メアリー・ケイトのスマートフォンには、何千という罵倒のテキスト・メッセージ、ボイス・メッセージ、殺害予告までが寄せられ、
その攻撃はエスカレートする一方。
すっかり精神を病んでしまった彼女は、食事も睡眠も取れない状態に追い込まれ、常に身の危険を感じる毎日を過ごしながらも、
弁護士を雇い、FBIに捜査を求め、自分の言い分を報じてくれるメディアに出演。
ようやく噂がデマだという認識を人々が抱き始めたのは4月に入ってからのことなのだった。

この段階に入って、バースツールの創設者デイブ・ポートノイが、ようやく状況を把握。「自分がメアリー・ケイトの親や家族だったら激怒する」とコメント。メアリー・ケイトの弁護士と
賠償についての話し合いに入ったことが伝えられているけれど、彼女を攻撃したコメンテーターらは一切謝罪をしておらず、彼等には名誉棄損、サイバー虐めで1人1人法的責任が問われる見込み。
また噂の出所、拡散に加わったインフルエンサーや個人についても、現在FBIが捜査を進めている真最中。
加えて、この騒動に乗じてメアリー・ケイトのミームコインも売り出されて一次的に高値を付けており、噂を拡散した一部のインフルエンサーは、メアリー・ケイトの生活やプライバシーを犠牲にして、
ミームコインで大儲けをしていたことさえ伝えられ、デマの拡散が決して興味本位だけではなかったことも明らかになっているのだった。
では何故この噂にそこまで拡散されるヴァリューがあったかと言えば、多くの人々が指摘するのが、メアリー・ケイトのモデルのようなルックスと、
デマの内容がセックス絡みで、しかもボーイフレンドの父親との不倫というスキャンダル性があったため。
加えてバースツールという、所謂 ”女叩きメディア”が、まるで今まで自分達を相手してこなかったブロンド美女への怒りをぶつけるかのように
メアリー・ケイトへの敵意を剥き出したこで、それに煽られた男尊女卑思想のリスナーやフォロワーが
自らの時間と労力を使って、証拠を捏造してまで盛り上げたのがこのデマの拡散。
メアリー・ケイトがアベレージ以下のルックスであった場合、バースツールやESPNがここまで反応することは無かったと思われるけれど、
2024年12月に一般人として不当にヴァイラルになった女性も、ルックスの良さがバッシングが広まる要因になったケース。
これは飛行機内で、「子供が泣くから、窓側の席を替わって欲しい」と母親に要求された女性(写真上右側)が
「ここは私がお金を払ってリザーブしたシート」とそれを拒んだ様子を勝手にビデオ撮影され、SNSで拡散された結果、
仕事を辞めざるを得ない大事態に発展したというもので、現在女性は航空会社とビデオ撮影をした人物に対して訴訟を起こしている真最中。
ネット社会では、ルックスの良さが必ずしもプラスにならない様子を感じさせていたのだった。
現在、メアリー・ケイトとその家族は、同じようなサイバー虐めに遭った人々が 法的措置を取るための基金を設立。クラウド・ファンディングの最大手、GoFundMeでの寄付を募っているところで、
「同じ思いをする人々を少しでも助けたい」と語っているのだった。


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