
Sep Week 2, 2025
Super Agers: An Evidence-Based Approach to Longevity
スーパー・エイジャー:目指すなら40代から!?、科学的根拠に基づく長寿へのアプローチ

私が今読んでいるのがアメリカの心臓専門医、科学者、分子医学教授でもあるエリック・トポル博士の著書、「Super Ager/スーパーエイジャ―:エビデンスに基づいた長寿へのアプローチ」。
私がこの類の本を読むのは、2019年に出版されたハーバード大学教授でロンジビティ専門家、デヴィッド・シンクレア博士の著書、
「Lifespan: Why We Age―and Why We Don't Have To(邦題/ライフスパン:老いなき世界)」以来。
昨今の私は、老化を病気と見なして、「老化は防げる」というシンクレア博士の説はかなり無理があるように思っていて、
そもそも人間は酸素が無ければ生きられないけれど、呼吸自体が酸化という名のエイジング。
人間は生まれた時から成長という名の老化を始めていると考える方が理にかなっているというのが現在の認識。
実際に「人間は必ずしも老いる必要はない」と謳っていたシンクレア博士自身も露呈しているのが外観のエイジング。
そのためここに紹介するトポル博士が推奨する「穏やかで、病気をしないエイジング」の方が、ストレスフリーで人生が楽しめるだけでなく、現実的な生き方だと思うのだった。

トポル博士がこの著書のタイトルにした「スーパーエイジャー」の大まかな定義は、80代になっても がん、心臓病、神経変性疾患(アルツハイマー病やパーキンソン病等)の兆候を一度も経験していない人々。
トポル博士は、1,400人のスーパーエイジャーを対象に7年間に及ぶ研究と調査を重ねており、当初は遺伝子が健康長寿に及ぼす影響を立証しようと、全員の遺伝子配列を解析したとのこと。
しかし彼らの健康寿命を裏付けるような遺伝的基盤は殆ど見つからず、「DNAは長寿と何等かの関連があるものの、その影響は過大評価されている」と考えを改めたという。
逆に被験者となったグループに共通していたのは、痩せ型で、日常の運動量が多く、教育水準(引いては経済レベル)が高かったこと。そして年齢を重ねてもボランティア活動、友人との交流や趣味等、
生活にメリハリをもたらすアクティビティを続けていたこと。
さらにトポル博士がスーパーエイジャーになるための要因として挙げているのは、健康的かつ理性的な食生活、十分な睡眠を取ること。
また博士はポッドキャストで「健康的な長寿には運も関係している」とも語っていて、私はこの部分に非常に納得してしまったのだった。

心臓専門医であるトポル博士は、長寿に有酸素運動は欠かせないという考え。しかし様々な研究データから、レジスタンス・トレーニングや筋力トレーニングも重要と考え、自身は双方のトレーニングを行っているとのこと。
食生活においては 加工食品、特にウルトラ・プロセスフード(超加工食品:インスタントフード、カップ麺、出来合いの冷凍食品、ファストフード等)を極力避け、赤味の肉も控えているという。
ちなみに博士の言うプロセス・フードにはアイスクリーム、チョコレート、ポテトチップスを含むスナック菓子からプロテイン・バー、プロテイン・シェイクなども含まれているのだった。
タンパク質については、60歳までは体重1キロ当たり0.8グラム、60歳を過ぎると1.2グラムが目安で、60歳を過ぎた体重60キロの人であれば、1日72グラムが理想の摂取量。
過剰摂取は動脈硬化を招き、内臓にも負担が掛かる一方で、理想摂取量に抑える方がエクササイズによって筋肉量が増えるようなのだった。
睡眠については、一般に言われる8時間よりも 「7時間睡眠の方がベター」と語るトポル博士は、アップル・ウォッチとOuraリングの双方を使って睡眠パターンや眠りの深さをモニターしており、
こうした医療関連のテクノロジーの大ファンとのこと。
さらに近年、健康の脅威として大きく問題視されるマイクロ・プラスティックの体内混入にも警鐘を鳴らしていたけれど、
正直なところ、トポル博士自身のルックス(写真上右側)は、年齢相応であっても、決して若いとは言えないもの。
前述のシンクレア博士(写真上左側)の方が年齢の割にルックスが若いと言えるけれど、これは恐らくトポル博士の方が自身の健康への取り組みが遅かったため。
事実、トポル博士は「以前は毎日のように食べていた物を、今ではすっかり食べなくなった」と、年齢を重ねてから食生活を改めた様子をインタビューで語っていたのだった。

トポル博士の研究を通じて明らかになった最大の発見は、80代、90代、100代の人々の健康維持に免疫システムが極めて重要な役割を果たしていること。
ふと考えれば健康的な食生活、十分な睡眠、エクササイズ等、博士が推奨する生活習慣は全て免疫力を高める効果をもたらすもの。
またトポル博士は、がん、神経変性疾患、心血管疾患などの加齢に伴う主要な疾患は、臨床的症状が現れるまでに体内で20年前後の潜伏期間があるので、
健康的かつ理性的な生活習慣によって、疾患を発症前に改善したり、発症を長期間遅らせることが十分に可能であるとも語っているのだった。
これは見方を変えれば、多くの成人が 加齢に伴う病気を患う60代の20年前、すなわち40代から生活を改めれば、スーパーエイジャーになる可能性が高いということだけれど、
その逆もまた然り。
しかしアメリカを含む先進諸国のエイジング・アプローチは、老化による問題が出たところでそれに医療で対処するのがまだまだ一般的。
例えば、女性が加齢による女性ホルモン低下で様々な問題が出て来ると、ホルモン・リプレースメント・セラピーや塗り薬、飲み薬で女性ホルモンを補うのが現代医学。
しかし、それによって乳がんを発症する女性も多い訳で、問題が出て来る度にモグラ叩きのように対応するより、
日々の努力と摂生を重んじるトポル博士の予防医学的アプローチの方が エフォートレス・ロンジビティと言えるように思うのだった。
ちなみに「スーパーエイジャー」という本は、既に日本で翻訳されている同名の書籍を含め、同じタイトルが複数存在しており、
著者名とサブタイトルで見分けなければ、真逆のセオリーを読むことになってしまうのだった。
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執筆者プロフィール 秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。 |


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