Nov. Week 1, 2021
”Halloween @ Oscar Wilde”
オスカー・ワイルドのハロウィーン・デコ
2021年のハロウィーンは 物流のサプライ・チェーンが崩れたことから コスチュームやデコレーションの需要に供給が追い付かなかったことが伝えられたけれど、
事実、オンラインでコスチュームが完売していたことから ハロウィーン直前に大行列が出来ていたのがNYのコスチューム・ショップ。
そしてハロウィーン当日にはウィンドウの中のマネキンの衣装やウィッグまで売れてしまって 空っぽ状態のストアもあり、今年ばかりは例年ハロウィーンの翌日から始まる
残ったコスチュームのディスカウント・セールは望めない状況なのだった。
今年のNYはハロウィーン・パレードこそ2年ぶりでカムバックしたものの、ハロウィン・グッズ不足の影響から 個人宅や商業施設のデコレーションは例年より控えめ。
そんな中、例年通りの徹底したハロウィーン・デコを展開していたのがフラット・アイアン地区にあるオスカー・ワイルド。
同店のネーミングは、もちろん1800年代後半を生きた劇作家、詩人、小説家であり、当時のインフルエンサー、セレブリティでもあったオスカー・ワイルドからのもの。
現在はアウトドア・ダイニング・スペースがストア・フロントを占領しているので目立たないものの、同店入口左側に設置された オスカー・ワイルドがベンチに座る姿の銅像は、
彼のファンがやって来ては隣に座って記念撮影をするスポットになっているのだった。
オスカー・ワイルドのインテリアは、彼が生きた1800年代のゴージャスなデコレーションを誇っていて、その時代にタイムトリップしたような雰囲気が味わえる空間。
それがハロウィーン・シーズンを迎えると、クラウン、スケルトン、蜘蛛の巣といったクラシックなハロウィーン・デコが、これでもかのボリュームであしらわれて、
ハロウィーン・ワンダーランドになるのは例年のこと。
ただでさえデコラティブな店内に更にデコレーションを施すので、その迫力はかなりのもので、
しかもその天井から吊り下がっているピエロが動いたり、回ったりという仕掛けもあるのだった。
でも嬉しいのはこれだけハロウィーン・デコがふんだんに施されていても、
インスタグラムに写真を乗せたがるだけの旅行者は少なく、客層はいつも通りのニューヨーカーで 落ち着いた雰囲気が保たれている点。
2006年に公開されたヒット映画「Paris je t'aime / パリ・ジュテーム」にも、パリ郊外のオスカー・ワイルドのお墓を訪ねるカップルのエピソードが登場していたけれど、
オスカー・ワイルドを好む若い世代は決して少なくないのが実情。
その華やかな人生や、独特のスタイル、ウィットに富んだ語録で知られるオスカー・ワイルドは 46歳で死去していて、
離婚をした40歳以降には未成年の少年との関係で有罪となり、2年間服役囚として強制労働をさせられるなど、コンピューターの生みの親であるアラン・チューリングの人生に
通じる部分もあった人物なのだった。
私はオスカー・ワイルドの作品はハリウッド映画でしか馴染みが無いという情けなさであるけれど、
彼の代表作として最も有名なのは、その唯一の長編小説である「The Picture of Dorian Gray / ドリアン・グレイの肖像」。
自分は歳を取らず、肖像画だけが年老いていくという当時にしては極めて異色のストーリーラインが有名な作品で、
1940年代にMGMが映画化した際には問題作と言われたもの。
LGBTQのインテリ層の間では彼のポエムを絶賛する人が多いとのことだけれど、私は日本語でもポエムが苦手なので、
オスカー・ワイルドのポエムの解説を読むと、どうしてこの数行からここまで深く読み取れるのだろう? と感心してしまうのだった。
そのオスカー・ワイルドは特にファッション、愛情、ロマンスについて時代を超えた価値観や感覚を持っていたと言われ、
当時の社交界の花形であり、ゴシップの対象になり続けた存在。
オスカー・ワイルドという人物を知れば知るほど、ここに紹介するバーのオスカー・ワイルドが、彼を敬愛するファンによって 彼のスピリッツを
如実に反映させて運営されていることが窺えるけれど、
そんな同店がホリデイ・シーズンを迎えると、毎年 店内一杯に見事なまでのクリスマス・デコレーションが施されるのだった。
オスカー・ワイルドの作品を読んだことが無い私も
彼の語録は頻繁に引用することがあって、彼はベンジャミン・フランクリン、マーク・トゥエインと並んで 私が最も語録を読むのを好む偉人。
後者2人に比べて、ちょっとひねくれたツイストが加わっているところを私は好んでいるのだった。
"We live in an age when unnecessary things are our only necessities. /
我々は不必要なものが不可欠な時代に生きている"
この語録はソーシャル・メディアに振り回される現代にも通じるもの。
"The truth is rarely pure and never simple./
真実とはごく稀にピュアで、決してシンプルなものではない"
私にとってこの語録は、ベンジャミン・フランクリンの "Half a truth is often a great lie / 半分本当は往々にして大きなウソ" という語録と共に
真実の本質を如実に示していると思えるもの。 それ以外に私の頭の中に頻繁に浮かぶ彼の語録は以下の通り。
"Experience is the hardest kind of teacher. It gives you the test first and the lesson afterward. /
経験とはもっとも厳しい教師だ。先ずテストをして、それから学ばせる"
"To Live is the rarest thing in the world. Most people exist, that is all. /
生きるというのはこの世では稀なこと。殆どの人はただ存在しているだけだ。"
"The only way to get rid of temptation is to yield to it. /
誘惑を除去する唯一の方法は手に入れること。"
そして恐らく私がオスカー・ワイルドの語録で一番彼らしいと感じると共に、自分は未だこの域に達することが出来ていないと思うのが
"Life is too important to be taken seriously. /
人生とは真面目に取り組むにはあまりに重要過ぎる。"
オスカー・ワイルドのバーは、オスカー・ワイルドの人生や語録に思いをはせて 自分の人生を考える良い機会を与えてくれる場所。
なので次は年末のクリスマス・デコレーションの時期に訪れたいと思っているのだった。
Oscar Wilde
45 W 27th St, New York, NY 10001
Phone: (212) 213-3066
執筆者プロフィール 秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。 |
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