アメリカで今週発表されたのが今年12月から18歳~25歳までの適格男性全員を徴兵対象者として自動的に登録する新たな方針。
これまで個人が自主的に行っていた兵役登録が、徴兵制局によって統合管理されることになるけれど、アメリカで前回徴兵登録が義務付けられたのは
1955年から約20年間続いたベトナム戦争の際。その間NY陸軍士官学校を卒業したトランプ氏は
合計5回の徴兵を、教育上、健康上の都合で逃れており、当時これは富裕層の子息の多くが行っていたこと。
そのため12月からの徴兵登録も、富裕層の子息であればトランプ政権に多額の寄付をすることで徴兵逃れが可能と見られ、
政権にとっはて寄付集めと、更なる戦争に備える兵士確保を兼ねた一石二鳥の新方針。
またトランプ政権では、新たに連邦職員、退職後の議員、その近親者を含む800万人以上が加入する65の保険会社に対し、
各人の健康データ(医療費請求、受診や処方箋薬のデータ、医療提供者情報など)を月次報告書にして 連邦人事管理局に提出するよう求めているとのこと。
通常、独裁政権がこれらの情報を入手することで起こるのが、「政府内の不穏因子やその家族が医療行為を受けられない」、「保険がカバーされない」など、政治的な武器として悪用されること。
そもそもトランプ政権下では大規模な移民逮捕や身元詐称の取り締まりを謳って、機密性の高い個人情報、税務情報、医療情報を政府機関で共有する試みが日常的に行われており、
政府による新たな医療情報入手には、医療と法律の専門家がこぞって警鐘を鳴らしているのだった。
そうかと思えば、クリスティ・ノームに代わって新たに国土安全保障省長官に就任した元格闘技家のマークウェイン・マリンは今週、
「NYやLA、シカゴといったサンクチュアリー・シティ(不法移民を通報しない街)の空港には国際線の乗り入れを禁止すべきだ」というとんでもない発言を展開。
どうしようもない前任者が辞めても、その後任が輪をかけてどうしようもない様子が嘆かれていたのだった。
4月7日午後8時までにイランが停戦に応じなければ、「イラン国民全員が死に至る」と常軌を逸した脅しを掛けたトランプ氏が、例によって2週間デッドラインを伸ばしたのは
世界中で報じられた通り。
これまでに何度もトランプ氏の戦争関連発言で 株式&原油相場が乱高下してきたけれど、今回の停戦は「インサーダーでなくても儲けられた」と言われるほど予測可能のシナリオ。
プレディクション・マーケット(予測市場)でも、トランプ氏の停戦ポストの直前に最低50のアカウントが開設され、それぞれが軒並み10万ドル単位の利益を上げた様子が報じられ、
インサイダーの間では 「続けば続くほど儲かる」と言われるのがイラン戦争。
戦争が長引くことで多額の利益を得るのはロシアのプーチン大統領も同様。ホルムズ海峡の閉鎖が続けば、原油を高値でヨーロッパ諸国に輸出出来るためで、開戦から約2週間でロシアは70億ドルの利益を得たことが報じらるのだった。
ロシアは、イランに対し米軍基地の位置情報提供を含む様々なサポートをしており、イランのドローン攻撃を受けた14の米軍中東基地のダメージは復興に多額の費用と数年を要すると言われるもの。
トランプ政権はメディアにそのサテライト映像の公開を禁じたほどなのだった。
今週の段階になると、イランにまだ余力が残っているだけでなく、逆にイランが以前より優位に立ったことは誰もが感じ始めているけれど、
イランの国力が西側から過小評価されていることは 以前から中東専門家が警告していたこと。人権抑圧を始めとする問題が山積するイランであるものの、
長年のアメリカによる経済制裁下でも 国民の多くが大学に進学。民間主導で自動車・家電産業が成り立つ優秀なエンジニアを多数擁しており、
湾岸諸国を苦しめているドローンも冷蔵庫を含む家電部品から安価に生産しているとのこと。
さらにイラン政府は開戦以降、LEGOに似せたキャラクターによる、プロパガンダ・アニメを配信。これがMAGA勢力までを苦笑させる仕上がりで、
SNS戦略でも、トランプ政権が製作した稚拙なビデオの遥か上を行っているのだった。
今週の停戦合意で、トランプ氏が空虚な勝利宣言をしたのも束の間、実は停戦は書面による合意でなく、詳細が曖昧であることが明らかになり、
イランの核兵器保有と弾道ミサイル計画は未解決のまま。ホルムズ海峡も引き続きイランが掌握し、停戦中は200万ドルの通行料をビットコインか中国ユアンで請求する意向が示された状況。
これを受けて世界各国の外交専門家が 「この戦争は イラク戦争、アフガニスタン戦争よりも、深刻なアメリカの軍事的敗北の様相を呈している」と指摘。
「アメリカが世界の覇権国としてホルムズ海峡開放と石油流通を維持するのはもはや不可能」であり、そのことが「アメリカのスーパーパワーの終焉を意味する」
と言われ始めたのが今週。
メディアには何度となく、「Iran Won」、「Did US Lose?」といったヘッドラインが見られ、トランプ政権関係者を苛立たせていたのだった。
そんな中、ドイツ銀行のアナリストは「現時点で戦争の長期的勝者は中国」と指摘。シンクタンクのブルゲルは、イランからの石油輸入依存度が高い中国は、暫し試練を体験すると言いながらも、
長期的には脱石油で各国がエネルギー構成の見直しを迫られる中、中国は既にクリーン・エネルギー分野の拡大とエネルギー自給強化を進め、特に低炭素電源の割合が大きく増加中。
そのため世界各国が中国製設備を用いてエネルギー多様化を図ると見ており、同じ中東石油に頼る大国でも インドより遥かに状況が前向きと言われるのが中国。
一方今週のNYタイムズが報じたのが、米軍がイラン攻撃を開始する2週間前にトランプ氏と一部の閣僚、イスラエルのネタニアフ首相一行がホワイトハウスの
危機管理室で極秘の会合を行っていた事実。その際トランプ氏は、そこが自分の絶対権力が保証されるホワイトハウスにも関わらず あえて主賓席に座らず、
テーブルを挟んでネタニアフ氏と向き合う形で座ったとのこと。国家首脳間でのその座席ポジションが意味するのは、アメリカがイスラエルの権限をアメリカ同等と認めたということ。
今ではメディアも「アメリカはイスラエルのパペット(操り人形)」と報じるようになっており、アメリカに対する絶大な影響力を世界に示したという点では、イスラエルも今回の戦争勝者の一角。
その会合でのネタニアフ氏の説得は「イランのミサイルシステムは2週間もあれば全滅するので、ホルムズ海峡を閉鎖する余力はない」というもので、
米国政府高官が「いかにもイスラエルらしい、深い考察が欠如した楽観的なもの」だったそう。
トランプ氏はそれに「Sounds good to me」とあっさり同意し、へグゼス防衛長官もすぐさまそれに同調。その場には、石油流通が止まる経済的リスクについて助言すべきベッセント財務長官や、
米国情報筋が握るイランの内情をアドバイスすべきギャバード情報長官、そしてヴァンス副大統領までもが不在で、米国側同席者一部は難色を示しながらもトランプ氏に異論を唱えないイエスマンぶりであったという。
さらにイースター(キリスト教の復活祭)明けの今週報じられたのが、今年1月にトランプ政権がヴァチカンに対し 「米軍が何をしようとローマ法王はただ支持を表明していれば良い」と脅しを掛けていたこと。
これは米軍によるヴェネズエラのマドゥーロ大統領の身柄拘束に法王が遺憾の意を表した直後のタイミングで、それを受けてレオ14世が米国建国250周年イベント出席をキャンセルしていたことも発覚しているのだった。
先週末から今週にかけてのアメリカでは、トランプ氏の弾劾、もしくは合衆国憲法修正第25条、セクション4「大統領の任務遂行が不可能になった場合の強制辞任」を求める声や、
意見記事等が急増。しかし憲法第25条発動には、副大統領が主導権を握る必要があり、ペンス副大統領であれば愛国心で踏み切れたことも、
トランプ氏を恐れるJ.D.ヴァンスには不可能という声が圧倒的。
そのヴァンスは戦争が始まってからトランプ氏と不仲で、ストレスから体重が落ちたと言われる状況。
しかしイランはトランプ氏の娘婿、ジャレッド・クシュナー、トランプ氏の不動産業者仲間のスティーブ・ウィトコフという2人の特使との交渉を拒み、
替わりに停戦協議の交渉人に指名したのがヴァンス副大統領。
イランが2人の特使を拒む理由は、共に外交の素人で2人を相手にした戦争前の交渉が支離滅裂であったこと、2人は政権に正式な役職が無いことに加えて、クシュナーがトランプ第一期政権終了後に
サウジアラビアから20億ドルの資金提供を受け、今回の戦争が始まってからは更に50億ドルがサウジから彼のファンドに支払われているため。
そのサウジは戦争継続圧力をトランプ政権に掛け続けている存在でもあるのだった。
たとえ停戦交渉が上手く行ったとしても、原油、天然ガスの精製施設の被害で生産量の激減は必至で、燃料不足、物価高が向う数年間続くであろうことは、
世界中の経済専門家が指摘することなのだった。
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執筆者プロフィール 秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。 |


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