今週のアメリカのメディアとSNSが最もフォーカスしていたのは先週金曜に新たに公開された300万のエプスティーン捜査ファイルに関するニュース。
そして週明け早々報じられたのが、これまで議会証言を拒んでいると報じられていたクリントン夫妻が証言に応じ、それも議会が提示した非公開証言ではなく、
ビデオ撮影、トランスクリプト(文字起こし)を含む公開証言を主張したこと。これはホワイトハウスや、保守右派メディアによる、俗に”Spin”と呼ばれる編集や切り取りによる証言内容の捻じ曲げを危惧してのことで、
夫妻は残りの300万のエプスティーン・ファイル全公開を要求。またSNSを通じて、これまで司法省に協力してきたにも関わらず、証言を拒否したように
報じられていたことに抗議。証言はヒラリー・クリントン元総務長官が2月26日、ビル・クリントン元大統領が2月27にそれぞれ行うことが決定しているのだった。
更に今週物議をかもしていたのが、トランプ氏が自分の政権のIRS(国税局)に対して10億ドルの損害賠償を請求したニュース。
訴訟理由はトランプ氏が2016年、2017年に低所得者の平均より少ない750ドルの税金しか支払っていなかったことをIRSのコントラクターが漏洩したため。
自分の政権下の部署を訴えるというのは前代未聞なだけでなく、国民の税金から利益を得る行為。しかも10億ドルという金額はIRSの年間予算の3分の2に当たる金額。
ちなみにトランプ氏以外の歴代大統領は自主的に毎年確定申告を公開してきた歴史があり、トランプ氏が確定申告未公開で大統領に当選するまでは
法が定めるまでも無く、公開が常識としてまかり通っていたのだった。
トランプ氏はそれ以外にも先週日曜に行われたグラミー賞で、トランプ氏に対するジョークを語ったホストでコメディアンのトレヴァー・ノアに対しても、
名誉棄損で訴える脅しをSNSポストを行ったけれど、法律の専門家は「ノアのジョークは言論の自由の範囲内で留まっている」との見解を示しているのだった。
先週金曜に司法省によって公開されたエプスティーン・ファイルは300万という膨大な量であったことから、日を追うごとに新たな名前や新たな事実が浮上していたけれど、
以前より内容チェックのスピードがアップしているのはAIの影響と言われ、特にニューヨーク・タイムズ紙が独自の検索ツールを使用して調査した結果、
トランプ氏の名前、及び、”メラニア”、”マーラ・ラゴ”といったトランプ氏関連ワードが言及されたファイルは5300件以上、合計3万8000以上の参照箇所があったとのこと。
メディアが着眼したのはトランプ氏の元アドバイザーのスティーブ・バノン、現政権の商務省長官ハワード・ラトニック、トランプ氏がパウエル連銀議長の後釜として指名したケヴィン・ウォルシュ、
トランプ政権の裏の立役者で政府コントラクター情報企業、プランティールを創設したピーター・ティール等、政権関係者の名前が数多く登場したこと。
それ以外にもNFLニューヨーク・ジャイアンツのオーナー、スティーブン・ティッシュ、ニュイングランド・ペイトリオッツのオーナー、ロバート・クラフト。2028年LA五輪委員会プレジデントのケーシー・ワッサーマン、世界最大のオルタナティブ資産運用会社ブラックストーンのCEO、スティーブン・シュワルツマン、スロバキア首相の国家安全保障顧問を務めたミロスラフ・ライチャーク等、これまで出なかったVIPの名前が多数浮上。元英国閣僚で駐米英国大使を務めたピーター・マンデルソン卿については、2003年から2004年にかけてエプスタインから7万5000ドルを受け取った証明文書がファイルに含まれていたことから、2月2日に労働党を離党し、貴族院議員も辞任しているのだった。
アメリカのネット上でヴァイラルになったのは、2011年から2015年まで米国のメキシコ大使だったアール・アンソニー・ウェインが、現地の11歳の少女をレイプ&妊娠させたスキャンダル。エプスティーンが少女達をアレンジしたパーティーが行われたのは米国領事館が所有する住宅施設。被害者少女が出産した男児のDNAはウェインのものと完全に一致し、彼は逮捕され、第一期トランプ政権下の2017年に終身刑が確定。しかしトランプ政権の国務省がメキシコの判事に賄賂を贈り、ウェインに代わって元海兵隊員に裁判判決、刑期を受けさせ、ウェイン本人は逮捕を逃れ続けただけでなく、今はアメリカン・ユニヴァーシティの教授として米国外交政策の講義を行う身。ファイル公開直後にウェインはXアカウントを閉鎖したものの、大学側の対応や処分は未発表。前からエプスティーンとの交友が伝えられたスーパーモデル、ナオミ・キャンベルは彼を有名デザイナーのパーティーに招待する引き換えにロリータ・エクスプレスと呼ばれたエプスティーンのプライベート・ジェットを足替わりにし、同様にミック・ジャガーもエプスティーンを通じたラグジュアリー体験を楽しんでいたとのこと。またエプスティーン疑惑は
ノルウェイ王室にも飛び火、ポーランド政府もエプスティーン疑惑に関する捜査に乗り出したばかり。
さらにエプスティーンが ITビリオネア達とも深い関りがあった様子にも注目が集まっており、前述のピーター・ティール、イーロン・マスク、マーク・ザッカーバーグをエプスティーンに紹介したリード・ホフマンは
アメリカで”ペイパル・マフィア”と呼ばれるPayPal設立に関わった保守極右軍団の主要メンバー。
今週には「ITエグゼクティブがこぞってトランプ氏を支持し、巨額の献金を送る理由がこれで説明された」との声も聞かれたけれど、
現時点では逮捕や失脚に繋がるような決定的な内容ではないのも事実。しかし司法省は、被害者のプライバシーを守ることを謳って行っていた書類の塗りつぶしで、
ことごとく加害者の名前を消しており、ITエグゼクティブを含む世界の要人のうち誰が問題行為を働いたかは不明のまま。
エプスティーンと共にセックス・トラフィッキングの運営を支えた10人のVIPの存在も隠蔽されており、
ファイルは関連付けが難しいように、あえてオーガナイズされていない状態での公開。
本来なら、政府権力が及ばない独立機関であるはずの司法省をトランプ氏が牛耳っているだけに、
エプスティーン・ファイルに名前が出たITエグゼクティブ達は、
今週のイーロン・マスクやビル・ゲイツのように 「ファイル内容を否定するだけで難を逃れられる」と考えているようなのだった。
ファイル公開直後に司法省が削除したことで着眼されたのは、トランプ氏とエプスティーンが行った”カレンダー・ガール・イベント”。エプスティーンによって集められた少女達をトランプ氏がオークション形式にで参加者にあてがうイベントで、少女達の性器の”タイトネス”をジャッジするために採寸、及び指を入れる触診が行われていた様子が記載されていたのだった。
でも今回のファイルの中で最もショッキングと言われたのは、ジョージ・ソロスや元国務長官のヘンリー・キッシンジャーが乗船していたヨットで、
複数の黒人男性が白人女性を相手に性行為を行い、複数の白人女性と乳児が殺害され、背中の肉が削ぎ落され、乳児の性器が切り落とされ、
それを食するカニバリズムが行われていた様子。さらにそこでは、#MeTooムーブメントで名前が浮上したこともあるジョージ・W・ブッシュの父親、ジョージ・H・ブッシュ元大統領が、
黒人男性と関係していた目撃証言も含まれているのだった。
今週SNS上では、2009年にメキシコ人モデル、ガブリエラ・リコ・イメネスが高級ホテルの外で 「ここで人間が食べられている、酷い!」と大声で叫ぶビデオが公開されていたけれど、
当時は錯乱しているだけと思われた彼女が目撃したと言われるのがエプスティーンのパーティーで横行していたカニバリズム。このモデルは当然のことながら、その後は消息不明。
公開された被害者の日記によれば、妊娠した少女達は中絶を強いられる場合と、出産させられる場合があり、中絶と出産を担当していたのはイスラエルの医師。
出産した場合は赤ん坊を取り上げられ、少女達は「自分達はインキュベーター(ふ卵器)として雇われている」と言っていたようだけれど、
赤ん坊が出生届など出されないまま、カニバリズムに利用されていたのは容易に想像がつくところ。
別の被害者によれば、男児を使って女児を拷問の末に殺害させる、少年少女に闘技場のような殺し合いをさせる等の行為も行われており、
拷問の対象になるのはもっぱら逃亡を試みて失敗した少女達。このようにセックス・トラフィッキングという生易しい表現では済まされない悪事が行われていたのがエプスティーンとVIP達の世界で、
拷問には時折VIPも加担。その様子はビデオ撮影されており、ファイル上で名前が消去されたVIPが「I love the torture video(あの拷問ビデオ、気に入った)」とエプスティーンにEメールを送付していた様子も
公開されているのだった。
SNSではこれらを受けて、「”Qアノン”の陰謀説は大方は正しかったけれど、陰謀論者と信者が ”救世主と信じた人物” こそが黒幕だった事実は、未だ受け入れられない」という声が聞かれていたと同時に、
「尋常でない財産を手に入れると、性癖も、娯楽も尋常なものでは満足できなくなるようだ」と、ビリオネアを敵視する社会風潮に益々拍車が掛かっていたのが今週。
問題のトランプ氏については、前回ファイルが公開された際に ジェフリー・エプスティーンの弟、マーク・エプスティーンが「プーチンは、トランプがXXX(男性)に対してオーラルセックスをしているビデオを所持している」と発言していたけれど、ロシアのプーチン大統領も今回のファイル公開で1000回以上名前が浮上した人物。 これまではエプスティーンは共犯者、ギレーン・マックスウェルの父親で新聞発行人のロバート・マックスウェルがイスラエルの情報局モサドの諜報員だったことから、モサドとの深い関係が指摘されていたけれど、ロシア、及びKGBとの繋がりも明確になり、
国や政治派閥、宗教、業界を問わず、ありとあらゆる社会の上層部がエプスティーンを通じて繋がり、今はその疑惑逃れで団結する様子を実感させていたのだった。
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執筆者プロフィール 秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。 |


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