Aug 31 ~ Sep 6 2025

Epstein Victims Fight Back
エプスティーン被害者の逆襲が始まる!?



今週のアメリカは月曜が夏の終わりを意味するレイバー・デイのホリデイ。これはその名の通り「労働者の日」で、全米で労働組合や様々なオーガニゼーションが1000以上の抗議活動やイベントを行っており、 そのメイン・スローガンになっていたのが“Workers Over Billionaires/ビリオネアよりも労働者優先”。国の負債を3兆ドル以上増やしてまでビリオネアの減税を進める一方で、低所得者の補助や健康保険が削られるトランプ税制に加えて、多額の政治献金により政権運営を一時的に買い取り、USAIDを含む自分のビジネスに不利な政府機関を”コスト削減” と称して解体したイーロン・マスクの影響で、今やすっかり「社会の敵」のイメージが定着しつつあるのがビリオネア。
その一方で、今週米国メディアが注目したのが、ロシアのプーチン大統領、インドのモディ首相、そして北朝鮮の金正恩委員長らを招待してシー・ジンピン主席が開催した中国史上最大規模の軍事パレード。 これは中国が”抗日戦争”と呼ぶ第二次世界大戦終結80周年を記念して行われたもので、同時にアピールされたのが西側諸国への反発と、もはやアメリカが世界のスーパーパワーではないことを示唆する各国の融合。 しかしメディアはそれよりも、シー・ジンピン主席とプーチン氏がマイクがオンになっているのを知らず 「臓器移植によって、今では150歳まで生きられる」と語り合う、あまり考えたくない会話の内容に着眼していたのだった。



益々深まる政府によるエプスティーン隠蔽疑惑


レイバーデイが明けた火曜日に下院で行われたのがセックス・トラフィッカー、ジェフリー・エプスティーンの被害者6人に対する聞き取り調査。それに参加していた共和党女性議員が、あまりに生々しい証言の数々にパニック障害に陥り、涙をぬぐいながら退室した様子が伝えられたけれど、エプスティーン被害者が20年の月日を経て、初めて公の場での発言が認められたのが今週。
同じく火曜日には司法省が3万3000ページのエプスティーン捜査ファイルを公開。しかしその内容は 例によって97%が既に公開済みで、僅か3%の新情報はエプスティーンのプライベートジェットのフライト記録という期待外れのもの。 司法省による隠ぺい疑惑が深まる中、下院議会で起こったのが 捜査ファイル公開を司法省に強制する署名活動。 これに必要な218の署名が集まれば、司法省は全捜査ファイルの公開に応じなければならず、212人の民主党議員全員と4人の共和党議員が署名。あと2人共和党議員が署名すれば承認されるところまできたものの、 「これに署名した議員は反政府活動を行ったと見なす」と圧力を掛けたのがトランプ大統領。
水曜には米国議会前でエプスティーン被害者による大規模なプレス・カンファレンスと抗議活動が行われたけれど、ここでも空軍機による上空飛行で騒音妨害を図ったのがトランプ政権。 実際、トランプ氏は被害者の活動にかなりのご立腹で、「自分が過去8ヵ月でこれだけの功績を上げたのに、まだエプスティーンを話題にしているのか」、「エプスティーン問題は民主党のでっち上げだ。被害者は皆フェイクだ」と 怒りを露わにしていたのだった。
一方エプスティーン被害者、及びその家族は、トランプ氏に対して これまでになく不満とフラストレーションをつのらせており、その最大の理由は エプスティーン・マダムと呼ばれるセックス・トラフィッキングの共犯者、ギレーン・マックスウェルに対し、7月に司法省が2日間に渡る面談を行い、その直後にマックスウェルをマキシマム・セキュリティの刑務所から、 ”囚人キャンプ”と呼ばれる ヨガクラスがあるような軽犯罪者用の収容施設に移したこと。ちなみにセックストラフィッカーが軽犯罪者用収容所に移送されたのはマックスウェルが史上初めての例。 そしてマックスウェルは、司法省とのインタビューで 「セックストラフィッキングで少女達をあてがわれた著名人のリストは存在しない」と証言。 明らかに何等かの司法取引があったと思しき状況に、国民の疑念が益々深まっていたのだった。



被害者の爆弾発言


今週、議会とメディアで発言権を与えられたエプスティーン被害者達は、「何故加害者のギレーン・マックスウェルに証言を求めて、犠牲者には証言を求めないのか?」と司法省と捜査の在り方に疑問を呈し、 マックスウェルが自分の罪を軽くするためにウソを付く、信頼できない証人であると抗議。 そしてトランプ氏に対しては「マックスウェルに恩赦を与えないことを明言すべき」という意見。
今週のプレス・カンファレンスには、これまでエプスティーン被害者として名乗りを上げたことが無かった女性も登場。 それぞれが若かりし頃に世界のVIPにあてがわれたのが納得できる美人揃いであったけれど、ティーンエイジャーとして女優やモデルを目指すうちに、 キャリアをサポートしてくれるフィクサーとしてマックスウェルに紹介され、VIPのためのマッサージを教え込まれた過程を語る彼女らの悲痛な面持ちや声の震えは、 時間が経過したとは言え、心の傷が癒えない様子を痛感させていたのだった。
被害者達は、「著名人や有力者にあてがわれることで、自分の存在が如何に小さいかを思い知らされ、被害を訴えたところで誰も信じてくれないという気持にさせられた」と語っており、 エプスティーン自身も頻繁に有力者の名前を出しては、世界の上層部と太いパイプを持って居ることを強調。中でも頻繁に名前が出て来たのがトランプ氏であったとのこと。 実際に7月に公開されたエプスティーンのインタビュー・テープでも、彼が「Trump is my boy」と語る様子が捉えられていたのだった。
そして今のアメリカはトランプ独裁政権になりつつある状況。世論は「司法省が手を加える前のエプスティーン捜査ファイルを全て公開すべき」と主張しながらも、 その多くが「どんなに騒ごうと、ファイルは闇に葬られる」との疑念を持っているのがリアリティ。 そんな中、エプスティーン被害者の1人が今週語ったのが 「私達被害者は、エプスティーンによって何度も著名人達の相手をさせられてきました。私達こそが彼等の名前を熟知しています。 私達は、独自にセックス・トラフィッキングの恩恵を受けた人物のリストを作成しています」という爆弾発言。
エプスティーン被害者は、IDを明かしていない女性も含めて100人以上が名乗りを上げており、彼女らの証言によって作成されたリストが法的効力を持つかは定かではないものの、 社会的ダメージを与えるには十分と言えるもの。
しかし今週明確になったのは、被害者達が全容解明のために闘っているのは 他でもないアメリカ政府。 例えリストが完成しても、その公開のハードルは極めて高いと見込まれるのだった。

執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。
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