Dec. 5 〜 Dec. 11 2022

Reaction of Untrue Docuseries, Etc."
「ハリー&メーガン」、フィクショナル・ナルシスティック・ドキュシリーズ!?、ETC.


今週のアメリカでは、11月の中間選挙のやり直しとなったジョージア州上院選挙で民主党現職のラファエル・ワーノックが勝利し、その結果 民主党の上院での優位が確保されたニュース、 そしてカナビス・オイルの所持でロシアで逮捕され、過去10カ月に渡って拘留刑を受けて来たWNBAプレーヤー、ブリットニー・グライナーが 遂に釈放されたニュースが大きく報じられていたけれど、 この釈放は過去11年間アメリカの刑務所で服役したロシアの武器商人で、タリバンへの武器大量提供で知られたヴィクター・ボートとの交換で、政治的物議を醸すもの。
そんな中発表されたのがタイム誌が選ぶ2022年「パーソン・オブ・ジ・イヤー」。これはその年に最も話題を提供し、 その年を象徴する歴史的意味をもたらした人物、もしくは団体が選ばれるとあって、必ずしも好感を持たれる存在が選ばれるとは限らないのがそのコンセプト。 今年の候補には上のビジュアルの左上に見られる通り 中国のシー・ジン・ピン主席、イーロン・マスク、共和党のライジング・スターでフロリダ州知事のロン・ディサンティス、 イランでモラル・ポリスへの抗議活動をする人々、複数年連続で慈善団体に10億ドル単位の寄付を行うマッケンジー・スコット(ジェフ・べゾス元妻)らに加えて、 中絶の合憲を覆した連邦最高裁等が挙がっていたけれど、選出されたのは大方の予想通りウクライナのゼレンスキー大統領。 ヘッドラインの数ではイーロン・マスクが群を抜いて多かったけれど、2022年にアメリカ国民に最もエモーショナルな衝撃を与えたのは文句なしに連邦最高裁。 中絶合憲判決の覆しは、11月の中間選挙結果にも多大な影響を与えていたのだった。



酷評にさらされるドキュシリーズ、「ハリー&メーガン」


12月6日に行われたロバート・F・ケネディ・ヒューマン・ライツ・ガラで リップル・オブ・ホープ・アワードを受賞するためにNY入りしていたのがハリー王子&メーガン・マークル夫妻。 あいにくの雨の中、真っ白なルイ・ヴィトンのカスタムメイド・ドレスで登場したメーガンを 傘をさしながらエスコートしていたハリー王子の姿に対して聞かれていたのが 「メーガンの側近にしか見えない」との声。 そしてその2日後、12月8日にプレミアを迎えたのがネットフリックスの全6エピソードのドキュシリーズ、「ハリー&メーガン」。8日に公開されたのは最初の3エピソードで、 同シリーズは夫妻が メグジットで英国王室を離脱し アメリカに移住する段階から撮影がスタート。2人はメディアのデマや誹謗中傷対策として、 自分達の生活ぶりや活動をビデオに収めておくようにと友人に薦められていたとのこと。 ネットフリックスはこのドキュシリーズのために夫妻に1億ドルを支払い、公開前にはその話題性で新しいビューワーを大きく増やすことが見込まれていたけれど、 蓋を開けてみると 決してそうとは言えない展開。
そもそも先週トレーラーが公開された段階で明らかになっていたのが、ハリー&メーガンを追い掛けるパパラッツィであるはずの映像が、実は「ハリー・ポッター」ロンドン・プレミアの取材陣であったり、 2人のプライバシーを侵害しながら撮影されたはずの写真が、実はその場にいた僅か3人のフォトグラファーのうちの1人が 許可を得て撮影したものであった等の 複数の虚偽。 シリーズが公開されてからも、婚約発表時のBBCとのインタビュー(写真上右側)について メーガンが 「事前にリハーサルをして リアリティTVとして収録された」と語ったことに対してBBC関係者が猛反発をしており、 ドキュメンタリーと言うには あまりにワンサイドな脚色が問題視されていたのだった。

最初の3エピソードの内容は、ハリー&メーガンが共通の友人を介して出会う前に メーガンのインスタグラム・ポスト(左から2番目)を見たハリー王子がコンタクトをしていたこと を含む、 2人の馴れ初めやピュアな恋愛、メディアと大衆の関心を集める2人の人気ぶり、2人を追いかけ回すプレスに侵害されたプライバシー、 メディアを通じたメーガン潰し等が 「自意識過剰なカップルの視点から描かれた」と評されるもの。その中で顕著なのが、かつてチャールズ皇太子との離婚後にメディアで叩かれ、パパラッツィの執拗な追跡で命を落とした 故ダイアナ妃と メーガンのイメージをダブらせようとする画策が見え見えの演出。
しかし それをやり過ぎたせいで 「そんなハリー&メーガンは 実は王室の人種差別とも戦っていた」という展開に持っていこうとする意図とは裏腹に、 ビューワーがこのドキュシリーズのメッセージと解したのは 「プレスの恩恵を受けながらも、プライバシーを訴える理不尽な2人の言い分」。 それにはハリー&メーガンも気づいたようで、公開翌日には「このドキュメンタリーは決してプライバシーの問題を訴えるものではない」という声明を出しているのだった。
「ハリー&メーガン」はネットフリックスのビューワー・チャートでNo.1になっているけれど、 クリティックも含め、それを観た人々の大半のリアクションは極めて冷ややかなもの。その多くが2人を「苦労&世間知らずのナルシスト」と批判するもので、 唯一評判が良いのは2人のインテリアへのこだわりなのだった。



王室の内情暴露をしても下がるハリー&メーガンの人気


現在までに公開されている3エピソードの中で最も人々が眉を吊り上げたシーンは、メーガンが初めてエリザベス女王に対面するに当たって プロトコールのお辞儀を理解しているかをハリー王子に確認されたことを話していた際、メーガンがそのお辞儀を大袈裟かつ 蔑むようにデモンストレートした様子(写真上右)。 この時ばかりはハリー王子も少々居心地の悪そうな表情をしていたけれど、そのジェスチャーを見せたメーガンも それを何も言わずに容認していたハリー王子も 王室を小馬鹿にしている点で同罪という声が聞かれていたのだった。
残りの3エピソードは12月15日に公開されるけれど、チャールズ3世、ウィリアム王子はドキュメンタリーで描かれる王室の人種差別について、 無視を決め込むことにしたと伝えられるけれど、その段階で修羅場を迎えるとの予測さえ聞かれるのが英国王室。 本国イギリスの議会では 既にハリー&メーガンからロイヤル・タイトルを剥奪する法案が提出されたけれど、 そもそもハリー王子&メーガンはエリザベス女王の葬儀でもブーイングが聞かれていたほど既に不人気。 また国民の間ではネットフリックス・ボイコットの声も聞かれ始めているのだった。

しかしハリー&メーガンが悪者になったところで英国王室の人気が高まる訳ではないのもまた事実。 先週ボストンを訪問していたウィリアム王子とキャサリン妃にしても、関係者が手厚く迎える行先では歓迎されていたものの、 ボストン・セルティックスの試合観戦のように不特定多数の観客が集まるスタジアムでは 「USA」チャンティングの中、ブーイングが聞かれていた有り様。 ウィリアム王子&キャサリン妃は今年春に 現地の貧しさを顧みずに歴訪したバハマ諸国でも、地元民からのブーイングを浴びていたけれど、 21世紀を迎えた現時点で英国王室がコモンウェルズ諸国に対して抱く特権意識は、その歴史的背景を知れば知るほど 時代錯誤とモラルの欠落にしか見えないもの。
ウィリアム王子は昨年英国内のサッカースタジアムでもブーイングされ、チャールズ三世は今週英国内のタウンセンター訪問の際に 卵を投げつけられており、英国王室とハリー&メーガン夫妻は どちらかが上がれば反対側が下がるようなシーソーの関係ではなく、 共にポピュラリティが低下し続けている存在。
ハリー&メーガンについては、それまで彼らと親しくしてきたオプラ・ウィンフリー、オバマ元大統領夫妻らが、このドキュメンタリー公開前から2人と距離を置くモードになっている様子。 また結婚式に招待したのをきっかけに交友を深めようとしたジョージ&アマル・クルーニーにしても、メーガンがNYで行ったベイビー・シャワーにアマルが参加し、その際のメーガンのプライベート・ジェット代を負担したことが 報じられたものの、近年では全く2人と関わらないポジション。この意識はセレブリティや有識者の間に徐々に広まっていくと見られているのだった。
ドキュシリーズの公開が終われば、来年にはハリー王子の暴露本の出版が控えているけれど、 その内容や売上に関わらず 本人にも英国王室にもマイナスに働くことだけは確実視されているのだった。



その他、今週のキャッチアップ


★ 金融レイオフ&ボーナス・カット、2023年の景気予測
大手金融機関がこぞって2023年の景気動向に懸念を示す中、今週 全従業員の2%に当たる1600人のレイオフに踏み切ったのがモルガン・スタンレー。 こればバークレー、シティ・グループ、ゴールドマン・サックスに次ぐもので、現時点でバンク・オブ・アメリカはレイオフは行わないものの、新規採用見合わせを発表。 金融業界は前回のファイナンシャル・クライシスの前にもいち早くレイオフを敢行していたけれど、レイオフされない従業員も年末のボーナスは最高で45%ダウンの見込み。特にゴールドマン・サックスは約400人のパートナーに対するボーナスが最大で半分になることを明らかにしており、 マーケット・ブームで多額のボーナスが支払われた2021年とは大きく異なる状況。
J.P.モルガン・チェースは、2023年もインフレと金利上昇が継続し、パンデミック中の景気刺激策の給付金の影響で近年最高額に膨れ上がった貯蓄額を 国民が使い果たした段階で深刻なリセッションを迎えると予測。 とは言っても貯蓄があるのは比較的財力、もしくは計画性がある人々のみで、アメリカは8660億ドルという史上最高額のクレジット・カード負債を抱えて ホリデイ・ショッピング・シーズンに突入。今や金利引き上げのせいで 平均的なクレジット・カードの年利は19.2%。 その利率のカードで1000ドルの買い物をして 毎月ミニマム・ペイメントの支払いを続けた場合、返済には9年の月日と990ドルの利息が掛かる計算。 もちろん低所得者でも申し込めるカードになると現時点で年利が20%を超えるケースは全く珍しくないけれど、低所得者ほど利率の恐ろしさを顧みないのは何処の国でも共通の現象なのだった。

★ SBFの雇った弁護士と、SBFがスポンサーを断念したもの
破綻したクリプトカレンシー取引所FTXの元CEO サム・バンクマン・フリード(以下SBF)に対する捜査が進んでいると言われながら、本人は逮捕されることは無く、 NYタイムズのイベントにバハマからリモートで登場し、イメージ戦略やダメージ・コントロールを行う様子が反感を買う中、 今週NYのカフェに出没した様子がソーシャル・メディアで明かされて、猛反発を買っていたのがFTX破綻と深く関わる関連会社アラミダ・リサーチのCEO、キャロライン・エリソン。 そのSBFが弁護人として雇ったのが、ジェフリー・エプスティーンのマダムとしてセックス・トラフィッキングの有罪判決を受けたギレーン・マックスウェルの弁護士、マーク・コーヘン。 キャロリン・エリソンが雇ったのはワシントンDCの著名かつ有力な弁護士事務所で、その家族が政界と太いパイプを持つ2人だけに、捜査も裁判も世論の関心が薄れるほどの スローペースで行われることを匂わせていたのが今週。
さらに今週にはSBFがテイラー・スウィフトを”Tay Tay”と呼ぶほどの大ファンで、FTXのユーザー資金と思しき1億ドルを 彼女のツアーのスポンサーシップに投じようとしていたことも明らかになっていたのだった。そのテイラー・スウィフトのファンは、独占販売を行うチケットマスターのせいで ツアー・チケットが 入手出来なかったことを受けて、今週正式に起こしたのが集団訴訟。今回のテイラーのチケットの問題は グーグル、フェイスブック、マイクロソフト、アマゾン等のIT企業の市場独占よりも 遥かに強烈なインパクトで、ジェネレーションZにアンチモノポリーと分散型を支持する思想を植え付けたと指摘される一方で、 クリプト界でも大手取引所の信頼が薄れ、人々が分散型取引所の利用に大きく動き出しているのだった。

執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。
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