Jan.3 〜 Jan. 9, 2022
グーグル・サーチの2021年ラップアップ & 2022年のプレディクション
元旦に1日の新規感染者数が過去最高の8万5,476人を記録する2022年の幕開けとなったNY州。
今週は入院患者数も2020年3月以来のハイレベルに達しているけれど、実際にはその40%はCOVID-19以外の症状で運び込まれ、受け入れ時のルーティーン・テストで
COVID陽性が判明した人々。またウィルス感染で病院に運び込まれた37%の患者に症状が無いことが報告されており、
例え症状があっても65歳以上の既往症を持つ人々以外は自宅療養が呼び掛けられていたのが今週。
NYのオミクロン感染は1月半ばでピークに達すると言われ、2月以降に見込まれるのがハード・イミュニティ、すなわち集団免疫。
オミクロンはデルタや今年のインフルエンザよりも症状が軽いことから、医療関係者の間では「オミクロン感染によって集団免疫が実現するのが最も理想的」との声さえ聞かれるのだった。
Google検索2021ラップアップ
昨年最後のこのコラムで2021年に最も「Like」、最もリツイートを獲得したツイートをご紹介したけれど、
ツイッターよりも世相を如実に表すのがグーグル検索。
そんな2021年のグーグル検索のラップアップ・レポートによれば、
世界的に2021年に過去最高のサーチを記録したのが「How to maintain mental health? (どうしたらメンタルヘルスが保てる?)」。
同時にCOVID-19で家族や友人を失った人々による「How to heal? (どうしたら癒せる?)」も過去最高の検索数を記録。
精神面や経済面の苦境に瀕して「How to be resilient? (どうしたら苦境に耐えられる?)」と検索する人が多かった一方で、ワクチンが普及し始めてからは
「How to make a comeback? (どうすればカムバック出来る?)」と前向きなサーチが増えたのが2021年。
そして「They」が三人称として市民権を獲得した2021年には、ジェンダーを含む自分のアイデンティティを見つめ直す人々が多かったようで 「How to be yourself? (どうしたら自分自身になれる?)」も過去最高の検索数。
さらには人生の意義を見出したい人々による「What is my purpose? (自分の目的は何?)」もトレンディングだったサーチ。
グーグル検索には 人々が本当に思っていること、人には言えない心理が現れるだけに、
2021年が様々な意味で自分と向き合う、もしくは 向き合わざるを得ない1年であったことを感じさせているのだった。
「How to make…」で最もサーチされたのは「How to make NFT」。2021年にメガブレークを見せた
Non-Fungible Tokensの作り方はアプリを使えば意外に簡単。
アントレプレナーシップが高まったのか、「How to start a business」の検索が「How to get a job」を初めて超えたのも2021年。
2020年に比べて2021年に検索数が10倍以上になったのは、GameStop株の爆上げで注目されるようになった「Meme stock」 。
それを遥かに凌ぐ 前年比5000%以上の検索数アップを見せたのは「Pride events near me」、すなわちLGBTQ月間である6月に行われたプライド・イベントのサーチ。
そしてプレパンデミックの3倍のサーチを世界中で2021年に記録したのが 「Where can I travel」。パンデミックが続く中、「何処なら旅行に行けるのか」の検索で、
世界中の人々が如何に旅行に飢えていたかを感じさせるデータ。
ボランティアのサーチでトップになったのはやはりパンデミックを反映して「ワクチン・ボランティア」。また世界規模で「Covid vaccine near me」の検索が爆発的に多かったのが2021年。
2021年に最もトレンディングだった食事はマクドナルドとKポップのBTSのコラボで販売された「BTSミール」。
サイン・ランゲージ(手話)で世界規模で最もサーチされたのは「Love You」。両手でハートを作るポーズが時代遅れになったのが2021年なのだった。
アメリカでトレンディングだったサーチは?
新語の中で2021年に検索が劇的に増えたのは「Doomscrolling / ドゥームスクローリング」で、これはインターネットやSNS上でネガティブなニュースや、
陰謀説等を見続けること。保守右派のQアノンやワクチン陰謀説信者には特に顕著だったアクティビティ。
ありふれた言葉で過去最高の検索数を記録したのは「ソウルメイト」、「ボディ・ポジティビティ」、「アファーメーション」で、「ソウルメイト」はパンデミック中に孤独を感じる人々が多かった象徴。
「ボディ・ポジティビティ」は体型を馬鹿にする「ボディ シェイミング」が虐めの形態として批判された反動で、「ボディ・ポジティビティ」の意味合いには体型だけでなく肌の色、髪の毛、皮膚病や身体障害等、
外観に関する全てが含まれていたよう。
「アファーメーション」はポジティブな言葉を言い続けて、潜在意識のレベルから自分の人生を好転に導くことで、最も検索数が多かったのがはコロナに苦しむ先進国かと思いきや、
政情不安と経済問題で今週世界的に報道されていたカザフスタンであったとのこと。
またアジア人に対するヘイトクライムがアメリカで頻発した2021年3月に世界的に過去最高の検索数を記録したのが「What is a hate crime」。
アメリカのサーチにフォーカスすると、「How to ask」のサーチのトップになったのは「How to ask a raise」すなわち、給与アップをどう交渉するか。
2021年に再び旅行に出掛け始めたアメリカ人が行った旅行関連のサーチで最も多かったのは「レンタカーはどこで見つかる?」。それほどまでにレンタカー不足で、
見つかったとしても高額料金をチャージされたのが2021年。一方、過去5年間で最低の検索数をアメリカ国内で記録したのが「Long distance relationship」すなわち長距離恋愛。
2021年はアメリカで「宝くじに当たる確率」の検索が初めて「雷に打たれる確率」の検索数を超えた年。それもそのはずでアメリカのメガミリオン、パワーボールといった宝くじは
なかなかジャックポットが出ない代わりに、当たればハーフ・ビリオンの賞金も珍しくない最後のアメリカン・ドリーム。もちろん税金が差し引かれるので、実際の賞金額は半分程度。
2022年も年明け早々、ハーフ・ビリオンの賞金が掛かったパワーボールで2人の当選者が出たばかりなのだった。
さらにアメリカでは9月に「Job interview(就職面接)」の検索がプレパンデミック・レベルを超えたけれど、翌月
10月には「Why are people quitting their jobs? (何故人々が仕事を辞めているの)」がトレンディング。
人手不足が続いたアメリカでは
夏以降、ファストフード店を中心に面接を受けただけで50ドル〜100ドルを支給するところが多く、
「Job interview(就職面接)」の検索が本当に就職目的だったのか、面接ボーナスが目的だったのかが定かでないのが2021年の特殊な状況と言えるのだった。
2022年トレンド・プレディクション
そうして迎えた2022年の傾向を占うために「2022 Trend Prediction」をグーグル検索すると真っ先に出て来るのがファッション・トレンド。
19〜49歳の女性を対象にしたアンケートによれば、「2022年に着用したい」と回答しているのは「明るく鮮やかなカラー」。
これは2021年から継続するトレンドで、華やかなカラー、ヴィヴィッドなパターンのミスマッチなど、脳にポジティブ・バイブを送る視覚的インパクトがあるファッションは「ドーパミン・ドレッシング」とも呼ばれるもの。
正反対のオールブラック・ファッションも引き続き強さを見せており、
エナメルやシークィンといったテクスチャーが異なる素材をレイヤーにしたり、レザーやレースといったこれまでゴス系と思われたスタイルをビジネス・カジュアルに落とし込むなど、
捻りを利かせるのがポイント。バッグは横に細長い ”シリンダー・バッグ” がメインストリームになる見込み。
同じカラフルなトレンドはインテリアの世界でも顕著で、壁やウォールアートをミスマッチにカラフルにするのが2022年の目玉トレンド。
また読むか読まないかは別として インテリアとしての本と本棚がカムバック。これはパンデミック中に行われた自宅からの中継やインタビューで、
ジャーナリストやコメンテーターの背後に並ぶ書籍、及びその並べ方がIQレベルや思想、性格を反映していると指摘され、2020年後半からジワジワ盛り上がってきたトレンド。
ファニチャーは物を少なくして、空間を重んじる傾向を反映して 戸棚兼デスク、ソファー兼ベッドといったマルチ・パーパス・アイテムの
デザイン的、機能的にアップグレードしたヴァージョンが人気を博すると言われるのが2022年。
テクノロジー&メディアのセクターでは、メタヴァース、NFTに益々資金と関心が集まる一方で、人々のメディア・ハビッツがどんどん変わって行くと言われるのが2022年。
必ずしもハイテク一方向に向かうのではなく、YouTubeばかり見ていた人が何本ビデオを見ても頭に入らないことを反省して本を読み始めたり、
仕事やアクティビティに集中して 効率を上げるためにデジタル・デトックスを行うなど、
よりメディアを能動的にコントロールするようになり、入ってくる情報に振り回される状態を卒業していくのが2022年。
若い世代を中心にPlay to Earnのゲームを収入源にする人々が増えていくことも見込まれるのだった。
それと同時に人生の価値観のプライオリティも変わって行くので、「学歴を積んでも学費の借金で人生が楽しめなかったら…」、「仕事だけをして出世した先輩エリートのような人生は送りたくない」と考えて、
サクセスや裕福さをよりも ”Well Being / ウェル・ビーイング” を最優先にするライフスタイルに徐々にシフトしていくのが2022年。
既にこの傾向は思考やセオリーのレベルでは2010年代後半から既に始まっているけれど、それが実際のライフスタイルとして一般の人々の間で具現化され、定着して行くのはまだこれから。
高収入でも長時間労働の職場が敬遠され、人々が余暇で多様な趣味を楽しむようになるので、これまでお金が稼げるとは思われなかった
アクティビティやコレクティブル・アイテムが意外な収入源になって行くのも2022年。
さらには2022年の幕開けにNYタイムズ紙のライターが「パンデミックやサプライチェーンの問題、人手不足のせいで、消費者が劣悪な体験、クォリティ、サービスにこれまで以上のお金を払うことになっている」と
指摘していたけれど、様々なセクターが理由をつけてはサービスや品質に手を抜いていく結果、
「便利さや価格よりも、クォリティとサービスの良さ」を選ぶ傾向へのシフトが始まると見込まれるのも2022年。
精神面の健康を重んじて、人生を楽しむ ”Well Being”の追求に話を戻せば、 「嫌な事はやらない」、「好きな物を食べる」的に自分を甘やかす方向に向かう人と、
「身体を動かす」、「健康的な食事をする」、「理性的に時間を使う」と自分をコントロールする方向に向かう人々の二極化がいよいよ顕著になってくるのも2022年。
すなわち同じWell Beingの追求でもその解釈によって 全く異なるのがその行動やライフスタイル。
2021年のアメリカでも「ワクチンを接種して、1日も早くパンデミックを終えて自由を取り戻そう」という人々と、「マスク着用やワクチン接種から逃れて、自由を取り戻そう」と考える人々が
全く歩み寄れずに二極化していったけれど、 これから見込まれるのが 根本では同じセオリーを信じ、同じように正義を追求していたとしても、
その解釈や考えで分断された人々が、どんどん二極化する社会。
年始をオミクロン感染のピークで迎えたアメリカは、「2022年が2021年よりも酷い年になっても驚かない」という心構えの人が多いけれど、
世の中が良くなるか、悪くなるかは、変わって行く時代や社会に順応出来るか、出来ないかという個人レベルで変わって行く訳で、
そんな時代や世の中の捉え方も今後は二極化して行くことが見込まれるのだった。
執筆者プロフィール 秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。 |
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