Sep. 27 〜 Oct. 3 2021

"Vax Firing, Insta Impact, EMP Bash, etc."
始まったワクチン解雇, インスタグラムの劣悪インパクト, イレブン マディソン パークの顰蹙, Etc.


今週木曜の段階で、アメリカ国内のCOVID-19による死者数合計が70万人を突破したけれど、 先週から今週に掛けての新規感染者数は15%ダウン。デルタ変異種による感染がピークを過ぎたことが報じられているのだった。
しかし9月の新学期が始まってから8%増えたのが12歳以下の子供の感染者で、現在アメリカの感染者の4人に1人が子供達。 今週にはワクチン接種義務化を打ち出した全米各州のヘルスケア・クリニックやプライベート企業がそのデッドラインを迎え、ワクチン未接種の従業員の解雇が始まったけれど、 さすがに仕事を失う訳には行かない人々が多かったようで、テキサス、ノース・キャロライナ、ミズーリといったワクチン反対派が多いレッド・ステーツのヘルスケア・クリニックでさえ、現時点で解雇されたのは1%に満たない人々。 最後の最後まで裁判でワクチン義務化に反発していたのが 全職員のうち10%がワクチン未接種のNY教職員組合であったけれど、金曜には最高裁がワクチン義務化を支持したことから、 来週月曜の段階でワクチン未接種の教職員は、向こう一年間健康保険は支払われるものの ワクチンを接種するまで給与無しの停職処分扱い。 ワクチン未接種の教職員は、「ワクチンに反対しているのではなく、義務化を問題している」と主張するものの、 NYタイムズ紙を始めとするメディアは、アメリカの歴史においてパンミックの収束にはワクチンの義務化が行われてきた事実を指摘。 そもそもワクチン義務化を拒む人々の「自由が失われる」という言い分に対して、ワクチン普及促進派は「早くパンデミックを終わらせて行動の自由を取り戻そう」という意見で、 同じ自由を巡る見解の違いを見せているけれど、確実に言えるのは義務化によってワクチン普及が大きくスピードアップしたこと。
金曜には製薬会社のメルクが、COVID-19の症状が出てから1日2回摂取することによりその重症化と死亡が防げる飲み薬の開発を発表。 既にアメリカ政府は170万ユニットをオーダーしたことが伝えられる一方で、 今週ファイザー社は5〜11歳の子供達に対するワクチンの臨床実験結果をFDA(食品医薬品局)に提出。 11月にはこの年齢に対してもワクチン投与が緊急認可される見込みなのだった。



アメリカで殺人が増える意外な背景


今週FBIがレポートしたのが2020年にアメリカ国内の殺人件数が29.4%アップし、データ・トラッキングを始めた過去60年で最大の伸び率を見せたという事実。
特に殺人が多発しているフィラデルフィアでは今年に入ってから先週末までの殺人件数は400件で、2020年の同じ期間よりも60件も増えているとのこと。 殺人というと都市部で起こるイメージが強いものの、殺人事件増加は地方や郊外の小さな町でも見られており、 殺人以外にも2020年には暴力事件が5.6%アップしているのだった。
この背景にあるのがパンデミックのロックダウンと銃の売上の大幅アップ。 2020年はパンデミックやブラック・ライブス・マターの抗議活動と暴動を危惧して、500万人が護身目的でファーストタイム・ガンオーナーになっているけれど、 増えた殺人件数の殆どはストリート・クライムではなく、ドメスティック・シューティング。 すなわちロックダウンにより家で過ごす時間が増えて、買った銃を不仲になった伴侶を含む家族に向けて殺害するというもの。 2020年にアメリカで起こった殺人事件の77%が銃によるもので、数にすると約1万9400件。 銃による自殺件数も約2万4000件まで増えており、1日当たり約119人の命が銃によって失われていたのがアメリカ社会。
殺害まで行かないドメスティック・ヴァイオレンスもパンデミック中に全米で急増しており、 2020年1月以降、テキサス州サンアントニオでは家庭内暴力が前年比18%、オレゴン州ポートランドでは22%、 女性に経済力があるニューヨーク市でも10%増加。ドメスティック・ヴァイオレンスの増加は世界的な傾向で国連によれば中国で25%、シンガポールで33%、 アルゼンチンで30%、ブラジルでは50%も増加していることがレポートされているのだった。
アメリカ国内の犯罪に話を戻せば、前年比で2桁の減少を見せたのが家に押し入る強盗と窃盗。 これはロックダウンのせいで、人々が家にずっと滞在している上に、銃を所有する世帯が増えたための減少と言われるのだった。



FBをトゥウィーン・ビジネス延期に追い込んだインスタグラムの悪影響


今週のアメリカ議会では木曜のデッドラインまでに政府機関閉鎖を回避するための攻防が与野党で繰り広げられていたけれど、 上院の聴聞会でその与野党が足並みを揃えて痛烈な批判を繰り広げたのがフェイスブック。 「フェイスブックやインスタグラムのせいで、どれだけの子供達が自ら命を絶ったか考えてみたことがあるのか?」といった厳しい質問に対して、 同社CEOのマーク・ザッカーバーグより無表情で リモート証言を行ったのはフェイスブックのグローバル・セキュリティ責任者のアンティゴン・デイビス。
この聴聞会が行われたきっかけは、フェイスブックが独自に行ったリサーチで「イギリスのティーンエイジャーの13%、アメリカのティーンエイジャーの6%が インスタグラムがきっかけで自殺願望を抱いた」という結果が得られたこと。 さらに同じ調査によればティーンの3人に1人が「インスタグラムのせいで、自分のボディ・イメージにコンプレックスを持つようになった」、「拒食症を含む 摂食障害に陥った」、「うつ病や定期的な不安に陥った」と回答しており、 この問題は特に少女達の間で深刻。、 またフォロワーからのリアクションもティーンエイジャーを落ち込ませる要因で、 マレーシアでは「自分が自殺をするべきか」のアンケートをインスタ上で行った少女が 本当に自殺をする事件が起こっているのだった。

上院がこの調査結果を特に問題視したのは、その内容を発表したのが 独自のルートからこの情報を入手したウォールストリート・ジャーナルで、 フェイスブック側はこれを握り潰して、8〜12歳の子供達をターゲットにした新たなインスタグラムをスタートしようとしていたためで、 エグゼクティブの中には、ティーンの自殺者を「ありがちなダメージ」と深刻に捉えない意見まであったとのこと。 ウォールストリート・ジャーナルの記事が出て以来、フェイスブックに対する猛烈な批判が集中したことから、同社は上院の公聴会を待たずして トゥイーン(8歳以上、ティーン以下)・ターゲットのビジネスのスタートを見合わせる発表をしているけれど、 公聴会では「多くのティーンが自社のプラットフォームを通じたソーシャル・コネクションでメリットを得ている」、 「YouTubeやTikTokといったティーンをターゲットにした他のアプリにも厳しい目を向けるべき」と反発。
しかしコンシューマー・プロテクションを担当する上院議員のオフィス・スタッフが13歳の少女を偽って インスタグラムのアカウントを開いたところ、途端にエクストリームなダイエットや拒食症を招くインフルエンサーのフォローに導かれただけでなく、 セルフ・ハーム(自傷)のレコメンデーションまで出てきたとのことで、そんな青少年への悪影響を顧みないビジネス優先の姿勢が大きく問題視されていたのだった。
それとは別に今週にはグーグルがワクチンに関する誤情報、及び牛や馬の駆虫剤であるイベルメクチンがCoVID-19に効くといったデマを撒き散らすビデオを 全面禁止するという遅すぎる措置を発表。そうかと思えばTikTok上で現在ブレークしている教師の顔を殴るチャレンジに対して、学校側がそれを行った生徒、 関わった生徒全員に停学処分を言い渡しており、フェイスブックの言い分通り、諸悪の根源はフェイスブックだけではないのは紛れもない事実なのだった。

 

ヴィーガン・レストランになったイレブン・マディソン・パークが嫌われた3つの理由


今週水曜にメディアとソーシャル・メディアを賑わせたのが ミシュラン3つ星レストランで、2017年にはワールド・ベスト・レストランのNo.1 に選ばれた イレブン・マディソン・パークの新たなヴィーガン・メニューに対してニューヨーク・タイムズ紙のフード・クリティック、ピート・ウェルズが 容赦なしに厳しい批判を展開したニュース。
パンデミックのロックダウン中、15ヵ月に渡って閉店していたイレブン・マディソン・パークは、その間にスポンサーをつけて 低所得者や失業者のためのフード・バンクの役割を担っていた存在。 ビジネスを再開したのは今年6月のことで、リオープンに伴ってヴィーガン・レストランに生まれ変わっているのだった。
スイス人シェフ、ダニエル・ハムのヴィーガン路線転向に少なからず影響していると言われるのが、2019年から彼がスティーブジョブスの未亡人、ローレン・パウウェル・ジョブスとの交際を続けていること。 ダニエル・ハムは彼女と時間を過ごすためにシリコンバレーの中でもエクスクルーシブでメガリッチが住む パロ・アルトに滞在する時間が増えており、自らマラソン・ランナーでもある彼は 現地のサイエンティフィック・ヘルスコンシャスネスでサステイナブル・グルメのカルチャーに大きく傾倒したと言われるのだった。

リオープン後のイレブン・マディソン・パークは、ウェイティング・リストに何カ月分もの名前が連なる大人気となっているけれど、 その10コース、課税前335ドルの料理に対してこき下ろすレビューを書いたのがピート・ウェルズ。 彼によれば「メニューの多くが、肉や魚の味わいを無理やり野菜で演出しようとして失敗したもの」で、 「野菜本来の味わいが失われ、レストラン全体がヴィーガン・レストランでありながらバーガー・ジョイントのような匂い」、「高額な値段に見合う料理では無い」と新生イレブン・マディソン・パークに対する酷評を展開。 さらに彼が明らかにしたのが 同店が個室をリザーブするVIPクライアントのために、年内一杯という期間限定でビーフ・テンダーロインやロブスターをサーブしている事実。 そのためイレブン・マディソン・パークは、「シークレット・ルームで肉をサーヴィングするヴィーガン・レストラン」、「ミート・ルームがあるヴィーガン・レストラン」として、 メディアにからかわれ、ヴェジタリアンやヴィーガンの人々からはその中途半端のヴィーガン思想をバッシングされる結果になっているのだった。 それだけでなく美食家達からは野菜本来の味わいを生かさずに、無理に肉や魚の味に造り変えようとするシェフのポリシーに対しても 寄せられたのが疑問混じりの批判の声。
でも最大のダメージと言えたのは、イレブン・マディソン・パークの顧客扱いのダブル・スタンダードをピート・ウェルズに指摘されたこと。 すなわちヴィーガン・レストランである同店が、大金持ちのVIPクライアントのためであれば ポリシーを曲げて、メニューを変更して今も肉や魚料理をサーヴィングするということで、 これは「庶民には知られていない、庶民には立ち入れない世界が超富裕層だけのために常に用意されている」という金持ち優遇ビジネスのモデルに他ならないもの。
ダニエル・ハムと言えばパンデミック中に フード・バンクの料理を引き受けた際には、貧困層の人々に「生涯食べた料理の中で一番美味しい」と言われることに遣り甲斐を感じたと コメントし、「今後も自分のレストランに来る経済力がある富裕層だけのためでなく、恵まれない人々のためにも料理をしたい」という決意を語って賞賛されていた存在。 それだけに大金持ちのためには肉をサーヴィングするシークレット・ルームの存在は、彼の本音が 実は「経済力がある人々を更にクラス分けして優遇することによって、多大の利益を上げることだった」とも受け取れるものなのだった。

ピート・ウェルズのレストラン・レビューがここまでのバズをクリエイトしたのは、2019年にステーキハウスのピーター・ルーガーをゼロ星の評価に格下げして以来のこと。 イレブン・マディソン・パークの場合、当時のピーター・ルーガーよりも実際に料理を味わっている人の数が比べ物にならないほど少ないとあって、 ピーター・ルーガーの時のような同調意見の嵐はソーシャル・メディア上には起こっていないけれど、この時に見られたのが 火が通り過ぎた真っ黒いクリーム・オブ・スピニッチ、ベシャベシャのジャーマン・ポテト、NYのどのレストランでも味わえるレベルのステーキを 「ピーター・ルーガーだから美味しい」と自分に言い聞かせていた人達の味覚をリセットした現象。
そのためこれまでは「裸の王様」のストーリーのように「この料理が楽しめないのなら食の意識が低すぎる」的な評価で守られてきたイレブン・マディソン・パークの新ヴィーガン・メニューであるけれど、 ピート・ウェルズが「食欲をそそる訳でも、実際に美味しい訳でもない」と堂々と宣言したことにより、今後はクライアントからも 厳しく真実を捉える視点からジャッジされていくことになると思われるのだった。

執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。
Shopping
home
jewelry beauty ヘルス Fショップ 購入代行


★ 書籍出版のお知らせ ★



当社に頂戴した商品のレビュー、コーナーへのご感想、Q&ADVへのご相談を含む 全てのEメールは、 匿名にて当社のコンテンツ(コラムや 当社が関わる雑誌記事等の出版物)として使用される場合がございます。 掲載をご希望でない場合は、メールにその旨ご記入をお願いいたします。 Q&ADVのご相談については掲載を前提に頂いたものと自動的に判断されます。 掲載されない形でのご相談はプライベート・セッションへのお申込みをお勧めいたします。 一度掲載されたコンテンツは、当社の編集作業を経た当社がコピーライトを所有するコンテンツと見なされますので、 その使用に関するクレームへの対応はご遠慮させて頂きます。
Copyright © Yoko Akiyama & Cube New York Inc. 2021.

PAGE TOP