Aug. 9 〜 Aug. 15 2021
若い世代の新投資対象,キャリー 物議のドレス,NY政治家とセックス スキャンダル, Etc.
今週アメリカで発表されたのが2020年に行われた国勢調査の結果。アメリカの国勢調査は10年ごとに行われ、その結果で各州の議員数が決まるのに加えて、
人種の内訳等も把握できるでもの。それによれば今回史上初めて全人口の60%を切る 57.8%という減少傾向を見せたのが白人層で、
前回2010年の調査時に比べると6%以上の減少。
米国最大のマイノリティはヒスパニック & ラテン系で18.7%、次いで黒人層で12.1%、アジア人系は5.9%、2種類以上の人種がミックスしたマルチ・レイシャルは4.1%。
白人層が最も多い州はヴァ―モント州でその割合は95.5%。白人がマジョリティではないのはカリフォルニア州(ヒスパニック系が39.4%)、
ニュー・メキシコ州(ヒスパニック系が47.7%)、ワシントンDC(黒人層が40.90%)、ハワイ(アジア系が36.5%)で、米国領のプエルトリコもヒスパニック系が98%を占めているのだった。
今回意外に受け取られたのが人口トップ5都市がNY、LA、シカゴ、ヒューストンに次いで、アリゾナ州フェニックスになったこと。
それもそのはずで前回の調査以来、フェニックスでは人口が80%も増加しており、代わってトップ5から落ちたのがフィラデルフィア。
パンデミック中に州外に流出する住民が後を絶たなかったNY市であるけれど、2010年に818万人だった人口が
2020年には880万人に膨れ上がり、これは史上最多記録。今やNY州の人口の40%が集中しており、
NY市が決してゴーストタウンになり得ないことがデータでも立証されているのだった。
新たな財産価値、投資対象
時代の移り変わりに連れて世の中で”コレクティブル・アイテム” として価値があるものが、スニーカーやブロックチェーン上のNFT等に変って来ているのは周知の通り。
そんな中、目下最もヴァリューを高めていると同時に、投資価値があると言われるのがヴィンテージ・ビデオゲーム。
今週の初めには 1985年発売で未開封の任天堂 Super Mario Brosがオークションで史上最高価格の200万ドルで落札されているのだった。
ヴィンテージ・ビデオゲーム市場はパンデミック中に大ブレークしており、2020年7月にスーパー・マリオがオークションで11万4000ドルで落札され、当時の過去最高値を記録。
その4ヵ月後にはスーパーマリオ3が15万6000ドルで落札されて記録を塗り替え、今年に入ってからは「レジェンド・オブ・ゼルダ」が87万ドルで、
その後 スーパー・マリオ64が156万ドルで落札され、マーケットがヒートアップしている真っ最中。
200万ドルのスーパー・マリオの出品者は”Rally/ラリー”という企業で、これはヴィンテージ・ゲームの所有権を株式同様に分割売却することによって投資家を募り、
高値で売却した利益を分配するビジネス。シェアホルダーには売却の価格に合意するか否かを決断する投票権があり、
200万ドルのマリオについては、その前に寄せられた30万ドルの買取オファーがシェアホルダーの投票でよって拒否されていたとのこと。
そしてその6倍以上の200万ドルで落札されたことにより、100ドルを投資した学生シェアホルダーが1000ドルを受け取ったことが伝えられるのだった。
この類の投資をするのはもっぱらジェネレーションX、Y、Zで、「自分が好きで、市場を理解している物に投資をする」という昔ながらのセオリーには叶っているものの、
時代と世代を反映して価値観が大きくシフトしてきたことを感じさせる状況。
逆に今後値崩れが見込まれるのが、これまでベビー・ブーマー世代が価値を見出してきたものの、若い世代が興味を示さない投資対象。
そんな世相を察知してか、今年10月23日のピカソ生誕140周年記念にタイミングを合わせて ラスヴェガスのMGMがオークションにかけるのが同社所有の11枚のピカソ絵画。
オークションを担当するサザビーズはNY以外の米国内でオークションを行うのはこれが初めてで、
ラスヴェガスという土地柄、支払いはカジノのチップでもOK。 ピカソ絵画11枚の合計落札見込みは100億円以上で、
今が価格のピークとも言われるのだった。
MGM側もピカソを手放す理由として「今後はもっと幅広く、インクルーシブにアートに投資をする」と説明していたけれど、
今ではNFTのようにスポーツ、アート、テクノロジーといった複数のセクターをカバーし これから価値が10倍、20倍に膨れ上がる投資対象の方がもてはやされる時代。
管理や輸送に費用が掛からず プレゼンテーションに様々な可能性があり、何より若い世代にアピールするアート&コレクティブルへの投資に急ピッチで移行しているのだった。
コンセプトの段階からズレてきたキャリーのファッション?
今週火曜日にミッドタウンに出掛けた私が出くわしたのが「セックス・アンド・ザ・シティ(以下SATC)」の続編として現在HBO/Maxが製作中の「And just like that」のロケ。
写真上左のシーンをパブリック・ライブラリー前で撮影していて、そこそこに人だかりが出来ていたけれど、
今週物議を醸していたのがこの時にキャリーを演じるサラー・ジェシカ・パ―カーがシャツとレイヤーで着用していたセンチュリー21のドレス。
ファスト・ファッションに目が慣れている世代でなくとも、一目見て安物と分かるドレスに対しては様々なアングルからの批判が集中。
それは大きく分けて以下のようなもの。
- 大量生産、大量廃棄で環境に悪影響を与えるファスト・ファッションをキャリーが着用するのは許せない。
- 50代になってセンチュリー21(のクォリティ)を着用するメンタリティが信じられない
- わざわざセンチュリー21から選ぶほどの(趣味が良い)服ではない/センスが悪い
特に批判が大きかったのはファスト・ファッションを着用しているという部分で、
今やファッショニスタと呼ばれる人がサステイナビリティをスタイルに持ち込むのは当然のこと。
キャリーのスタイルと言えば、TV時代からヴィンテージ・ショップで20ドルで売られていたドレスにダイヤのテニス・ネックレスを合わせるなど、価格でもテイストでもエクレクティックで、時に奇抜と言えるアウトフィットが
話題と評価を集めてきたけれど、このドレスはそのコンセプトからも外れていて グッチxバレンシアガのコラボ・バッグをコーディネートしても救えないもの。
そもそも「SATC」はフレンズと並んで再放送が今も人気を集めるTVシリーズでありながら、ポリティカリー・コレクトネスが欠落した人種差別やゲイ差別が台詞に多いことで批判される番組。
それは時代背景を考慮して仕方がないとしても、現在撮影されているリブート版で ポッドキャスターになった設定のキャリーがファスト・ファッションを着用するのは、
若い世代を中心に反感を買うのは推して知るべしの成り行き。
この責任を「TV時代からスタイリングを担当してきたパトリシア・フィールズの社会意識の欠落ぶり」と捉える声もあったけれど、
ファンならずとも「And just like that」に注目するのは、まさにそんな「時代がすっかり変わったことを どれだけ制作側が理解して、お馴染みのキャラクターに反映できるか?」。
同番組は注目度は高くても 知名度は未だ低いようで、このドレスの物議を報じるメディアの殆どがヘッドラインにしていたのが「And just like that」という番組名ではなく、
「SATCリブート版」という表現。したがって何をやっても以前と比較されるだけに同番組のハードルは極めて高いと言えるのだった。
NYの政治家とセックス・スキャンダル
今週NYのみならず全米で大きく報じられたのが2011年の就任以来、10年に渡って第56代目NY州知事を務めてきたアンドリュー・クォモ(63歳)辞任のニュース。
NY司法省が先週発表した彼のセクハラとその11人の被害者に関する詳細なレポートが大打撃になり、身内の民主党内からも辞任を求められていたクォモであるものの、
本人はそれを拒み、弾劾が見込まれていただけに メディアや州政府関係者にとってもサプライズであったのが今週月曜の辞任スピーチ。
彼の後任はNYの法律に従って現在副知事を務めるキャサリン・フォークル(写真上左側上段がクォモとフォークル)が繰り上げ就任となり、NY初の女性州知事が8月24日に誕生するのだった。
この辞任劇と新女性州知事誕生がニューヨーカーにとって非常に象徴的だったのは、クォモを辞任に追い込んだ司法省のレポートを纏めた
レティシア・ジェームス司法長官が、前任のエリック・シュナイダーマン元長官(写真上左側下段が2人)の性的虐待スキャンダルによる辞任で副長官から長官に就任していたこと。
シュナイダーマンは #MeTooムーブメントの最中、ハーヴィー・ワインスティンの訴追を行い 「女性の人権を守るチャンピオン」を自称しながら、自らが
数人の女性にセクハラ、及び性的虐待行為をしていたことで2018年に辞任に追い込まれているのだった。
セックス・スキャンダルでポジションを追われたNYの政治家はこの2人に止まらず、
元州知事でウォールストリートに対する厳しい規制で評価を高めたエリオット・スピッツァーが、エスコート・サービスを利用した買春、及びその娼婦を
ワシントンDCに出張させたセックス・トラフィッキング容疑で辞任に追い込まれたのは2008年のこと。
さらに かつてのNY下院議員で、ヒラリー・クリントンの側近であったフマ・アバディーンの夫であるアンソニー・ウィーナーも
未成年者に自分の性器の写真を送りつける等の性的不適切行為で辞任に追い込まれ、復活選挙までもを
同じ過ちで台無しにしたセックス中毒ぶりはNYでは良く知られるエピソード。
2016年の大統領選挙の際には、ウィーナーの性的不適切行為の捜査のためにFBIが押収したラップトップを
フマ・アバディーンが使用していたことから、その中にヒラリー・クリントンのEメール疑惑の証拠がないかの取り調べに入ることを
FBIが投票日の僅か3日前という最悪のタイミングで発表。ヒラリー側に大打撃をもたらし、選挙敗北を招いたとまで言われるのだった。
それ以外にもNYには汚職や職権乱用のスキャンダルでポストを追われた政治家が民主・共和 双方の党に何人も居ることから 「政治家をロールモデルとして仰ぐのには無理がある」とまで言われていたのが今週のこと。
でも彼らが退いたお陰で、レティシア・ジェームスやキャサリン・ホークルといった 選挙ではなかなか勝利が収められずにきた有能な女性達に
チャンスが巡ってきたことは歓迎すべきこと。
シュナイダーマンもクォモも、女性達を虐待してきた立場でありながら それぞれに
副長官、副知事を務めた女性を選ぶ目が確かであったというのは 何とも皮肉な結果と言えるのだった。
執筆者プロフィール 秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。 |
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