July 19 〜 July 25 2021
NY Newライフスタイル、米国平均寿命、オリンピック・リアクション So Far
今週のアメリカではデルタ変異種が猛威を振るった結果、COVID-19の新規感染者が先週より50%以上アップ。
しかしその入院者、死者の殆どがワクチン未接種者であることから、ついにFOX Newsのキャスターや共和党議員など、
これまでコロナウィルス自体を否定し、ワクチン陰謀説を支持してきた顔ぶれが遂にワクチン接種を呼び掛けざるを得なくなったのが今週。
アラバマ州の下院議員は「ワクチン未接種者を責めるべき時が来た」とまで発言したほど。
また今週にはミレニアルのキリスト教と言われ、昨年までジャスティン・ビーバーがメンバーであったヒルソング・チャーチの著名メンバーで、「ワクチンを打つくらいなら死を選ぶ」とまで語ったスティーブン・ハーモン(34歳)が
コロナウィルスで死去。6月30日に入院した彼は死の間際まで呼吸器の使用も拒み、自らワクチンの無用性を立証するとして世界中の信者に自分のための祈りを呼びかけていた存在。
時を同じくして、今週にはアンチ・ワクチン説を広めてミリオネアになったテネシー州のラジオ・ホスト、フィル・バレンティーン(61歳)が
コロナウィルスによる肺炎で死去。彼は7月12日にフェイスブックでウィルス感染を報告し「自分のヘイターには悪いが、快方に向かっている」と
強気のポストをしたばかり。しかし死去間際には、彼の家族が「本人がワクチンを軽視したことを後悔していた」様子を語り、
彼のための祈りと、ワクチン接種をラジオのリスナーに呼び掛けていたのだった。
眠らない街のニューヨーカーがアーリーバードに
NYもデルタ変異種の影響を受けて7月初旬には0.6%にまで下がった新規感染者率が今週には2%を超えたところ。
そのNYでは今週月曜から多くのレストランにとって最大のかき入れ時となるレストラン・ウィークが過去最長の5週間というスケジュールでスタート。
参加店ではプリフィックス・メニューがランチは21ドル、ディナーが39ドルで提供されているのだった。
すっかり客足が戻って久しいNYのレストランであるけれど、パンデミック前との大きな違いが
ディナーのゴールデン・タイムがこれまでの午後8時から午後6時に前倒しになっていること。
以前は5時〜6時に好んでディナーをするのは起床時間も夕食時間も早い高齢者が多く、
彼らを狙ったボリュームと価格が控えめ”アーリーバード・メニュー”を提供してテーブルを埋める努力をする店が多かったのは周知の事実。
しかし大半のオフィス・ワーカーが引き続き自宅勤務を続け、ディナー時間がフレキシブルであることから、
今ではアーリーバードの時間にディナーをするニューヨーカーが激増しているのだった。
その中には「パンデミック中に1日16時間ファスティングの習慣をつけたので8時までにディナーを済ませたい」、「就寝前4時間は何も食べないと決めている」など
健康目的の人々も居れば、「ディナーを終えて家に戻っても未だ午後9時、10時だと、
寝るまでの時間に入浴や読書、瞑想などが出来る」と、生活ペースの維持を重んじる人も居て、
外食をする生活に戻っても ライフスタイルは健康とゆとりを重んじるものに変わりつつあるのだった。
このことは遅くまでワインやカクテルを飲んで、お金を遣って欲しいレストラン側にとっては歓迎出来ない変化で、
「9月になって更に多くのオフィス・ワーカーが職場に戻れば、ディナーの時間も就業時間に応じて元通りになって行くはず」
という希望的観測をしているけれど、多くのオフィス・ワーカーは何とかしてオフィスに戻らない、もしくは戻る時間を減らそうとしているのもまた事実。
ちなみに私もディナー時間が早くなったニューヨーカーの1人であるけれど、現在NYの治安があまり良くないので、
夜遅くまで出歩きたくないというのも外食ディナーの時間を早める理由の1つになっているのだった。
性別、人種別に下がる米国平均寿命
今週発表されたのが2020年の米国平均寿命。2010年代後半から平均寿命が徐々に短くなっていたアメリカであるものの、
2020年は第二次世界大戦で多数の戦死者を出した時以来の減少ぶり。
その原因はもちろんCOVID-19で、2020年の米国平均寿命は77.3歳。5年前に比べて1.4年も短くなっているのだった。
この寿命短縮傾向は 所得格差の拡大に大きく関わっていて、
2019年から2020年にかけて平均寿命を3年も短くしたのが、通常なら他人種よりも長生きのヒスパニック系。
黒人層も昨年1年間に2.9年短縮して、その平均寿命は71歳10か月。
これに対して白人層は77歳7か月で、他人種の半分以下に当たる1.2年の短縮に止まっているのだった。
ちなみにアジア人については比較できるほどデータが出ていない状況。
人種別にこれだけの差が開いた原因は
ヒスパニック系、黒人層にエッセンシャル・ワーカー、すなわちパンデミック中でも自宅勤務にならず、働きに出ていた人々が多いこと。
加えて黒人、ヒスパニック系は貧困層が多く、適切な医療が受けられないことも寿命が短くなる要因になっているのだった。
男女別のデータでは、男性の平均寿命は74.5歳、女性は80.2歳。
COVID-19で男性の方が命を落としているとあって、2019年には5.1年であった男女の差は、
2020年には5.7年に拡大。ちなみに近年最も男女のギャップが
狭まったのは2011年で、この時は男性が76.3歳、女性が81.1歳で、寿命のギャップは4.8年となっていたのだった。
死因に関しては2020年には330万人のアメリカ人がCOVID-19で命を落とし、これは全体の死因の74%。
2019年までのデータでアメリカの死因をチェックすると、2桁パーセンテージで減少しているのがガンによる死亡で、
アメリカ最大の死因である心臓病も僅かながら減少傾向。逆に増えているのは事故死、ドラッグのオーバードースで、
ドラッグで命を落とす傾向は白人に顕著。それ以外に増えているのがアルツハイマー病、
銃による射殺、アルコール中毒、自殺、糖尿病、脳卒中といったところなのだった。
東京オリンピック・リアクション So Far
さて金曜に開会した東京オリンピックに対するアメリカのリアクションであるけれど、開会式直前も当日も、過去の大会に比べるとメディア報道は極めて控えめで、
APの記者に現地レポートをさせて自社レポーターを送っていないメディアが少なくない様子。
選手村入りした各国代表が宿舎内の段ボールのベッドや、厳しい入国ルールについてTikTokに投稿したポストをそのまま
ニュースにするメディアあったほど。開幕前のメインストリーム・メディアの報道は開催に反対する人々の抗議デモと東京で拡大するコロナ感染についてのみをあっさり報じるものが多く、
感染者数自体はNYが勝利宣言パレードをした時よりも遥かに少ないのに、パーセンテージやワクチン接種者23%という少なさが報じられるため、
開催国としてコロナ対策に無責任な印象を与えていたのは残念なところなのだった。
総じてネガティブな報道が多かったのは 右寄り保守派メディアで、そうなる理由の1つは昨今のアスリートたちによる人種差別抗議を嫌っているため。
開会式で世界のユニティを表現するために謳われたジョン・レノンの「イマジン」に対しても、「最近のスポーツイベントはすぐにコレだ」とばかりに批判的な意見。
ちなみに「イマジン」は9・11テロの直後に「Imagine there's no countries」、「And no religion, too」という歌詞がキリスト教保守派にはテロを支持するメッセージとして捉えられたことから、
保守右派のラジオ局全てで放送禁止になった楽曲。ジョン・レノンの愛と平等、平和のメッセージも政治的ポジションが違うだけで、
如何に歪曲されてしまうかは、そのまま現在のアメリカを象徴しているのだった。
開会式のリアクションは「Beautiful Country, Beautiful People」と好意的なものに混じって、「the opening ceremony was arguably one of the most bizarre and uncomfortable things to watch ? maybe ever.
/開会式はおそらく最も奇妙で、見ていて居心地が悪くなるものの1つだった」というものが少なくなかったのが実情。
総じて右寄りを除くメインストリーム・メディアは日本という国や開催側に対しては「特殊な状況下で、最善を尽くしている」と
評価と同情が入り混じったポジティブなリアクション。
しかし開会式のプレゼンテーションやオリンピック開催自体については、上のビジュアルの右寄り保守派ピアース・モーガンのコメントのように酷評する声、
疑問やジョークを投げかける傾向が見られるのだった。例えばアメリカのビューワーの間で 開会式最大のインパクトとなったのは ”トレッドミル”。
それがパンデミック中に1人でトレーニングするアスリートを象徴するというナレーションが入っていたものの、
ツイッター上ではジョークが飛び交っており、終わってみれば長い開会式の中で最も人々の記憶に焼き付いたのがトレッドミル。
またピアース・モーガンは日本の国歌斉唱についても「ユーロビジョン・コンテストのシンガーか?」と酷評していたけれど、
私自身も開会式で聞いた日本国歌は歌唱はさておき、そのアレンジが不協和音に聞こえてしまったのが本音なのだった。
私は開会式を米国時間金曜夜の再放送で観たけれど、時折 日本の美しい映像が紹介される以外は、過去のオリンピック開会式に比べて開催国へのフォーカスが極めて少なく、
アメリカ選手団登場をメインにフィーチャーした2時間半番組という構成。
そんなこともあって、アメリカで最もリアクションが集中していたのは米国選手団のユニフォーム。
既にラルフ・ローレンがUSチームのユニフォームをデザインすること自体が時代遅れという声が聞かれて久しかったけれど、
今回の開会式ユニフォームのリアクションは、「ラルフ・ローレンのセールに並んでいる服」、「”パパが弁護士”とか言いながら威張っている青二才のファッション」など、かなり厳しいもので
アメリカ選手団のイメージに対してラルフ・ローレンのWASPY/ワスピー(White Anglo-Saxon Protestants/米国の中流以上の白人層っぽいという意味)なスタイルが
アメリカ国民にとってもチグハグなイメージに見えて来た様子を感じさせていたのだった。
土曜日にはそのオープニング・セレモニーの視聴者数が発表されたけれど、その数は過去33年のオリンピックで最低の1670万人。2016年のリオ大会からは36%ダウン。
ちなみに過去最高の視聴者数を獲得したのは2012年のロンドン大会で4070万人。
今回のビューワー数にはストリーミングで視聴した31万1000人が含まれており、テクノロジーの普及のお陰でストリーミング視聴者は過去最高になっているのだった。
執筆者プロフィール 秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。 |
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