June 29 〜 July 5 2020

”Ghislaine Maxwell Arrested, Finally"
建国記念ウィークに遂に逮捕されたギレーン・マックスウェルとその逮捕のインパクト


今週のアメリカは7月4日の建国記念日を土曜日に迎えたことから、多くの企業がその前日金曜を振り替え休日にしたロング・ウィークエンドになっていたけれど、 コロナウィルスが再び40州で猛威を振るい出したとあって、多くの地方自治体のパレード、花火が中止となり、旅行をする人々も激減。 ガソリン代が安くても車で遠出をする人々は昨年より30%減っている状況。
さらに今週にはEU圏がアメリカ、ブラジルを含むパンデミックが悪化している国からの旅行者拒否を発表しており、 にも関わらずコロラド州からプライベート・ジェットでイタリアのサルデーニャ島に飛び立ったのが5人のメガリッチ・アメリカ人のグループ。 しかし現地で入国を拒否され、そこからやむなくイギリスのバーミンガムに辿り着いた様子がニュースになっており、 イギリスは今週殆どの国からの旅行者に対して14日間の自主隔離の義務を解除したばかり。 でもその対象外がアメリカからの旅行者で、もしメガリッチ・グループがトランジット以外の理由で24時間以上イギリスに滞在しようとした場合は自主隔離の対象となってしまうのだった。



不動産バーゲン・シーズン?


多くの人々にとって旅行の悪夢になっているのが自主隔離。私は フロリダ州がニューヨークからの旅行者に対する自主隔離の義務を解除したところで マイアミの親友のところに遊びに行く予定であったけれど、過去2週間ほどでマイアミの感染が再び拡大し、今週末には午後10時以降の外出禁止令が発令されたほど。 それを受けて今度はニューヨーク州がフロリダからの旅行者、フロリダから戻った旅行者に対して先週から自主隔離を義務付けているので、 親友とは「何時になったら会えることやら…」と嘆いている状況。
このようにアメリカは国内の移動でも州ごとに自主隔離の規制があるので、たとえ国内旅行でもよほど時間に余裕が無い限りは思い止まってしまうのが現在。
そのマイアミはビーチには人が多くても、旅行者がいないので高級ショッピング・モールやブティックはガラガラ。 でも不動産を買う人は多いとのこと。 同様のことは郊外の住宅街でも言えることで、5月に入ってから売り上げが伸びているのがハンプトンズを含むニューヨーク郊外、アメリカの地方都市の不動産。
これは都市部からの脱出組が購入しているためで、特に1〜2億円の物件は買い手が多いとあってかなり強気のプライシングがされているのが現在。 値崩れしているのは8億円を超えるような高額物件であるけれど、値を下げれば大金持ちの買い手がつくのは言うまでもないこと。 ビリオネア・インヴェスター、バリー・ローゼンスタインのイーストハンプトンの邸宅(写真上右)は、2018年に7,000万ドルで売りに出されたものの 全く買い手がつかず、5月末になってその約半額の3,575万ドルでようやく買い手がついたところ。
パンデミックがスタートした直後にウォールストリート・ジャーナルが 「前回のファイナンシャル・クライシス以来の不動産バーゲン・シーズンが訪れる」と 予測していたけれど、メガリッチにとってはまさにそのシナリオ。 ジジ&ベラ・ハディドのスーパーモデル・シスターズも共に6月にマンハッタンで新しい物件をそれぞれ購入したことが伝えられるのだった。



遂に逮捕されたギレーン・マックスウェル


今週はホリデイ・ウィークエンドを控えて通常ならばニュースネタが少ない”スロー・ウィーク”。 そんな中、メディアを賑わせたのがティーンエイジの少女たちを世界中のVIPに娼婦としてあてがうセックス・トラフィッキングを行っていた ジェフリー・エプスティーンのパートナーでありマダム、ギレーン・マックスウェルが遂にFBIに逮捕されたニュース。
逮捕劇は木曜朝のことで、昨年夏にジェフリー・エプスティーンがニューヨークの刑務所で"自殺" と発表された死を遂げて以来、 捜査のフォーカスが移っていたのがティーンエイジの少女たちのリクルート&教育係を務めていたギレーン・マックスウェル。 彼女がなかなか逮捕されなかったのはその居場所が分からなかったためで、FBIの捜査を攪乱するために数年前にLAのイン&アウトバーガーで撮影されたスナップが 彼女の最新のスクープ写真としてメディアにばら撒かれたり、逮捕時に滞在していた邸宅を名義を伏せたまま キャッシュで買い取るなど、居場所とIDを隠し続けてきたのがギレーン。
彼女の父親は英国のタブロイド、デイリー・ミラーを傘下に収め、1990年代にはNYデイリー・ニュースを買収した新聞王、ロバート・マックスウェル(写真上左の男性)。 ギレーンは彼の一番のお気に入りの娘で フランスに生まれ、プライベート・スクールで欧州の貴族の子女との交友関係を幼いころから築き、オックスフォード大学を卒業。 アメリカに渡ったのは1991年で、従業員の年金ファンド 約5億7000万ドルを使い込んで贅沢な暮らしをしていた父親が自殺を遂げる直前のこと。 それを前後して彼女は友人の紹介でエプスティーンに出会っているのだった。
エプスティーンが"ベストフレンド"と呼んでいたギレーンは、やがて彼が自分と結婚すると信じていたと言われ、 逮捕時の彼女の銀行預金高は2,000万ドル。アメリカ、イギリス、フランスの三ヵ国のパスポートを持つ彼女は、国外逃亡のリスクがあるとして保釈金は認められない見込みで、 その身柄がエプスティーンが"自殺"を図ったマンハッタンの刑務所に移される可能性が高いとのこと。もしすべての容疑で有罪になった場合、彼女には35年の禁固刑が言い渡されることになるのだった。
ちなみエプスティーン他殺説が根強いのは、看守2人が何故か彼が自殺した時間帯に見守りを怠り、エプスティーンの監房の映像を捉えるセキュリティカメラ2台が何故か作動しないという 普通ならあり得ない偶然が重なったため。また看守2人は当初「エプスティーンのチェックをしなかったのは上からの指示」と証言。しかし後に 自らの怠慢を認めて訴追されているものの、2人とも看守の給与ではとても払えない 1千万円を超える保釈金を支払って拘留を逃れているのだった。



ギレーンの捜査協力に怯えるVIP達…


金融ビリオネアとして知られながらも、誰も彼の金融取引について知らなかったジェフリー・エプスティーンは、 高卒でマンハッタンの有名私立校、ダルトンの数学教師となった不思議な経歴を持ち、エプスティーンにその職を与えたのが現在の司法長官、ウィリアム・バーの父親、ドナルド・バー。 その後エプスティーンはベア・スターンズのトレーダーになり、入社早々彼のメンターとなったのが当時の同社会長、故アラン・グリーンバーグ。 やがてヴィクトリアズ・シークレットの親会社の社長レスリー・ウェクスナーのファイナンシャル・マネージメントを務めるようになったエプスティーンは ヴィクトリアズ・シークレットのモデル・リクルータ―を装って数多くの少女達にアプローチ。レスリー・ウェクスナーは それを野放しにしただけでなく、彼の10億円のマンハッタンの邸宅をタダ同然でエプスティーンに譲るなど、非常に不明瞭な部分が多かったのが2人の関係。
アメリカではエプスティーンの資産がブラックメール、すなわち未成年の少女と関係したVIP達からの口止め料によって築かれたとの憶測がもう何年にも渡って囁かれているのだった。 エプスティーンは少女と関係したVIP達の様子をすべてビデオに収めて保存しており、どのVIPに何時、どの少女をあてがうかをアレンジし、その克明な記録を 残していたと言われるのがギレーン。

近年ではエプスティーンもギレーンもフィランソロピスト(慈善家)としてのIDを確立。エプスティーンはハーバード大学、MITを含む多数の一流校やビルゲイツ財団、クリントン財団等に高額の寄付をしてきた存在。 一方のギレーンは慈善団体2つを率い海洋環境のアクティビストとしてレクチャーを行ってきた身。 しかしながら昨今のアメリカでは フィランソロピスト・ビリオネアを一括りにして ”ビッグ・フィランソロピスト” と呼び、「弱者を救い、世の中を変える」と謳っては財力と政治力を拡大する化けの皮がはがれてきたところ。 その中にはビル・ゲイツ、ジェフ・べゾスの名前も含まれているけれど、エプスティーン & ギレーンのフィランソロピーも、同様にコネクションとパワーを拡大するためのもの。
ギレーン逮捕後にメディアが報じていたのが、彼女がFBI捜査に協力したら困るVIP達のリスト。その中にはトランプ氏、クリントン元大統領、アンドリュー王子といったこのスキャンダルで必ず名前が出る3人に加えて、 エプスティーンの弁護士でハーヴィー・ワインスティンやトランプ大統領らをクライアントに持つ有名弁護士、アラン・ダーショウィッツ、同じく弁護士でクリントン弾劾裁判の訴追、トランプ弾劾の弁護を行ったケネス・スター、 映画監督のウッディ・アレン、イスラエルのエフード・バラク元首相等の名前が挙がっており、加えて一般人が名前を聞いて誰だか分からないようなビリオネアの名前も かなり含まれているとのこと。
現在メディアが盛んに騒いでいるのは「今度こそ刑務所で"自殺"をさせないように」ということで、 週末にはギレーンの友人が「真相を知り過ぎている彼女の命は狙われている」とメディアを通じて警告したばかり。 実際に今回のFBIによるギレーンの逮捕は真相を暴くためのものなのか、それとも疑惑の生き証人の口封じをするためのものなのかは一般人には全く分からないのだった。

執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。
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