Oct. 7 〜 Oct. 13 2019
2020年に継続する2019年の
フード&ドリンクのメインストリーム・トレンド
今週のアメリカでは、トランプ大統領の弾劾に向けたウクライナ疑惑の捜査が2人目のホイッスルブローワーの出現によって大きく進展。
毎日のように新たな事実が発覚しては大報道になっており、それを受けて遂に過半数を超える52%のアメリカ国民が大統領の弾劾を支持する世論調査結果が出ているのだった。
木曜には大統領の個人弁護士、ルディ・ジュリアーニと深く関わるウクライナのフィクサー2人が片道航空券で国外に逃亡する直前にダラスの空港で逮捕され、
金曜には非公開の下院喚問でそのフィクサー2人がトランプ政権との癒着によって得られる金銭的メリットをトランプ氏に解雇された元ウクライナ大使が証言。
さらには辞任したばかりのエネルギー省長官で2016年の共和党大統領候補、リック・ペリーの疑惑関与も伝えられる状況。
その一方で与党共和党内からも問題視されているのは先週末にトランプ氏がシリア北部からのアメリカ軍撤退を命じ、
現地でクルド人浄化を企てるトルコに対して事実上のGoサインを出し、それまで何年にも渡ってアメリカ軍と共に戦ってきたクルド人を見捨てる決断を独断で下したこと。
この決断には国防省も驚いたことが伝えられており、大統領は経済政策の脅しによってクルド人に対して連日激化するトルコ軍の攻撃をけん制しているものの、
実際にはトルコ軍が壊滅的なダメージを現地に与える時間的猶予を与えている印象が否めないのだった。
さて景気が良いとメディアが言う割には外食回数がどんどん減っているのがアメリカ社会。
でも今では多くのレストランがグラブハブやUber Eats等を通じて
フード・デリバリーを行うので、レストランの中には来店客の減少をデリバリー・ビジネスで補っているところも多いと言われる状況。
ちなみにアメリカでは引き続きアジアン・フードが人気であるけれど、
日本食ブームは一段落しつつあって、現在人気が上昇しているのはコリアン・フードとシンガポーリアン・フード。
それと同時に中東のフードへの関心がここへ来て大きく盛り上がっているのだった。
そんな国籍を抜きにした2019年のフード&ドリンク・トレンドで2020年にも継続する勢いと言われるものをご紹介すると、
まず筆頭に挙げられるのが ”Glazing Table / グレージング・テーブル”。
これは自宅に友人を呼んでディナーやランチをする際に、まるで立食パーティーのバフェ・テーブルに座っているかのようなセッティングでもてなすこと。
ここで最も大切なポイントはホストが料理をせず、ストレス・フリーにゲストを迎えること。
具体的には購入したスナック、アペタイザー、肉や魚のバラエティ、フルーツ、デザート等のサーヴィング・フード一式を
所狭しとテーブルにディスプレーして、ホストが忙しく動き回ることなく、ゲストと一緒にテーブルで食事を楽しむというコンセプト。
フードのバラエティに加えてクリエイティブなディスプレーがグレージング・テーブルの醍醐味で、多くの人々がディスプレーのアイデアを得るソーシャル・メディアはもっぱらピンタレスト。
人数が多くテーブルが大きい場合にはアペタイザー、デザート等の各フード・カテゴリーを複数の場所に振り分けることにより、
誰もが全てのフードに簡単にリーチ出来るようにするのが大切なポイント。
アメリカ人はそもそもパーティーと言えば着席よりも立食を好む傾向にあるけれど、苦労してコース料理を作るよりずっと評判が良いのがグレージング・テーブルで、
先にデザートを味わって、後からアペタイザーやスナックを食べる等、ルールを無視して食事を味わえるのもゲストに喜ばれる要因。
フードはゲストが持ち寄ったもので構成される場合もあるのだった。
写真上中央のようなブランチ・パーティーの場合も、テーブル一杯にフルーツや、ジャム、ミルク・ボトル等を並べることによって、
単にワッフル、クロワッサン、ヨーグルト、グラノラをサーヴィングするだけのオケージョンがゴージャスに見えるのがグレージング・テーブル。
そのグレージング・テーブルにはもう1つの解釈があって、それは立食のバフェ・テーブルをとんでもなく豪華でバラエティ豊富にするというもの。
写真上右はデザートのみのグレージング・テーブルで、並んでいるのは安価なスナック菓子からドーナツ、クッキー、マシュマロなど庶民的なものが多いけれど、
これだけの規模でセッティングするとゲストは大喜び。意外に大人たちが何年も食べていなかったような駄菓子を喜んで食べるので、
お金を掛ける必要はなく、ゲストが様々なアイテムをトライ出来るように小さなサイズを集めてディスプレーするのが喜ばれるポイント。
今やファストフード・レストランもケータリングをする時代なので、
そんなファストフード・メニューは男性ゲストが多いパーティーのグレージング・テーブルには欠かせない人気アイテムになっているのだった。
2019年に自宅でのクッキングのメインストリーム・トレンドになっているのがフォイル・クッキング・フード。
これは見ての通り、フォイルに包んでオーブンに入れておくだけで出来上がる料理。
キャリア・マザー達が前夜に下ごしらえをして、帰宅した途端にオーブンを温めて20分ほど焼き上げれば出来上がるのがフォイル・クッキング・フードで、
その多くが1人分の肉、もしくは魚と野菜を1つのフォイルに包んだもの。
オーブンの中が汚れることが無く、焼き上がったフードはフォイルに乗せたままサーヴィングするので、お皿を洗う必要さえないという
ローメンテナンスぶり。それでいて焼き立ての美味しさが味わえるとあって、
フォイル・クッキング・フードのメニューの検索は2019年に800%アップしたことが伝えられるのだった。
さて2019年のアメリカと言えば、ヴィーガン・ミートが大ブレイク中。遂にマクドナルドも先週ヴィーガン・バーガーをメニューに加えることを発表しているけれど、
2019年にトレンディングになったダイエットがそのヴィーガンとパレオ・ダイエットのハイブリッド、”ピーガン・ダイエット”。
パレオ・ダイエットは狩猟を行っていた古代の人々の食生活を真似た肉、魚、野菜&果物中心の食事で、砂糖や炭水化物、加工食品を食べないストリクトなダイエット。
それをヴィーガン・ヴァージョンにするということは、ヴィーガンの食生活から砂糖や炭水化物、加工食品を除去することを意味するので、
言ってみれば何が楽しくて生きているのか分からないような食生活。
でも今やヴィーガン・ミート、ヴィーガン・チーズ、アーモンド・フラワーのパンがあるのでチーズバーガーが食べられたり、
カリフラワーのクラストのビーガン・ピザも食べられるとあって、それほど惨めな食生活ではないと言われるのがピーガン・ダイエット。
私は現時点では未だ実際にピーガン・ダイエットをしている人には出会ったことが無いけれど、
パレオ・ダイエットに代表される炭水化物カットのダイエットをしている人については、ブレイン・フォッグと呼ばれる脳のエナジー不足に加えて、精神的に落ち込み易くなるというのが
一般に指摘される問題点なのだった。
ドリンク系のトレンドでは、2018年から引き続きトレンディングになっているのが入眠ドリンク。
写真上左2枚は入眠ドリンクのSom Sleep / サム・スリープ。
ドラッグ・フリー、グルテン・フリー、デイリー・フリーのローカロリー・ヴィーガン・ドリンクで、
含まれているのはメラトニン、マグネシウム、ヴィタミンB6 など安眠を約束するヴィタミンやミネラル。
これを就寝時間の30分前に飲むというもので、CUBE New Yorkで取り扱っているドリーム・ウォーターも
このカテゴリーに入るもの。
人によっては入眠剤を摂取するよりも こうしたドリンクを飲む習慣をつけた方が、それを飲むだけで脳と身体が寝る体制に入るというメリットがあるようなのだった。
写真上右2枚は、過去数年売り上げを大きく伸ばしてきたノンミルク、すなわちココナッツ・ミルク、アーモンド・ミルクといった
アルト・ミルクのカテゴリーに新たに加わったオーツ・ミルク。
あっさりしたライト感覚の風味を好む人が多く、2019年に大きく人気と売上を伸ばしているのだった。
さらに2019年に大きくニーズとバラエティが拡大したのがCBD入りのフード&ドリンク。
CBDはマリファナに含まれる幻覚をもたらす成分 THCを除去したもので、リラクセーションをもたらし、
身体の痛みや炎症を緩和し、快眠をもたらす効果を持つもの。
現在アメリカでは33の州で医療用のマリファナが、10の州でレクリエーショナル用途を含むマリファナ使用が全面的に合法化され、
ニューヨークを含む15の州でレクリエーショナル・マリファナの使用が非犯罪扱いになっており、
それを受けてマリファナをフードやドリンクで摂取する傾向がどんどん高まっているのだった。
レストランが全コースの料理にCBDの成分を取り入れたメニューを開発したり、
CBD入りのオリーブ・オイルやメープル・シロップ、CBDガミーベア、CBDティー、CBDコーヒー等
様々なアイテムがCBD入りで登場しているけれど、
今後さらに進むと見込まれるのがそのグルメ化。
マリファナが合法化されたカリフォルニアでは料理、ワイン、マリファナ全てのペアリングを行うマリファナ・ソムリエまで登場している状況。
マリファナにもレモン&シトラス系、レザー&ウッド系等、ワイン同様の風味があって、
それを料理とワインにペアリングすると食事もワインも更に美味しく味わえるとのこと。
ハッピーになり過ぎて大金を払ってしまうリスクがあるけれど、
飲食業界にとってCBDが新たなドル箱ビジネスとして捉えられているのは紛れもない事実。
ちなみにニューヨークではレクリエーショナル・マリファナの非犯罪化を受けて、2019年春先にはバーでCBDカクテル、カフェでCBDカプチーノや
CBD入りのブラウニー等が販売されていたけれど、突如市政府がその販売禁止を決めたことから
カフェやレストランでCBDが没収され、ビジネスに大打撃を与えた一方で、
そのドリンクやスナックをリラクセーションや痛み止め代わりにしていた来店客たちが落胆して困り果てたことが伝えられているのだった。
全体的なアメリカの風潮としては料理やエンターテイニング(おもてなし)には手や時間を掛けず、
肉離れ、2週間前のこのコーナーでお伝えしたアルコール離れを含むヘルシー志向にはさらに拍車が掛かると見込まれるもの。
CBDにしても処方箋の入眠剤や痛み止薬の摂取を止めるためのヘルシー・アルタナティブと見なされる傾向が顕著なのだった。
執筆者プロフィール 秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。 |
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