Oct. 4 〜 Oct. 10, 2021

"Oil Spill, NBA Fraud, Squid Game, etc."
NBA保険金詐欺, セクハラの嵐, 「Squid Game」メガヒットの背景, Etc.


今週のアメリカではフェイスブックやインスタグラムのグローバル規模の7時間のダウンに始まり、同じくフェイスブックのホイッスルブローワーの議会証言、 予算案を巡る議会攻防などが大きく報じられたけれど、連日2番目、3番目のニュース・ネタとして報道され続けたのが、カリフォルニア州で起こった石油パイプラインの 原油漏れ事故。
当初は40年前に設置されたパイプの老朽化がオイル漏れの原因と見られていたものの、実際の原因は船が錨を下ろした際にパイプラインを直撃して損傷させたこと。 またパイプ内の油圧が下がっているにも関わらず、石油供給をシャットダウンせずに12時間も放置して 自然災害を悪化させたことで問われたのが管理側の責任。 オレンジ・カウンティのビーチには流れてきた原油が帯のような黒いラインを描いており、原油まみれの魚や鳥の死骸が流れ着いているだけでなく、 そのケミカル臭はマスクを着用していても長時間の清掃作業が危険なレベル。
環境問題支持派は これを機に原油離れをして、よりサステイナブルなエナジー・ソースへの切り替えを求めているけれど、 週末に入ってからはオイル漏れの原因が船の錨によるダメージだけではなく、微量のオイルの漏れが1年ほど前から起こっていたことも明らかになっているのだった。



元NBAプレーヤー18人の稚拙な保険金詐欺


今週、木曜に大きく報じられたのが元NBAプレーヤー18人が保険金詐欺の容疑で逮捕・訴追されたニュース。
これはNBAのヘルス&ウェルフェア・ベネフィット・プランを利用して18人の引退したプレーヤーが400万ドルを 騙し取っていたという詐欺事件で、一連の容疑の中心的存在になっていたのが、ネッツがブルックリンに本拠地を移す前のニュージャージー・ネッツ時代に 4年間だけプレーをしていたテランス・ウィリアムス。 そのからくりは 歯科やカイロプラクティックの行われていない治療に対して保険金の支払いを求めるというもので、 詐欺がバレたのは 容疑者側の不用意でずさんな請求のため。
例えば元ヒューストン・ロケッツのグレゴリー・スミスは台湾リーグでプレーをしていた2018年12月、現地の試合に出場していた日に ビバリー・ヒルズの歯科医で高額治療を受けたレシートを提出。また複数のプレーヤーが全く同じ13本のルートカナルの治療を同じ日に行った レシートを提出するなど、バレない方がおかしいレベルの稚拙な詐欺。 この詐欺行為に仲間のプレーヤーを誘い、キックバックを受け取っていたのが主犯格のテランス・ウィリアムスで、キックバック総額は23万ドル。 逮捕された18人は全員無罪を主張し、ペーパーワークの間違いで片付ける姿勢を見せているけれど、 1人当たりのプレーヤーが騙し取っていた金額は単純計算で 日本円にして2100万円程度。
アメリカは弁護士費用が高額なので、無罪を主張して裁判に持ち込む場合はその殆どが裁判費用で消えてしまう計算。 罪を認めれば弁護費用は若干安くなるものの、犯歴がついて、着服金を全額返却した上での罰金は避けられない状況。 最悪なのは裁判に持ち込んで敗れた場合で、高額弁護費用、着服金返済、犯罪歴と罰金の全てが降り掛かってくるのだった。
NBAはプロスポーツの世界で最も高給取りのプレーヤーが多いリーグであるものの、有名選手とテランス・ウィリアムスのような短いキャリアで終わる 無名選手の給与のギャップが大きいのは言うまでも無いこと。また著名選手でさえ、引退後に自分のライフスタイルを支えるだけの収入が得られず 破産に追い込まれるケースが少なくないのがスポーツ界全般。そのためNFLはオフシーズン中の現役プレーヤーに対して、ファインナンシャル・プランニングの教育プログラムを提供しているほど。
今回逮捕された18人のプレーヤー達が持ち合わせていなかったのが 偽の保険金請求が逮捕に値する犯罪であると認識するだけの判断力や常識。 このずさんな保険金詐欺手段は、学生時代からバスケットボールしかやって来なかったプレーヤー達が 詐欺師でさえイージー・マネーを得るためにもっと周到な準備をしていることさえ知らない様子を窺わせるものなのだった。



今週報じられたセクハラの嵐


先週の日曜に起こったのが 女子プロサッカー・リーグの全試合が 選手による抗議活動のためにキャンセルされる事態。 過去2年以上に渡って男子リーグ同様の給与支払いを求めて闘っていた女子プロサッカー選手であるけれど、今回は選手に対するコーチのパワハラ、セクハラに対する リーグの対応不十分に抗議するもの。女子プロサッカー・リーグでは今年8月以来、コーチ3人が解雇され、先週末にはリーグの女性コミッショナーが辞任に追い込まれているのだった。
女子体操選手同様、女子サッカー・リーグでも選手達は2015年から複数のコーチによるセクハラ、パワハラの被害を訴え続けてきたものの、それがことごとく無視されてきたとのことで、 2週間前に解雇されたコーチ、ポール・ライリーに至っては、口頭のパワハラ、セクハラだけでなく複数のプレーヤーに対してオーラル・セックスを強要していた被害が訴えられている有り様。 コーチは選手より遥かに高給取りで、自分に対する不平や抗議を申し立てたプレーヤーの選手生命を奪う采配が許されてきた一方で、 プレーヤー達は男子リーグよりも稼ぎが多いにも関わらず、ワールドカップに出場する有名選手にならない限りは年俸僅か3万ドル程度。 別の仕事をしないと生計が立てられない状況で、彼女らが給与だけでなく、人権という見地からも酷い扱いを受けてきた実態が報じられていたのだった。

同じスポーツの世界ではNFLジャクソンヴィル・ジャガーズのコーチ、アーバン・メイヤーが自らが経営するレストランのバー・カウンターで、 24歳の女性に対して身体に触れる等の痴漢行為をしていた様子を捉えたビデオがヴァイラルになり、孫ができたばかりのメイヤーが猛批判を浴びて謝罪をしたのが今週。 またモデルのエミリー・ラタコウスキーは 今週発売になった自らの著書で、彼女を一躍有名にしたロビン・シックのミュージック・ビデオ「Blurred Lines」の撮影中、 酔っ払ったロビン・シックから痴漢行為を受け、キャリアに影響することを恐れて泣き寝入りを強いられたことを初告白。
そうかと思えばデンマークの元女性首相、ヘレ・トーニング=シュミットが今週明らかにしたのが、昨年12月に死去したジスカール・デスタン元仏大統領に 2002年の大使館ディナーの際、テーブルの下で太腿を触られる痴漢行為を受けていた事実。 ちなみにジスカール・デスタン氏は、女性ジャーナリストに対しても同様の痴漢行為を訴えられていた人物。 さらにはトランプ陣営のキャンペーン・マネージャー、コリー・ルワンドウスキーが、ラスヴェガスで行われた資金集めのパーティーで 大口ドナーの既婚者女性に対して性的不適切行為を行ったことで解雇されたのも今週。

性的不適切行為は権力や名声がある男性だけのものでなく、 2021年に入ってから アメリカで増えているのがレイプを含む性犯罪。 今週にはハーレムのアパートで女性の後をつけてビルに入った男性が、女性が鍵を開けて自宅に入るタイミングを見計らって 後ろから一緒に押し入ろうとして 間一髪間に合わず、扉が閉まり 鍵がかかってしまったことから 悔しそうにその場を立ち去る様子の防犯カメラ映像が公開されているけれど、 不適切行為を行うのが著名男性でも一般男性でも、報じられているのは 実際に起こっている僅か一部に過ぎないのは言うまでも無いこと。
そんな状況が影響して メノポーズによる性欲減退とは無関係な若い女性の間で現在増えていると言われるのが ”Asexuality / アセクシュアリティ”。 これはセックスに関心を示さない人々で、ヘテロ・セクシャル、パンセクシャル、バイセクシャル等と共に今やセクシャル・プリファレンスの中に数えられるもの。
アメリカでは今週もテキサス州が可決した厳しい中絶禁止法案を巡って大騒ぎとなっていたけれど、この法案のように妊娠6週間以降、レイプでも近親相姦でも中絶を禁止するのであれば、 まずはもっとレイプを含む性犯罪を取り締まるところからスタートすべきと言えるのだった。

 

Netflixのメガ・センセーション、「Squid Game」


今、世の中であまりに話題になっていることから、遂に私も今週観てみたのがNetflixのシリーズ「Squid Game / イカゲーム」。 9月17日に全世界でストリーミングが開始された同シリーズのストーリーは、多額の負債を抱えた人々が謎のゲームに参加し、勝ち残って巨額の賞金を得るか、脱落して命を落とすかに挑むストーリー。 公開から28日間に6500万世帯で視聴され、ネットフリックス史上第6位のデビューを飾った同シリーズは、TikTok上でも 公開後12日間で「Squid Game」のハッシュタグが付いたビデオが14億もポストされる猛烈なバズをクリエイト。 現時点でNetflixにとってノンイングリッシュ・コンテンツの最大のヒットになっているだけでなく、今の勢いで行けば「Bridgerton / ブリジャートン家」を抜いて 史上No.1のストリーミング数を記録することが見込まれるのだった。

「Squid Game」が視聴者に大きくアピールしている要因の1つは「アンフェアな社会の中で 金銭的苦境とプレッシャーに追い詰められた人々が、そのまま生き続けるより一獲千金を求めて命懸けのゲームに挑む デスパレ―ションが共鳴を呼んでいること。 中にはもっと掘り下げて、このストーリーを「自由意志」、「資本主義」、「必要のために手段を選ばない人々」という現代社会の側面と結びつける見方もあるけれど、 そんな藁をも掴む心理のゲーム・プレーヤー達がエモーショナルに描かれる一方で、脱落したプレーヤーの命が いとも簡単に奪われる遊び感覚のヴァイオレンスやその残虐さが淡々と描かれる対比が モダン・ジェネレーションにアピールしていると言われるのだった。
それと同時に公開直後から問題視さてきたのが残虐シーンの数々で、 ベルギーの学校では「Squid Game」の最初のチャレンジ、「だるまさんが転んだ (英語ではRed Light, Green Light)」を生徒達が休み時間に行い、 脱落した生徒が番組内のように射殺されるのではなく、顔を殴られるペナルティにアレンジして遊んでいたことで大問題になっていたのだった。

「Squid Game」は英語圏に住む韓国人から「台詞が英語に翻訳される段階で表現や一部のストーリーが捻じ曲げられている」と批判されており、 私は日本語で観ることにしたけれど、同シリーズはNetflixが根気よく続けてきたインターナショナル・コンテンツへの投資の大成功例。 ネットフリックスは現在40カ国でコンテンツ制作をしているけれど、アメリカ社会は長きに渡って 字幕映画を毛嫌いする傾向が顕著で、他の先進諸国に比べて外国映画の興行成績が極めて低かった国。 しかしNetflixが複数の言語オプションを設けて以来、急速に外国のコンテンツに対するアレルギーが改善されており、 パンデミックで国民の多くがNetflixを観続けた2020年には 97%のサブスクライバーが最低1本の外国製作コンテンツを観るに至っているのだった。

現在アメリカは、人々の限られた時間を複数のストリーミング・サービスが奪い合う戦争状態。 そのためディズニー、アマゾン・プライム等も 既にアイデアが出尽くした感のあるハリウッドだけでなく、異なるカルチャーや視点の斬新な展開や 製作費の安さを求めて 以前より力を入れるようになったインターナショナル・コンテンツ。 特に韓国製エンターテイメントについては 2020年に映画「パラサイト」がオスカーで作品賞を受賞し、 BTSが大人気を博してからというもの 極めてオープン・マインドになって来たのがアメリカのオーディエンス。
また食の世界でも現在アメリカではコリアン・レストランが増えている真最中。これまでアジア系フードで高額レストランが存在するのは圧倒的に日本食であったけれど、 ここ2年ほどで そこにコリアン勢が大きく割り込み始めているのだった。

執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。
Shopping
home
jewelry beauty ヘルス Fショップ 購入代行


★ 書籍出版のお知らせ ★



当社に頂戴した商品のレビュー、コーナーへのご感想、Q&ADVへのご相談を含む 全てのEメールは、 匿名にて当社のコンテンツ(コラムや 当社が関わる雑誌記事等の出版物)として使用される場合がございます。 掲載をご希望でない場合は、メールにその旨ご記入をお願いいたします。 Q&ADVのご相談については掲載を前提に頂いたものと自動的に判断されます。 掲載されない形でのご相談はプライベート・セッションへのお申込みをお勧めいたします。 一度掲載されたコンテンツは、当社の編集作業を経た当社がコピーライトを所有するコンテンツと見なされますので、 その使用に関するクレームへの対応はご遠慮させて頂きます。
Copyright © Yoko Akiyama & Cube New York Inc. 2021.

PAGE TOP