Dec 7 〜 Dec 13 2020

"You Need Vaccine Passport to Having Fun!?"
ワクチン・パスポートが2021年の行動半径を決める!?


今週のアメリカでは、既に過去最悪レベルに達していたコロナウィルス感染に、サンクスギヴィング休暇の旅行や集まりのスプレッダー効果が加わって、 金曜1日の新規感染者数は約30万人、死者数は3309人という過去最高を更新。土曜日朝の段階でアメリカの感染者総数は1585万人を突破。死者総数は29.5万人で、週明けにも30万人を超えることが見込まれるのだった。
同じ金曜にはワシントン州の感染リサーチャーが2021年4月1日までにアメリカ国内の死者総数が50万2000人に達すると予測。それを裏付けるように IHME(Institute for Health Metrics and Evaluation)も、アメリカの死者数がピークに達するのは1月半ばで、向こう4ヵ月間、全米48州で集中治療室がパンク状態になる見通しを発表。 ワクチン投与がスタートしても感染拡大のペースにまだまだ追い付かない実態を窺わせているのだった。
そんな感染悪化や新たなロックダウンを受けて、木曜に発表されたアメリカの新規失業保険申請者数は ダウジョーンズの予測である73万人を大きく上回る85万3000人。先週より13万7000人のアップになっているのだった。



医療関係者と共に9州で優先的にワクチン投与が行われるのは?


今週のアメリカの関心はFDA(食品医薬品局)によるファイザー社ワクチン緊急使用認可に集中していたけれど、木曜に専門家23人のパネルが17-4で承認にGOサインを出したのを受けて、 正式にワクチンが認可されれたのは翌日金曜日、午後10時過ぎのこと。メジャー・ネットワークは番組を中断して「コロナウィルスのゲームチェンジャー」として これを歓迎する速報を報じていたのだった。
既にアメリカでは先週からワクチン投与の準備がスタートしており、週明けから投与が始まるけれど、 フェイズ1で最優先に投与されるのはCDC(疾病予防センター)によってグループ1とカテゴライズされた人々。そのグループ1 も以下の優先順位で3段階に分かれているのだった。
・グループ1-A:医療関係者と養護施設の入所者とスタッフ
・グループ1-B:学校教師、消防警察官、交通機関の職員、食料供給者等のエッセンシャル・ワーカー
・グループ1-C:65歳以上の高齢者と、ハイリスクの既往症を抱える人々
現在Uberは、フードデリバリーや医療関係者の送り迎えを担う同社ドライバーをエッセンシャル・ワーカーとして 優先グループに加えるよう各州政府に働きかけていることが伝えられるけれど、一足先に投与がスタートしたイギリスで今週レポートされたのが食物アレルギーがある人々の副作用。 その一方でマサチューセッツを含む9つの州でCDCのグループ1に属していないにも関わらず、優先的な投与が決定しているのが 刑務所の囚人。これは刑務所が人口密集居住区と見なされ、感染が急速に広まって久しいためで、 凶悪犯でない服役囚はパンデミック以降、人道的な見地から自宅軟禁になるケースが増えていたのだった。
囚人に優先的にワクチンを投与するということについては、ワクチンに疑心暗鬼な人々にとっては ワクチンの安全性を確認するモルモットにしているように見受けられる一方で、 一日も早くワクチンを大勢に投与して経済を復興させるべきと考える人々にとっては優先順位を間違えているように見受けられる行為なのだった。



Vaccine Passport Apps Coming To Your Phone


ファイザーのワクチンは超低温で保存しなければならないことから、現在思わぬブーミング・ビジネスになっているのがドライアイス業者。 景気が良くても、悪くても売上に影響しない地味なビジネスが、大手から小規模業者に至るまで夜を徹してドライアイス出荷に追われていることが伝えられるのだった。
アメリカでは1月末までに5000万人、2月末までにはアメリカ国民の3分の1弱に当たる1億人に対してファイザー社及び、認可目前のモデルナ社のワクチンが投与される見込み。 どちらも2回の注射を17〜21日の間隔を開けて行う必要があり、それ以上間隔が開いた場合には1回目からやり直す必要があるとのこと。 ワクチン効力の持続期間は約1年と言われるのだった。
アメリカではワクチン接種に消極的な人々が決して少なくないのは先週のコラムでも書いた通り。 でもそんな疑心暗鬼な人々に接種を促すと同時に、経済復興のカギを握ると言われるのが、俗に言う ”ワクチン・パスポート”。 すなわち「ワクチンを接種した」という証明で、Vコード、IBMのデジタル・ヘルス・パス・ウォレット、クリアーのヘルス・パスなどが 実用化に動いているのがリアルタイム・ワクチン・データのスマートフォン・アプリ。 そしてこれによって決まると言われるのが2021年の行動半径。
というのもレストラン、ブロードウェイを含むありとあらゆるシアター、スポーツ・アリーナが フル・キャパシティに近い営業を早期に再開するために不可欠なのがワクチン・パスポート。 既に「ワクチン・パスポートが2021年で最も重要なIDになる」と予言する声さえ聞かれているのだった。



ワクチン・パスポートが無ければスポーツ観戦にもコンサートにも行けない!?


メジャーリーグ・サッカーのLAギャラクシーを含む複数のチームが、来シーズン、アリーナを観客で埋めるリオープニング・プランの一環として 導入を発表しているのがスマートフォンのワクチン・パスポート。 またチケット・マスターもワクチン・パスポートをコンサートやイベント会場への入場パスにする見込みで、 同社の場合、ワクチン接種だけでなく、ウィルス・テストの陰性結果を組み合わせたダブル・チェックで導入を検討中とのこと。 こうした情報がアプリのQRコードになれば 入場チェックの簡略化とスピードアップが実現するのは言うまでもないこと。
またナイトクラブやジムもワクチン・パスポートをリクワイアメントにすれば通常営業が可能になり、 航空会社もワクチン・パスポート所持者限定フライトを設けることにより、機内におけるマスク着用を巡る乗客とのトラブルを回避することが出来るのだった。 職場においては、法律上 雇い主は従業員にワクチン接種を強制することは出来ず、フェイスブックからFDNY(NY消防局)までもが スタッフに対して示しているのがワクチン接種は個人の選択という判断。 しかしニューヨーク州政府内では「州民に対してワクチン接種を義務付けるべき」との声が聞かれる一方で、 オーストラリアなどはワクチン接種をしていない人に対して入国を拒否する可能性を示唆している状況。
私の知り合いや友人はこぞって「ワクチンが多くの人々に投与されて、安全性が確認できるまで接種したくない」という意見で、 私も全く同意見。その間コンサートやレストランに行けなくても一向に構わないけれど、止む無く接種を受けるとすれば「日本に一時帰国するためにワクチン接種が必要」という場合。 どんなにワクチンに疑心暗鬼であっても、2021年は同様の止むを得ない理由や行動半径の制限を解除するためにワクチンを接種する人々が増えると見込まれるのだった。

執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。
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