Nov 30 〜 Dec 6 2020
人種別にこれだけ違う!ワクチン接種を望むか、望まないか
今週もアメリカで最も報道時間が割かれていたのが、過去最悪のレベルに達しているコロナウィルス感染拡大のニュース。
アメリカではサンクスギヴィングの休暇前から1分間に1人以上の割合でコロナウィルスの死者が出るようになっており、
今週には入院者数が初めて10万人を突破。
そんな中、金曜には11月のアメリカの雇用統計が発表され、11月に新しく生み出された仕事の数は24万5000。10月の61万の半分以下であるだけでなく、
予想を22万4000下回る数。失業率は0.2%下がって6.7%となっているけれど、これには職探しを諦めた人、
Uberのドライバーなどで1時間でも働いた人は含まれていないのは以前からこのコーナーでご説明している通り。
11月はホリデイ・シーズンを控えて季節労働者を雇うビジネスが多いことから、通常なら雇用が増える月。
しかし今年は再びロックダウンに突入することを恐れて経営者が新たな労働力を雇わない様子が窺えるのだった。
トランプ氏が自らをパードン(恩赦)する歴史上初の大統領になる日!?
コロナウィルス関連以外では、引き続き不正選挙を訴え、敗北を認めないトランプ陣営の動向が報じられていたけれど、
選挙から1ヵ月が経過したこともあり、すっかり三番ネタ。金曜にはカリフォルニアが正式に55人の選挙人をバイデン氏に投じたことから
締め切りの12月14日を待たずして当選に必要な270を上回る279の選挙人をバイデン氏が確保しているのだった。
しかし毎週のように新しい訴訟を起こしては熱心な支持者の希望を繋いでいるトランプ氏に対しては、選挙直後から1億7000万ドルの寄付が寄せられており、
敗北を認めないまま2024年の選挙出馬を謳ってさらに献金を増やすことが見込まれる状況。
その一方で今週には司法省が政治献金と引き換えにトランプ氏からパードン(恩赦)を買い取っていた前科者の捜査に入ったことが報じられていたけれど、
通常 大統領が任期終了直前に行うパードンを任期中から連発してきたのがトランプ氏。
そして任期終了前にトランプ氏が行うであろうとメディアが報じるのが自分とその家族に対するパードン。これが行われると今後いかなる罪で訴追された場合も、無罪放免を意味するのだった。
大統領が自分とその家族にパードンを行うのは歴史上初めて。合法ではあるものの かつての常識では考えられなかったこと。
訴追される容疑が確定する前にパードンが行われた例は過去に1度だけあり、それはニクソン大統領がウォーターゲート事件で辞任をした際。
後任のフォード大統領がニクソン氏に見込まれた訴追が行われる前にパードンを行っているのだった。
しかし大統領のパードンが効力を発揮するのはフェデラル・クライム、すなわち連邦レベルの犯罪のみ。
目下NY、ワシントンDCの判事がトランプ氏、イヴァンカ&エリック・トランプらに対して立件を進めている
政治資金規正法違反、脱税等の容疑に対しては無効と見なされるのだった。
オバマ全大統領が指摘した黒人層がワクチンを拒む歴史的理由
さて今週月曜にはイギリスが世界に先駆けてファイザーのコロナウィルス・ワクチン使用を緊急認可しているけれど、それを受けてトランプ政権が
FDA(食品医薬品)に早期認可の圧力を掛けた一方で、アメリカとEUの医療関係者の間で聞かれていたのがイギリスの早過ぎる認可を無責任呼ばわりする声。
アメリカ国民の間でも、早過ぎる開発スケジュールやその背後の政治的圧力がワクチンに対する疑いを高めており、
接種直後に発熱で寝込む副作用が当たり前のように軽視されていることを恐れる人々も少なくないのだった。
でも9月の段階での世論調査に比べると「ワクチンを接種する、多分接種する」と回答したアメリカ国民は10%アップして61%。
残りの39%は「絶対接種しない、恐らく接種しない」という考えで、中でも58%が「接種しない」と回答しているのが最もコロナウィルスの
感染者と死者数が多いアフリカ系アメリカ人。
それを危惧して今週にはオバマ前大統領が、メディアとのインタビューを通じて黒人層に対してワクチンの安全性を訴え、
それを立証するためにTVのライブ放映、もしくはビデオ撮影でクリントン、ブッシュ前大統領を含む歴代の3大統領がワクチン接種を行う用意があるとまで語っているのだった。
そのインタビューの中で オバマ氏がアフリカ系アメリカ人がワクチン、及び医療行為を信用しない理由として挙げたのがタスキギー梅毒実験。
これは連邦公衆衛生局とCDC(疾病予防センター)が未治療の梅毒の症状を観察する目的で1932年に行った臨床実験。医療行為を無料で行う条件と引き換えにアラバマ州の600人の
黒人男性を対象に6ヵ月間行われる予定が その後40年間、メディアがその実態を暴くまで続いたもの。梅毒がペニシリンで治療可能になっていたにも関わらず、
被験者達に梅毒感染を知らせず、医療行為を行わなかったことから多くが命を落とし、その妻や子供が梅毒に感染した歴史上最も悪名高き医療実験。
これを大統領として初めて謝罪したのが1990年代のクリントン大統領で、
アメリカでは医療費が高額になる以前から、このスキャンダルが原因で黒人層が病院や医療行為を信じない傾向が脈々と続いているのだった。
国民の最低75%にワクチン投与が必要!?
今週にはCDC(疾病予防センター)が医療関係者、高齢者養護施設の入所者、スタッフを最優先にワクチンを投与し、その次がエッセンシャル・ワーカーという順番を発表しているけれど、
エッセンシャル・ワーカーの多くを占めるのがアフリカ系アメリカ人とヒスパニック系。でもヒスパニック系はその61%がワクチンを接種すると回答しており、
白人層もほぼ同じ63%。 それを遥かに上回る83%がワクチン接種に前向きな回答をしたのはアジア系。
理由としてはアジア系に医師が多いこと、白人層ほどはアンチ・ヴァックス(ワクチン反対)ムーブメントが広まっていないことが挙げられているのだった。
既にアメリカでは、ワクチンが認可された場合のドライブスルー投与のシミュレーション・トレーニングが行われ、
1日に行える投与の数や所要時間のデータが集められていたのが今週。同様のオペレーションは既にインフルエンザの予防接種でも行われてきたもの。
したがって着々とワクチン投与の準備が整っているものの、国民がアンケート調査でワクチンを信頼する指針にすると回答していたのが
コロナウィルス対策本部の感染症スペシャリストで、バイデン新政権でも感染症対策を引き続き担当することになったドクター・アンソニー・ファウチ。
彼が奨励すればワクチンを接種すると回答したアメリカ人は80%以上で、CDC、FDAといった政府機関の認可や奨励を遥かに上回る数字。
逆に最も国民が信頼していなかったのが、コロナウィルスを否定し続けてきたトランプ政権。
そのファウチ博士によれば、国民の最低75%がワクチンを接種しない限り、コロナウィルスの問題が解決することは無いとのことで、
そこまでワクチンが行き渡るのは2021年3月以降。
アメリカ国内ではワクチン投与がスタートしても、年末までにコロナウィルス死者数が30万人を超えると見込まれており、
ワクチンもその効力がどの程度持続するかは未だ分かっていないのだった。
執筆者プロフィール 秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。 |
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