Nov 16 〜 Nov 22 2020

"Bitcoin Bull Run, Be a Hodler"
今週の暴騰の理由が立証する2022年までビットコインを売るべきでない理由


今週のアメリカで最も報道時間が割かれていたのは、益々猛威を振るうコロナウィルスのニュース。 金曜には1日の新規感染者数が約20万人、死者数も2000人を突破。 同じ金曜にはファイザーがワクチンの緊急認可をFDA(食品医薬品局)に申請しているけれど、ファイザーのワクチンは2回注射の必要があり、 年内に流通されるのは2000万ユニット、すなわち1000万人分。 もう1つのモデルナのワクチンは12月中に2000万ユニットが流通可能になる見込み。
来週サンクスギヴィングの休暇を控えているアメリカでは 「サンクスギヴィング・デイを家族と祝うと、クリスマスには葬式になるかもしれない」と旅行や集まりの自粛が呼びかけられているけれど、 マスク着用さえ拒むアメリカ社会なので昨年の約半分とは言え、今年も240万人が飛行機で旅行をする予定。
その一方で米国民に信頼される感染スペシャリスト、アンソニー・ファウチ博士の発言力を落とすために トランプ氏が新たにコロナウィルス対策本部に雇ったドクタ―、スコット・アトラスは今週、各地方自治体の外出自粛規制に猛反対し、 サンクスギヴィングの集まりに高齢者を招くように推奨。 その理由として「For many people this is their final Thanksgiving」と語って大顰蹙を買っているけれど、 彼は何故コロナウィルス対策に雇われたのかが誰にも分からない 神経放射線科の専門医なのだった。



10年足らずで33万3333倍の投資!?


今週はビットコインが暴騰したことが金融系メディアで大きく報じられていたけれど、 世界の中央銀行がこぞって通貨の量的緩和をする中、インフレーション・ヘッジとして購入する人々が増えているのが昨今。 日本のようにデフレ傾向の国ほどビットコインへの興味や関心が薄い一方で、世界のクリプトカレンシーの約40%を所有しているのがアメリカ人。 その割合は2020年3月の段階で国民の15%程度で、殆どが男性。
パンデミック以降はロビンフッドのアプリを通じて購入する人々が増え、つい最近ではペイパルがアメリカ国内のみでビットコインの販売をするようになったので、 その数は更に増えている見込み。目下、新たにマイニングされたビットコインの70%を買い取っているのがペイパルで、2021年第1四半期からはこのサービスがグローバルになるので、 更に需要が増えることが確実視されるのだった。
そのビットコインは前回のブル相場のATH (All Time High/最高値)、2万ドルに迫る勢いで上昇中。 前回同様2万ドルをつけた段階で下がることを見込んだ人々が、既にソーシャル・メディア上で話題にしているのがエグジット・ストラトジー(出口戦略)。それほど売るタイミングが株より遥かに難しいのがビットコイン。 左上のグラフは過去にビットコインが売られたタイミングを示しているけれど、最も大きく売られたのはコロナダンプと呼ばれる今年3月で、その次が前回の大暴騰の直前。 ビットコインに投資をしている人の学歴とIQは株式投資をしている人より高いと言われるものの、それでも多くの人々が安い価格で売っては儲け損なう様子が見て取れるのだった。

今週、未だビットコインが6000ドル代だった2019年に私に薦められて1ビットコインを買い、コールドウォレットに入れて 持っているのを忘れて生活していた友達から 「何時売るのが良い?」と尋ねられたけれど、ビットコインはまだまだアンダー・ヴァリューの新しいアセット。なので「特にお金の必要が無いのならば2021年末から2022年まで持ち続けるべき」というのが私のアドバイス。
今週にはシティバンクが機関投資家のために発行するテクニカル・アナリシスのレポートで、2021年12月にビットコインが31万8,000ドルをつける予測をしていたけれど、 そこまでいかなくても多くのビットコイナーが信頼するストック・トゥ・フロー比率にも表れているのが2021年末に10万ドルに達する予測。
右上はビットコイナーの間でとても有名な2011年のツイートで、僅か6セントで1700のビットコインを購入し、30セントで手放した男性が その後ビットコインが8ドルをつけた段階で後悔している様子。もしこの男性が2万ドルまでホードル(Hodl/ビットコインをホールドする意味)した場合、僅か102ドル(約1万594円)の投資が 10年足らずで33万3333倍の3400万ドル(約35.3億円)になる計算なのだった。



今週火曜日にビットコインが上昇した理由


今週ビットコインが1万6000ドル代から一気に1万8000ドル代に急上昇したのは11月17日火曜日のこと。 この日に何が起こったかと言えば、2017年からSEC(証券取引委員会)のチェアマンを務めてきたジェイ・クレイトンが任期終了の来年6月を待たずに年内で辞任する発表。 その途端にソーシャル・メディア上ではこれを大歓迎するビットコイナーのリアクションで沸き返っていたけれど、 何故かと言えばジェイ・クレイトンは熱烈なアンチ・ビットコイン派。過去3年近くに渡ってビットコインETFが申請される度にその可能性を叩き潰してきた人物。 その彼が任期終了前に辞任するというのは、ビットコインのETFに遂にGOサインが出ることを意味するもの。 そうなればETFを通じて401K、ミューチュアルファンド等がビットコインをポートフォリオに加えることから、ビットコインのマーケット・キャップ(Market Capitalization/時価総額)が 1兆ドルを超えるのは時間の問題と言われるのだった。
ちなみに今週末の段階でビットコインのマーケット・キャップは3500億ドルで、世界最大の銀行であるJ.P.モルガン・チェイスの3490億ドルを抜いたところ。 今年の夏以降は機関投資家やビリオネア・インヴェスターによるビットコイン大量買いのニュースが頻繁に伝えられるけれど、中でもナスダック上場企業として 初めてビットコインを企業の準備資産にしたマイクロ・ストラテジー社は、過去3年の本業ビジネスの純利益が8000万ドル弱であったのに対して、 今年の夏に1万1100ドルで購入した3万8250ビットコインによる利益が1億ドルに達したことを10月末の第3四半期のレポートで発表。 これに触発された企業によるビットコイン買い占めが進む中、市場に出回るコインの数は今年に入ってから激減。 すなわちビットコインのオーナー達がこぞってホドラーになっているのだった。
その一方でビットコインは未だ市場が小さいだけに、1000ビットコイン以上を保有するホエール(クジラ)がたちが、 ブル市場で一儲けしようとする一般投資家を振り落とす動きを仕掛けるのは当然のシナリオ。 2017年のブルランの間には10〜30%の大暴落が7回起こっており、市場動向を熱心にチェックしては短期間で儲けようとする人ほど損をする結果に終わるのだった。



アメリカで進むゴールド離れ


ビットコインと共にインフレ・ヘッジになる資産、ゴールドのマーケット・キャップ(Market Capitalization/時価総額)は現在 ビットコインより遥かに大きい10.9兆ドル。 でも今後はゴールドからマーケット・キャップを奪うと言われるのがビットコイン。
上のビジュアルのヘッドラインにもあるように、今では機関投資家から一般投資家までもがゴールドからビットコインへの移行を始めており、 今週には7兆億ドルの資産を運用する世界最大のヘッジファンド、ブラック・ロックのCIO(Chief Investment Officer)で 金融界のレジェンド、リック・リーダーも CNBCとのインタビューで「ビットコインがゴールドに取って代わる」とコメント。その理由としてゴールドより遥かに機能的であることを挙げていたのだった。
実際にゴールドはアメリカではベビーブーマー世代の資産と見なされ、ジュエリーは別として 投資対象としてのゴールドは「重たい、売り買いや保管が面倒」といった理由でデジタル・ネイティブのミレニアル世代やジェネレーションZには全くアピールしない資産。 そのため富裕層のベビー・ブーマーの間でも、孫子の世代にゴールドを残しても迷惑がられるとして ビットコインへのシフトが行われている真っ最中。 加えて若い世代ほど「生涯の一部を外国で暮らしたい」と考える傾向にあり、 現在纏まったお金を外国の銀行に振り込むのに掛かる時間や費用、その理由の説明などの複雑なプロセスを考えると、 ビットコインは身軽に動きたい世代には理想的な資産。
金融関係者の間では「ビットコインのマーケット・キャップが2029年までにゴールドを上回る」と予測する声もあるけれど、 金融緩和が続く限りは、ゴールドの価値が下がるという訳ではないのは当然のこと。 でもビットコインの価格が2021年に現在の5倍に当たる10万ドルになっても不思議ではないのに対して、 ゴールドの価格が3倍になる可能性が低いのは誰もが予測するところ。 そもそも現在出回っているゴールドの47%はジュエリーで、投資対象としてゴールド離れが進んだとしても、ゴールド・ジュエリーの需要は減らないと見込まれるのだった。
ちなみに以下のウェブサイトは、世界中のお金の割合を1ブロック1000億ドルで示して比較したもので、 いかにビットコインやクリプトカレンシーが未だ過小評価された資産であるかを説明する際に頻繁に引用される資料。 これを見るとビットコインがデリバティブや不動産等、他の資産から僅かに資金がシフトするだけで まだまだ大きく成長する可能性が理解できるのだった。 https://www.visualcapitalist.com/all-of-the-worlds-money-and-markets-in-one-visualization-2020/

来週はサンクスギヴィング・デイの関係で、このコーナーを1回お休みをいただきます。アメリカ国内にお住まいの皆様、Happy Thanksgiving!

執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。
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