Tilda Swinton's Sleeping Performance
”The Maybe,” @ MoMA

ティルダ・スウィントンの眠り続けるパフォーマンス・アート
” ザ・メイビー ” @ MoMA





アカデミー賞受賞女優であり、ファッショニスタとしても知られるティルダ・スウィントンが、 3月23日に人々を驚かせたのが、何の予告も無しにニューヨークのMoMA(ニューヨーク近代美術館))の ガラス・ケースの中にパフォーマンス・アートとして登場したこと。

この パフォーマンス・アートは、”The Maybe, / ザ・メイビー” とネーミングされたもので、 彼女がガラス・ケースの中で何をしているかといえば、単に眠っているだけというもの。
3月23日に、このパフォーマンス・アートが展示(?)されたのは、MoMAの2階フロアのギャラリー。 背後のビデオ・スクリーンでは、スコットランド出身のビデオ・アーティスト、ダグラス・ゴードンの ”Play Dead; Real Time / プレイ・デッド; リアルタイム” が映し出されているというセッティング。
ガラス・ケースの中は、ティルダが1人が寝転がれる最低限のサイズのマットレスとシーツ、ピロー、 そしてウォーター・ピッチャーが置かれているだけ。 その中で、ただ眠っているティルダは、ルースフィットのジーンズにダンガリー・シャツ、指にプラチナのリングを1つつけているという ごくごく普通の”昼寝ルック”で、シューズは履いたまま。
枕元には、リーディング・グラス(読書用の眼鏡)が転がっているけれど、ティルダは、ひたすら眠り続けているというのが このパフォーマンスなのだった。


ティルダ・スウィントンが、初めて ”ザ・メイビー” のパフォーマンスを行ったのは、1995年、ロンドンのサーペンタイン・ギャラリーでのこと。(写真上)
この時はアーティストのコーネリア・パーカーとコラボレーションをしていたけれど、 その後もティルダは、ローマ、パリで同様のパフォーマンスをソロで行っているのだった。

今回、ティルダが ”ザ・メイビー” のパフォーマンスを MoMAで行なうきっかけになったのは、 2007年にMoMAの外壁をスクリーンに公開された、ダグラス・エイトキンのビデオ・アート、 ”Sleepwalker / スリープウォーカー ” にティルダが出演したのがきっかけ。
このビデオ・アートは、2005年から2年を費やした撮影であったというけれど、 このプロジェクトがきっかけで、MoMAのチーフ・キュレーター、クラウス・ビーゼンバックとティルダの間で、 ”ザ・メイビー” のパフォーマンスをMoMAで行なうプロジェクトが話し合われるようになったという。




そして、約7年間、オン&オフで進めてきたのが今回 MoMAで公開されている ”ザ・メイビー” 。
このパフォーマンス・アートのユニークなところは、そのパフォーマンス期間が年内と長く設定されているものの、 何時パフォーマンスが、ミュージアム内の何処で行なわれるかが、全く来館者に分からないというところ。

3月23日のパフォーマンスが行われた後、 その次のパフォーマンスが行なわれたのは、3月25日。 この日のティルダは、チェックのシャツを着て眠っていたので、着用するものは変わるようだけれど、 何時ティルダがやって来て、どこでパフォーマンスが行われるかは、その日にならないと、 ミュージアム関係者にも分からないというのが ”ザ・メイビー” のユニークなところ。
従って、ミュージアムのガイドに尋ねても、その日に行なわれているのか、何処で行なわれているのかが分からないというのが このパフォーマンス。

それと同時に、もっと分からないのが ”ザ・メイビー” のコンセプト。
一部には、「ティルダが疲れ果ててクリエイトしたのがこのパフォーマンスではないか」?という声もあれば、 「眠りがアートだと訴えている」という憶測も聞かれるけれど、 そこコンセプトも、スケジュールと同様「May Be」、すなわち「そうかもしれない・・・」と定かでないところが 同パフォーマンスを興味深くしているところ。

ノーメークで、時に寝返りを打つ程度で、ただ眠っているティルダであるけれど、 さすがにオスカー受賞女優とあって、その何とも言えない存在感と、 ”眠る ” という、本来プライベートな空間で行なわれる行為が、 ミュージアムの展示として、ガラス・ケースの中で行なわれるという 不思議さが アピールになっているのがこのパフォーマンス。
そもそも、パフォーマンス・アートは型にはまらないフォームが多いだけに、 同パフォーマンスもそのさり気なさや不思議さが、過去数回のエキジビジョンを経て、 MoMAに辿り着いたという印象になっています。



MoMAで過去に行なわれたパフォーマンス・アートで、最も有名かつ高い評価を得たのは、2010年のマリーナ・アブラモヴィッチによる ”The Artist Is Present/ジ・アーティスト・イズ・プレゼント”。(写真上)
マリーナ・アブラモヴィッチは1946年、ユーゴスラヴィアに生まれたパフォーマンス・アートのパイオニアと呼ばれる存在で、 同パフォーマンスでは、マリーナ・アブラモヴィッチが1日6時間椅子に座り、 ミュージアムを訪れた人と、一言も言葉を交わさずに向き合うというもの。 すなわち、パフォーマンスを観に来た人が参加できるシステムで、アブラモヴィッチと 向き合って座る人々は、自分がそこに居たいだけ座っていて良いというもの。 これが行なわれたのは、2010年3月14日〜31日までのMoMAの閉館日を除く全日。 彼女に向き合って座る人は、2分という短い時間から、2時間以上という長時間までが居たけれど、 何も言わずに彼女と向き合っているうちに、涙ぐむ人々が非常に多かったのが同パフォーマンス。
このプロジェジェクトを手掛けたのも、やはりキュレーターの、クラウス・ビーゼンバックで、 同パフォーマンスの総時間は、何と736時間30分というもの。
この”ジ・アーティスト・イズ・プレゼント”は、マリーナ・アブラモヴィッチのパフォーマンスの中で、 最も長時間で知られるもので、MoMAのパフォーマンスのアートの歴史上、 最もサクセスフルなものとしても知られているのだった。

前述のようにティルダ・スウィントンの”ザ・メイビー”は、2013年中、MoMAでランダムで行なわれるもの。
MoMAは、「入場料が高額な割りに見所が少ない」、「常に旅行者で混み合っていて、チケットを買うだけでも 時間が掛る」など、ニューヨーカーから批判を浴びることが少なくないミュージアムですが、 ティルダ・スウィントンの眠っている存在感を味わうチャンスを求めて、 訪れてみるのは良いかも知れません。


MoMA / Museum of Modern Art
11 West 53 Street, New York, NY 10019
Tel:(212) 708-9400
http://www.moma.org/





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