Oct. Week 4, 2013
" Dom Perignon by Jeff Koons "
” ドン・ぺリニヨン by ジェフ・クーンズ ”


ホリデイ・シーズンを控えて、様々な企画のリミテッド・エディションのシャンパンが登場するのは今に始まったことではないけれど、 今年 ドン・ぺリニヨンから登場したのが ドン・ぺリニヨン by ジェフ・クーンズ。
今週から、ニューヨークのリカー・ショップの店頭に並び始めたこのリミテッド・エディションは、 その名の通り、ドン・ぺリニヨンと コンテンポラリー・アーティストとしては ダミアン・ハーストと並んで 極めて有名な ジェフ・クーンズとの コラボレーション。 ジェフ・クーンズは このプロジェクトで ボトルのラベル、ギフト・ボックス、そして スペシャル・ギフトセットの目玉となる スカルプチャー、「Balloon Venus / バルーン・ヴィーナス」の製作を手掛けているけれど、 このバルーン・ヴィーナスの実物は、今年5月〜6月にかけてニューヨークのガゴーシアン・ギャラリーで展示されていたもの。
多くのジェフ・クーンズのバルーン・シリーズの作品同様、実物の金属製スカルプチャーは かなり巨大であるけれど、スペシャル・ギフトセットにフィーチャーされる そのミニチュア・バージョンは、ドン・ぺリニヨンのロゼのボトルがホールド出来るという ファンクショナル・アート。 世界中で数百セットしか販売されない見込みで、お値段は2万ドル(約200万円)になっているのだった。

シャンパンのギフトセットが200万というと 驚いてしまうけれど、 ジェフ・クーンズのバルーン・スカルプチャーは今や2桁億円の価格で落札されるものばかり。 「それを思えば安い」と考えるリッチ・ピープルのためにクリエイトされたのがこのセットで、 シャンパン自体のヴィンテージは ロゼが2003年、ホワイトが2004年。
ちなみにレビューアーによれば、2004年のドンぺリのホワイトは 2017年から味わいが増して、 2028年まで美味しく味わえるとのこと。 したがって、ジェフ・クーンズのリミテッド・エディション・ボトルであっても なくても、2004年のドンペリを手に入れた場合には、 あと4年は寝かせておく方が 自分で飲む場合は美味しく味わえるのに加えて、 売りに出す場合にも 価値がアップしていることは確実なのだった。






バルーン・ヴィーナスのモチーフになっているのは、紀元前23,000年頃の オーストリアで発見された小さな女性像。 曲線フォルムにエネルギーが融合したコンセプトのスカルプチャーは、ジェフ・クーンズが2008年から 制作をスタートした ”Antiquity / アンティクイティ ” シリーズの一部 として発表されているのだった。

ところで私が最初にジェフ・クーンズ(写真上、3段目右)の存在を知ったのは、1990年代初頭に 彼がイタリアの政治家兼ポルノ女優、 チチョリーナと結婚し、彼女と自分自身をモチーフにした「Made in Heaven/メイド・イン・ヘヴン」とネーミングされた作品シリーズが、 物議と悪評を醸していた時。
そのイメージが強烈であったので、2000年に彼の代表作の1つ「パピー」がロックフェラー・センターで展示された時も、 今や彼の代表作となった「バルーン・ドッグ」がメディアで大きくフィーチャーされた時も、それらの作品が チチョリーナと一緒の彼のイメージと結び付くまでには 時間が掛ってしまったのだった。

ジェフ・クーンズは1955年にペンシルヴァニアで生まれたアメリカ人アーティストで、彼がコンピューターでクリエイトしたスカルプチャーから ペインティングまでのイメージを 作品として具現化しているのは、120人とも150人とも言われる 彼のアシスタント達。 今やアーティストが 大規模な施設のスタジオに多数のスタッフを擁して、大々的に作品をクリエイトすることは 全く珍しくないけれど、昨今ではその人件費を落とすために 作品をアジアで製作するアーティストが少なくないのが現状。
要するに、アートも アパレルやアイフォンと同じような生産プロセスになってきているけれど、 ジェフ・クーンズに関しては、今もアメリカ国内にスタジオを構え、 頻繁にスタジオに足を運んでは、作品についての細かな指示を与えているとのこと。

そう考えると、彼の仕事ぶりは アシスタントを大勢抱えるファッション・デザイナーにも似ているけれど、 多くのファッション・デザイナーがヴィンテージ・ファッションのコレクターで、ヴィンテージから自らのアイデアを得ているのと同様、 ジェフ・クーンズも クラシック・アートのコレクターで、彼自身アート・ヒストリーには非常に造詣が深いとのこと。
その一面は、彼が時に用いるクラシック・アートのモチーフの使い方に如実に現れていると言えるのだった。






写真上は全てジェフ・クーンズの作品であるけれど、一番上の2枚は 彼が今年ガゴーシアン・ギャラリーで行った ”Antiquity / アンティクイティ ”のエキジビジョンの作品の一部。
2段目は、左側がメトロポリタン美術館の屋上で展示された彼の代表作、”バルーン・ドッグ”、 右側が同じくバルーン・シリーズで世界各都市で展示されている ”チューリップ”。

私は個人的に光物に弱いので、ジェフ・クーンズの作品の中では バルーン・シリーズを 好んでいるけれど、 それと同様に評価しているのが、彼の”Gazing Ball / ゲイジング・ボール”というシリーズ(写真上3段目右側)。 これは、古典的なギリシャ彫刻を始めとする真っ白なスカルプチャーに、コバルト・ブルーの水晶球を添えた 彼の代表作シリーズの1つ。
ジェフ・クーンズは、この秋発売のレディ・ガガのニュー・アルバム「アートポップ」のカバー・デザイン(写真上3段目左側)も手掛けているけれど、 そこにも この「ゲイジング・ボール」が登場しているのだった。

ドン・ぺリニヨン by ジェフ・クーンズのリミテッド・エディションに話を戻せば、スカルプチャーが付かない750mlのシャンパンであれば、 ロゼが課税前で約400ドル、ホワイトが同じく課税前で約170ドル。
ロゼは少々高いけれど、ホワイトについては 12月に行われるインターナショナル・アート・フェア、 バゼル・マイアミの期間中に滞在することになっている 友人宅へのお土産にしようと思っているところ。友人夫妻はこぞってコンテンポラリー・アートのファンであり、コレクター。
なので予算の関係でスカルプチャー付きはプレゼント出来ないけれど、 ジェフ・クーンズのリミテッド・エディションであれば、通常のドンペリのボトルよりも 遥かに喜んでもらえると思うのだった。





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執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。
丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。
FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。
その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。

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