Oct. Week 4, 2011
” Marimekko Flagship on 5th Ave. ”
” メリメッコ・フラッグシップ・オン・フィフス・アベニュー ”



私が先週までの過去2週間、余暇の殆どを費やして取り組んでいたのが、テニスのパートナーのアパートのデコレーション。
26歳になったばかりの彼は、大学卒業後、MBAを取得して、昨年から働き始めたばかり。かつてはルームメイトとダウンタウンに暮らしていたけれど、 今年に入ってアッパー・イーストサイドのストゥディオ・アパートメントに引っ越してきて、1人暮らしを始めたのだった。
でも、部屋にあるのは椅子とテーブルとベッドなど、最低限ものだけで、そのうちの椅子とテーブルは、以前のルームメイトから貰ったものだけれど、 タダで人にあげて惜しくないだけあって かなりオールド・ファッションな代物。 最初は、自分で家具を買うまでのその場凌ぎと思って使い始めたというけれど、 仕事が忙しいこともあって、プラント(観葉植物)を買うまでに3ヶ月掛っているような状態で、とても家具まで手が回らない状態。
加えて、昨今仕事が変わって、収入が増えたこともあり、家具だけでなく、シャワー・カーテンからベッド・リネンまで、全てを買い換えて部屋を デコレートしようと考え始めた彼だけれど、「何処から手をつけて良いか分からない!」ということで、 私がデコレーションを名乗り出ることになったのだった。

彼の部屋は良い意味で何も無いのに加えて、現在ある物も全て買い換えられるので、言ってみれば私が1から全てデコレートできる状況。 風水を取り入れたデコレーションを得意にしている私としては、極めて楽しめるプロジェクトなのだった。
というのも通常は、誰でも部屋の中には 思い入れのある品や、「買ったばかり」、もしくは「結構な値段がした」という物があって、 それがインテリアの調和を乱してしまう場合が少なくないもの。なので、部屋を美しく見せて、しかも風水の見地から幸運を招くためにも、 それを取り除くのに大変な思いをする場合があるけれど、私のテニスのパートナーのように、デコレーションを全て1から任せてくれる状態だと、 部屋の調和を乱すものが無い上に、色からテイストまで、全てを統一することが出来るので、満足できる仕上がりが望めるのだった。

彼と話し合った結果、彼はモダンなテイストが好みで、色調としてはブラック&シルバーが好み。
でも家具が全て真っ黒なだけの、退屈なバチェラー・パッド(独身男性のアパート)にはしたくないとのことだったので、 アクセント・カラーを効かせてコントラストをつけるということで同意したのだった。
それと同時に、収納を良くすることも課題となっていたので、ベッドの下を収納スペースにして、日頃使わないものをそこに収納し、 頻繁に使うものは、ストアレージ・オットマン(中に収納スペースがあるスツール)に入れることにしたけれど、 そうやって、徐々に家具をオーダーし始めて、決まってきたのがアクセント・カラーをレッドにするということ。
というのも、ブラックのテーブルをオーダーして、それに合うレザー&シルバー・メタルの椅子をピックアップしたところ、 レザーのカラーには レッドとブラックの2種類があり、彼がどちらを好むかと思ったら、レッドを指定してきたのだった。
私のテニスのパートナーは、そもそも派手好みではあるけれど、10月は四柱推命では九紫の月。 九紫と言えば、レッドやパープルが吉とされるカラーなので、10月にレッドをアクセント・カラーにデコレートするのは、 月の暗示にもマッチしていると考えたのだった。

彼のアパートは天井が高く、ペンキを塗ったばかりの真っ白な壁面が3面あるので、そのうちの1面にはブラックとシルバーのフレームの大きなミラーでデコレートし、 もう1面にはメタル・アートのパネルのシリーズを飾ることにしたけれど、問題は残りの1面のベッドの上の壁。
部屋の中に居て最も目が行くのがこの壁で、バランスからして、1メートル四方のウォール・デコレーションが必要であったけれど、 それほどまでに大きなウォール・デコとなるとかなりの高額。
そこで、私はずっと頭に描いていたけれど、まだやったことが無かった ロー・バジェット・デコレーションを試みることにしたのだった。 それは、油絵用のキャンバスにファブリックを貼りつけてウォール・アートにするというもの。

油絵用のキャンバスは長方形と正方形のものがあるけれど、私が探していたのは正方形。 でも1メートルのサイズは大きすぎて、カスタムメイドになる上に非常に高額。 なので、小さいキャンバスを4枚使って、1メートル四方に値するサイズにすることにしたのだった。
私がピックアップしたのは50cm四方のキャンバスで、アート・サプライのウェブサイトから1枚約15ドルで取り寄せたけれど、これに送料とタックスが掛ったので、 1枚19ドル弱というのがお値段。
この4枚のキャンバスに張る布を探しに私が出掛けたのは、ブロードウェイの19丁目にあるABCカーペット&ホーム。 私は、自分でスツールを張り替えたり、スクリーンを張り替えたり、プレースマットを自分で作ったりしたことがあるけれど、その度にファブリックを買っていたのが ABCカーペット&ホームで、惚れ惚れするようなシルクの素材や、上質なプリント素材などがここで購入することが出来たのである。
ところが、久々にABCカーペット&ホームのファブリック・セクションに行こうとしたら、かつてそのセクションがあった地下のフロアは今やコンラン・ショップになっていて、 ショップの人によれば、ファブリックは取り扱いを止めてしまったとのこと。 ABCカーペット&ホームほどにインテリア用のファブリックの品揃えが豊富で、しかも他には無い上質なものが手に入る店はニューヨークには他に無いので、 「せっかく購入したキャンバスが無駄になってしまう・・・」と思い始めた時、その日の朝のニューヨーク・タイムズ紙のスタイル・セクションに、 メリメッコのフラッグシップ・ストアがABCカーペット&ホームに程近い、5番街のフラットアイアンにオープンしたという記事が載っていたことを思い出したのだった。

メリメッコは、日本にも進出しているフィンランドのファッション&インテリア、生活雑貨のブランドで、 フィフス・アベニューのストアは10月8日にオープンしたばかり。 344平方メートルのストアが入っているのは、CUBE New York で頻繁に紹介しているイタリアのグルメ・マーケット、イータリーと同じビルで、 かつてトイ・ビルディングと呼ばれていた建物。
メリメッコのデザイン・チームと日本のIMAというデザイン会社が手掛けた同店舗は、 ヘルシンキにある同ブランドのフラッグシップと同じコンセプトでクリエイトされているのだった。





正直なところ、私はメリメッコというブランドとはあまり縁が無いタイプで、同店で扱われているものにはあまり興味が無いのが実情。
でもメリメッコがインテリア用のファブリックを多数揃えていることは知っていたので、ひょっとしたらイメージ通りのファブリックに巡り会えるかもしれないと思って 行ってみることにしたのだった。
私がこの時点で頭に描いていたのは、4枚のパネルを2枚ずつ、2種類のファブリックでデコレートして、交互に飾ること。 1種類はブラック&ホワイト、2種類目はアクセント・カラーにしているレッドを頭に描いていたのだった。
出かけてみると、メリメッコの店内は細長い空間で、写真上よりも狭く感じられる印象。 でも様々なセクションに分かれていて、とても明るく、カラフルで楽しい雰囲気のストアに仕上がっているのだった。
ファブリックは、店の中央の透明の棚にごっそり積まれていて、フロア全体がファブリックの売り場だったかつてのABCカーペット&ホームに比べれば 少ないけれど、それでも十分なセレクション。
メリメッコというと、ピンクやレッド、グリーンなど、色鮮やかなプリントを思い浮かべてしまうけれど、 思いの他、ブラック&ホワイトのプリントが充実していたのは意外な発見なのだった。




メリメッコのファブリックは、なるべく大きく広げてプリント全体を把握するようにしないと、途中で模様のパターンが変わって、 頭に描いているのとは 異なる素材になっている場合があるのは、ちょっとトリッキーな部分。
気に入った柄のファブリックを3種類ほど選んだ私は、裁断テーブルの上で広げてみたけれど、 そのうちの1つは、広げた時のイメージが異なるので、あっという間に却下になったのだった。
ファブリックは全てコットン100%で、0.5ヤードから販売しており、1ヤード(91.44cm)のお値段は57ドル程度。
この時点で、私は予算を抑えるために、4枚のパネルのうちの2枚は、ファブリックで覆うのを諦めて、 レッドにペイントしようと考えていたので、50cm四方のキャンバスを2枚分を覆うのに十分な 4分の3ヤードのファブリックを購入。 支払ったのは、税込みで37ドル程度。
コットンのファブリックの割には、お値段が張るという印象だけれど、それでもABCカーペット&ホームのファブリック・セクションなき後、 インテリアの素材となる生地を探せるストアが存在してくれるというのは、非常に心強いことなのだった。

ファブリックでキャンバスを覆うのは至って簡単で、両面テープで四方を固定して、フレームの裏からインテリア用のホチキスで 素材を留めて行くという作業。キャンバス1枚にファブリックを張るのは30分もあれば出来る作業。
もっと簡単だったのはキャンバスを真っ赤にペイントすること。使ったのは油絵の具ではなく、ペンキ。 アメリカはペンキ店に出掛けると、試し塗り用の小さなサイズのペンキが5ドル程度で販売されていて、通常はこれで壁などを塗って色をチェックするものだけれど、 このサイズはキャンバス2枚をペイントするのに最適な量。カラーは、先述のレッドの椅子と同じように見える色調を選ぶことにしたのだった。
ペイント自体は、スポンジ・ブラシを使うと素人でも、素早く、きちんと塗り終えることができるので、20分程度で2枚のキャンバスを仕上げることが出来たのだった。
その結果、出来上がったのが、以下の4枚のパネル。


メリメッコの素材は、一見アブストラクトのようにも見えるけれど、木の枝に鳥がさえずる様子が描かれたもの。
レッドのパネルは、ペイントし終わってから、ブラックでも良かったかと思ったので、テニス・パートナーがブラックが良いと言ったら、 上からブラックで重ね塗りしようと思っていたけれど、派手好きな彼は、レッドの椅子とコーディネートしていることもあって、 レッドの方が好みで、加えて真っ赤なペイントのテクスチャーについても、「ブラシのストロークが、本物のアートみたいだ」と言って気に入ってくれたのだった。

ベッドの上の壁のデコレーションが決まったので、ベッド・リネンもそれに合わせてオーダーしたけれど、 私にとって、1つ誤算だったのは、4枚のパネルを、縦横同じ間隔で壁に吊るのが如何に難しいかということ。
私は自宅に鏡とフレームが大小含めて27枚飾ってあるけれど、全て自分で吊っていることもあって、 壁のデコレートにはかなり自信を持っていたけれど、4枚を同じ間隔で吊るというのは、キャンバスについているハンギング・ワイヤーの長さが若干異なるだけに、 壁のサイズを測って、マーキングをしても、均等にならなくて、とんでもなく時間が掛ってしまったのだった。
また上手く吊った後でも、このパネルは1枚でも傾いたらビジュアル効果を失うので、両面テープでしっかり固定するというプロセスも加わって、 事前に頭で描いていたより ずっと大変な作業になってしまったのだった。

結局、部屋全体だけでなく、バス・ルームに至るまで ブラック&シルバー、それにレッドのアクセントというカラーで統一して、 デコレーションを終えたけれど、掛った費用はほぼ$1000ドル。現時点の日本円だと7万6000円といったところ。 でも、ミラーやベッド・リネンなどはセール品を購入したので、元のお値段で計算すると1400ドル程度になるのだった。
家具やインテリア・グッズは、テーブルがメイド・イン・マレーシアで、メタルのウォール・デコがメイド・イン・USAだった以外は、 ことごとくメイド・イン・チャイナだったけれど、アメリカはインテリア・グッズやホーム・グッズのお値段が本当にピンキリ。 私は全てインターネットで購入したけれど、店を一軒一軒回るよりずっと効率良く、安いショッピングが出来るのは紛れもない事実なのだった。

ちなみに、メリメッコのファブリックを張ったパネルを飾ったのは、南〜西南に位置する壁。 南は風水で名誉を意味して、西南は恋愛&結婚、自己愛をつかさどる場所。赤は南に適したカラーで、”ファイヤー”を意味するもの。 西南は何でもペアのものを置くのに適しているので、 パネルを2枚ずつペアにしているのは、暗示通り。さらに樹木のプリントは風水の”ウッド”のエレメントであるけれど、真っ赤な”ファイヤー”のパネルとセットにすることに、 風水の世界で ”プロダクティブ・サイクル”と呼ばれるパワーの相乗作用が生み出されるのだった。 これは、火に薪(まき=ウッド)をくべると、火がパワー・アップするのと同様のこと。




インテリアの世界では色や素材で、コーディネートがきちんとされていると部屋が美しく見えるとされているけれど、 風水の世界で理想的なのは、ファイヤー(火)、ウォーター(水)、ウッド(木)、メタル(金)、アース(土)という5つのエレメントがバランス良くミックスされた状態。
ファイヤーは3角形のもの、カラーにしてレッド、アニマルプリント等。ウォーターは円形、楕円形のもので、水槽はもちろん、海辺や湖など水のある風景画や写真でも良いし、 カラーであればブラックかブルー。 ウッドは木製の家具やフロア、色にしてグリーンのもの、プラントや花は本物でもフェイクでもウッドのエレメントに属し、木や花のプリント柄もウッドと見なされるもの。 メタルは金属のもの、金色、銀色のもの、鏡、大理石などで、色ではホワイトもメタルのエレメントと見なされるもの。 そして、アースは色にして茶色や黄色。四角いもの、土器のようなルックスの食器や花瓶、山を描いた風景画や写真などもアース・エレメント。
これらが部屋の方角の適材適所に置かれて、全体のバランスが整っているのが風水で幸運を呼ぶとされるインテリア。
空間があり過ぎても、無さ過ぎてもいけなかったり、家具の配置など、様々なルールがあるけれど、 暮らす場所というのは、心地好く、エネルギーが充電できるスペースでなければならないので、そういうスペースをクリエイトするのが最優先。 さらには、住む場所であるからには、寝に帰る場所ではなくて、愛着を持って、そこを基点に生活すべきものなので、 暮らす人間が好きな色や、好きなものでデコレートしなければならないというのも私が考える鉄則なのだった。

なので、インテリアの趣味が合わないカップルは結婚生活も上手く行かないというのが私の意見。 自分の嫌いな空間、自分が愛着を持てない空間を ”マイ・ホーム” と考えるのは、頭で思い描く以上に難しいこと。
カーテンの色やカーペットの柄で、喧嘩したり、不満をつのらせるカップルというのは アメリカでは珍しくないけれど、 結局のところ、それはカーテンやカーペットだけの問題ではなかったりするわけで、 もっと根本的なところで、いろいろなことが食い違っている場合が殆どなのである。





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執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。
丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。
FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。
その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。

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