Sep Week 4, 2012
” Discovering Columbus by Tazsu Nishi ”
” ディスカバリング・コロンバス by タツ・ニシ ”



私は週に4〜5回セントラル・パークを走っているけれど、9月に入ってから パーク西南のコロンバス・サークルに程近いエリアを通り過ぎる際に 気付いたのが、コロンバス(英語の発音では、”コロンブス” は ”コロンバス”)のモニュメントの周りに足場が組まれているということ。 私はてっきりモニュメントの修復かと思っていたけれど、 これはニューヨークのパブリック・アート・ファンドが主催する ”ディスカバリング・コロンバス” というタイトルのエキジビジョン。
これを手掛けたのは Tazsu Nishi / タツ・ニシ という日本人アーティストで、 コロンバス・サークルの中央にそそり立つ、コロンバスのモニュメントの周りにリヴィング・ルームを建設し、 部屋の中という設定で、改めてコロンバスの像を眺めるというユニークなエキジビジョンなのだった。

タツ・ニシ(日本名:西野達)氏は、1960年生まれ、名古屋出身で、現在ベルリンと東京を拠点に活躍しているアーティストとのこと。 これまでにも、イギリス、リヴァープールのヴィラ・ヴィクトリア像の周囲にアパートのインテリアのような空間をクリエイトしたり、 シンガポールのマーライオンの周囲に ホテル・ルームのインテリアをクリエイトして、「ザ・マーライオン・ホテル」というエキジビジョンを行なうなど、 世界各国で、有名なモニュメントを リヴィング・ルームやベッドルームというインテリア空間で見せる アート・エキジビジョンを行なってきているのだった。




そのタツ・ニシ氏が、ニューヨークで同様のエキジビジョンを行なうにあたって白羽の矢を立てた クリストファー・コロンバスの像がどんなものかと言えば、 同モニュメントは コロンバスがアメリカ大陸を発見した400周年に当たる1892年に、イタリア人アーティスト、 ガエタノ・ルッソによってクリエイトされたもの。 このモニュメントは、地上から約60フィート(18メートル29cm)の高さのコラムの上にあり、像本体の高さは13フィート(396cm)。
これを、広さ 約800スクエア・フィート(約74.4平方メートル)、天井の高さ16フィート(488cm)という、リヴィング・ルームの 設定の中で見せるのが”ディスカバリング・コロンバス”のエキジビジョン。
したがって、このリヴィング・ルームが建設されたのも、地上60フィート近い高さ。 ビルにして6階建てに相当する位置で、このエキジビジョンを観るためには、 階段でこのリヴィング・ルームまで上がらなければならないのだった。




私が”ディスカバリング・コロンバス”を観に出かけたのは、エキジビジョンがスタートした2日目の9月21日金曜日。
チケットは、インターネットを通じて申し込むことになっていて、午前10時〜午後9時までの閲覧時間が 30分ごとのタイム・テーブルに区切られていて、 都合の良い時間を選ぶシステム。私は仕事が終わってから友人と出掛けることにしていたので、午後7時半を選んだけれど、 私が申し込んだ時には、未だ同エキジビジョンについて それほど知られていなかったので、問題なく 希望時間のチケットが入手出来たのだった。
でも、エキジビジョン公開と共に、多くのメディアが ”ディスカバリング・コロンバス”を大きく取り上げたこともあり、 公開翌週のチケットは 既に月曜の時点で全てソールドアウト。 その先も、平日は多くの人々の仕事が引ける5時半〜6時以降を中心に、週末はほぼ1日中、ソールド・アウトが続いていて、 期間中に10万人の閲覧者が見込まれているのだった。

エキジビジョンは、時間になったら、そのタイム・テーブルの人々がごっそり前の時間帯の人々と入れ替わるというのではなく、 会場で閲覧する 最高人数が予め決められていて、閲覧を終えてその場を後にする人数の分、新しい閲覧者が入場できるというシステム。 なので、チケットがあっても時間通りに入場できる訳ではなく、列に並んで 前の人々が閲覧を終えるのを待たなければならないけれど、 私の場合、待っていたのは20分程度。
階段上りについては、それほどキツイとは思わなかったけれど、私たちの前に並んでいた人たちが 「先に行ってください」、「コロンバスの像がこんなに 高いところにあるとは思わなかった」 と言って、階段の途中で休憩していたので、 人によっては大変な場合があるかと思ったのと、これが風の強い雨の日などだったら、状況が違っていたと思うので、 同イベントは極力 天候の良い日を狙ってチケットを入手するのが賢明だと思うのだった。

そうして階段を上って辿り着いたところが、直ぐにリヴィング・ルームかと思いきや、まずは短いホール(写真上右)があって、そこを右手に入ったところにあるのが コロンバス像を中央にフィーチャーしたリヴィング・ルーム。
中に入ると、コロンバスの後姿がまず目に入ってきて、その大きさに圧倒されるけれど、 それを取り囲むのがリヴィング・ルームというのは、 不思議かつ面白いセッティング。
実物を見る前に既に写真で見ていた空間であるけれど、それでも実物はやはり迫力があるのだった。





室内の殆どのファニチャーを提供したのはブルーミングデールズで、正直なところ、決してグッド・テイストとかハイセンスと言える 内装ではないのが実情。 バーニーズか、バーグドルフ・グッドマンがインテリアを担当していたら・・・ という気持も湧いてきたけれど、 見方をかえれば、こんな巨大なモニュメントを取り囲む空間が、ゴージャスなペントハウスの設定ではなく、 サムスンの55インチ・スクリーンTVや、シングル・レールでボックスの無いカーテンというような、ミドル〜アッパー・ミドル・クラスのインテリアで 構成されているのは、ミュージアムなどには絶対に無い カジュアルな設定。
だからこそ訪れた人々が、写真やビデオを撮影するだけでなく、気軽にソファーに座って和んだり、 置いてある新聞を読んだりして、本当にリヴィング・ルームに居るかのように リラックスしながら、コロンバスを眺められると言えるのだった。

ところで、ニューヨーカーにとってコロンバス像というのは、不思議なポジショニングのモニュメント。
像がそびえ立つ コロンバス・サークルからは、コロンバス・アベニューがマンハッタンの北に向かって伸びていて、 10月のコロンバス・デイには、ニューヨークで 大規模なパレードが行なわれるのは毎年恒例。 同時に、今回インテリアを担当したブルーミングデールズやメーシーズといった大衆デパートでは、 コロンバス・デイ・セールなるものが行なわれるけれど、ニューヨーカーが旅行者を案内しようとした場合、NYの名所として ”脳裏をかすめることさえない” と言えるのが コロンバスのモニュメント。

この記事を書くに当たって、コロンバス像の写真をグーグルしたけれど、その数は驚くほど少なくて、 エンパイア・ステート・ビル、自由の女神、セントラル・パーク、グランド・セントラル・ステーション、タイムズ・スクエアといった ニューヨークを象徴するような観光スポットに比べると、ネット上の存在感も極めて希薄なのだった。
なので、この像が一体どんな顔をして、何を着て、何を手も持って、どんなポーズをして、どの方角に向かって立っているか 等はニューヨークに何年暮らしていても 知らないのが通常。
それだけに、コロンバスのモニュメントを部屋の中で間近に、じっくり眺めるチャンスに恵まれるというのは、貴重な体験のように思えるのだった。

私がコロンバスの像を間近に見て、まず思ったのが 一体この像が何の石で出来ているのか?ということ。 友人がグーグルしたところマーブルとのことだったけれど、 さすがにクリエイトされてから今年で120年が経過している上に、屋外に設置されて常に 日光や雨風にさらされているとあって、表面はガサガサ。とても マーブルでクリエイトされたとは思えない状態になっているのだった。
加えて私が思ったのはコロンバスの像が思っていたよりガッシリしているということ。 というのも、通常、コロンバスの像を眺める際は、60フィートのコラムの上に乗った状態で眺めているので、その視覚効果で、 細長いプロポーションを頭に描いており、 実際のモニュメントは体型のイメージが異なって見えたのだった。




”ディスカバリング・コロンバス”のクリエーター、タツ・ニシ氏(写真上左、ブルームバーグNY市長と握手している右側の男性)は、 コロンバスのモニュメントを このエキジビジョンに選んだ理由として、その高さを挙げていたけれど、 モニュメントがコラムの上、地上から数十フィートの高さに設置されているというのはヨーロッパでは珍しくないセッティング。 でも、ニューヨークのモニュメントで コラムの上にそそり立っているのはコロンバスの像だけと言えるのだった。

ところで、タツ・ニシ氏はこのリヴィング・ルームをクリエイトするにあたってウォール・ペーパーを自らデザインしているけれど、 この柄にフィーチャーされているのが、エンパイア・ステート・ビルディング、マイケル・ジャクソン、エルビス・プレスリー、マクドナルド、ホットドッグ、ミッキーマウス、 ベースボール・バットとグローブなど、アメリカを象徴するアイコン(写真上右)。 でもこれらはニューヨーカーにとっては、 ニューヨークを象徴するアイコンばかりではないのは明らか。 マイケル・ジャクソンはアポロ・シアターのアマチュア・ナイトから生まれたスターなのでOKだとして、エルビス、マクドナルド、ミッキー・マウスは ニューヨーカーとは縁が浅いキャラクター。また同じベースボールを描くなら、バットとグローブよりも ヤンキー・ハットをフィーチャーする方がニューヨークらしいというのが 個人的な意見なのだった。

ところで、同エキジビジョンは 日中に出かけるのと、夜に出かけるのとどちらがベターかといえば、 良い写真が取れるのは 自然光が降り注ぐ日中。またコロンバス像は、近くで見られると言っても約4メートルの高さ。 なので、夜の電気のライティングだと、顔の随所まで凄くはっきり見えるという訳ではないのだった。
でも こうしたイベントは夜の方が、旅行者だけではなく、本当のニューヨーカーが来ている場合が多いので、マンウォッチングが楽しめるのは事実。
リヴィングの窓から眺められる 外のビューについては、コロンバス・サークル周辺は、夜になるとセントラル・パークが真っ暗になるため、 あまり夜景がウリではないスポット。そのセントラル・パークでは、これからどんどん紅葉が始まってくるので、紅葉がピークの時期であれば、それを眺める意味でも、 断然 昼間に出掛けることをお薦めします。


”ディスカバリング・コロンバス”のエキジビジョンは11月18日まで。時間は午前10時〜午後9時まで。
チケットは無料で、閲覧のタイム・テーブルは30分。地上60フィート、ビルの高さにして6階程度を 階段で登り降りするため、 ゴム底のフラットシューズの着用が奨励されています。
13歳未満の子供は保護者の付き添いが必要で、13〜18歳は保護者によるチケットの購入が義務付けられています。 5歳未満の子供の入場は基本的に不可。またベビーカーの持込みも禁止されています。

チケット申し込みウェブサイト:http://www.publicartfund.org/view/exhibitions/5495_discovering_columbus





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執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。
丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。
FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。
その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。

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