Sep. Week 1, 2017
”Fancy Bar & Casual Dinner / Oscar Wilde & Emily West Village”
”ファンシー・バー&カジュアル・ディナ―、オスカー・ワイルド&エミリー・ウエスト・ヴィレッジ”
2017年のニューヨークの上半期はフード&レストラン業界においては、「レストラン・ダイニングの氷河期」と言われるほど、
ホットなレストラン・オープニングが極めて少なかった時期。
CUBE New Yorkでもご紹介した”The Grill / ザ・グリル”や
”The Pool / The Pool / ザ・プール”など、一部の例外を除いては話題のオープニングが
殆ど無く、誰もが話題にするようなバズをクリエイトするようなレストランも存在していなかったのが実情。
インスタグラム上で人気を集めるフード・スポットには行列が出来て、フード・コートがそこら中にオープンするのは
今更始まった現象ではないけれど、そのせいでこの夏はファンシーなレストランの代わりにファンシーなバーのオープンの方が目立ったシーズン。
以前このコーナーでご紹介した、マンダリン・オリエンタル・ホテル内のスピークイージー、”ジ・オフィス”で、
シカゴの天才シェフで、レストラン ”アネリア” で毎年ミシュラン・スターを獲得しているグラン・アケッツがニューヨーク進出を果たしたかと思えば、
一時クローズしたグランド・セントラル・ステーション内にある鉄道王ヴァンダービルドの元オフィスをロケーションにした
ファンシー・バー、”キャンベルズ・アパートメント”が ”キャンベルズ”と名前を替えて再オープンしたり、
ルーフトップ・バーがどんどんグレードアップするなどして、今やカクテルの価格がどんどんアップしているのがニューヨーク。
その結果、昨今のニューヨーカーのナイトアウトはカジュアルで比較的安価なディナーをして、その前後にファンシーなバーやラウンジで高額カクテルをすするというのが
メインストリームになってきているのだった。
そんな中、つい最近マンハッタンのミッドタウンにオープンしたバーが、オスカー・ワイルド。
その名の通り、アイルランド出身の劇作家、オスカー・ワイルドにちなんだこのバーは、禁酒法時代にアルコール取締局だったビルの建物。
グラマラスなライフスタイルと、シニカルでウィットに富んだ語録でも知られるのがオスカー・ワイルドで、
実は私がベンジャミン・フランクリン、マーク・トゥウェインと並んで、語録を読むのを好んでいるのがオスカー・ワイルド。
なので、このバーのオープンには個人的にとても興味があったけれど、オスカー・ワイルドというキャラクター以外に同バーのアトラクションとなっているのが
ヴィクトリアン・スタイルに豪華にデコレートされたインテリア。
調度品の多くは北アイルランド、パリ、ミラノ、ロンドンのシャトーから取り寄せたアンティークで、1700年代〜1800年代のものも少なくない
ミュージアム・クォリティのデコレーション。
でもどこかエクレクティックで、バーとして楽しめるリラックスした雰囲気があって、
グラマラスでありながら決して気取らない、オスカー・ワイルドを地で行くスペースに仕上がっているのだった。
私がこのバーを気に入った理由の1つは、随所にオスカー・ワイルドの有名な格言が
インテリアにフィーチャーされているため。
その格言は以下のようなもの。
- 「Everything popular is wrong / 人気があるものは全て間違っている」
- 「Experience is simply the name we give our mistakes / ”経験”とは単に我々が過ちに与えた名称」
- 「True friends stab you in the front / 本当の友達は正面から刺すもの」
- 「Women are made to be loved, not understood / 女性は愛されるべきもので、理解されるべきものではない」
- 「I can resist everything except temptation / 誘惑以外なら何でも拒むことが出来る」
- 「If one plays good music, people don't listen and if one plays bad music people don't talk / 良い音楽を奏でても誰も聴かないけれど、酷い音楽を奏でれば 誰もが喋るのを止める」
- 「Conversation about the weather is the last refuge of the inimaginative / 天気についての会話は想像力の貧しさが許される唯一のもの」
- 「Man marry because they are tired; woman, because they are curious; both are disappointed / 男性は疲れたから結婚し、女性は興味があるから結婚する。そしてどちらも失望する」
オスカー・ワイルドの格言は、マーク・トゥウェインほどはツイッターに用いられていないとあって、
私の友達はこのバーで初めて彼の格言を読んで興味を持ち、家に帰ってからグーグルしたと言っていたけれど、
バーでありながら 人生について学べるのが同店なのだった。
さて、ドリンクをオスカー・ワイルドのようなバーで楽しむ際に、ニューヨーカーがどんなところに出かけるかと言えば、
前述のようにカジュアルなダイニング・スポットであるけれど、この夏ニューヨーカーの間で一番人気になっているのが、
ブルックリンのピザ・レストラン、”エミリー” のマンハッタン進出店舗、”エミリー・ウエスト・ヴィレッジ”。
予約を取らずに出かけると1時間半待ちは当たり前という混み具合で、人気の理由は
現在のニューヨークのベスト・ピザとベスト・バーガーが同時に味わえるため。
ピザはニューヨーク・スタイルの円形タイプもメニューにあるけれど、同店で人気なのはデトロイト・スタイルの四角いピザ。
ワイヤー・ラックに乗せてサーヴィングされるので、クラストのコンディションが保たれるのも魅力で、
スモール・サイズが15ドル、ラージ・サイズが24ドル。
バーガーは2種類あるけれど、名物はパティがダブルの”エミリー・バーガー”。このパティは
シェイク・シャックにもパティを卸しているパット・ラフリーダのドライ・エイジ・ビーフ。
バンズはニューヨークの有名ベーカリー、トムキャットのプレッツェル・バンで、キャラメライズ・オニオン、アメリカン・チーズ、ピックルス、
エミリーの特製ソースを挟んだのがこのバーガー(写真上、下段右)。カーリー・フライド・ポテトがサイドについて26ドルで、
これだけ食べればお腹が一杯になるボリューム。
この秋からパーソンズでフォトグラフィーを勉強するブルックリン・ベッカムと、彼の新学期をサポートするためにニューヨーク入りした
デヴィッド・ベッカムもここでピザとバーガーを味わうなど、セレブリティにも人気のスポットになっているのだった。
Oscar Wilde
45 W 27th St New York, NY 10001 Tel:(212) 213-3066
Emily West Village
35 Downing St New York, NY 10014 Tel:(917) 935-6434
執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。
FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に
ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。
その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。