June Week 2, 2014
” Subtlety by Kara Walker”
”ブルックリンの元砂糖工場に出現した、
80トンの砂糖を使った超巨大スカルプチャー”



ニューヨークでは、常に何らかのアート・プロジェクトやエキジビジョンが行われいてるものだけれど、 2014年夏のアート・エキジビジョンの目玉の1つとして、5月10日にビューイングがスタートしたのが コンテンポラリー・アーティスト、カラ・ウォーカーが クリエイトしたスカルプチャー、”Subtlety / サブトルティ” 。
高さ約11メートル、長さ23メートルという巨大サイズのスカルプチャーは、 内側はポリスチレンで出来ているものの、その外側を覆っているのは真っ白な砂糖。 製作に使われた砂糖の量は、約80トンと言われているけれど、 その砂糖を寄付したのがアメリカ最大の砂糖メーカー、ドミノ・シュガー。 それもそのはずで、同エキジビジョンの会場となっているのは、ブルックリンのウィリアムスバーグ・エリアのイースト・リバー沿いにある、 元ドミノ・シュガーのファクトリーであった建物。 同工場は既に閉鎖されてから約10年が経過しているのだった。

今や不動産が大きく値上がりを見せるウィリアムスバーグであるだけに、 同ファクトリーは 地下鉄駅から徒歩10分以上という交通の便の悪さであるものの、 コンドミニアムに生まれ変わるという噂が聞かれて久しかった建物。
実際のところ、今回のエキジビジョンを最後に、同ファクトリーは取り壊しが決定。 遂に その噂が現実になるのだった。






同エキジビジョンは、通常約20分待ち。混み合っている時はそれ以上の待ち時間を要する場合もあるけれど、 その際、入場者全員に義務付けられるのは閲覧に際しての許諾書へのサイン。
そうしてファクトリーの中に足を踏み入れた人々がまず圧倒されるのが、そのスカルプチャーのサイズ。 そして次に嫌でも感じることになるのが、砂糖独特の甘い香り。 この視覚と味覚の強烈なインパクトだけでもかなりのものであるけれど、 次に訪れた人が気付くのが、そのスカルプチャーのセクシャルなディテール。

スフィンクスのポーズを取った女性の裸体は、砂糖で作られているので真っ白ではあるものの、 明かに黒人女性の顔立ちとボディ・タイプ。 バストとヒップが強調されたボディは、後ろからの眺めだとシンプルながらも性器が露骨に描かれていることから、 同スカルプチャーがセクシャルに描かれ過ぎていることに腹を立てる人々も居れば、 あえて下品なアングルでその写真を撮影して、ソーシャル・メディアにアップする人々など、 そのリアクションは様々。

作品自体は、真っ白な砂糖を 白人層の食卓にもたらすために、サトウキビ畑で 奴隷として重労働を強いられていた黒人層に ささげられたもの。会場では巨大なスフィンクスのスカルプチャーばかりに目が行ってしまうけれど、 その周囲の随所に設置されているのが、血にまみれたような子供の奴隷のスカルプチャー。 これは18世紀、19世紀の製糖プロセスで、指や腕、時に命までもを失っていた子供達の姿。
クリエーターであるカラ・ウォーカーは、「アフリカの強制労働によるダイヤモンド・ビジネスを ”ブラッド・ダイヤモンド(血に塗られたダイヤモンド)” というならば、この時代の製糖ビジネスは”ブラッド・シュガー”と呼ばれるべき」として、 あえて子供達を、赤黒いスカルプチャーに仕上ているのだった。

そんなカラ・ウォーカーというアーティストは、黒人女性初のサクセスフルなビジュアル・アーティストで、 彼女の最も有名な作品は影絵のようなカット・ペーパー・シルエット。 約20年前に若くして、アート界で名前が知られるようになったカラ・ウォーカーは、 メッセージ性の強い、歴史背景に絡んだ作品が多いことで知られているののだった。






その奴隷制が過去のものと思いきや、現代はヒューマン・トラフィッキング、すなわち人身売買による 奴隷の数が史上最多と言われる状態。 その一方で、かつては奴隷制と強制労働によって生み出されていた砂糖は、肥満、糖尿病という形で、 現代の大きな健康問題、社会問題を生み出しているのは周知の通り。
そんな社会背景や歴史等の 様々な要素が絡んで、観る人によって大きく解釈が異なるのがこのスカルプチャー。 インターネット上でも、かなりの論争を巻き起こしているのだった。

カラ・ウォーカーのドミノ・シュガー・ファクトリーでの”サブトルティー”の展示は、7月6日まで。
金、土、日の週末3日間のみのオープンで、時間は金曜が午後4時〜8時。 土曜、日曜が正午〜午後6時。
そのコンセプトやメッセージの解釈が 物議を呼んでいる作品で、作風の好き嫌いはあるかもしれないけれど、、 これだけの規模のスカルプチャーの展示、それも砂糖で作られたスカルプチャーというのは、 もうこの先、お目に掛かれないと思うだけに、チャンスがある方は是非 出掛けることをお薦めします。






執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。


FaviruteOfTheWeek FaviruteOfTheWeek FaviruteOfTheWeek

PAGE TOP