June Week 2, 2012
” Nicholas Kirkwood New York Boutique ”
” ニコラス・カークウッド・ニューヨーク・ブティック ”



2011年10月2週目のこのセクションで、ニコラス・カークウッドのブーティーを取り上げた際に、 「2012年の春にはミート・パッキング・ディストリクトに彼のブティックがオープンする見込み」と書いたけれど、 予定通り、5月初旬にオープンしたのが、ニコラス・カークウッド・ニューヨーク・ブティック。
このブティックがオープンしたのは、ワシントン・ストリートで、道を挟んで はす向かいに ホイットニー・ミュージアム・アメリカン・アートの分館がオープンすることになっている というロケーション。 ここに1500スクエア・フィート(約140平方メートル)の規模でオープンしたブティックは、ホワイトとグレーを基調にした空間で、 ブティックというよりも、シューズのエキジビジョンのような雰囲気。
壁に埋め込まれたディスプレー・ボックスの中や、ディスプレー・コラムの上にシューズが1足、1足、飾られていて、 それぞれのディテールに 目が行くプレゼンテーションが行なわれているのだった。

このプレゼンテーションは 個性的なフォルムや素材使いをするニコラス・カークウッドの作品と その魅力を 効果的にアピールするもの。 またカラフルなシューズが多いニコラス・カークウッドなだけに、店内のインテリアのカラーを抑えることによって、 シューズの華やかさが目に飛び込んでくる 演出がなされているのだった。





昨年の10月にニコラス・カークウッドのブーティーを取り上げた時点では、彼のシューズをニューヨークで扱っていたのは、 バーグドルフ・グッドマンとバーニーズ・ニューヨーク、ダウンタウンのジェフリーだけ。 しかも その取り扱いは それほど数が多くなかったけれど、その直後からサックス・フィフス・アベニューが取り扱いを開始。 彼の同店デビューのパーソナル・アピアランス(デザイナー本人がやってきて、シューズのプロモーションやサインを行なうイベント)は、 なかなかの盛況だったことが伝えられているのだった。
パーソナル・アピアランスをして人が集まるというのは、デザイナーにネーム・ヴァリューがある証拠でもあるけれど、 ニコラス・カークウッドは、CFDA(アメリカ・ファッション・デザイナー協議会)のアクセサリー・デザイナーの ライジング・スター・アワードを受賞したり、ブリティッシュ・ファッション・アワードでニュー・シューズ・デザイナーのアワードを受賞するなど、 ファッション業界では 既にそのユニークなクリエーションが大きく評価されている存在。

そんな、ニコラス・カークウッドが自らのブランドをスタートしたのは2004年、彼が24歳の時。
かつてはもっと、アバンギャルドなヘア・カットとファッションだった彼も、30歳を過ぎてルックスが落ち着いてきた印象だけれど(写真下右)、 それは彼の作品にも言えること。 個性的過ぎるフォルムが減って、売れ筋が定番になるなど、 商業的なサクセスを意識したシューズのラインが展開されるようになってきているのだった。




私も 彼の作品は好きで、昨年のクリスマス・シーズンには 遂に念願だった彼のフラワー・プリントのパンプスをオンラインで、しかもセール価格で手に入れたけれど、 届いたシューズを見て まずちょっとガッカリしたのが、彼のシューズにセックス・アピールが感じられないこと。
見目麗しいファブリックを用いた、美しいパンプスであることは認めざるを得なかったけれど、 パンプスのラウンド・トウが、マノーロ・ブラーニックやクリスチャン・ディオールのラウンド・トウに比べると ズングリしたシェイプで垢抜けない印象。 サイドから見たフォルムは気にならないけれど、つま先を見下ろした時のトウの形が どうしても気に入らなくて、まずそれで興醒めしてしまったのだった。
加えて、パンプスのアーチが私の足のカーブと合わないのか、立っている間にどんどん苦痛になってくる履き難さ。 ブーティーは足をサポートする面積が大きいせいか、履き心地は気にならなかったけれど、パンプスに関しては 非常に履き心地が悪いことに気付いてしまったのだった。

とは言っても私は、履き心地の悪いシューズは 何十足も持っていて、気に入ったら履き心地など省みないでシューズを買ってしまう悪い癖の持ち主。 したがって、欲しかったシューズの履き心地が悪くても、それほどガッカリはしないタイプであるけれど、 どうしても許せなかったのが、ラウンド・トウの垢抜けないフォルム。
手持ちのクリスチャン・ルブタンやマノーロ・ブラーニックと履き比べると、そのラウンド・トウの形の悪さで 脚の印象までパッとしなくなるので、 返品してしまうことにしたのだった。







以来、彼のシューズは、ブーティーがオープン・トウを専門にして、つま先があるパンプスは避けることにしたけれど、 履き心地が悪いと感じるのは私だけではないようで、もう何年も知り合いで、少し前にバーグドルフ・グッドマンからサックス・フィフス・アベニューに移った シューズのセールス・パーソンが、ニコラス・カークウッドのシューズをトライした人々が、その履き心地に文句を言っていることをコッソリ教えてくれたのだった。
この履き心地の悪さは、アーチの部分が急にせり上がっているデザインから来ているもので、 ヒールの高さが12センチ程度でも、それ以上の高さに感じられてしまうのだった。 なのでニコラスには、 もうちょと足の骨やアーチの構造を理解してシューズをデザインして欲しいという気持が強いけれど、 それでも私が、このセクションで同ブティックをフェイバリットとして紹介するのは、彼の作品は見ている分にはとても楽しいし、 他のデザイナーには無い才能が感じられるため。
そもそも、このブティックは彼のシューズのショーケースとして存在しているもの。 見ているだけならば、足が痛むことも無いので、彼のクリエーションを存分に目で楽しむことが出来るのである。

ところで、私はシューズを購入するのは 実はブティックよりもデパートの方が好きで、それというのも ブティックは、 返品のポリシーが厳しいなど、融通が利かない部分が多いため。
加えて、昨今はデパートがシューズ・セクションを拡大して、その品揃えを充実させているので、 1箇所で様々なブランドが効率良くチェックできるという点でもデパートの方が、シュー・ショッピングに適しているのだった。

つい最近 ニューヨークにやってきた私の友人も、サックス・フィフス・アベニューが、同店の8階ワンフロアを全てレディースのシューズに当てて、 大きく展開しているのに驚いていたけれど、確かに広さではサックス・フィフス・アベニューが一番。加えて、一通りのブランドを手堅く揃えているのが同店。
でもカッティング・エッジのブランド、ちょっと一捻りのあるスタイルという点ではバーニーズのセレクションが一番で、 そのバーニーズとは異なる 一流ブランドが、お値段に糸目をつけずに展開されているのが バーグドルフ・グッドマン。
客層もそんなシューズの品揃えを反映していて、 キャリア・ウーマンと旅行者が最も多いのが サックス・フィフス・アベニュー。 ファッション&メディア業界の人々を含むファッション・フォワードな客層が多いのがバーニーズ。 そしてリッチなニューヨーカー、及びロシアやブラジルなどからやってくる リッチな旅行者が多いのがバーグドルフ・グッドマンなのだった。

唯一、ブティックでショッピングをするメリットと言えるのは、デパートの袋ではなく ブランドのショッピング・バッグ(紙袋)に シューズを入れてもらえることだけれど、特にマノーロ・ブラーニックのバッグは本当に丈夫で、しっかり出来ているので、私のお気に入り。
何故かマノーロのバッグを持って歩いていると、エレベーターの中や、交差点で女性に話し掛けられることが多いけれど、 それはクリスチャン・ルブタンやジミー・チューのバッグでは、決して起こらないことなのだった。


Nicholas Kirkwood New York
807 Washington Street, New Yorok, NY







FaviruteOfTheWeek FaviruteOfTheWeek FaviruteOfTheWeek

 


執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。
丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。
FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。
その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。

PAGE TOP