June Week 1, 2015
” The Sell by Fredrik Eklund ”
全米No.1ブローカーが明かす、自分と商品の売り込みとサクセスの秘訣


私がDVDでシリーズ録画している唯一のリアリティTVが「ミリオンダラー・リスティング・ニューヨーク」。
これは、3人のニューヨークのトップ不動産ブローカー(写真下、下段右側)を追いかけるリアリティTVで、 3人がスリリングな駆け引きで 億円単位の不動産物件の売買契約を次々と結んで行く様子は圧巻の一言。 世界100カ国以上で放映されている同番組は、TV界のオスカーであるエミー賞にもノミネートされているのだった。

同番組では、どんどんアップスケール&アップグレード化されていくニューヨークの不動産、ニューヨークの街の風景と共に、 多忙なスケジュールをこなしながらも、グルーミングやエクササイズを欠かさず、常にファッショナブルに装い、社交も怠らないという、 サクセスフルなニューヨーカーを絵に描いたような 彼らのライフスタイルも同時に描かれているけれど、 その中でも最も興味深いキャラクターと言えるのが、フレデリック・エクランド。
スウェーデンのストックホルム出身の彼は、日本同様の 「出る杭は打たれる」というカルチャーの母国を出て、 何をしたら良いか分からないまま20代前半でニューヨークにやってきたというけれど、 子供の頃から物を売る才能があったことから、友人の薦めで 不動産ブローカーをやってみようと思いつき、 そのライセンスを僅か2週間で取得。
ハードワーカーの彼は、周囲からビジネスに関する全てを吸収する傍ら、チャンスを掴んだら離さないガッツで、 不動産ブローカーになった1年目にして$50ミリオン、日本円にして約60億円の物件を売るという 快挙を成し遂げているのだった。





その彼は、アメリカ最大手の不動産会社、ダグラス・エリマンに勤め、同社のトップ・ブローカーに輝いているので、 文句なしに全米No.1の不動産ブローカー。またリアリティTVで知名度が高いこともあって、 最もソーシャル・メディアのフォロワーが多いブローカー。
「ミリオンダラー・リスティング・ニューヨーク」に登場する3人のブローカーの中で、最も高額物件を 扱うのが彼で、その平均的な物件価格は日本円にして 6億円〜25億円。この売上げの6%が 彼のコミッション。したがって、彼が6億円の物件の売買契約を結ぶと、3,600万円が転がり込んでくるけれど、 普通のブローカーなら1年に1件あったらラッキーという こんな高額ディールを 次から次へと纏めるのがフレドリック・エクランド。
彼のクライアントには、ミリオネア、ビリオネアに混じって、ジェニファー・ロぺス、ダニエル・クレイグ、 キャメロン・ディアス、レオナルド・ディカプリオなど、 マンハッタンに不動産を所有するありとあらゆるセレブリティが名を連ねているのだった。

その彼が、5月に出版したのが、「The Sell / ザ・セル」という セールス・ビジネスを営む人のための指南本。 とは言え 「自分を売り込むことが最も大切なセールス」と考える彼によれば、この本は サクセスを目指す全ての人をターゲットに書かれているという。
同書の中では、朝5時半に目を覚まし、午後9時半に眠り、週休1日という 超多忙な彼の毎日のスケジュールに始まり、 自分を売り込むコツや、彼のビジネス・モットーなどが 書かれているけれど、彼のスケジュールはとても普通の人では真似が出来ない凄まじさ。 まずジムに出かけて ワークアウト。その後シャワーを浴びて、身だしなみを整えてオフィスに出た途端に、500通ものメールを読破しながら、 プライオリティ順に返信するというけれど、その多くは「Yes」、「No」といった一言の返事。

そして8時半から、引っ切り無しにミーティングに入り、道が渋滞して時間に遅れそうな時は、 30ブロックを走って、汗だくでミーティングに現れることもしばしば。 それほど彼は時間に遅れることをビジネスのご法度と考えているのだった。
また彼はミーティングの時間は1時間がリミットと決めていて、そのミーティングの最中にも、 アイフォンをチェックしては、数々のディールに対応しているというマルチ・タスクぶりなのだった。




ここまででも分かるように、彼は決して時間を無駄にしないタイプ。 したがって、ランチ・タイムは時間の無駄と考えていて、時に空腹を紛らすスナックなどをミーティングに持ち込む程度。
その一方で 彼が特に同書の中で強調しているのが、自分のプレゼンテーション。 すなわち、ファッションに始まって、ヘアカット、グルーミング、腕時計、シューズなど、全てに気を使うこと。 彼自身、駆け出し時代に無理をして買ったクリスチャン・ディオールの高額スーツを着るようになってから、 セールスに弾みがついたとも語っているけれど、 そんな彼がファッションで重視するのは とにかく目立つこと。人に覚えてもらえたり、興味を持ってもらえる、自分のシグニチャーとなるスタイルを 持つこと。

彼に限らず、「ミリオンダラー・リスティング・ニューヨーク」に登場するブローカーは、非常にファッショナブル。全員ワークアウトを欠かさない フィットしたボディの持ち主なので、肩幅とウエストを強調し、ボディが際立つカットの 最高の仕立てのビスポーク・スーツを着用。 その素材は、見るからに高額なイタリアン・ファブリックで、時にピンクやベージュといったアンコンベンショナルなカラーや、 派手なウィンドウペインなど、自分に自信が無かったら着こなせないようなスーツで登場するのだった。
中でもフレドリック・エクランドについては、その派手なソックスがシグニチャー。 他にも日本円で300万円以上のゴールド・ウォッチや、シルク・デニムのスーツなど、とにかくステートメント・ファッションを好み、 自分を目立たせるのがフレドリックなのだった。

彼が意味する「自分のプレゼンテーション」は、ファッションに止まらず、 肌の色艶から、耳毛&鼻毛の始末、吐く息にも気を使うのが当たり前。 ヘアカットに約3万円を支払っているという彼は、それだけの価値があることも強調しているのだった。




それ以外に彼が大切と考えるのは心身の健康管理。そのためにはエクササイズと睡眠が最も大切とのことで、 彼が決して譲らないのが8時間の睡眠と、2時間のワークアウトを1日のスケジュールの中に確保すること。 特に睡眠は、記憶力や決断力を保つために不可欠であるとしているのだった。

その彼は、昨年には1200億円の不動産を売り上げる 全米No.1のメガ・ブローカーであるけれど、 彼のビジネスはアメリカだけでなく、母国スウェーデンでも50人のスタッフを擁し、年間700億円を売り上げる不動産会社を自ら経営。 またそのビジネスはフィンランドなど、北欧諸国にも拡大中であるという。
でも彼がそんなスーパー・セールス・ブローカーになるまでの道のりは平坦ではなかったようで、 彼はかつてゲイ・ポルノに出演した過去があることが「ミリオンダラー・リスティング・ニューヨーク」のエピソードで明らかになっているのだった。

同書は、「ミリオンダラー・リスティング・ニューヨーク」を観て、彼のキャラクターを理解している人でなくても、 「彼のように、いつかニューヨークに行って成功したい」と考える人にとって、非常に興味深いと同時に、 モチベーションになる1冊。 私も同書から時間の使い方などを学んだけれど、既に自分でビジネスをしている人にとっても、 取り入れたり、参考にしたいアイデアやフィロソフィーに溢れているのだった。

Will New York 宿泊施設滞在


執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。


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