May Week 5, 2014
” The Artist to Watch! Bath Katleman ”
” 大注目のアーティスト、べス・カトルマンの見目麗しくも、キッチュなポルセリン・アート ”


Photo: Malcolm Varon


私が最初にべス・カトルマンのアートを目にしたのは、5月1週目に行われた ”スプリング・マスターズ”という アート・ショーでのこと。
遠くから一目見ただけで、引き寄せられるように彼女のアートが展示されているブースに入って行ってしまったけれど、 その時に展示されていたのが写真下、”Girls at War / ガールズ・アット・ウォー”というタイトルの、3枚のパネルから構成されるポルセリン・アートなのだった。

長くブルックリンにスタジオを構えて活躍するべス・カトルマンは、 自らの性格を 「Intense / 熱烈」、「Twisted / 一筋縄ではいかない」、「Playful / 遊び心がある」 と表現していて、 これらは本人も認める通り、彼女の作品にも反映されているキャラクター。
彼女の作品は、精密に作られたポルセリンのオブジェで構成されている3Dアート。 その立体感と、光と影の陰影で、絵画でもなく、スカルプチャーでもない独特の世界を生み出しているのだった。 クラシックでエレガントな遠目の雰囲気とは打って変わって、その精巧なポルセリンのディテールはポップ・カルチャーを反映した キッチュで、ユーモラス、時にダークなユーモアを打ち出すもの。
コンテンポラリー・アートの中には、コンセプトや外観は興味深くても、決して部屋には飾りたくない作品が少なくないけれど、 べス・カトルマンについては、その作品を素晴らしいと思っただけでなく、私が数億円の豪邸を構えていたら 購入して 部屋に飾りたいと思ったアーティスト。
それほどまでに彼女の作品に惚れ込んでしまった私は、スプリング・マスターズのブースでキュレーターが紹介してくれたべス本人に その場で記事の取材を申し込んでしまったのだった。









Copyright © Beth Katleman, 2014.



2児の母親でもあるべス・カトルマンの1日は、まず子供を学校に送り届けるところからスタート。 その後はスタジオにこもって、時に1日12時間働き続けることも珍しくないというのが彼女の1日。 でも彼女にとって、スタジオで 集中しながら製作に取り組むのは、精神的に解き放たれている時間。 彼女にとって 作品の”生みの苦しみ”を味わうのは、そのストーリー・ラインやコンセプトをクリエイトしている時であるという。

多忙な時は、子供にさえ殆ど会えないというべスは、4月にニューヨークで行われたファベルジェ・ビッグ・エッグ・ハントのために エッグ・オブジェを手がけたアーティストの1人。 同プロジェクトでは、有名ファッション・デザイナーが手がけたような、 アート界でのヴァリューが低い作品はオンライン・オークションに掛けられ、 アート界で認められたアーティストの作品のみが サザビーズで競売に掛けられているけれど、 べスが手がけた作品は そんなサザビーズのオークションで落札されたエッグの1つ。 そんなエピソードからも、自分の作品について気さくに語る彼女が、既にアート界でエスタブリッシュされつつある アーティストであることが窺い知れるのだった。

彼女のブルックリンのスタジオには、これまでに使用した何百ものポルセリンの型がモチーフ別に棚に収められていて、 スタジオ内は彼女のきちんとした性格を反映して、極めてオーガナイズされた状態。
べス・カトルマンは スタンフォード大学を卒業後、クランブルック・アカデミー・オブ・アートのMFA(マスター・オブ・ファイン・アート)、 UCLAではアート・マネージメントのMBAを取得している高学歴のアーティストでもあり、 そんな彼女のIQの高さを反映した細部へのこだわりとコントロールは、時に作品を眺める側の想像を超えた域にまで及んでいるのだった。
例えば 白いポルセリンというと、色は1色か2色程度と思う人は多いけれど、 実は白いポルセリンのトーンには多数のバラエティがあって、 べス・カルトマンは、自らの作品のイメージにマッチする ポルセリンのカラーをカスタムオーダーしているとのこと。 またポルセリンは焼きあがると約20%縮むとのことで、それを計算して型を製作。 焼きあがったポルセリンの実物を3Dで検証する一方で、コンピューターの画面上でレイアウトの試行錯誤を続けながら、 作品に仕上て行くという。








Copyright © Beth Katleman, 2014.



べス・カトルマンがアーティストとしての大ブレイクを迎えるきっかけになったのは、2011年にに製作した 「Folly / フォリー」(写真上) という作品。 48ピースのポルセリンをブルーのバック・グラウンドにレイアウトしたこの作品は、 彼女自身が仕上がったと同時に、自分の新境地を切り開いたと実感した作品。
それまでは、どんな作品をクリエイトしても常に何か物足りなさや、改善点を見出していた彼女が、 「フォリー」をクリエイトした時点で、初めて全てに満足したという。

それ以降は「フォリー」を起点にした彼女独特のスタイルで、どんどんアート界にアピールしていったのがべス・カトルマン。
その「フォリー」は何処か東洋的で、1つ1つのポルセリン・オブジェは日本の盆栽を彷彿させるもの。 オブジェに登場するキッチュなキャラクターは、欧米人が見ても原宿カルチャーを思い浮かべるスタイルであるけれど、 そんな日本の影響をべスにもたらしたルーツは、日本のアートを好み、家の庭を日本庭園にしていた彼女の祖母であるという。

コンテンポラリー・アートは、ファッション・デザイナーの中にもコレクターが多いけれど、 彼女の作品のキッチュなユーモアやスタイリッシュさは、見るからにファッション業界関係者にアピールしそうなもの。
実際、彼女の作品 「フォリー」は、シャネル、アルマーニ、ルイ・ヴィトン等のブティック・デザインを手がけることで知られるアーキテクト、 ピーター・マリノの目に留まり、クリスチャン・ディオールの香港ブティックのウォール・アートとしても、 インストールされているのだった。







べス・カトルマンの最新作は、このページの1番上中央の "Hostile Nature / ホスタイル・ネイチャー" というタイトルのもの。インスピレーション・ソースになったのは、アンティークのウォール・ペーパーであるという。
べスが未発表の作品として最初にこの写真を見せてくれた時は、淡いブルーのバック・グラウンドであったけれど、 同作品がデビューした5月2週目の”コレクティブ2デザイン・フェア”では、鮮やかなライム・グリーンの壁をバックに インストールされていて(写真上)、全く異なる印象のアートになっていたのは私がとても驚いた部分。

自分のアートが飾られる環境をとても気にするというべスは、彼女の作品を購入したコレクター達とは、 全員良い関係を保っているとのこと。 昨今では、アート・ブームの影響で 以前よりも気軽にアートを購入する人や、投資目的でアートを購入する人々が増えてきいるけれど、 そんなアート収集を始めようという人々に対するべスのアドバイスは、「自分が気に入って、眺める度に様々な思いを描けるアート、 壁に飾るだけでなく、思い入れを持って付き合っていける作品を購入するべき」ということ。 そして彼女自身も 「人々が 他のことを忘れて見入ってくれる作品、何度眺めても新しい発見がある作品を クリエイトすることを常に目標にしている」と語っているのだった。

ちなみにべス・カトルマンのアートのお値段は、現在は2000万円前後。でも昨今のアートは、べスのような注目されるライジング・スターの場合、 NYの不動産よりも値上がりが早いので、これから益々お値段がアップすることは確実なのだった。

月に1度は ギャラリーやミュージアムを見て回る日を設けるというべスであるけれど、 そんな彼女に最も影響を与えたアーティストは、ペインターでもスカルプターでもなく、フェデリコ・フェリー二等の 映画監督。
最後にブルックリンを長く拠点にする彼女に、昨今のブルックリンの発展ぶりについて尋ねたところ、 彼女は、映画監督のスパイク・リーのように新参者のブルックリナイトに対してネガティブな気持ちは全く無くて、 昔ながらのブルックリンも、新しいエキサイティングなブルックリンも、どちらも好きだと語っていたのだった。

以下はそんなべス・カトルマンのブルックリンのお勧めスポット4つ。
これらのスポットからも、彼女が生活の様々な部分にこだわったアーティストであることが 窺い知れます。

 Beth's Favorite Spots in Brooklyn /
べスのブルックリン お気に入りスポット

ベーカリー: Bien Cuit / ビアン・キュイ

べス曰く、どこよりも最高のパンが味わえるのがこのスポット。
120 Smith St, Brooklyn, NY 11201 tel: (718) 852-0200

レストラン: Frankie's 457 / フランキーズ457

暖かい季節はガーデンで食事が味わえるブルックリンの
人気レストラン。アーティストのファンが多いことでも有名。
457 Court St. Brooklyn, NY 11231 tel: (718)403-0033

コーヒーショップ: Root Hill Cafe / ルート・ヒル・カフェ

べスのスタジオに ほど近い行き着けのコーヒー・スポット。
店内は、いつもアーティスト達で溢れているとのこと。
262 Carroll St, Brooklyn, NY 11215 tel: (718) 797-0100

イタリアン・デリ: Caputo's Fine Foods / カプトス・ファイン・フーズ

3世代に渡って、毎日フレッシュなモッツァレラ・チーズを
作り続けているデリ。べス曰く、「とにかく デリシャス!」
460 Court St. Brooklyn, NY 11231 tel: (718) 855-8852


べス・カトルマンの過去の作品やバイオグラフィーは www.bethkatleman.com/ で ご覧いただけます。




執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。


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