May. Week 3, 2014
” Brioche Doughnut ”
” ブリオッシュ・ドーナツ ”



昨年5月にクロナッツが登場して以来、ベーカリー・ブームが続いているニューヨーク。
このセクションでも、これまでにどれだけのベークド・グッズやブレッドを扱ってきたか分からないほどであるけれど、 昨今のニューヨークのベーカリーは、かなりレベルがアップしてきているだけに ちょっとやそっとではニューヨーカーが感動しなくなってきているのが実際のところ。
なのでメディアに取り上げられるような存在になるには、ドミニク・アンセル・ベーカリーが行っているようなアイデアやギミックが必要に なってくるけれど、昨今 私が最も気に入ったのが、 ここにご紹介するブリオッシュ・ドーナツ。



その名の通りブリオッシュのドウを揚げたドーナツは、 中央のドウをくり貫いた部分を、 ドーナツのリングの上に重ねて、雪だるまのような 2レイヤー・シェイプにしたキュートなドーナツ。
小さなボール・シェイプのドーナツは、プレーンなシュガー・ドーナツであるけれど、 ドーナツのリングの内側に万遍無くカスタード・クリームが入っているというところは、 クロナッツに少し似ているのだった。






私がこのブリオッシュ・ドーナツの存在を知ったのは、写真上のフード・ブログが選んだニューヨークのベスト10ドーナツの 記事を読んだ際 (写真上)。
私はブログの記事は信用するものと、しないものがあるけれど、このトップ10ドーナツのリストには、 キューブ・ニューヨークでかつて紹介した、”カープ・ドーナツ”や、 ブルックリンの ”ドー”のドーナツ、 加えて 定評があるブション・ベーカリーのドーナツなどがランク・インしていたので、 信じるに値すると判断。そのトップに挙げられているドーナツを食べてみようと考えたのだった。

このブリオッシュ・ドーナツをクリエイト しているのは、マンハッタンのダウンタウンにある Mah Ze Dahr Bakery / マーゼダー・ベーカリー。 でも このベーカリー、ウェブサイトはあってもストアが無いので、通販ビジネス。
このブリオッシュ・ドーナツについては、送付はせず 直接配達のみ。なのでこのアイテムのみ マンハッタンからしかオーダーを受けないというポリシー。 それもデリバリーをするのは、木曜日と金曜日の2日だけ。デリバリーの時間は午後5時前ということしか決まっていないので、 一体何時に届くか分からないという不便さ。しかもデリバリー・フィーは15ドルと高額。 ドーナツは6つ20ドルのセット売りのみ。
これだけ悪条件が重なったので、少々躊躇はしたものの ニューヨークで最も美味しいと言われるドーナツには興味があったので、 とりあえずオーダーしてみることにしたのだった。



その結果、私のオーダーがデリバリーされたのは午後5時10分前。したがって午後のティー・タイムのデザートにしようと思った 案はすっかり潰れてしまったのだった。 でも、ケーキのような箱に入ってデリバリーされた6つのドーナツは見るからに美味しそうな上に、蓋を開けた途端に香った 粗砂糖に混じったヴァニラと 揚げた脂の香りが素晴らしくて、思わずうっとり。
私は先ず リングの上に乗っている、小さなボールのドーナツから味わったけれど、 既にその時点で 「さすがにベスト・ドーナツとあって美味しい!」と思ってしまったのだった。 でも美味しさのピークは、やはりクリームが注入されたリングの部分。
ドウはブリオッシュの生地とあって、空気が一杯入ったふっくらした軽いもの。 そこに入っているカスタード・クリームは、ヴァニラ・ビーンがふんだんにミックスされた贅沢さで、 香りも、味も、テクスチャーも素晴らしいクリーム。
そんな柔らかなドウとクリームのドーナツに、たっぷりまぶしてあるのが ヴァニラ・ビーンをたっぷり含んだ粗砂糖。 この粗砂糖が また何とも言えずに美味しさを引き立てているのだった。

なので、高い送料を支払ってオーダーしても 大満足のドーナツで、 一体どんなパティシエがこれをクリエイトしているのか興味が沸いてきてしまったのだった。







マーゼダー・ベーカリーの設立者であり、ヘッド・シェフでもあるUmber Ahmad / アンバー・アーマッド(写真上右)は、 金融業界でインベストメント・バンカーを勤めていた女性。 彼女は、トライベッカ・フィルム・フェスティバルの参加作品となったウォール・ストリートで働く女性の ドキュメンタリー映画、「リスク/リワード」にもフィーチャーされた存在。
そんな彼女がラグジュアリー・ブランドや世界の一流シェフと関わる仕事を続けた後に、 自らの経験を全て融合させて たどり着いたのがベーカリーのビジネス。

そんなアンバーのベーカリーは、グラマーシー・タバーンで長年シェフを続けた後、 クラフト、クラフト・バー等、NYをはじめ 全米にレストランを展開し、 リアリティTV「トップ・シェフ」にも出演するセレブ・シェフ、トム・コリッキオ(写真上左)の目に留まり、 彼の後身育成プログラム、 ”コリッキオ・ディスカバリー・プラットフォーム”の第1号に選ばれているのだった。
このためマーゼダー・ベーカリーは、トム・コリッキオがディスカバリー・プラットフォームのプログラムを通じて アドバイザーを務めているのに加えて、彼と共に長年レストラン・ビジネスを行ってきたジェフリー・ズロフスキーも アドバイザーとしてビジネスに参加。
そんなフード&レストラン業界の重鎮がバックアップするアンバーのビジネスであるけれど、 驚いたのは、デリバリーのアレンジや、その時間について何度かEメールのやりとりをしていたので、 デリバリーが届いて、早速味わった後に、お礼を兼ねた感想のメールを出したところ、何とアンバー本人から 丁寧なリプライが届いたこと。
なのでドーナツもさることながら、彼女の顧客を大切にする姿勢にも惚れ込んでしまったのだった。




マーゼダー・ベーカリーは前述のように送料が高額であるけれど、 一律の金額なので、ドーナツと一緒に私が注文したのが 同ベーカリーのシグニチャーの1つでもある、クリーム・スコーン。
このスコーンは6つで24ドル。ドーナツより4ドル高くなっていて、 プレーン、チョコレート・チップ、ドライ・チェリーという3種類が選べるけれど、 私は写真上のドライ・チェリーをオーダー。
するとチェリーが贅沢に入った、その名の通り内側がとってもクリーミーなスコーンが届いて、 こちらも大満足なのだった。
スコーンはコーヒーよりも紅茶との相性が抜群。スコーンというと、バターやジャムをつけて食べるというイメージが強いけれど、 このスコーンに関しては、そのまま何もつけずに食べて十分に美味しいというのが私の感想。
私が味わったのは、デリバリーされた翌日であったけれど、温めずに食べても、 スコーン特有のモサモサした食感はなくて、本当に舌の上でクリーミーに感じられる しっとりした美味しさになっていたのだった。

ちなみに、ニューヨーク・マガジンはマーゼダー・ベーカリーのブラウニーをニューヨークのベスト・ブラウニーに選んでいて、 それ以外では、ブリオッシュ・ドーナツと同じカスタードを用いたシュー・クリームも優秀なもの。
なので、近々また同ベーカリーにオーダーをすることになると思うのだった。

Mah Ze Dahr Bakery
http://mahzedahrbakery.com/




執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。


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