May Week 3, 2013
” Frieze Art Fair ”
” フリーズ・アート・フェア ”


5月10日〜13日のスケジュールで、ニューヨークのランダール・アイランドの巨大な特設テントで行なわれていたのが、フリーズ・アート・フェア。
同アートフェアは、世界約40カ国から集まった 180以上のコンテンポラリー・アート・ギャラリーが 1,000点のアートを展示・販売しており、 12月にマイアミで華々しく行なわれるバゼル・マイアミほどの規模はないけれど、フェスティブな気分で コンテンポラリー・アートを一気に眺められるイベントになっているのだった。

ランダール・アイランドは、私が住むマンハッタンのアッパー・イーストサイドからは、車で10分ほどの距離であるけれど、 私は同イベントで訪れたのが初めて。ニューヨーカーの中にはランダール・アイランドの存在さえ知らない人も多いのだった。
ランダール・アイランドのパークでは、過去にシルク・ド・ソレイユが特設テントを設けてパフォーマンスを行っていたこともあるけれど、 同じ敷地内では、往年のスター・テニス・プレーヤー、ジョン・マッケンローがエリートのジュニアを対象に テニス・クリニックを行なっていたりもするのだった。

フリーズ・アート・フェアは ロンドンでも行われているイベントで、ニューヨークでの開催はこれが2回目。 チケットは 42ドルで、メトロポリタン美術館のサジェスション入館料の2倍以上。
加えてランダール・アイランドは交通の便が悪いので、タクシーを使うか、5.5ドルの送迎バス、もしくはミッドタウンからイースト・リバーを 上って辿り着く 13ドルの送迎フェリーを利用しなければ アクセス出来ないロケーション。 したがって、興味本位でちょっと立ち寄るというタイプのイベントではないけれど、今年は期間中の4日間で4万5,000人が訪れたことが 伝えられているのだった。







正直なところ私は、コンテンポラリー・アートを ”アート” としては見なしていなくて、 フリーズで見るようなコンテンポラリーの作品と、ミケランジェロ や ヴァン・ゴッホ といったパワフルな真の芸術を 同じ ”アート”という言葉で括るのには どうしても抵抗があるのだった。 事実、メディアの中にはフリーズ・アートフェアで展示されていた作品に対して「これがアートと呼ぶに値するのか?」と 疑問を投げかける風潮も多かったけれど、私にとっての コンテンポラリー・アートは ”ビジュアル・エンターテイメント”。「楽しんで眺められればそれで十分」と考えて、あまりシリアスに捉えてはいないのだった。

その一方で、お金が有り余っている人々にとってコンテンポラリー・アートは格好の投資対象。
ニューヨークのダウ平均株価が史上最高値を更新しているとは言え、ここ数年、株式よりもずっと良い投資になると言われ続けてきたのが コンテンポラリー・アート。 次から次へと新しいアーティストや作品が市場に登場して、それがどんどん値段を上げていくので、ここ数年のアート・シーンは リセッション前の住宅バブルの様相を呈しているのだった。
私の知人は 購入したアートを1年後に4倍の価格で売ったと話していたけれど、こうした投資目的でアートを買っている人は、 しっかり投資アドバイザーならぬ アート・ディーラーがコンサルテーションをしていて、 そのアートを気に入って買うのではなく、値が上がることが見込まれるから買うのが通常。
そんな割り切ったアプローチをしているのは買う側だけでなく 作る側も同様で、 最も著名なコンテンポラリー・アーティストの1人、ジェフ・クーンズなどは チェルシーにある3万スクエア・フィート (約2800平方メートル)の スタジオに140人のアシスタントを雇い、”製作”というより ”生産” という言葉が相応しい体制で、 クリエーションを行なっているのだった。





フリーズ・アート・フェアに並ぶ作品の中には、自分で真似をして作れそうな ”クラフト”の域のものから、全く訳が分からない物体、 ダンボールを繋ぎ合わせて、巨大なキャンバスに仕立てた絵画等、様々なものが見られるけれど、 バラエティが豊富で、”カンバセーション・ピース”になる作品が沢山並んでいるのは紛れもない事実。
イベントの目的は、もちろんギャラリーがアートを販売することで、 シリアスなコレクターは、一般の人々が閲覧する前の VIPデイに 既に購入を済ませているのが通常。 一般の人々が支払う高額なチケット代は、アートフェアの運営費と収入になっているのだった。

昨今では、メガ・リッチの投資目的だけでなく、一般の人々の間でもコンテンポラリー・アートへの関心が 高まっているだけに、こうしたアート・イベントのパブリシティが増えて、 イベントに足を運ぶ人々も増えているけれど、さらに昨今増えているのが アート・イベントのスポンサーになる企業。
それと同時に、昨年の コーチ&ジェームス・ネア ルイ・ヴィトン&ヤヨイ・クサマ のような アート&ファッションのコラボレーションも増えていて、ファッション・ブランドは今やアート・イベントの大切なスポンサー・カテゴリー。 またファッション・デザイナーの中にも、アートのコレクターは非常に多いのだった。
でもアート関係者は、ファッション関係者が考えるほど アートとファッションが 近い存在とは見なしていないとのことで、 「アートとファッションは全く別のビジネス。 アートをコンセプトやインスピレーションにしたら ファッションは商業的に売れない」という意見が多いようなのだった。




今週は フリーズ・アート・フェア以外にも、 コンテンポラリー・アートの世界が いかにバブッているかを象徴するイベントが ニューヨークで3つ行なわれているけれど、 そのうちの1つが今週火曜日5月14日に行なわれたサザビーズのコンテンポラリー・アート・オークション。 この日 落札された44点のアートの総額は、2億9,360万ドル(約294億円)。そのうちの5点は20億円を超える価格。
中でもバーネット・ニューマンの 「Onement VI / ワンメント 6 (写真上左、 「ワンメント」はバーネット・ニューマンが連作で製作した 彼のシグニチャー・シリーズ)」は、非常にシンプルな絵画でありながらも、同アーティストにとって過去最高額である 4,385万ドル(約43億9,000万円)で落札されているのだった。

もう1つのイベントは、ニューヨークのクリスティーズで 5月13日、月曜に行なわれた、レオナルド・ディカプリオの環境チャリティのための アート・オークション、”11th Hour Auction / イレブンス・アワー・オークション”。
同イベントは、レオナルド・ディカプリオが自らのチャリティ基金を集めるために、 アーティストから寄付された作品を競売にかけたもので、主に環境をテーマにした33点が出品されたのだった。 その多くは 知名度が今ひとつの新進アーティストの作品で、 イベント自体も シリアスなオークションというよりは、セレブ・イベント。
会場には、ディカプリオの親友であるマーク・マグワイア、彼と環境問題に一緒に取り組んでいるマーク・ラッファロー、 それ以外にもブラッドリー・クーパー等が姿を見せた他、 夫であるフランソワ・アンリ・ピノーのファミリーがクリスティーズを経営しているとあり、女優のセルマ・ハイヤックも夫と共に 応援に駆けつけていたのだった。

野生のトラの保護に熱心な レオナルド・ディカプリオのチャリティとあって、アートのテーマには トラがかなり登場していたけれど、 この日最高額をつけたのが、Mark Grotjahn / マーク・グロッチャン の「Untitled / 無題 (写真上、左から2番目)」。 これを 大御所コンテンポラリー・ギャラリーのオーナー、ラリー・ガゴーシアンと、つい最近、スーパーモデル、ナオミ・キャンベルと 別れてゴシップ欄を賑わせた ロシア人不動産ビリオネア、ウラジスコフ・ドローニンが競り合った結果、予想落札額の2倍である 650万ドル(約6億6000万円)という価格で、ガゴーシアンが手に入れているのだった。
このオークションの売り上げ以外に 寄付も加わって、レオナルド・ディカプリオ財団は 約38億円を 集めたことになるけれど、セレブの名前が絡まなかったら ここまで高額で落札されることが無い アーティストばかりであるため、クリスティーズ関係者の中では 「最も利益率の高いオークション」と言われていたのだった。

でも、何と言っても圧巻だったのは、今週水曜夜に 同じくクリスティーズで行なわれたコンテンポラリー・アートのオークション。
会場には、ありとあらゆるビジネス界のアート・コレクターのVIP中のVIPが姿を見せ、オークションの売り上げ総額は4億9,500万ドル(約495億円)。 中でも話題になっていたのは、1993年5月に 240万ドル(約2億4,000万円)で落札された ジャクソン・ポラック の 「No.19」(写真上、右から2番目)が、 24倍以上に値を上げて 5,830万ドル(約58億3,000万円)で落札されたこと。
この他、ロイ・リキテンシュタインの「Woman with Flowered Hat / ウーマン・ウィズ・フラワー・ハット(写真上、右)」も5,000万ドル (約50億円)で落札されたけれど、 これを会場で落札したのはジュエラー、グラフの経営者で、長年のアート・コレクターとして知られる ローレンス・グラフ氏なのだった。




話をフリーズ・アートフェアに戻せば、同イベントは さすがにチケットが40ドル以上のアート・フェアとあって、通常のどんなイベントよりも遥かに充実していたのが フード・セクション。
今年は、CUBE New York で何度も取り上げている ミッション・チャイニーズ・フード (写真上左)も加わって、 案の定、大行列が出来ていたけれど、それと同時に目玉になっていたのは ブルックリンのレストラン、ロベルタが ストーン・オーブンを2台 持ち込んで 焼き上げていた ピザ。 同店のピザは、ニューヨークのトップ3に入る ナポリ・スタイルのもの(写真上右)で、1人であっと言う間に1枚平らげてしまう美味しさ。
これ以外にもローワー・イーストサイドのファット・ラディッシュや、ブルックリンのコート・ストリート・グローサー等、 ヘルシー志向で 質の高いレストランがフードを提供しており、コーヒーもグルメ・ブレンドで知られるブルー・ボトル・コーヒーが 味わえる等、グルメ・ラインナップを見せていたのだった。

私が出掛けた先週日曜は お天気にも恵まれて、イースト・リバーのウォーターフロントにあるガーデン・エリアで、 ロベルタのピザとリオハのワインを ゆったり味わっていたけれど、アートを眺めるだけでなく、 僅か10分で遠方に来た気分が味わえるロケーションや、フードの充実など、総合的な意味で 楽しめたのがフリーズ・アート・フェア。
週末の半日を潰すイベントとしては、とても有意義と言えるのだった。





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執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。
丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。
FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。
その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。

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