Apr. Week 4, 2012
” Central Park's Conservatory Garaden ”
” セントラル・パークス・コンサーヴァトリー・ガーデン ”



今年は、冬が異常なまでに暖かかったこともあって、例年よりもずっと早く満開になったのがセントラル・パークの春の花々。
私は今、週に4回パークを走っているけれど、この季節に羨ましく思うのが、花の美しさを眺めながら ゆっくり散歩をしている人たち。 私の場合、パーク内の花の美しさに見とれて 足を止めていたら、仕事前にランニングが終わらないこともあるけれど、 一度走り出したら、途中で止まったり、歩いたりしない主義なので、満開の春の花も、初夏の新緑も、秋の紅葉も、冬の雪景色も、 全て走るスピードで通過する間に 脳裏に焼き付ることになるのだった。

セントラル・パークは、マンハッタンの面積の6%を占める2万4000平方メートルという広さ。
その名の通り、細長いマンハッタン島の中央の、60丁目から110丁目までの50ブロックに渡って位置する公園であるけれど、 大都市の公園でこれほど上手くランドスケープが実現されたパークは他に例を見ないといわれる存在。
ミッドタウンや、アッパーイースト&ウエストの住人に非常にアクセスし易いのに加えて、26のスポーツが楽しめる施設が備えられていて、 市民の憩いの場としてだけでなく、アウトドア・ジムの役割も果たしているのがセントラル・パーク。 もちろん観光名所であるのは言うまでもないこと。

そのセントラル・パークの中にあって、面積は小さいものの 最も人手と維持費が掛っているといわれるのが、 今週ここに御紹介するコンサーヴァトリー・ガーデン。
このガーデンが位置するのはセントラル・パークの北東のコーナーで、入り口は5番街の104丁目と105丁目の間。 その入り口には 写真上、左側のヴァンダービルト・ゲートがそびえているのだった。 この芸術的とも言えるゲートは、鉄道で巨額の富を築いたヴァンダービルト家が、かつてプラザホテルの傍に所有していた 豪邸の正面門として1894年にパリで作らせて、運ばせたもの。
そのゲートからステップを下って、真正面に見渡せるのが、広い芝生が広がると同時に、完璧にシンメトリーにデザインされたセンター・ガーデン。 そして、その両側に遊歩道を挟んで、円形のガーデンがそれぞれ左右に位置しているという、3つのエリアから構成されているのが同ガーデンなのだった。








この庭園が何故コンサーヴァトリー(温室)・ガーデンと名付けられているかと言えば、1898年〜1934年まで、 ここには本当に 温室があったとのこと。 でもそれが撤去されて、跡地にランドスケープ・アーキテクトの、グリモア・D・クラークがデザインを担当してクリエイトされたのがこの庭園で、 一般に公開されたのは1937年のこと。
センター・ガーデンは、イタリアン・スタイルの庭園にインスピレーションを得ており、その右手でパークの北側に当たる円形パークはフレンチ・スタイル、 左手の南側に当たる円形パークはイングリッシュ・スタイルになっていて、それぞれの異なるテイストが楽しめるようになっているのだった。
ここはランナーもバイカー(サイクリングをする人)も居ない、パークで最も静かなエリア。 同庭園の美しさに感動して、ここで結婚式を挙げるカップルも居るほどで、ウェディング・フォトのロケーションにこのガーデンを選ぶカップルも 少なくないのだった。

これだけの規模のガーデンを完璧に維持し続けるためには、多くのリッチなニューヨーカーが 多額の寄付を行なっており、 春になると、満開の花に囲まれながら、寄付をしたドナーを招待したパーティーがここで行なわれるのは例年のこと。
そもそもセントラル・パークは、樹木の数だけでも約2万本。加えて芝や花々、池や貯水池、ベースボール・フィールドからテニス・コートまでの 施設を維持するには巨額な費用が掛るのは容易に想像が出来ること。 私がランニングをしている最中に、パークのスタッフが草木の手入れをしている様子を目にしない日は1日も無いけれど、 こうしたスタッフ以外にも、セントラル・パークでは多数の市民ボランティアが参加し、パークのメンテナンスを行っているのだった。






私の以前のフランス語のクラス・メートは、幼いころから自宅の広い庭のガーデニングをして育ったというノース・キャロライナ出身の女性。 彼女が ニューヨークにやってきてまず一目惚れしたのが コンサーヴァトリー・ガーデンで、 彼女は、この庭園の手入れをしたいという一心で、セントラル・パークのガーデニングのボランティアになってしまったのだった。
そのボランティアというのは、行きたい時だけ参加すれば良いというような生易しいものではなく、 仕事と義務がしっかり割り当てられた大変な労働。 もちろん、コンサーヴァトリー・ガーデンだけのガーデニングをさせてもらえる訳ではなく、パーク内のありとあらゆるエリアの 雑草取りから、植物の植え込みまでを無給で行なうことになるけれど、それでもプライドと生きがいが見出せる素晴らしいボランティア・ワークであると 彼女は語っていたのだった。

私は彼女に出会う前からコンサーヴァトリー・ガーデンには何度も散歩にやってきていて、当時はランニングなどしていなかったので、 セントラル・パークを訪れるのは、ウエストサイドに行く際に 歩いてパークを横切るか、さもなくばこのガーデンに来る時に限られていたのだった。
私がコンサーヴァトリー・ガーデンに散歩に来ていたのは、もっぱら精神的に疲れた時や、何となく外の空気が吸いたいと感じたとき。 幸い 自宅から比較的近いので、過去に何回も このガーデンだけを訪れたけれど、 何時来ても、センター・ガーデンの芝生や、花々の美しさに心が洗われる思いで、 特にフレンチ・ガーデンは、現在はチューリップが満開であったけれど、これが初夏になるとバラが咲き乱れるようになって、 シーズンに応じた花々が必ずカラフルな色を添えるようにデザインされているのだった。






私は、東京で生まれ育った上に、4歳の頃からマンション暮らしで、土や植物には馴染まない生活をしてきたので、 大自然に憧れたことが無いタイプ。 したがって、ヴァケーションもカルチャーや歴史がある場所を選ぶ傾向にあって、ヨセミテ国立公園やアラスカ、ましてやアフリカなどは論外。 都会の生活の中で、自然環境に飢えるような思いを抱くことは決して無かったのだった。

それでも過去2年以上セントラル・パークを走るようになって理解してきたのが、屋外の自然が人間心理に与えるポジティブな影響力。 ジムの空気を吸いながら、ランニング・マシーンの上を走るのと、セントラル・パークで森林浴をしながら、木々の香り、土の香りを 酸素と一緒に吸い込んで走るのとでは、エクササイズが精神に与える効果が全く違うのだった。
そもそも、走ること自体が楽しく感じられるのはもちろんのこと、頭の中がいろいろな出来事やストレスでモヤモヤしている時でも 走り終わるころには気分が スッキリしているし、毎日木々や草花を見ながら走っていると、そうした自然の植物の生命力を実感するようにもなるのだった。 人間が歩くのに苦労するような強風の嵐の後でも、木々に花がちゃんと咲いているのを見ると、 その生命力に感動すら覚えてしまうけれど、そうした森林浴や地磁気を浴びることの大切さというのは、 セントラル・パークを走るようになってから痛感するようになったもの。
「都会のど真ん中のパークで、森林浴なんて大袈裟」と思う人も居るかも知れないけれど、セントラル・パークには本当にいろいろなエリアがあって、 パークを一周するランニング・コースの中には、周囲のビルが木々に隠れて姿を消して、 完璧な森林気分が味わえるエリアが何箇所もあるのだった。

こうして植物の生命力や自然の恵みを感じるようになってからは、以前よりもオーガニックの野菜や果物に価値を見出すようになって、 野菜や果物を食することによって ヴィタミンCや抗酸化効果だけでなく、 自然の生命力も取り込みたいと考えるようになったのは事実。なので、出来るだけ新鮮でパワーを感じる食材を選んで、少しでも 生命力の衰えを感じるような食材は買わないように心掛けているのだった。
そういう価値観が頭の中に入ってくると、美的観念も変わってくるもので、強くて健康的な身体や活き活きした表情などに魅力を見出すようになって、 どんなに見た目が美人でも不健康なオーラを発する人、半分死んだみたいに表情が無い人と一緒に居るのが、 以前よりも苦痛に思えるようになったのが昨今。 不健康なオーラを発する人や、心根が良いとは思えないような人と一緒に居ると、脳からストレス・ホルモンが分泌されて、 そのストレスが身体と精神に悪影響を与える思いを味わうので、 そういう時こそ、コンサーヴァトリー・ガーデンのように、心から美しいと思う光景を眺めながら深呼吸をして身体や精神を浄化したり、 屋外でスポーツをして、ストレスや不健康オーラを払拭するのは私にとっては非常に大切なデトックス。
逆にそんな時に、食べることでストレスを解消しようとすると、悪いオーラや毒素が食べ物と一緒に身体の中に入ってくるというのが私の考えで、 精神的に嫌な思い、ネガティブな感情を抱いている時は、決して物を食べないというのも、ここ数年私が実践しているポリシーなのだった。




ところで、写真上はセントラル・パーク内にある貯水池。 この周囲はビギナー用のランニング・コースとしても知られているけれど、この冬は殆ど雪が降らず、3月は気象観測史上、最も降水量が少なかったと 言われただけに、貯水池の水位が非常に下がっているのが実情なのだった。
そのせいで、姿を見せ始めたのが、貯水池の真ん中を走る遊歩道。 とは言っても、貯水池は立ち入り禁止なので、ここを歩いて渡ることが出来ないのはもちろんのこと。
その替わり、真っ白い海鳥が何十羽もたむろしているのが同エリア。時に 鶴と思しき、足の長い鳥まで見かけるけれど、 この遊歩道が、これほどまでにくっきり水面上に出たのは、私がセントラル・パークを走り始めた過去2年以上で初めてのこと。
珍しい光景ではあるものの、やはり夏に水不足は困るので、この遊歩道が水面下に沈む程度には雨が降ってほしいと思うのだった。





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執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。
丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。
FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。
その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。

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