Apr. Week 3, 2014
” OPPRESSED MAJORITY (Majorite Opprimee) ”
” YouTube大センセーションを巻き起こす、超フェミニズム仏短編映画”



今、アメリカ女性の間でセンセーションを巻き起こしているのが、YouTube上で公開されている 「OPPRESSED MAJORITY / オプレッスト・マジョリティ」 というタイトルの11分のフランス語短編映画。
タイトルは、”虐げられたマジョリティ”という意味で、 映画で描かれているのは女性と男性が逆転した社会。
この映画がYouTube上で公開されたのは、今から4年前のこと。 その後3年間に同作品を見た人々の数は2万人程度で、フランスでは 全くと言って良いほど話題にはならなかった作品。
その「オプレッスト・マジョリティ」が突如、メガ・センセーションを巻き起こしたのは、 監督である Eleonore Pourriat / エレノア・プーレアが 同作品に英語の字幕を付けて、2014年2月5日に再公開したのがきっかけ。
以来、1週間も経たないうちに同作品は230万回も視聴され、 4月1週目にニューヨーク・タイムズ紙が同作品を記事にした時点では、 その数は850万。 実は私も、ニューヨーク・タイムズ紙の記事がきっかけで この作品の存在を知ったけれど、 今やその再生回数は920万回に迫る勢いなのだった。










主役はパッとしないルックスの男性、ピエール。彼がベビーカーに子供を乗せてアパートから出かけようとしているところからスタートするのがこの作品。
ピエールは、まずは出くわした隣人女性に アパートの住人会議について話しかけられるけれど、 話を続けようとする彼に対して隣人女性は 「あなたより奥さんとはなすべきだったわね」と、真剣に取り合わない様子。 そこへトップレスでジョギングをしてきた別の隣人女性が戻ってきて、「可愛い子供が居て良いわね」とピエールに話しかけ、 別れ際の挨拶は「いつも笑顔でね、ハニー!」というもの。

ピエールが子供を保育所に預けに行けば、そこで働いているのも男性。 彼はその男性の奥さんが居ないことを確認してから、男性の立場が社会的にどんどん弱くなっていること、 そして「誰も自分たちを所有している訳ではない」 と、彼に”男性の自立”を持ちかけるけれど、 現状で満足しているその男性は、ピエールの話を受け流すだけ。

やがて、ピエールは自転車で職場に向かうけれど、交差点で止まっている彼に対して女性ホームレスが 仕掛けてくるのがセクハラ挑発。 それを無視して走り去り、オフィスの傍に自転車を停めようとした彼は、 道端で用を足している女性を見てウンザリする。 そんな彼に対して、セクハラ野次を飛ばし続けるのがその女性と彼女の友達グループ。
それに対して頭に来て「アバズレ!」と叫んだピエールは、女性グループの怒りを買って、 路地に引きずりこまれ、ナイフを突きつけられてしまう。 そしてピエールを押さえ込んだ女性グループは、彼に対して性的嫌がらせの行為に及ぶのだった。

次のシーンは、警察署で性的虐待行為の被害届けを出すピエールの様子。
警部は女性で、「女性達に服を脱がされ、叫んだけれど、女性は自分の性器を口に含み・・・」と小馬鹿にしたように彼の陳述書を読み上げるのだった。 やがて 若い男性部下が部屋に入ってくると、女性警部は「コーヒーを持ってきて、可愛い子ちゃん。砂糖とミルク入りね。よく覚えておいてね。」 と命じて、彼が部屋を出る際には「そのジーンズ似合ってるじゃない」と、愛想よく振舞う男性部下のヒップを眺めながら言うのだった。
男性部下が去ると、女性警部は視線をピエールに戻して 「白昼の道端で、しかも誰も目撃者が居ないなんて・・・。ちょっと変よね?」 と、まるでピエールが性的虐待をでっち上げているかのような疑いの目を向けてくる。 「何が言いたいんですか?」と言った彼に、女性警部は「むきにならないで。警官侮辱罪に問われたくないでしょ?」 とやり返し、ピエールは途方に暮れてしまう。

次のシーンは、ピエールが怪我の手当てと虐待の検査を終えた後の病院。 「会議が長引いて・・・」と言いながら、彼を迎えに来た妻のマリオンに、 「家に帰りたい・・・」と懇願するピエール。 やがて、2人は車まで歩き出すけれど、虐待の恐怖でおどおど歩く夫に対して、冷たい妻のマリオン。
「もうこんな女性優位の社会はまっぴら!今まで男性達は一体何のために戦ってきたのか・・・」と言うピエールに、 「私は もうあなたの男性地位向上のナンセンスにまっぴらなのよ」と言い返したマリオンは、 ピエールが性的虐待を受けたのは、彼が半袖シャツに短パン、ビーチサンダルという、肌の露出の多い服装をしていたせいだと 攻めるのだった。 そして、悔し紛れに「あばずれ」と叫んだ夫を置いて、「頭を冷やしたいから」と言いながら、早足で歩き去るマリオンの姿がラスト・シーン。 そのシーンの間中、通常なら女性が男性から受けるセクハラ・コメントが囁きのように バックグラウンドに流れ続けているのだった。










この作品の興味深いところは、台詞や状況だけでなく、俳優のしぐさも 女性と男性が逆になっているところ。 さらには、カメラ・ワークも主役の男性を、まるで女性のように捉えていて、ピエールが自転車に乗る後姿も、わざとヒップを強調した捉え方をするなど、 通常なら女性のボディ・パーツに用いるカメラ・ワークを、あえて男性に適用しているのだった。

この作品が英語圏で大センセーションを巻き起こしたのは、 あまりに日常化されて、男性が取り合わなくなっているセクハラ行為を、 リバースして 女性が男性に行うことにより、それがセクハラ行為であることを 男性に自覚させることを可能にしているため。

同じ住人でも妻にしか人権を与えない隣人。 笑顔を男性に義務付けるような挨拶。前を通り掛かっただけでホームレスから受けるセクハラや、 ギャング・レイプに発展しかけた性的虐待。 その性的虐待のレポートを軽視する女性警部、 夫が虐待を受けて、病院で手当を受けていても、仕事の会議を優先させる妻。 その夫に対して、性的虐待が肌の露出が多い服装のせいだと言って、 逆に犠牲者である夫を責める様子・・・。
そんな女性蔑視のリバース・エピソードに加えて、 保育所で働く男性、そこに子供を預けに行くピエール、道端で用を足し、トップレスでジョギングをして、 通りかかった男性のヒップラインをチェックする女性など、 社会的な役割から、日常の行為までもが徹底的に男女で入れ替わっているのが同作品。 その徹底ぶりは、ブラック・ユーモアとも取れる社会的メッセージなのだった。

このフェミニズム映画に対するリアクションは、フェイスブックやツイッターといったソーシャル・メディアに加えて、 同作品について書かれたメディアのオンライン・サイトなどに溢れ返っていて、 女性からの絶大なサポートに加えて、一部男性からのアグレッシブな批判もミックスされているとのこと。
でもYouTubeで公開された短編映画が、これほどまでの論議を巻き起こすのは極めて珍しいことで、 映画のメッセージが気に入る、気に入らないは別として、 同作品に英語字幕を付けて リパッケージしたのは、監督、エレノア・プーレアの商才。
「捨てる神あれば、拾う神あり」で、異なるカルチャーや 異なる国々にアピールしたことで、 公開4年目にして 大センセーションを巻き起こしたのが「オプレッスト・マジョリティ」なのだった。









執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。


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