Apr. Week 1, 2017
” Horrible Pepci CM Featuring Kendall Jenna ”
公開と同時に大バッシングを受けた、ケンドール・ジェナをフィーチャーした
ペプシの2分39秒のプロモーショナル・ビデオ


今週はいつもとは異なり "フェイバリット"ではなく、"アンフェイバリット"のご紹介。
2017年4月4日火曜日の午後にソーシャル・メディア上で公開されたのが、 ケンドール・ジェナをフィーチャーしたペプシのドラマ仕立ての2分39秒のプロモーショナル・ビデオ。
そしてその直後からスタートしたのが、このビデオに対する大バッシングで その批判を受けてペプシコ社はすぐに釈明のステートメントを発表したのもの、 それでは収まらない批判を受けてビデオの公開を取り止め、 謝罪文を発表する有り様。
ペプシコ社同様に批判が集中したのが、このビデオにメイン・キャラクターとして フィーチャーされたケンドール・ジェナで、ビデオ公開の翌日4月5日に パリの空港に降り立った彼女は、まるで犯罪でも犯したかのように パパラッツィの撮影や記者の質問責めに対して、顔を隠して立ち去る様子がレポートされているのだった。

広告業界の関係者が、「これだけ短時間にこれだけのバッシングを招いた広告は 初めて」とコメントするこのビデオには、一般の人々はもちろん、セレブリティやアクティビスト達も怒りをつのらせており、 多額のバジェットを割いたビデオ、しかも広告で定評があるペプシコ社の プロモーションにも関わらず、現在の世の中のセンシティビティを全く理解していない鈍感ぶりを露呈するもの。 当然のことながら、このビデオの公開直後からペプシコ社の株価は大きく値を落としているのだった。










ビデオは以下のYouTubeの画像で観られるものの、これが何時まで公開されているか分からないので、 写真上のように画像でストーリーをご紹介すると、 ケンドールをメインに、このビデオには2人のサブ・キャラクターが居て、1人はアジア人男性のチェリスト、 もう1人はイスラム系の女性フォトグラファー。
ストリートでは、いかにもオーディションで集められたという印象のグッドルッキングで、多種多様な人種の若者たちが プロテストを行っているけれど、そのプラカードにはピースマークや、「Join the Conversation/会話に加わろう」 というスローガンが見られるものの、果たして何のプロテストかは不明。 そのムーブメントに気付いたチェリストとフォトグラファーが街中に繰り出し、そのポジティブな活動に加わる一方で、 ファッション撮影を行っていたケンドールもチェリストの男性と目が合い、彼の無言の誘いに動かされて ブロンドのウィッグを剥ぎ取り、リップスティックをぬぐい取って、いつの間にかジーンズとT姿に変身。
そして、人ごみを掻き分けて抗議活動の先頭に辿り着く合間に、何故かそこに置いてあったペプシの缶をピックアップ。 抗議活動をブロックしていた警官に歩み寄り、そのペプシの缶を渡すと、受け取った警官がペプシを飲み、 それを観たプロテスター達が大歓声を上げ、ケンドールとハイファイブをして喜び合う一方で、 ペプシを飲んだ警官は 仲間の警官にプロテスター達に理解を促すアイコンタクトをするというのがストーリー。 その後、ケンドールを中央にプロテスターを捉えた画面で、「Live Bolder」、「Live Louder」というメッセージが表示され、 ラスト・シーンはペプシのロゴと共に「Live for Now」というメッセージで終わるというのがこのビデオなのだった。




この広告に何故人々が怒りを露わにするかと言えば、理由は簡単に1つという訳ではなく、 あまりに批判される要素が多過ぎるのがこのビデオ。
まず、このビデオに捉えられているプロテストが、全米で起こっている黒人層に対する警察による過剰ヴァオレンスに対する抗議活動 「ブラック・ライヴズ・マター」を真似ているように思われる部分が数多く見られるにもかかわらず、そのリアリティが軽視されているという点。 若くヒップで、何の問題もフラストレーションも感じていない若者たちが、音楽やダンスを盛り込んだプロテストを行う姿は、 ミュージック・フェスティバルのコーチェラのようなノリで、全くリアリティからかけ離れている割には、 「ブラック・ライヴズ・マター」の抗議デモを彷彿させるシーンが幾つも盛り込まれているのは、黒人層にとって非常に腹立たしい部分。
また移民問題でも、”ブラック・ライブズ・マター”でも、プロテストに参加したことがある人にとって、このビデオはその活動の 問題意識を排除して、まるでプロテストをチープで軽薄な若者のトレンドに見せているのは屈辱的な描写。
加えてプロテストの取り締まりに当たる全米各州の警官は、ビデオに捉えられるようなグッドルッキングでもなければ、 平和的な対応もしておらず、ペッパー・スプレーで抑圧したり、直ぐに逮捕をする強硬姿勢を見せているのがその実態。 なので政治の専門家は、このビデオが抗議活動に絡むリスクを軽視していると批判しているのだった。

その他にも細かい批判を挙げたらキリが無いけれど、人々の怒りが最も集中していたのが、 21歳のカダーシアン一族の1人であるスーパーモデル、 ケンドール・ジェナがペプシの缶を渡しただけで、世の中が丸く収まるような馬鹿げたストーリー・ライン。 これを受けて ソーシャル・メディア上には、「トランプやプーチンやアサドにも、ペプシの缶さえ渡せば世界平和が実現する!」、 「プロテストに出掛ける時にペプシの缶を持っていけば、逮捕されることは無かった!」 「ケンドール・ジェナのお陰で世界が救われた、才能が無いモデルの功績としては上出来だ!」、 といったバッシングが溢れただけでなく、 公民権運動の父、マーティン・ルーサー・キングの娘までもが 「父がペプシの缶だけで問題が解決すると知ってさえいたら…」と皮肉たっぷりのツイートをするほどに 批判が拡大。
この批判にはリナ・ダンハムやジャッド・アパトーなどのセレブリティも加わって、 水曜の夜にはメイン・ストリーム・メディアがこのペプシ広告に対するバッシングを大きなニュースにし、 夜のトークショーではそれがパロディやジョークのネタを提供するほどの 大騒ぎになっていたのだった。


この騒ぎに驚いただけでなく、ショックを受けたのはケンドール側で、 「ペプシのクリエイティブ・アングルを信じて出演しただけ」と謝罪のメッセージを発表したけれど、 このバッシングが起こる以前は、ケンドールが自らのソーシャル・メディアで、 若者の間のムーブメントやその一部になることへの誇りを自負する複数のメッセージを発信。 でもこれらはビデオが批判されてから、全て削除されているのだった。
またケンドール・ジェナの母親で、カダーシアン家の女家長であるクリス・ジェナも ビデオ公開当初は「ケンドールを誇りに思う、彼女をキャストしてくれたペプシに感謝する」と ツイートしていたものの、後にそれはソーシャル・メディア上でジョークのネタを提供しているのだった。

さらに多くの人々がジョークのネタにしたのが、ラスト・シーンに登場した「Live for Now」というメッセージ。 これは「今を生きろ!」という力強いメッセージに受け取れるけれど、「Live, for Now」と、ワンクッションを開けることによって、 「今のうちに生きておけ」という意味にも受け取れるもの。 
これが今回のビデオをクリエイトしたアド・エージェンシーやペプシの広告部門のトップに対するメッセージとして 笑い飛ばす人々やメディアは多く、実際のところこの大金を投じたメディアは失策どころか、多大な企業イメージダウンになっているのだった。
それにしても、ペプシコ社ほどの企業が このような大金を投じたビデオを公開する際には、 必ずテスト・オーディエンスの反応をチェックするもの。それだけに、どうして事前に これほどまでに問題が山積するビデオの この公開が食い止められなかったのかは非常に不思議に思えるのだった。

執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。


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