The Most Profound Grass Roots Summer Film Festival
"Rooftop Films"

インディ映画界を支える エッジーな サマー・フィルム・フェスティバル
“ルーフトップ・フィルムズ”


今や ニューヨークのサマー・イベントの醍醐味の1つになっているのが、“アウトドア・ムービー”。
これはその名の通り、屋外で行なわれる映画上映イベントで、様々な団体や企業のスポンサーによってパークやリバーサイドで開催されるもの。 中でも20年以上の長い歴史を誇るのが、アメリカで最もメジャーなケーブルTV局、HBO主催が主催する、ブライアント・パーク・サマー・フィルム・フェスティバル(写真下)。 同イベントでは ミッドタウン、5番街のパブリック・ライブラリーの隣に位置するブライアント・パークに 巨大プロジェクターを特設し、毎週のように野外上映を行なうというもの。




かつてはピクニック気分で夕方から出かけて、映画を見ながら 夏の夜空の下でのんびりと過ごすイベントであった ブライアント・パーク・サマー・フィルム・フェスティバルですが、ここ数年は旅行者、ニューヨーカーを含む数千人が訪れ、 上映時間の遥か前から行列を作るという混み合い方。
会場がオープンすると同時に、人々が猛ダッシュでパークの中に駆け込み、場所取り合戦を繰り広げるという壮絶な様相を呈します。
大きなビーチタオルやシーツを広げて、無事にスペースを確保した人々は、スナックやサンドウィッチなどの持参したフードを並べて、ワイン・ボトルをオープン。 日本の”お花見”に似た、フェスティブなパーティー気分が漂うものの、映画が始まると同時に 大方その騒ぎが収まるのが通常。 でも酔っ払って寝てしまう人、ひたすら食べては喋っている女性のグループ、携帯電話で写真を撮ってはメールで送付したり、インスタグラムにアップするのに忙しい人等、 映画がメインというよりも、大規模な ”マス・ピクニック”的イベントになりつつあるのが実情。 ブライアント・パーク・サマー・フィルム・フェスティバル以外にも、セントラル・パークで行なわれる サマー・フィルムも 多くの人々を集めることで知られるイベントですが、 観客動員数が増えるにしたがって、映画はピクニックのバックグラウンドとして捉えられるようになり、 映画の内容には関心を抱かない人々が集まるようになったことが指摘されています。

したがって、本当の映画ファンが 映画を楽しむイベントではなくなりつつあるのが サマー・フィルム・フェスティヴァルですが、 そんな中で 新たに誕生したのが 本来の”映画鑑賞 ”という目的に立ち返って企画された“ルーフトップ・フィルムズ。 ( www.rooftopfilms.com)”。 “ルーフトップ” は、ビル等の “屋上” のことですが、同イベントは 確かに その名の通り、屋上の上映からスタートしたもの。 でも現在では 屋上だけでなく、公園、工場、農場など、様々なヴェニューで行なわれるようになった人気イベントです。


ルーフトップ・フィルムズが初めて開催されたのは1997年のこと。
大学を卒業したての若手フィルム・メイカーが、「これまでにない画期的なやり方で、多くの人を集めて映画鑑賞会を開きたい」と友人や知り合いを集め、 自分の住むユニオン・スクエアのアパートメントの屋上で、マンハッタンの夜景を背にインディペンデント映画の上映会を行なったのが そもそもの始まり。
この時点はまだ、小さなプロジェクターに安いサウンド・システムを使った 簡易的なものでしたが、イベント自体は大盛況。 その後ヴェニューを増やし、徐々にイベントの形式を変えながら 夏ごとに行なわれてきたルーフトップ・フィルムは、 15年が経過した昨年、2012年には ひと夏に行なわれたイベントの数が約50。 その中で上映された作品は、ショート・フィルム(短編)も含めて200本以上。 観客動員数は3万人を超える規模にまで成長しています。

ルーフトップ・フィルムズが他のサマー・フィルム・イベントと異なる点は、まず有料であること。
ブライアント・パークにしてもセントラル・パークにしても、サマー・フィルムは基本的に無料で、それもイベントの魅力の1つとして多くの人々を集める要因となっていますが、 ルーフトップ・フィルムズは イベントの入場料が13ドルで、チケットを事前に購入しなければならないというのがルール。
そのルールをクリアして参加するだけに、訪れるのは 映画をそっちのけでピクニック気分でやってくるような人々ではなく、 本気で映画を鑑賞しようとやってくる人々ばかり。

ですが13ドルと言うと、ニューヨークにある一般的な映画館とほぼ同じお値段。
特設会場でマイナーなインディ映画ばかりを上映するイベントとしては、少々価格設定が高いように思われることもありますが、 実はルーフトップ・フィルムズはノン・プロフィット団体。 同団体の目的は、より多くのインディペンデント映画を紹介することで、映画界を盛り立てると同時に、映画というカルチャーを 社会の様々なレベルに浸透させること。
そのため、イベントによって得た資金は、未来の映画監督を生み出すための ”子供向け映画製作ワークショップ”の開催資金になったり、 限られたバジェットで映画を製作する駆け出しフィルム・メイカー達の作品を上映&プロモートするためのイベント等に使われているのが実情。
したがって、ルーフトップ・フィルムズで映画を鑑賞することは、そのまま将来のインディ・フィルムメーカー達を サポートするという行為にもなっています。





ルーフトップ・フィルムズの会場となっているのはマンハッタンだけでなく、ブルックイン、クイーンズ、ブロンクスとかなりの広範囲。 先述の公園、工場、農場以外にも、カルチャー・センターの屋上、ビーチ、美術館、学校など、2013年の会場は合わせて約20ヶ所。 ヴェニューによっては インディーズのミュージシャンによるライブ・コンサートが行なわれたり、 学生によるアート作品の展示が行なわれていたりと、映画以外のイベントも開催されています。
また、ルーフトップ・フィルムズには メンバーシップ・プログラムが設けられていますが、 メンバーになると全ての映画の鑑賞は無料。それ以外に、一般客が入ることのできない特別なパーティーや試写会に招待されるなど、 特典が盛り沢山。そのメンバーシップには、様々なレベルがあって、そのフィーは、年間で75〜1000ドルとなっています。

ルーフトップ・フィルムズで上映される映画は、1997年のスタート当初と変わらず、インディペンデント映画ばかり。
これまでに同イベントを通じて、多くの有能なフィルム・メーカーが発掘されているだけに、インディ・フィルムの世界でも 新しい才能を売り込む重要なイベントとして認識されるようになって久しい状況。 そのため、ルーフトップ・フィルムズには1年を通して 世界中から何千本というインディペンデント映画が寄せられ、 その中から選ばれた優秀な作品のみが 次シーズンに上映されるシステムになっています。

今では世界中のインディ・フィルム界から注目を集めるようになったルーフトップ・フィルムズですが、 最近はニューヨークに止まらず、ロサンジェルス、フィラデルフィア、トロントなどの他都市にも進出。 映画界に夢と希望を与える最もダイナミックなグラスルーツ・フィルム・フェスティバルとして、その勢いは日々増しています。
観客の中にはインディ映画関係者はもちろん、スパイク・リーも通ったNYUのフィルム・スクールの学生、 ダウンタウンのヒップスターやアーティスト等が多いだけに、ブライアント・パーク・サマー・フィルム・フェスティバルに比べると 客層は遥かにエッジーで、シリアスで、いかにもニューヨーク的。
したがって、「旅行者ではなく ニューヨーカーに囲まれて夏のアウトドア・イベントを楽しみたい」という映画好きな人には、 是非お薦めのイベントです。





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