Dec. 19 〜 Dec. 25 2016

"F**k You, 2016!?"
アメリカにとって近年最悪の年、
2016年へのメッセージ!?



今週末は言わずと知れたクリスマス。2016年はクリスマス・イヴとユダヤ教のホリデイ、ハヌカが重なった極めて珍しい年。
このためクリスマス・イヴのエンパイア・ステート・ビルディングは、クリスマス・カラーのレッド&グリーンと、ハヌカ・カラーのブルー&ホワイトの双方でライトアップされるという 珍しい光景が見られており、”クリスマヌカ”という造語も生まれていたのだった。

早いもので今週が2016年最後のこのコラム。なので毎年のように、 1年を振り返ってみようと思うけれど、今年 最もツイートされたイベントはリオ・オリンピック。アメリカではマイケル・フェルプスの活躍と同時に、体操のシモーヌ・バイルス、水泳のケイティ・レデッキーといった 女子選手の大健闘も話題となり、女子選手によるメダル獲得数が男子を遥かに上回ったのが今大会。
同じスポーツの世界では、ルブロン・ジェームス率いるNBAクリーブランド・キャバリアーズが1勝3敗の絶体絶命状態から盛り返して、 初のチャンピオンに輝き、クリーブランドの街に57年ぶりのチャンピオンシップをもたらしたけれど、 それを超えるニュースとなったのはメジャーリーグ、シカゴ・カブスの109年ぶりのワールド・チャンピオン。
スポーツのアグリーな側面としては、ロシアの国をあげたドーピング疑惑が明らかになったのに加えて、 リオ・オリンピックではライアン・ロクテを始めとする男子水泳チーム4人による強盗事件の狂言が、アメリカ選手団の汚点となったのは記憶に新しいところ。


芸能ニュースで最大の報道となったのは、ブランジェリーナこと ブラッド・ピット・アンジェリーナ・ジョリーの離婚と、 パリで強盗被害に遭い、10億円相当のジュエリーを盗まれたキム・カダーシアンのニュース。以来キム・カダーシアンは彼女のブランドを成功に導いたソーシャル・メディアから 遠ざかっており、一方のブランジェリーナ離婚は子供の親権を巡って泥沼化の様相を見せているのだった。

2016年はセレブリティの死去がファンにショックを与えた年でもあり、その最たる例はデヴィッド・ボウイ、プリンス、そしてモハメッド・アリ。 加えて私がこのコラムを書いている12月25日の晩には、ポップシンガー、ジョージ・マイケル(53歳)死去のニュースが報じられて、 人々にショックを与えているのだった。実は私は少し前に、映画「デッドプール」をケーブル局で見直して、その中に登場した彼のヒット曲、 「ケアレス・ウィスパー」をダウンロードしたばかりだったのに加えて、ふと考えると私は1980年代に来日したワム!のコンサートを日本武道館の最前列で観たこともあったので、 この突然のニュースには少なからずショックを受けてしまったのだった。




その他、2016年にはイギリスが国民投票でEU離脱を決定した”ブレグジット”、ジカ・ウィルスのアウトブレーク、 シリアの難民問題、アメリカにおける処方箋薬、特に痛み止めの中毒問題の深刻化といったニュースが 大きく報じられていたけれど、その一方でセルフドライヴィング・カーが早くも商業ベースで利用されるようになり、 2016年9月からはカーシェアリングのUberがピッツバーグでセルフドライヴィング・カーによるサービスをスタート。 12月にはサンフランシスコでもスタート予定であったものの、申請手続きの問題でこれが延期されているのだった。
今や職探しを止めたアメリカ人、1つの仕事だけで食べていけないアメリカ人にとって貴重な収入源となっているのがUberのドライバーの仕事。 でもバックグラウンド・チェックが甘いUberのドライバーによる乗客レイプ事件なども起こっているだけに、 セルフドライヴィング・カーが人間のドライバーに取って代わる日はそう遠くない将来。
2016年2月にはホワイト・ハウスが 時給20ドル以下の仕事の83%が ほどなくロボットに取って代わられるという予測を発表していたけれど、 次期トランプ政権で労働長官を務めるアンディ・パズダーは そのロボットやオートメーション化推進派として知られる人物。 「マシーンは休暇を取らないし、いつも礼儀正しい」とコメントしており、今後人間の仕事がどんど減っていくことを感じさせたのが2016年。


その一方で、インターネットやソーシャル・メディア上では、ヘイト・メッセージの押収、フェイク・ニュースの氾濫が過去最悪の状態となっていたのが2016年。 特に大統領選挙絡みのフェイク・ニュースや、ヘイト・メッセージは、常軌を逸した程度の悪さであったけれど、 それが”ニュー・ノーマル”になっていたのが2016年。
今週にはコマーシャル・フライトを家族で利用したイヴァンカ・トランプに向かって、アンチ・トランプ派の作家が「お前の父親が国をダメにした!」と怒鳴って、飛行機から降ろされたニュースが 報じられていたけれど、その翌日からスタートしたのがトランプ支持者による その作家の著書に対するアマゾン・ドット・コムのこき下ろしレビューのポスト。 そうかと思えば、先週にはヴァニティ・フェア誌の編集長、グレイドン・カーターがトランプ・タワー内のレストランを「アメリカで最悪のレストラン」と評したのに腹を立てた ドナルド・トランプが、ヴァニティ・フェアとグレイドン・カーターを攻撃するツイートを行ったところ、 今度はグレイドン・カーターの意見を支持するニューヨーカーから、レストラン・レビューのソーシャル・メディア、Yelpに トランプ・タワー内のレストランを 酷評するレビューが殺到する事態が起こっているのだった。
すなわちヘイト(憎悪)に対してヘイトで応戦するという状況は、選挙戦中から全く変わっていないのが実情で、 選挙候補者支持を巡って対立していたアメリカ中のファミリーにしても、未だに話題が選挙に及ぶと一触即発状態、 もしくは未だにお互いに口をきかない反目状態が続いているケースが少なくないのだった。




そんな大統領選挙によって、人間のアグリーな部分を見せつけられた2016年、候補者支持を巡って多くのアメリカ人が友人や家族を失った2016年、 人種差別、性差別、女性蔑視、ヘイト、虐めが横行し、ウソ、フェイク、ウィルスが飛び交う、近年に無いほど酷い1年だった2016年を振り替えって、 アメリカの多くの人々が溜まった鬱憤と共に吐き出すセンテンスが「F**k You 2016!」。
これを最初に番組内の「2016年トリビュート」のセグメントで放映したのは、HBOの「Last Week Tonight」のジョン・オリバー。 リベラル派=アンチ・トランプ派の彼の今年最後の番組はYouTube上でも965万回視聴されており、 以下はそのセグメントの抜粋ヴァージョン。 
ニューヨーカーとセレブリティが こぞって中指を立てて「F**k You 2016!」と 怒りと鬱憤晴らしをするトリビュートは、後日メディアや、ソーシャル・メディアでも話題になったもの。 ちなみに中指を立てるジェスチャーは「F**k」を意味するもので、このジェスチャーも「F**k」という単語も共にアメリカのネットワークでは放送禁止扱い。 プレミアム・ケーブル局のHBOであるからこそ放映できたのがこのトリビュート。

これが放映されて以来。特にデモクラット(民主党支持者)とリベラル派の間で、2016年のアンチ・スローガンになってしまったのが「F**k You 2016!」。 加えて、人々がそう言いたくなる最大の原因であるドナルド・トランプに その不満と怒りの矛先を向ける傾向も顕著で、 上のようなビジュアルや、それらをプリントした様々なプロダクトが登場する有様なのだった。







私はニューヨークに20年以上暮らして、9・11のテロや ジョージ・ブッシュ再選時のデモクラット&インディペンデントの失望、サブプライム・ローンに端を発したファイナンシャル・クライシスも 見てきたけれど、そんな私にとっても2016年はアメリカのモラルが低下し、国が真二つに分断して、その2つのアメリカの埋められない、乗り越えられない違いを見せつけられた 最悪の年。 トランプ陣営は、勝てば官軍になると思い込んでいたような節があるけれど、選挙から7週間が経過しようとしている今でも アンチ・トランプ派の怒りや不満だけでなく、トランプ支持者のアンチ・トランプ派への怒りと不満も収まる気配が全くないのだった。

私がこの状況を軽視できないと思うのは、これまでアメリカという国が 異なる人種と巨大な国土を1つの国として纏めてこられたのは、 戦いが終われば お互いに歩み寄って称え合うという、民主主義のスポーツマンシップのようなスピリッツが存在していたためで、 近年において、自分の政治的ポジションや主張を譲歩してまで それを守り抜いてきたのがデモクラットとリベラル派の人々。 でも今回の選挙で、あまりに醜い戦いが繰り広げられた挙句、自分達が信じてきた正義が敗れたという結果にデモクラット&リベラル派は 怒りや失望だけでなく、深く傷ついているのが実情。 そしてその深い心の傷を その後も毎日のようにドナルド・トランプのツイートや発言でえぐられているため、 デモクラット&リベラルは もう従来のお人良し的な譲歩やきれい事を並べる歩み寄りが出来ないところまで来ているのだった。
なのでデモクラット&リベラルの「F**k You 2016!」というメッセージは、憂さ晴らしというよりも 何が起こるか分からない2017年に対する 仕切り直しの宣戦布告と言えるもの。
したがって、既に深く分断されたアメリカの亀裂が2017年に益々深くなっても全く不思議ではないのだった。


執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。

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