Dec. 12 〜 Dec. 18 2016

”All We Listen for Christmas is This Song"
毎年クリスマスに決して聴かずには過ごせない
マライア・キャリーの「All I Want for Christmas Is You」!
何故この曲だけが モダン・クリスマス・ソングでもてはやされるのか?



今週のアメリカでは、ロシアのハッキングが大統領選挙に影響を与え、プーチン大統領自らがその指示を出していたという 捜査結果をFBI、CIAが共にサポートしたことが最大のニュースになっていたけれど、 これに対してツイッターで反発していたのがドナルド・トランプ次期大統領。
今週にはトランプ・タワーに、グーグル、フェイスブック、オラクル、アップルなどのシリコン・ヴァレー企業のトップが集まり、トランプ・ファミリーとのミーティングが行われていたけれど、 その場に招待されなかったのがドナルド・トランプが最も愛用するソーシャル・メディア、ツイッター。 トランプが大統領に当選してから過去40日間に行ったツイートは約170回で、最もツイート数が多い時間帯は日曜の午前中とのこと。
彼のツイートに対するアメリカ国民のリアクションは、ネガティブ意見が66%、ポジティブ意見は21%、どちらか分からないと答えている人は13%となっているけれど、 年齢が若ければ若いほどネガティブ意見が多く、トランプのツイートを好まないと答えた45歳以下の人々は74%。これが30歳以下になると83%となっており、 支持政党別のアンケート調査でも、民主党支持者の90%、共和党支持者の43%、支持政党無しのインディペンデントの67%が トランプのツイートに否定的な考えを示しているのだった。

そのトランプは、週末にはツイートのミススペルが指摘され、やり直しをする一幕も見られたけれど、 トランプ本人はツイッターを”新しいコミュニケーション手段”と語り、自らを”コミュニケーター・イン・チーフ (コミュニケーターである大統領という意味)”と 呼んでいるだけに、アメリカ国民が例えトランプをツイッターでフォローしていなくても、今後そのツイート内容をメディアを通じて知らされるのは避けられないこと。
避けられないと言えば、クリスマス・シーズンに避けられないのが渋滞&人ごみであるけれど、 特に今年はトランプ・タワーの周辺のセキュリティのせいで、益々悪化しているのがマンハッタンの渋滞。 そんな渋滞、人ごみに加えて、もう1つクリスマス・シーズンに 決して避けらることが出来ないと言われるのが、 マライア・キャリーが歌う 「All I Want for Christmas Is You」なのだった。




今から22年前の1994年11月1日にリリースされたのが、マライア・キャリーのシングル「All I Want for Christmas Is You」。 これはマライア・キャリーが同年に発売したのクリスマス・アルバム 「メリー・クリスマス」(写真上)に先駆けてリリースされたシングル。
以来、モダン・クリスマス・ソングの中で飛びぬけたサクセスを収め、毎年クリスマス・シーズンが近づくたびに 世界各国のヒットチャートにカムバックしてくるのがこの曲。 90年代に子供時代を迎えていたジェネレーションX、もしくは ”GenXer / ジェネクレサー” にとっての 「ジングルベル」と言われるのが同曲なのだった。
リリース以来、この曲を聴かずしてクリスマス・シーズンを過ごすのは不可能と言えるほど、デパートからスーパーマーケット、 ビューティー・サロンやネール・サロン、スポーツ・アリーナからスキー場、スケート・リンクまで、音楽を掛けているありとあらゆる場所で、必ずと言って良いほど耳にするのが この曲。
「All I Want for Christmas Is You」がいかに商業的にサクセスフルな楽曲であるかと言えば、 同シングルは世界中で1400万枚を売り上げ、同曲は携帯電話のリング・トーンとしても初めてダブル・プラチナに認定されたメガ・ヒット。 スポルティファイでストリーミングされた回数はこれまでで1億以上。 YouTubeでビデオが視聴された回数は3億1500万以上。
また1994年から2013年までの20年間に、この1曲だけでマライア・キャリーが稼ぎ出したのは約60億円で、これは彼女の個人総資産の約10%。 その中にはもちろんロイヤルティが含まれているけれど、その金額も毎年約5000万円と言われているのだった。

同曲は、マライア・キャリーの輝かしいシンガーとしてのキャリアの中でも、最もサクセスフルかつ最も大きな利益をもたらしたものであるけれど、 1994年当時、マライア自身はクリスマス・アルバムをレコーディングすることさえ拒んでいたという。 というのも当時はクリスマス・アルバムを出すシンガーというと年配のミュージシャンが多く、クールなイメージが全く無かったため。
でも音楽業界においてクリスマス・アルバムは、著作権が絡まないクリスマス・ソングに新曲を2〜3曲加えてレコーディングするだけで仕上がるという手軽さに加えて、 クリスマスの度にプロモーションをしなくても売り上げが伸びる 隠れたるドル箱ビジネス。 それをマライアに説得したのが、マライアの最初の夫で、当時ソニー・ミュージックの社長であったトミー・モトーラ。

「All I Want for Christmas Is You」は、「メリー・クリスマス」のアルバムに含まれているオリジナル・ソング 3曲のうち、一番最後に書かれたもので、アルバムの構成上の理由から 「クリスマスらしい シンプルなメロディでアップビートなナンバーを1曲加えよう」という 短絡的な動機で生み出されたもの。 この時点では 誰もこの楽曲がレコード業界史上、最もサクセスフルなクリスマス・ソングになるとは想像もしていなかったのだった。




「All I Want for Christmas Is You」がもてはやされる理由の1つには、その歌詞に 全くオフェンシブな要素が無いことで、どんなにこじつけて文句をつけようとしても、 政治的、社会的、宗教的、道徳的、カルチャー的にも、クレームのしようが無い内容であることが1つ。 そのためクリスマス・シーズンのどんなオケージョンでも、どんな人々に対しても この曲を掛けて、批判や顰蹙を買うことが無いことが指摘されているけれど、 世界中で広く、そして長きに渡ってこの曲がもてはやされる最大の理由は、 そのメロディ・ラインとアレンジ。

同曲の作曲を手掛けたのはマライア・キャリー本人と、当時彼女がチームを組んで曲を書いていたウォルター・アファナシエフ。
ウォルター・アファナシエフは、 映画「タイタニック」の主題歌で、セリーヌ・ディオンが歌ってメガヒットとなった、「My heart will go on / マイ・ハート・ウィル・ゴー・オン」の 作曲も手掛けた人物でもあって、2人が「All I Want for Christmas Is You」の作曲に要したのは僅か15分。
メロディのベースになっているのは、人間心理に安心感を与える”トニック・コード”と呼ばれる音階で、 これを基本にメロディの構成をデザインしただけで、即興で出来上がったのが同楽曲。
また同楽曲でレコーディングが行われたのは、マライアとバックアップシンガーの歌声だけ。 そのアレンジと演奏部分は、ウォルター・アファナシエフが全てコンピューターでクリエイトしており、非常にバジェット・コンシャスな楽曲でもあるのだった。

同曲はまず教会の鐘の音と共に、マライア・キャリーのヴェルヴェットのような歌声のバラードで始まるもの。 その後、メロディがアップテンポに代わると、クリスマスの楽しい雰囲気をイメージさせる鈴の音がビートを刻んで、 そこからはメロディーが展開するたびにロックンロール、ポップ、R&B、ゴスペルなど、 アップリフティングで新しい局面を迎える構成。そして それを完璧に歌い上げるのがマライアのゴージャスな歌声と歌唱力。
曲の聞かせどころが訪れたかと思うと、さらにその先に新しい盛り上がりが待っているメロディーの展開は、 最後のマライアのハイノートでピークを迎えるまで、聴く人々の脳をポジティブに刺激しながら、気分を高揚させるため、 同曲のイントロを聴いて「またこの曲!」と思った人でも、途中からは一緒に口ずさんでいるのが「All I Want for Christmas Is You」なのだった。

同曲は、多くのコンポーザーや音楽大学の教授がその人気の秘訣を研究するほどのサクセス例であるけれど、 これほどの曲は、意図的に作曲しようと思っても なかなかできないことも指摘されているのが実情。
また、「All I Want for Christmas Is You」がアピールするのは人間だけではないようで、2010年にイギリスのゴート・ファーマー(ヤギの畜産業者)がメディアに語ったところによれば、 この曲を連続して掛けていると、ヤギがより多くのミルクを出すとのことで、別の楽曲でトライするとミルクの量が減るケースさえあるとのことなのだった。




お菓子の世界で、「All I Want for Christmas Is You」と同様の不滅のロングセラーとなり、各メーカーがメガ・ヒットの秘密を 解明していたのが スニッカーズ。
というのも1990年代から多くのチョコレート菓子が人気を落とす中、スニッカーズだけが売れ続けていたためであるけれど、 「何故スニッカーだけが?」という疑問を抱いたライバル・メーカーが、これを食べた人々の脳波までチェックして解き明かしたのがその人気の要因、
それによれば、スニッカーズを構成するチョコレート、キャラメル、ヌガー、ピーナッツという複数のレイヤーが、一口味わうたびに 単体のフレーバーや複数のフレーバーのコンビネーション、異なる食感、甘さと隠し味のソルトが、脳に新しいセンセーションを与え続け、 食べ終わるまでの間、味覚を刺激し続けるとのこと。
すなわち、「All I Want for Christmas Is You」と全く同じアピールでロングセラーのヒット菓子になってきたのがスニッカーズで、 このように脳に新しいセンセーションを送り込んで、脳のリワード(報奨)システムを刺激するコンセプトは、当時の食品業界で 「スニッカーズ・エフェクト(スニッカーズ効果)」と呼ばれたもの。このコンセプトは、その後のスナックやシリアルの開発に多大な影響を与えると同時に、 アメリカ社会の肥満問題にも拍車を掛けてきたのだった。


ところで、2016年のアメリカで大ブレークしたものの1つにカープール・カラオケがあるけれど、これは3大ネットワークの1つ、CBSが夜中に放映する 「レイト・レイト・ショー」のホスト、ジェームス・コーデンがセレブリティと車の乗り合い(カープール)をしながら、そのシンガーのヒット曲を歌いまくるビデオ・セグメント。 これまでにジャスティン・ビーバー、ブリットニー・スピアーズ、ワン・ディレクション、スティービー・ワンダー、マドンナ、一番最近ではブルーノ・マーズがカープール・カラオケに登場し、 いずれもそのビデオがヴァイラルになっているけれど、特にアデルが登場したエピソードは 2016年にYouTubeで最も視聴されたビデオになっているのだった。
今では「レイト・レイト・ショー」の看板セグメントになっているカープール・カラオケであるけれど、最初は様々なセレブリティがこのセグメントへの出演を断り続けたとのことで、 これに最初に応じてくれたビッグ・スターが 他ならぬマライア・キャリー。
彼女のカープール・カラオケがヴァイラルになってからは、錚々たる顔ぶれが登場するようになり、その都度 メディアとソーシャル・メディアで大きな話題を提供してきたけれど、 変わりどころで登場したのはミシェル・オバマ大統領夫人。夫人はスティービー・ワンダーやビヨンセの楽曲を歌い、飛び入りゲスト出演をしたミッシー・エリオットと共にラップも披露していたのだった。

今週の「レイトレイト・ショー」では、そのマライア・キャリーがカープール・カラオケに再登場。彼女と、これまで同セグメントに登場した アデル、デミ・ラヴァート、ニック・ジョナス、エルトン・ジョン、セリーナ・ゴメス、レディ・ガガ、クリス・マーティン、レッドホット・チリペッパー、 グウェン・ステファニらが、それぞれに「All I Want For Christmas Is You」を歌う様子が編集され、 同曲のオールスター・ヴァージョンのビデオ(上のビデオ)が放映されてヴァイラルになっていたのだった。
このカープール・カラオケのサクセスですっかり人気と知名度を高めたジェームス・コーデンは、2016年のトニー賞をホストしただけでなく、2017年のグラミー賞のホストも務めることになっており、 彼のトークショーも夜中の12時半のタイムスロットから、11時半のタイムスロットに昇格するという噂が流れているほど。

マライア・キャリーにとって、「All I Want For Christmas Is You」がまさか彼女のキャリアで最大のサクセスになるとは思ってもみなかったのと同様、 ジェームス・コーデンも まさかカープール・カラオケが、アメリカのみならず、全世界にアピールするメガ・センセーションになるとは思ってもみなかったという共通点を考えながら眺めると、 上のビデオはさらに興味深く楽しめるもの。
ちなみに同ビデオも12月15日にYouTubeにアップされて以来、わずか3日で1500万人以上が視聴するヴァイラル・ビデオになっているのだった。

執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。

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