Dec. 4 〜 Dec. 10 2017

”End of Job?”
働いていたら リッチになれない!


今週のアメリカで最大の報道となっていたのが、カリフォルニアの山火事のニュース。 先週からカリフォルニアでは4つの山火事が起こっているけれど、中でもトーマス・ファイヤーと呼ばれる最大規模の山火事は、 ヴェンチューラから北上して週末にはサンタ・バーバラに到達する勢いを見せており、17万3000エーカーと その中の583の民家や建物を焼き尽くす猛威を振るっているのだった。
その一方で、水曜にはトランプ大統領が エルサレムをイスラエルの首都と認めるスピーチを行い、 世界中の指導者からの批判を浴びていたけれど、これに抗議するデモはパレスチナ自治区や、中東、アジアなどのイスラム教徒の間でだけでなく、 ロンドンやニューヨーク、パリといった世界の主要都市でも イスラム教徒やパレスチナに同情する人々が参加して行われていたのだった。 それというのも これまではアメリカが仲介役となって、エルサレムを分割し イスラエルとパレスチナがそれぞれに領土を得るという ”Two State Solution / トゥーステート・ソル―ション” の交渉が何十年にも渡って行われてきたためで、トランプ氏の宣言はその仲介役が一方的にイスラエルに軍配を上げことを意味するのだった。
アメリカがずっとイスラエル寄りの姿勢を取ってきたのは周知の事実で、 トランプ氏が昨年の選挙戦中の公約に、「エルサレムをイスラエルの首都と認め、イスラエルのアメリカ大使館をテルアビブから エルサレムに移す」と宣言していたのも事実ではあるものの、 このタイミングでそれを宣言した理由としては、誕生以来、実績が乏しいトランプ政権が 年内に外交上の実績を模索していたとの声も聞かれる状況。 しかしながら 専門家の間では これによってアメリカの仲介役は もやはパレスチナ側に受け入れられないとして、 環境問題に続いて、アメリカがまたしても世界のリーダーとしての地位を失ったと指摘されているのだった。




さて、今週月曜にアメリカで報じられたのが、ウィンクルヴォス・ツインズとして知られるタイラー&キャメロン・ウィンクルヴォスが、 初のビットコイン・ビリオネアになったというニュース。
ウィンクルヴォス・ツインズは、フェイスブックとマーク・ザッカーバーグを描いた映画「ソーシャル・ネットワーク」にフェイスブックの発案者としていて登場していたことでも知られる存在。 その2人は一早くビットコインに約12億円を投資し、それが1万%以上の値上がりを見せたことからビリオネアになっているけれど、 彼らの投資額の出所はと言えば マーク・ザッカーバーグを訴えて獲得した約72億円の示談金。
昨今ではヘッジファンドや パリス・ヒルトン、アシュトン・クッチャーといったセレブリティもこぞって投資をしては大儲けをしていることで知られるビットコインは、 J.P.モーガン・チェイスのCEO ジェイミー・ダイモンや、ウォーレン・バフェットといった金融界の重鎮が疑心暗鬼なコメントをしている一方で、 投資をしている人さえもが しっかり仕組みを把握していないケースが多いクリプトカレンシー(暗号通過、もしくは仮想通貨)。 今年はただでさえダウ平均が2万ドルを大きく超える高値を記録したのに加え、 ビットコインに代表されるクリプトカレンシー市場が大いに盛り上がったことから、ウォールストリートのトレーダーやバンカーは笑いが止まらない金額のボーナスを得ることが 確実視されているのだった。

また一般の人々でも 僅か数か月でビットコインで大儲けをした人々が少なく無いだけに、今年のホリデイ・シーズンに派手にショッピングをしたり、 高級リゾートに出かけるなど 突然金遣いが荒くなった人が居ると「ひょっとしてビットコイン・リッチ?」などと噂するようになっているけれど、 そのビットコインは「子供だましのような投資」というイメージであったことから、 投資する側もギャンブル感覚と言われており、そのせいかビットコイン・リッチは 儲けた金額を派手に使う傾向にあると言われているのだった。




前述のように、今年はダウ平均が2万ドルを大きく上回ったけれど、だからと言ってそれがアメリカ全体の景気を象徴する訳ではないのは周知の事実。 アメリカの成人で株式を所有しているのは約50%で、そのうちの殆どが401K、すなわち確定拠出年金を通じて所有しているに過ぎない状況。 したがって1980年代のように株価が大きく上がったところで、誰もが好況で潤っている訳では無いのだった。
また、これまでは景気を示す手掛かりとなってきた失業率にしても、アメリカでは2017年11月の1カ月間に22万8000の仕事が生み出され、 4.1%という低い失業率になっているものの、「仕事を探すのを止めた人々の数が含まれていない」と指摘され、この数字が必ずしも景気を反映する訳では無いのが実際のところ。

アメリカだけでなく、世界的に貧富の差が開き過ぎてしまった結果、裕福な人々にとっての好景気が、必ずしもミドルクラス以下の 好景気を意味する訳では無くなったのが現代社会で、ミドルクラス以下の景気を示す数字があるとすれば、 それは幾ら賃金が支払われているか。 それによれば、アメリカの賃金は住宅バブルがはじけたリセッション時代から殆ど変わっておらず、 それに対して企業の利益が爆発的に上昇。それに伴いCEOを含む企業上層部の給与が猛然とアップした結果、 1970年代には平均的な従業員の45倍程度であったCEOの給与が、 2015年の段階では 850倍にまで膨れ上がっているのだった。

今年のホリデイ・シーズンは、アメリカ人がギフトやヴァケーションに費やす金額が昨年よりも6%アップすると言われているけれど、 ミドルクラス以下については、給与が増えたから出費が増やせるというよりも、当面失業することは無いという心の安定によるところが大きいと指摘され、 中には トランプ政権が年内に纏め上げようとしている1.3兆ドルの減税法案に期待して、 楽観的な出費をするアメリカ人も居るようなのだった。




ところがそのトランプ政権の減税案は、いかにも共和党らしい企業と大金持ちだけが恩恵を受けるもので、 年収7万5000ドル以下の庶民は増税になる可能性さえあるというもの。
こうした企業と富裕層を優遇する税制措置は、俗に「トリックルダウン・エコノミー」と呼ばれるもので、 企業に対して減税をすれば、その減税分で企業が設備投資をしたり、従業員を増やすことから経済が刺激され、 富裕層に対する減税措置は、さらなる消費を促すので、その結果、社会全体が潤うというセオリー。
トランプ氏は減税によって、企業が更なる仕事を生み出すと昨年の選挙戦中から訴えてきたけれど、 実際には多くの企業が 20%とも22%とも言われる減税措置によって生まれた余分な資金を、 自社株の買戻し、もしくはロボット導入等の設備投資に使うとしており、 従業員を増やすと回答した企業は殆んど存在しないとのこと。
また過去には 好景気になって失業率が下がると、企業側は人材を確保するために 給与を上げざるを得ない状況になっていたけれど、今では企業側が強くなり過ぎてしまった結果、 組合のパワーが大きく低下。給与の交渉をしようとすれば「メキシコに工場を移す」、「ロボットを導入する」などと仕事自体が無くなる方向に行きかねない状況。 このため多くの労働者がリセッション時代と変わらない給与に甘んじる結果になっているのだった。

そうかと思えば、昨今はミレニアル世代を中心に 9 to 5の仕事をしたくないという人々が増えているけれど、 こうした人々は、アントレプレナーになったり YouTuberとして100万人以上のサブスクライバーを獲得したり、 ファンタジー・フットボールを含むスポーツ・ベッティング(スポーツの試合の賭け)やギャンブル、 ビットコインのようなクリプトカレンシーに投資をするなどして、真面目な労働者が一生かかっても稼ぎきれないような収入を 比較的短期間に得ているケースが決して少なくないのだった。
住宅バブルがはじけたリセッション時代に失業率がアップした際には、「仕事は個人の尊厳」と言われ、 安定した仕事がステータス・シンボルと見なされていたけれど、 新世代は「お金が儲かれば働く必要はないし、その方がベター」と、ハードワークに美徳を見出さないジェネレーション。
確かにお金が儲からない仕事をするよりは、自分の趣味や得意分野でお金儲けをする方が効率的で幸福度も高いのは紛れもない事実で、 そう考えると これからの世の中においては「仕事」と「お金儲け」が 徐々に別物になりつつあるということ。 したがって 働かなくてもリッチになれる一方で、働いたところで お金儲けをしない限りは決してリッチにはなれないのだった。


執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。

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