Nov. 27 〜 Dec. 3 2017

”British Media:From Cotton Slave to Royalty…”
初のMix人種プリンセスの誕生で、イギリスの人種差別は(益々)酷くなる?


今週のアメリカにおける最大の報道が何であったかは人によってリアクションが分かれるけれど、 そのうちの1つは、NBCの視聴率No.1のモーニング・ショーで 過去21年に渡ってアンカーを務めてきた マット・ラウラ―がセクハラの容疑で解雇されたニュース。 マット・ラウラ―は年俸27億円のNBCの看板アンカーで、それだけに これまでNBCの上層部が 彼のセクハラ容疑をカバーアップしてきたことも同時に非難の対象になっていたけれど、 TV業界の大物がセクハラで職を追われたのは、先週解雇されたCBSのアンカー、チャーリー・ローズに続いて2人目。
週末にはメトロポリタン・オペラハウスで長年に渡ってコンダクターを務めてきたマエストロ、 ジェームス・レヴァインもかつてティーンエイジの少年を虐待していた罪で告発されており、 この類のスキャンダルは止まるところを知らない勢いで増え続けているのだった。

その一方で、金曜には昨年の大統領選挙の際にトランプ陣営のトップの1人で、 トランプ政権で27日間 大統領補佐官を務めたマイケル・フリンが、FBIの捜査官にウソをついた罪で有罪を認め、 トランプ陣営とロシア政府の癒着疑惑の捜査に協力する司法取引に応じたことが大ニュースになっていたけれど、 既にマイケル・フリンはジャレッド・クシュナーの指示を受けて、ロシアの高官と連絡を取ったことを供述。 加えてFBIの事情聴取が トランプ氏のコミュニケーション・ディレクターである元モデルのホープ・ヒックス(29歳)にも 及んだことが伝えられていたのが今週。

更に金曜の夜中には、新たな減税案が共和党の強行採決で可決されているけれど、 トランプ大統領の選挙戦中の公約とは正反対に、恩恵を受けるのは企業と大富豪のみ。 ミドルクラス以下、特に住宅ローンや学生ローンを抱えている人々にとっては、かなりの増税となるのが新法案。 またオバマ・ケアの健康保険購入の義務が撤廃される結果、向こう10年間に1300万人が健康保険を失うと見込まれるのだった。




そんな中、今週の明るいニュースとなっていたのが英国王室ヘンリー王子が、過去16カ月に渡って交際したアメリカ人女優、 ミーガン・マークルとの婚約を正式に発表したこと。
月曜にケンジントン・パレスのガーデンでプレスのフォトコールに応じた2人であるけれど、 その際にミーガンが着用したライン・ザ・ラベルの627ドルのホワイト・コートとアクアズーラの約600ドルのシューズは即座に完売。 またワールド・エイズ・デイに初めてカップルで公式イベントに臨んだ際にミーガンが着用していた 約900ドルのマッケージのネイビーのロング・コート、ストラスベリーの600ドルのバッグも完売するなど、 既に始まっているのがミーガン効果。
同様のことは、2010年に婚約を発表した際のケイト・ミドルトンにも見られたけれど、 欧米のメディアがこぞって指摘していたのが、チャールズ皇太子とダイアナ妃、ウィリアム王子&ケイト・ミドルトンのケースでは、 人々とメディアの注目と感心が 圧倒的に女性側に偏っていたのに対して、 ヘンリー王子とミーガン・マークルのケースでは2人にほぼ均等に人々とメディアのフォーカスが注がれる バランスの取れたカップルであるということ。 ヘンリー王子と言えば、過去には様々な問題を起こしたものの、今ではインヴィクタス・ゲームを含む チャリティに熱心で、英国王室で最も人気が高い存在であると同時に、英国民のみならず、 世界中の人々にとっても 最も親しみ易くチャーミングと言われるロイヤル・ファミリー。 またヘンリー王子がチャールズ皇太子やウィリアム王子よりもニュース性があることも、メディアや人々の関心が花嫁側に偏らない要因。
ボディランゲージの専門家は、2人が過去のロイヤル・カップルの中で 最も自然にお互いに対する愛情を様々な仕草で表現していると指摘しているけれど、 確かに2人はリラックスした様子で、幸せなカップルという印象を与えており、 特にアメリカでは 初のアメリカ人プリンセスの誕生ということもあり、一様に祝福ムードが盛り上がっているのだった。




ミーガン・マークルについては、既にCUBE New Yorkのトピックでもご紹介しているように、ヘンリー王子よりも3歳年上の36歳。 離婚歴があり、父親が白人、母親が黒人のミックス・レース(人種)でカソリックという、 英国王室の花嫁としてのご法度を集めたような存在。
中でもカソリックは 2015年までは英国王室メンバーとの結婚が許されておらず、それが改正された以降も 王位継承権6位以内はエリザベス女王の許可が必要というのが規定であったけれど、それが撤廃されたのが昨年。 したがって2人の婚約は2015年以前は不可能であったことなのだった。
2人の交際が公に発表された2016年11月であったけれど、その直後からソーシャル・メディア上に溢れたのは、 ミーガンに対する猛烈なバッシングで、特に酷かったのが人種差別批判。 具体的には「英国王室に黒人の血を入れるべきではない」という批判で、加えて彼女が年上で離婚歴があること、 女優という仕事柄、ロイヤル・ファミリーのメンバーとしてはセクシー過ぎるシーンを出演ドラマ「スーツ」で演じていたり、 男性誌のグラビアでやや挑発的なポーズをしている様子も批判の対象になっていたのだった。
そのバッシングの凄まじさにはヘンリー王子自身も非常にショックを受けると同時に心を痛めたことは、 バッキングガム宮殿の声明として発表されており、 それ以降はヘンリー王子のポケットマネーでミーガンのボディ・ガード費用が賄われていたことが伝えられているのだった。

また悪名高きイギリス・メディアも、ミーガンに対するバッシング記事でそんな世論を煽っており、 一見好意的にみられる記事でも、わざとミーガンの髪の毛がちじれぶりが激しく見える子供時代の写真を使うなど、 独特の意地悪が見られていたのはその当時から指摘されていたこと。
今回の婚約発表のニュースに際しても、表向きは好意的ながらも ミーガンのファミリー・ヒストリーを遡った記事が特集され、父親の側にはイギリスからのアメリカに渡った移民が居るとしながらも、 母親側は南北戦争前にはコットン・ファームで働いていた奴隷であったことを指摘。 そのヘッドラインは「Now that's upwardly mobile! How in 150 years, Meghan Markle's family went from cotton slaves to royalty via freedom in the U.S. Civil War (これこそが下克上!ミーガン・マークルのファミリーが いかに150年間に、南北戦争で自由を獲得したコットン・ファームの奴隷から ロイヤル・ファミリーに上り詰めたか)」 というもので、記事にはミーガンの祖先が奴隷として売買された様子が記載されている有り様。

そもそもイギリスは、自他ともに外人嫌いを認めるフランスと並んでヨーロッパでは人種差別の意識が強いと言われる国であるけれど、 その様子はロンドン・オリンピックの際にイギリスの選手やチームがメダル争いに敗れた際の 腹いせツイートにも表れており、当時、審判の判定によりイギリスを抜いて銀メダルを獲得した日本男子体操団体に対しても 驚くような人種差別発言ツイートが多数見られていたのだった。 またイギリスは階級意識も顕著であるため、ヘンリー王子はミーガンに出会う前の2014年の段階で 「自分の妻になる女性は、 既に世の中から注目を浴びた経験があるセレブリティが相応しいと思う」と語っていたことが伝えられるのだった。




2人が婚約を発表した今週もソーシャル・メディア上、及びメディアのミーガン報道のリアクションとして、 ミーガンをプリンセスとして快く思わない人々からのバッシング・コメントが寄せられていたけれど、 特に現在それに拍車が掛かるのは、イギリスを含むヨーロッパ全土で右よりの勢力が 自国に対する保護主義と人種差別政策を掲げて活動をしているため。
今週にはトランプ大統領が、イギリスの極右派のリーダーがツイートしたフェイク・ビデオをそれと知らずにリツイートしたことから、 テレサ・メイ首相に抗議される騒ぎになっていたけれど、人種問題や移民問題は今や世界中の国々を二分する問題であるのは言うまでもないこと。

とは言っても、現時点ではミーガンの異色のプリンセス像を歓迎する声の方がマジョリティを占めているのは紛れもない事実で、 イギリスでは2018年5月の2人のウェディングの際に、ウィリアム王子&ケイト・ミドルトンのウェディングの際にイギリスを訪れた旅行者、60万人を超える 旅行者が特にアメリカから訪れることが見込んまれる一方で、TV放映とストリーミングを通じて、ウィリアム王子&ケイト・ミドルトンのウェディングの視聴者数20億人を上回る 世界中の人々が新時代のロイヤル・ウェディングを視聴すると見込まれているとのこと。 ヘンリー王子とミーガンが、これまでの堅苦しい英国王室のイメージを一新することに期待を寄せる声がは非常に多いと言われるのだった。

こうした人種の壁が破られた新時代の到来に国民が沸き上がる様子というのは、アメリカにおいてはオバマ大統領の誕生で一足先に国民が経験しているけれど、 そのオバマ政権が8年間続いた間に アメリカで何が起こったかと言えば、ネオナチや白人至上主義グループの拡大、および 南部、中西部における人種差別の悪化、都市部を中心としたヘイト・クライムの増加で、 宗教差別、移民差別もオバマ政権下で盛り上がった結果、それがトランプ大統領誕生に繋がったのは周知の事実。
したがって初のミックス・レースのプリンセスが誕生して 開かれた王室がアピールされることが、 必ずしもイギリス国内の人種問題を緩和させるとは限らないどころか、 悪化する可能性さえあるのが実際のところ。
イギリスと言えば、オバマ大統領が誕生した直後に、当時の英国首相だったゴードン・ブラウン(写真右上、左側)が、 ホワイトハウスを訪問した際のギフトとして、イギリスの奴隷船の木材で作ったペンホルダーを贈り、 当時のアメリカで「大統領が奴隷の子孫だと言わんばかりのギフト」と大顰蹙を買ったことがあるだけに、 ミーガン・マークルに対しても悪意無しに同様の人種差別的な行為が行われても全く不思議ではないのだった。


執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。

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