Nov. 6 〜 Nov. 13 2017

”Hillsong, Younger Hipper Christian?”
ミレニアル世代のヒップなキリスト教!?
セレブも信仰する、今話題のヒルソング



ここ2週間ほどアメリカのゴシップ・メディアを賑わせていたのが、かつて交際していたアイドル・シンガーのセリーナ・ゴメスとジャスティン・ビーバーが よりを戻したというニュース。そしてその2人が1日に2回も一緒に足を運んだことが報じられたのがヒルソングのチャーチ・サービス。 先週末にはロサンジェルスで そのヒルソングの毎年恒例のコンファレンスが行われ、数万人が参加する大盛況となったこともあり、 様々な形でメディアの注目を集めているのがヒルソング・チャーチなのだった。

ヒルソングは、1983年にオーストラリア、シドニーで ブライアン&ボビー・ヒューストンがスタートしたキリスト教福音派の巨大な教会組織。 オーストラリア、アメリカ以外にもロシア、イギリス等、世界19カ国に80の系列教会が存在しているのだった。 世界的に教会のミサに訪れる人々が減り続ける状況とは裏腹に ヒルソングは増え続ける参列者のために毎週複数回のミサをホストしており、世界中で10万人が毎週チャーチに足を運んでいるとのこと。 その内訳は、本国オーストラリアで約3万7000人、ヨハネスブルグで約1万2000人、ロンドンで約8000人、 キエフで約3000人、ストックホルムで約2000人、ニューヨークで約8000人、ロサンジェルスで約2500人などで、 2016年には 宗教法人でありながら 約110億円の収益を上げたことが伝えられているのだった。
YouTube上には、合計1億時間を超えるヒルソング関連のコンテンツがアップされている一方で、ミサの最中に演奏される音楽が ”ヒルソング・ワーシップ”、”ヒルソング・ユナイテッド” といったバンドも生み出しており、 中にはプラチナ・ディスクに輝く成功を収めるものもあるほど。

ヒルソングのチャーチ・サービスは90分間で、多くの教会の日曜ミサ同様、パスター(牧師)による説教と音楽で構成されているけれど、 アテンション・スパンの短いミレニアル世代に合わせて、説教とモダンな音楽を交互に盛り込むスタイルで、 巨大なアリーナを会場としたラージ・フォーマット用にミサがデザインされているのだった。 そのためヒルソングのミサでは、カラオケ・ナイトやレイブ・コンサートのノリ、エクササイズ・クラスのような一体感や達成感等を味わう参加者が多く、 通常の教会よりも人種や経済力のバラエティが幅広いことでも知られていると同時に、 ジャスティン・ビーバー、セリーナ・ゴメス以外にも、ケンドール・ジェナ、コートニー・カダーシアン、ヘイリー・ボールドウィン、クリス・プラット、 NBAプレーヤーのケヴィン・デュラン、U2のボーノなど、セレブリティの信者が多いことでも知られているのだった。




キリスト教関係者が分析するヒルソングのサクセスの要因は、まずその説教が非常に身近であること。 聖書からの引用をごくあっさりと用いながら、パスターの日常のエピソードを盛り込むなど、 誰もが共鳴できる内容を、説教とは思えないような ごくごく普通の話し方でジョークを盛り込みながら語るのがそのスタイル。 したがって、時にスタンドアップ・コメディ(日本でいう漫談)のような様相も見せるのがその説教であるけれど、 人々が関心を持って聞き入るので、居眠りをするタイプの説教ではないのは紛れもない事実。
また若い世代にアピールすると同時にエキサイトメントを煽るために レイブ・カルチャーを取り入れた コンサート形式のミサを行い、堅苦しさを排除し、参加者が歌ったり、飛び跳ねたりと、 ハッピーなバイブを表現出来る環境をクリエイトし、アップリフティングなイベントにすることにより リピーターを増やしているのもヒルソングが成功を収めているポイント。
更に伝統的な黒人教会、白人教会というような、人種の枠が無いのもヒルソングで、 誰にでもフレンドリーでオープンな雰囲気、服装を気にせず参加できる気軽さ、 加えて従来の教会のイメージを打ち破るモダンなクールさを演出することにより、 宗教にまつわる偏見を取り除くことにも成功しているのだった。

そんな 今まで教会に通った事が無い信者を獲得する一方で、以前から深い信仰心を持っていたキリスト教信者の間では、 「聖書の引用が少なすぎる」、「宗教の意味合いを捻じ曲げている部分がある」といった批判の声が決して少なくないのがヒルソング。 また本国のオーストラリアのヒルソングでは、不正会計や ヒルソングを批判する人々に対する攻撃などのスキャンダルも報じられており、 多くの宗教団体同様、必ずしもクリーンなイメージだけではない部分もあるようなのだった。






ヒルソングのような歴史の浅いチャーチがアメリカで急速に拡大するには、スター・アトラクションになる存在が必要であるけれど、 それを担っているのが同チャーチのニューヨークのパスターであるカール・レンツ(写真上、38歳)。 とは言っても 彼を有名にしたのは他でもないジャスティン・ビーバーで、特に ジャスティン・ビーバーがこの春にワールド・ツアーを中止して、事あるごとにカール・レンツと時間を過ごす様子がメディアで報じられるようになってからは 彼に対する人々とメディアの関心が大きくアップしているのだった。

そのカール・レンツは、ジャスティン・ビーバーに限らず セレブリティの信者と友達付き合いをすることで知られるパスターでもあり、 全身性エリテマトーデスを患って精神的に落ち込んだセリーナ・ゴメスもその1人。 他にも彼のインスタグラムにはオプラ・ウィンフリーやNBAスターなど、セレブリティと一緒のスナップが非常に多く、 そのファッションもとてもパスターとは思えないヒップでエッジーなスタイル。 リック・オーウェンを好む彼は、それ以外にもシュプリームxルイ・ヴィトンのフーディーや、カニエ・ウエストのイージーなど、 高額のストリート・カジュアルを着用することで知られており、トレードマークはワイヤー・フレーム&クリア・レンズのアヴィエーター・サングラス。 これはジャスティン・ビーバーも彼を真似て頻繁に身に着けているもの。

今やロックスターのようにもてはやされている彼であるけれど、その説教もロックスター的で、 会場を盛り上げながら語り掛けるスタイル。 でもヒルソングがキリスト教福音派、すなわち聖書に書かれたことが全て真実として、それに忠実に生きなければならないのに対して、 彼が信者を増やし続けるアメリカ、特にニューヨークやロサンジェルスはゲイ・ピープルが多く、 人々が人工中絶を支持するなど、福音派の教えに背くライフスタイルや思想を持つ人々が多い街。
それだけに同性婚や中絶に対して意見を求められた際の彼の姿勢には信者の間でも 賛否両論で、福音派のチャーチが現代の社会でオープンに人々を受け入れるということが 実際には如何に難しいかを露呈しているのだった。




そのカール・レンツは、ヒルソングのニューヨーク支部のプロモーション・ビデオで、 「世の中の情勢が悪くなればなるほど、人々は我々が必要になる。部屋が暗くなればなるほど、懐中電灯が明るく感じられるのと同じ」 と語っていたけれど、実際に宗教というのは暗い時代ほど人々が必要とするもの。
事実、私が個人的に宗教というものを現在興味深く見守っている理由の1つも、世界的に正義というものが失われつつあると感じているためで、 多くの国々において権力を握っているリーダーが正義や道徳といったものとは無縁の、私利私欲を満たしている存在であるのは周知の事実。 その結果、そのリーダーの後ろ盾となって 同様に正義や道徳を省みない人々が巨額の富を築いていることが 一般大衆にさえ 知れ渡って来た今の世の中は、真面目に 常に正しい道を歩みながら ハードワークで成功を勝ち取ろうとしてもなかなか出来ないだけでなく、 それを馬鹿らしくさえ感じる人々が増えているのが実情。
だからと言って、誰もがルールや道徳、正義を無視した生き方をするのは、自分が散々それを実践してきたリーダーさえもが望まないことで、 世の中が どんなにクレージーで、生活が厳しくても、人間が善悪の秩序や道徳を失わないために必要とされるのが宗教。 それほど神という存在を人間の心の中に設置するだけで、善悪の区別がしっかりついて、世の中はどうあれ、自分は地道に正しい道を歩もうという思想が身に付くだけでなく、 「天罰を恐れて悪事に手を染めない、天罰を信じて自ら復讐しない」といったメンタリティも備わるのが信仰というもの。 宗教はそんな時代を生きる人々にとって必要な精神面でのサポートや後押しであると同時に、 悪行を営むリーダーにとっては国民を扱い易く調教してくれる恰好の武器にもなるもの。
したがってこれからの時代に 宗教がどういう役割を果たして行くかは、アメリカのように政治と宗教が深く関わる社会においては、 世の中の行方を左右する重要なポイントになり得るのだった。
そのアメリカでは、これまで特定の政党や政治家を支持した宗教団体は、その免税を含む宗教団体のステータスを失うことが法律で定められていたけれど、 キリスト教右派を支持基盤にする共和党が現在それを撤廃しようとしていることから、 今後見込まれるのが宗教の更なる政治への介入。 前述のカール・レンツにしても、今週のメディアとのインタビューで トランプ政権のミーティングに参加したことを明らかにしているのだった。


執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。

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