Oct. 30 〜 Nov. 5 2017

”End of the Era of Big Stars”
ドル箱スター時代の終焉!? ハリウッドやMLBで不要になりつつある スーパースターの存在!


今週のアメリカで最大のフィールグッド・ニュースとなったのが、11月1日水曜日に行われたメジャーリーグのワールド・シリーズ第7戦で ヒューストン・アストロズが、ロサンジェルス・ドジャースを破って、フランチャイズ史上初のチャンピオンに輝いたニュース。
LAドジャース・ファンのセレブリティが多数観戦に訪れたことでも話題になっていたのが今回のワールド・シリーズであるけれど、それよりも何よりも 毎試合のように両者譲らぬ攻防を見せる好ゲームの連続で、高視聴率を記録。久々にベースボールが フットボールを抜いてアメリカのパストタイムにカムバックしていたのだった。

アメリカの球界では 今回のワールドシリーズを「お金でチャンピオンシップが買えるか?」を問う視点でも注目していたけれど、 それというのも今年で29年連続でチャンピオンシップを逃しているLAドジャースは、過去4年連続で選手に支払った年俸が最も高い球団。 今シーズン支払った年俸の合計は約2億6000万ドル(約286億円)と見込まれる高額ぶりで、その甲斐あってシーズン中には104勝を記録。 ワールド・シリーズも断然有利と言われていたのだった。
メジャーリーグでは、高額なスタープレーヤーを集めてワールド・シリーズ・チャンピオンに輝いた近年最後の例が2009年のヤンキーズで、 以来ヤンキーズが どんなにお金を遣おうと チーム力と人気の低下、無冠に泣いてきたのはニューヨーカーが最も理解していること。 そんなヤンキーズも今では若いプレーヤーに入れ替わって、あと1勝でワールド・シリーズという サプライズの健闘を見せたのが今シーズン。春先にはヤンキー・スタジアムの観客動員数最低を記録したものの、 シーズン終盤には ファンがブロンクスに戻ってきたことが伝えられていたのだった。
昨年のワールド・シリーズ・チャンピン、シカゴ・カブスも、スター選手を集めるよりも 若く優秀なプレーヤーを集めた結果、サクセスを収めた例で、今年のチャンピオン、ヒューストン・アストロズにしても それを3シーズン前には実践して 建て直しを図ってきたチーム。そのアストロズが、高額プレーヤーを集めたドジャースに勝利したことで、 ドジャースが方向転換をするかは別として、球界はプレーヤー個人の戦力よりも、チーム力という視点で選手を集める方向にシフトすることが見込まれているのだった。




その一方で10月30日月曜には、映画のボックスオフィス絡みの2つのニュースが報じられたけれど、 その1つは、ハーヴィー・ワインスティンのセクハラ・スキャンダル以来、初めて公開されたワインスティン・カンパニーの映画 「Amityville:The Awakening / アミティヴィル:ジ・アウェイクニング」が、僅か10の映画館でしか公開されず、 その週末3日間の売り上げが742ドル(約8万1600円)という惨憺たる成績であったという報道。 これは、1館当たりの平均売り上げが8千円程度で、1回の放映の平均観客数が10人以下という数字。
映画を観る人々は、この「アミティヴィル:ジ・アウェイクニング」を製作配給しているのがワインスティン・カンパニーとは知らないケースが殆どなので、 この悲惨な成績は一般の人々がボイコットしたというよりも、 スキャンダルのせいで ホラー映画の観客動員数のカギを握る予告編の放映や、宣伝が行われず、 映画館側もワインスティン・カンパニーの作品を放映したがらない様子を露呈していたのだった。

もう1つのボックスオフィス絡みのニュースは、同じ週末に封切られたジョージ・クルーニー監督作品、 「Suburbicon / サバ―ビコン」が 大々的にプロモーションやプレミアを行ったにも関わらず やはり惨憺たる興行成績に終わったということ。 同作品はパラマウント映画の この秋最大の期待作で、巨額の広告宣伝費を投じ、マット・デイモン、ジュリアン・ムーア、オスカー・アイザックというスター・キャストで、 ジョージ・クルーニーが監督だけでなく、ジョエル&イーサン・コーエン兄弟らと脚本も手掛けた話題作。 全米の2050館ものシアターで大々的に封切られたにも関わらず、週末3日間の売り上げは僅か284万ドル(約3億1240万円)。 1館当たりの売り上げは15万3000円程度で、この10倍でも物足りない金額になっていたのだった。

作品のレビューもかなり酷かったものの、レビューが悪くてもヒット作になる映画が多いのが昨今のアメリカ。 このため、ハリウッドでは「ハロウィーン前のウィークエンドに封切られたのが災いした」とかばう声も聞かれたけれど、 映画関係者の間では、「特定のスターを目当てに人々が映画に出掛ける時代は終わった」という指摘は多く、 特にストリーミングで映画やTVドラマを観る傾向にあるミレニアル世代は、 映画自体に興味をそそられない限りは、誰が出演していようと わざわざ映画館に足を運ばないと言われているのだった。






「サバ―ビコン」のプロモーションは、監督のジョージ・クルーニーと、マット・デイモンの2人が中心に行って、モーニング・ショーから夜のトークショーにまで出演していたけれど、 そのジョージ・クルーニーは俳優としてここ何年もヒット映画が無いだけでなく、 フォーブス誌によってジョニー・デップ、ウィル・スミス、ウィル・ファーレルに続いて、ハリウッドで4番目にオーバーペイド、すなわち 興行売り上げの割にギャラが高すぎる俳優にリストされた存在。
彼はジュリア・ロバーツ、ブラッド・ピットらと並んで、人気はあるものの映画館に観客を動員出来ないスターになっていて、 特にブラッド・ピットは、GVCゲーミング・グループが 1980年〜2017年までに公開された映画における 主演俳優のギャラの効率をチェックした結果、 支払われたギャラ1ドルに対して、10セントの売り上げしかもたらさない 最も利益率の悪い俳優になっているのだった。 ちなみにフォーブス誌でオーバーペイドの1位に選ばれていたジョニー・デップは、1ドルのギャラに対してもたらす売り上げが20セントで、このランキングでは第2位となっているのだった。

したがって、ジョージ・クルーニーとマット・デイモンが組んだところで、俳優の名前だけでは観客動員に繋がらないのは 数字のデータに表れているけれど、「サバ―ビコン」の興行成績の足を引っ張ったと言われるのが、 ジョージ・クルーニー、マット・デイモンが共にハーヴィー・ワインスティンのセクハラ・スキャンダルの報道で、直接的な関係はなくても名前が挙がった存在であるという点。 ジョージ・クルーニーについては、かつて彼が出演していたTV番組「E.R.」の女性キャストが、撮影現場で起こっていたセクハラを訴えたところ、 ジョージ・クルーニーによってブラック・リストに名前を乗せられ、その後仕事が無くなったという被害を訴えており、 マット・デイモンについてはニューヨーク・タイムズの女性記者が何年も前にハーヴィー・ワインスティンのセクハラに関する記事を書いていたところ、 彼とラッセル・クロウから電話で圧力を掛けられ、記事が潰されていたことがワインスティン・スキャンダルと共に報じられていたのだった。
それもあって、「サバ―ビコン」のプロモーション・インタビューは 2人の釈明の場として利用されており、 メディアも映画の話をそっちのけにして 彼らにセクハラ・スキャンダルについての意見を求めており、 その様子に好感が持てない女性ファンが多かったのは事実。
またそんなインタビューを見た後に、1950年代の郊外の白人社会における人種差別問題を描いた映画を 観に行こうという気持ちになれないのは無理も無いと言えることなのだった。




でも「サバ―ビコン」がパラマウント期待の大作であったにも関わらず、 見事にコケた最大の理由と指摘されるのは、同じ週末にネットフリックスの大人気ミステリー・スリラー、「ストレンジャー・シングス」のシーズン2が公開されたこと。
週末3日間で、全米の1600万人が第一話を視聴したと言わる「ストレンジャー・シングス」は、そのうちの36万1000人が1日で全9エピソードを見終えたというセンセーションぶりで、 ネットフリックスをサブスクライブしている人であれば、その週末に映画館に行くなど論外というほど、話題が集まっていたのが同番組のシーズン2プレミア。 「ストレンジャー・シングス」には、ウィノナ・ライダー、マシュー・モディ―ンといった かつてのスターも出演しているものの、同番組が一躍大スターにしたのが、 13歳のミリー・ボビー・ブラウン、15歳のゲイテン・マタラッツォ等、全く無名だった若手俳優たち。
ハリウッドの歴史を遡っても、スターがヒット作を生み出すよりも、ヒット作がスターを生み出してきた訳で、 だからこそスターになるためにヒット作にキャストしてもらいたい若手俳優に対して、ハーヴィ―・ワインスティンのようなプロデューサーや、 今週新たにセクハラで告発されたブレット・ラトナーといった映画監督がセクハラ行為を行うことが出来たと言えるのだった。

今ではネットフリックスの手掛けるオリジナル・シリーズが、スター不在でメガ・ヒットになるのは珍しくないけれど、 同社が最初に手掛けたオリジナル・シリーズ「ハウス・オブ・カード」は、主演にケヴィン・スペーシー、相手役にロビン・ライトという映画並みのキャスティングで、 そのヒットが後発シリーズの道を開いたと言っても過言ではないのは TV業界では誰もが認識するところ。 奇しくも、今週はそのケヴィン・スペーシーが14年前の性的虐待行為で告発され、それに続く被害者が名乗り出たことから、「ハウス・オブ・カード」は 最終であるシーズン6の撮影中に、製作中止が決定。「ハウス・オブ・カード」の若い男性スタッフ8人も彼から不適切な性的行為を受けたと訴えており、 彼もハーヴィー・ワインスティン同様にセラピーと治療を受けるために、一時活動をストップすると発表しているのだった。

このように現在のハリウッドは かつてのパワー・プレーヤー達が様々な形でトップの座を追われたり、 そのパワーや影響力の減速ぶりを見せていて、これを時代の流れに応じた世代交代と捉える見方もあるけれど、 全く新しいコンセプトや斬新なストーリー・ラインの映画やTVドラマの場合、既にイメージが確立されたスターよりも、 見る側が何の先入観も抱かないニュー・フェイスの方が、映画やドラマ自体のインパクトが高まるのは紛れもない事実。
それがジュリア・ロバーツやジョージ・クルーニーであると、登場しただけでそのストーリーの結末が誰にでも簡単に予測が出来てしまうのだった。


執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。

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