Oct. 23 〜 Oct. 29 2017

”Double Standard or Over Reacting?”
ダブル・スタンダード Or 過剰反応?
突如セクハラに厳しくなったアメリカ社会の3つの出来事



今週は、ハーヴィー・ワインスティンに対するセクハラ行為を、ニューヨーク・タイムズ紙を通じて初めて告発した 女優のアシュレー・ジャッド、ローズ・マクガヴァンが初めて公の席に姿を見せて、メディアからの注目と女性たちからの賞賛を集めていたけれど、 今やハーヴィー・ワインスティンの犠牲者として名乗りを挙げた女性の数は60人以上。
でもそれを遥かに上回るのが今年70歳になる映画監督、ジェームス・トバックで、過去1週間ほどの間に彼によるセクハラ被害を訴えた女性の数は300人以上。 それ以外にも、アマゾンのムービー・スタジオでは2人のトップ・エグゼクティブがセクハラが原因で職を追われ。 過去に何度かセクハラ容疑が浮上していたセレブ・フォトグラファ―のテリー・リチャードソンも、 メジャー誌のグラビア撮影から追放処分となっているのだった。 それ以外にもニューオリンズのセレブ・シェフがやはりセクハラで大手レストラン・グループの職を失ったかと思えば、 政界の女性議員たちまでもが 加害者の名前を伏せたままセクハラ経験を告白しており、 ありとあらゆる世界で セクハラ告発がどんどん起こっているのが現在のアメリカ。
中でも、意外性を持って報じられたのが元ABC、現在MSNBCの政治ジャーナリスト、マーク・ハルパリンで、 今週、彼からセクハラを受けたという女性が次々と名乗り出てきたため HBOが現在製作中の政治ドキュメンタリーから彼を外すことを発表。 被害者の中には、ホワイトハウスの取材の協力をマーク・ハルパリンに求めた際に、彼の膝の上に座って話をするように強制されたと訴える女性も居て、 被害を告発する女性が増える度に、最初は女性側の過剰反応 と見られていた容疑が どんどん信ぴょう性を帯びてきているのだった。




そうかと思えば、今週4人の女性から 「写真撮影の際に身体を触られた」という被害の訴えられたのがジョージ・W・ブッシュ大統領の父親で、第41代米国大統領である ジョージ・H・ブッシュ元大統領(93歳)。 これはブッシュ氏が記念撮影の際に女性のヒップに手を回し、撮影が終わると女性のヒップを軽く叩いたり、触ったりするというもので、 その場を目撃した男性も その行為を認める証言している有り様。
ブッシュ氏は写真撮影時にバーバラ夫人や男性が隣に立った場合は手を回すことはなく、 女性が横に立った場合のみに腰に手を回しており、女性の身体に触れている最中に彼が頻繁に語るのが 「My favorite magician is "David Cop-a-feel"/自分の好きなマジシャンはデヴィッド・コッパ・フィール」 というダーティー・ジョーク(性的なジョーク)。"David Cop-a-feel"は、マジシャンのデヴィッド・カパーフィールドの名前をもじった言葉で、 「マジシャンのように痴漢行為を相手に悟られることなくやってのけること」を意味しており、 これによってブッシュ氏本人が彼の痴漢行為を冗談として片付けようとしている様子が立証されているのだった。
こうした女性たちからの告発を受けて、ブッシュ氏のスポークス・パーソンは 同氏が車椅子を利用しているために一緒に 写真に写る人々に手を回そうとすると 女性の腰の高さになってしまうこと、 また肩を叩いて頑張るようにと励ますフレンドリー・ジェスチャーの習慣で、腰に回した手でそのまま女性のヒップを軽く叩いてしまう場合があることを説明して、 謝罪しているのだった。

これまで女性達がブッシュ氏の痴漢行為について何も言わずにいた最大の理由は、彼が元大統領であることだけれど、 それと同時に彼が車椅子を必要とする高齢者で、ハーヴィー・ワインスティンのような性欲がみなぎる存在ではないことも事態が大袈裟に取沙汰されなかった要因。 とは言っても介護施設では、男性老人がボケたふりをして女性介護士の身体を触るのは珍しくない行為で、若い女性スタッフが辞める原因の1つ。 したがって”高齢=性欲の衰え”と見なすのは間違いであり、ブッシュ氏の場合、真面目なイメージとは裏腹に 大統領任期が終了してから、愛人スキャンダルが浮上するなど、 実は女性好きと言われるのだった。
またヒップを軽く叩くジェスチャーについては、”誰が 誰にに対して どう行うか?” によって意味合いも異なれば、叩かれた側の心理も異なるもの。 例えば男性スポーツ選手がチームメイトのファインプレーを称えるジェスチャーとしてヒップを叩いても誰も文句は言わないけれど、 男性コーチが女子選手に同じことをすれば立派にセクハラ行為となる訳で、ブッシュ氏が腰に回した手でヒップを叩かれた女性達が不快感を覚えるのは当然のこと。
1970年代には、国際線の飛行機の中で日本人商社マンが外国人スチュワーデスに対して同じようにヒップを叩くジェスチャーをしたところ、 着陸と同時待ち受けていた警官に痴漢容疑で逮捕されという話があって、これは当時 初めて海外出張に出る商社マンに警告されていた有名なエピソードなのだった。






今週、もう1つソーシャル・メディア上で物議を醸していたのが、俳優のアダム・サンドラーがイギリスのTV番組に出演し、 インタビューの最中に 何度も隣に座っていた女優のクレア・フォイの膝を触り続けていたというシーン(写真上)。 クレア・フォイはアダム・サンドラーの手を止めたり、振り払ったりして居心地の悪そうな様子を見せており、番組が放映されている最中から 視聴者がアダム・サンドラーの手の位置と、それを迷惑がるクレア・フォイの様子を盛んにツイートしていたのだった。
これについて、後にクレア・フォイ側は「特に気にしていない」とコメントしたけれど、 アダム・サンドラー側の言い分は、ジョージ・H・ブッシュ大統領のスポークスマン同様、 「(クレアの膝に触れたのは)フレンドリー・ジェスチャー」というもので、「メディアとソーシャル・メディアのせいで、大袈裟に取沙汰されただけ」ともコメントしているのだった。
すなわち「周囲の過剰反応」というのが彼の言い分であったけれど、視聴者は「見ているだけで気分が悪い」、 「特に親しい訳でもないに、馴れ馴れしい」というリアクションで、彼の行為に性的な意図が無いことを理解しながらも批判していたののだった。




でも今週の出来事の中で、一番様々な意見が飛び交っていたのは、 トークショー・ホスト兼コメディアン、 エレン・デジェネレスによる ケイティ・ペリーへのバースデー・ツイートで、それは彼女が ケイティの胸の谷間を覗き込んでいる写真と共に 「Happy Birthday @KatyPerry! It's time to bring out the big balloons! (誕生日おめでとう@ケイティ・ペリー!大きな風船を取り出してくる時よ!)」というメッセージを添えたもの(このページの一番トップの写真)。
これは明らかにエレン側が悪気の無いユーモアを交えようとして失敗したケースであったけれど、 ソーシャル・メディア上には瞬く間に 「これが男性だったら、セクハラの痴漢扱いだ」、 「同じような事をしても女性は許されて、男性だけ責められるのはおかしい!」というダブル・スタンダードを指摘する批判が殺到。 エレン側をかばう人々と意見を戦わせていたのが今週なのだった。

エレン・デジェネレスはレズビアンで、写真上左側の女優で、「アリー・マイ・ラブ」で知られるポーシャ・デ・ロッシと結婚して久しい存在。 この写真は2013年のグラミー賞でのスナップで、当時もこの写真がメディアで公開されていたものの、写真自体が物議を醸すことは無かったのだった。 それよりも当時話題になったのは、同じドレスを中国人女優、リー・ビンビン(このページのトップの写真の右側)が映画のプレミアで着用した姿と ケイティ・ペリーとの比較で、 胸の谷間を強調した着こなしのケイティと、直線的なボディ・ラインを覆い隠すように着用したリー・ビンビンでは、 ドレスについているオーナメントのサイズから、シルエットまでが異なって見えて、とても同じドレスとは思えないという指摘が聞かれていたのだった。

エレン・デジェネレスをかばう人々の言い分は、まずエレンとケイティ・ペリーが非常に親しい友人同士で、冗談が通じる仲であるということ。 加えて同じことを女性がやるのと、男性がやるのでは意味が異なるというもの。 これに対してエレンをバッシングする人々は、彼女が女性とは言えレズビアンで、「ストレートの男性が女性に興味を示すのと同様の視線で女性を見ているはず」という見解もあれば、 「どんなに親しい者同士のツイートであろうと、ソーシャル・メディアを通じて公に発信するのならば、適切さを考えるべき」との声も聞かれていたのだった。
でもレズビアンの彼女がケイティ・ペリーの胸を覗き込む写真と 彼女のバストを風船に見立てたジョークがセクハラであるかについては、 エレンがケイティと同じ女性の身体である限りは、たとえレズビアンでもセクハラではないという意見もあり、 どう判断するべきかが問われていたのが今週。 とは言っても同問題がこのまま終焉を迎えようとしているのは、ケイティ・ペリー本人が不快感を表明していないためで、 前述のアダム・サンドラーの件同様に、傍観者が煽ったところで犠牲者の告発なくしてはセクハラが成立しないことを違う形で立証していたのだった。

その一方で、最新のアンケート調査では 職場でセクハラを受けたというアメリカ人女性の割合は4人に1人。 それに「性差別を受けたことがある」という女性を加えると、全体の60%にも上ることが明らかになっているのだった。 しかしながらその75%が泣き寝入りをしてきたとのことで、現在のように社会がセクハラに対して過敏なまでに反応する時期がなければ 改善が見込めないという見方があるのが実際のところ。 ドメスティック・バイオレンスにしても、かつてのアメリカ南部や西南部では夫が妻を殴るのは夫婦関係ではありがちなこととして相手にもされなかったことであるし、 児童虐待行為とて然り。それが犯罪と見なされるようになったプロセスには、社会がドメスティック・バイオレンスや児童虐待行為に過敏なまでに反応する時期があった訳で、 社会の問題がいきなり理想的に正される事など望めないのだった。
特にセクハラについては、これまでは男性が問題に向き合おうとしなかっただけでなく、 女性が女性被害者に味方しないケースが多かったのは周知の事実。それがやっと変わりつつあるのは そういった"女性をサポートしない女性" に対してソーシャル・メディアを通じた 容赦ないバッシングが繰り広げられるようになった結果。
今 アメリカ人女性がハーヴィー・ワインスティンをかばったドナ・キャランのドレスを着たがらないのも 過剰反応と言ってしまえばそれまでであるけれど、女性が男性のセクハラに理解を示している間は決して状況が改善しないことを思えば、 それも必要なステップと見なされるのだった。


執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。

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